ジョルジェット・ジウジアーロ「大海の一滴になる」…VWが買収
イタリアを代表する自動車デザイン会社の1社『イタルデザイン・ジウジアーロ』の株式90.1%をフォルクスワーゲン(VW)が買収することになったのは既報のとおりだ。
買収が発表された25日、イタリアでは主要テレビ局でこそ採り上げられなかったものの、日刊紙は軒並み翌26日の経済欄で報じた。とくにイタルデザインの本拠地トリノに本社を置く、フィアット系の『ラ・スタンパ』紙は、経済欄のトップ1ページを割き、ジョルジェット・ジウジアーロ会長の経歴や業績についても詳しく伝えた。
イタルデザイン・ジウジアーロは今年1月、中国系アメリカ企業「HKモータース」と環境対応車の開発とエンジニアリングに関し、5億ドルの契約を締結した。その調印について、ジウジアーロ会長自身は筆者に「実に幸運だった」と語った。しかし筆者がイタルデザイン-ジウジアーロ関係者から聞いた話によると、同社は過去2年間にわたり、赤字経営を余儀なくされてきた。VWによる買収は、そうした一連のプロセスの終着点といえる。
ジウジアーロ会長はVWとの交渉期間中、日本でも過去に話題となった小説『ソフィーの世界』を読んでいた。彼によれば、その中の一節「すべての雫は、やがて海に流れ込んで大海となる」に感銘し、「まさにイタルデザインは、その一滴であると考えた」という。そのうえで「VWグループ入りは、我々自身と我々の力も再評価することを意味する」とコメントしている。
なお、引き続き9.1%の株式を所有するジウジアーロ会長および息子でスタイリングディレクターのファブリツィオ・ジウジアーロ氏には、新たに組織される取締役会でも役職が用意される見込みだ。
ところで現在、VWでは過去にアルファ『156』や『147』を成功させたイタリア人、ウォルター・デシルバがブランド全体のデザインディレクターを務めている。またデザイン開発とは直接関係ないが、VWブランドのマーケティングディレクターも、以前フィアット・オートモビルズでCEOを務めたルカ・デメオだ。こうしたいわば既存のVW内“イタリアン・コネクション”と、イタルデザイン・ジウジアーロが、今後どのような関係を築いてゆくかも注目すべきところだろう。
ちなみに以前、ジウジアーロ会長がイタリアのテレビ番組で証言したところによると、「1970年代初頭、初代『ゴルフ』のデザインに関してVWに赴くと、通された部屋にはフィアット『128』が研究用に分解してあって驚いた」という。イタリアが前輪駆動の小型車開発でリードしていた時代の逸話である。
その頃から縁の深いVWの傘下に入ることは、このトリノの会社にとって最良の選択肢であったに違いない。
レスポンス 大矢アキオ
VW、イタルデザインを買収
独フォルクスワーゲンは現地時間25日、イタリアの工業デザインの大手イタルデザインの株式を90.1%取得したことを発表。これにより、イタルデザインはフォルクスワーゲングループの一員となることが決まった。
イタルデザインは、初代“ゴルフ”や“ランボルギーニ・ガヤルド”、“いすゞ117クーペ”などのデザインを手掛けたジョルジュエット・ジウジアーロが1968年に創業した会社。フォルクスワーゲンが現在開発を進めている次世代小型車“UP!”も、イタルデザインがデザインを担当している。
フォルクスワーゲンは今後、イタルデザインのブランド名の使用権やパテントも使用できるようになる。
ジウジアーロは、ノルウェイの詩人でノーベル賞受賞者であるヨースタイン・ゴルデルの著書『ソフィーの世界』から、「海へと流れるすべてのしずくは海になる」という一節を引用し、「自分たちは“しずく”である」と述べた。そして、「フォルクスワーゲングループの一員となることは、自らの力をさらに高めることを意味する。そしてそれはまた、会社の将来を切り開くことに繋がる」と自らの境遇を話した。
VW、イタルデザインを買収か---どうなる?
