2022年09月19日
ジャガーEタイプxフォード・ギャラクシー 8.5L V8エンジンのイーガル 忘れられない衝撃 前編
ジャガーのシャシーにフォードのエンジン
この記事上では、衝撃的なサウンドをお伝えできないのが残念。ジャガーEタイプに期待する、滑らかで上品なエグゾーストノートは聞こえない。アメリカンV8らしい、バリバリという轟音が周囲を包む。アイドリング状態でも野蛮極まりない。
膨らんだフェンダーがグラマラス。ナンバーは付いているから、完全なロードリーガルらしい。グレートブリテン島の南部、サセックス州の田園地帯に流れる平穏を著しく乱