独フォルクスワーゲン(VW)がイタルデザイン-ジウジアーロを近日中に買収するという情報が、イタリアの自動車業界を駆け巡っている。これは、業界紙『オートモティブニュース』が19日、複数の情報筋の話として伝えたことがきっかけだ。
イタルデザイン-ジウジアーロは1968年、当初「イタルスタイリング」の名称で、ジョルジェット・ジウジアーロ、エンジニアリング担当のアルド・マントバーニらによってトリノに設立された。デザインだけでなく、量産システム構築まで一貫してクライアントに提案・コンサルティングする彼らの方式は、カロッツェリア界に新たな潮流を起こした。
彼らは、アルファロメオ初の大衆車である1972年『アルファスッド』や、VW『ビートル』の後継車として初の成功を収めた1974年『ゴルフ』など、創業当初からヒット作を次々と送り出した。
近年はクライアントである自動車メーカーが社内デザインに比重を移していったのに合わせてデザイン業務が減ったため、逆にエンジニアリング部門を強化。2代目BMWグループ『MINI』の開発計画などに参画した。いっぽうで数年前、創業時からのパートナーであったマントバーニが株式を手放したため、事実上会社はジウジアーロ家のものとなっていた。
このVWによるイタルデザイン買収説は、21日トリノで行なわれた同業者であるピニンファリーナの創業80周年式典でも、出席者の一部で話題となった。しかし、ジョルジェット・ジウジアーロ会長および、息子のファブリツィオ・ジウジアーロ副会長などは、会場に姿を現さなかった。
現在、イタルデザイン-ジウジアーロ・グループは、非自動車部門のプロダクトデザインを手がける「ジウジアーロ・デザイン」などを含め、約1000名のスタッフ/コラボレーターで構成されている。
前述のように、ジウジアーロ本人にとって、VWゴルフは彼の出世作である。もし今回の情報が現実になると、ジウジアーロはそのきっかけをつくってくれた会社に助けられることになる。
もうひとつ気になるのは、今後のイタルデザイン-ジウジアーロの行方だ。仮にVWのシンクタンクとなれば、他のクライアントからの依頼は当然減ってゆくだろう。その際思い起こされるのは、往年存在したトリノのカロッツェリア『ギア』だ。
ギアは1960年代末にデトマソなどの傘下に入ったのに続き、1973年にフォードによって完全に買収されてしまった。当初は同社のデザイン拠点として稼働していたが、やがてフォード各モデルにおける最高級仕様の名称と化してしまった。
仮に今回のニュースが真実になった場合、イタルデザイン-ジウジアーロの役割とブランドが、VWグループによって将来どのように扱われるかも注目に値する。
ちなみにジョルジェット・ジウジアーロはもともとギアのチーフデザイナーだった人物で、独立のきっかけは当時のデ・トマゾ支配下での混乱に嫌気がさしたことだった。彼の会社が奇しくも同じ運命を辿るかもしれないのは、長年イタルデザイン-ジウジアーロの動きを追ってきたウォッチャーである筆者としては複雑な思いである。
レスポンス 大矢アキオ
VW、イタルデザイン買収か---伊大手デザイン開発会社
フォルクスワーゲングループが、イタルデザイン・ジウジアーロ社を買収する方向であることが、欧州のメディアの報道で明らかになった。
イタリア・トリノ近郊に本拠を置くイタルデザイン・ジウジアーロ社は、ジョルジェット・ジウジアーロ氏が1968年に設立。自動車メーカーとのさまざまな共作が有名で、ロータス『エスプリ』(72年)、フォルクスワーゲン『ゴルフ』(74年)、ランチア『デルタ』(79年)など、自動車史に残る名車をデザインしてきた。
欧州の複数のメディアによると、フォルクスワーゲンはイタルデザイン・ジウジアーロ社を買収する方向で最終調整に入っており、早ければ5月下旬には正式発表されるという。
買収の狙いは、ズバリ世界一。フォルクスワーゲングループは2018年までに、年間1000万台を販売し、世界一の自動車グループを目指している。グループ内には現在、10のブランドを抱え、今年だけでも60車種もの新型&改良モデルを発表する予定。不足するデザイナーやエンジニアを補強するため、975名の優秀なスタッフを擁するイタルデザイン・ジウジアーロ社を傘下に収めようというのだ。
初代ゴルフをはじめ、初代『パサート』、初代『シロッコ』は、いずれもイタルデザインの作品。果たして、フォルクスワーゲンとイタルデザインは、新たな関係を築くことになるのだろうか。
レスポンス 森脇稔
昔からVWとジウジアーロのつながりはあったんだと思うけど、ついにくっつくのか~って感じですね。
スバルだとアルシオーネSVXやいすゞのピアッツァや117クーペとかトヨタの初代アリストなんかもそうなんですけどやっぱりロータスエスプリやDMCのデロリアンみたいなデザインの方が印象的なんですがね、個人的には(まあ、プロフィールの好きな車がどんなのかを見ていただければだいたい想像が付くかとw)
追記:
VW、イタルデザイン・ジウジアーロの株式取得完了…同時に新人事も発表
フォルクスワーゲングループは9日、イタルデザイン・ジウジアーロ社(IDG)の株式90.1%の取得が完了したと発表した。今後はIDGのブランド商標権も、フォルクスワーゲンに帰属する。
フォルクスワーゲンは同時に、新しい人事もアナウンス。VW乗用車部門の企画開発トップであるRalf-Gerhard Willner氏と、ランボルギーニ役員のSalvatore Cieri氏の2名が、IDGの新役員に就任した。
VWグループのマルティン・ヴィンターコルン会長は、「イタルデザインはVWグループの一員となった。両社の協力により、さまざまなプロジェクトを推進する」とコメントしている。
イタリア・トリノ近郊に本拠を置くデザイン・技術開発会社、イタルデザイン・ジウジアーロ社は、ジョルジェット・ジウジアーロ氏が1968年に設立。自動車メーカーとの多くの協業で知られ、ロータス『エスプリ』(72年)、フォルクスワーゲン『ゴルフ』(74年)、ランチア『デルタ』(79年)など、自動車史に残る名車をデザインしてきた。
レスポンス 森脇稔
Posted at 2010/05/28 13:43:57 | |
トラックバック(0) |
フォルクスワーゲン | 日記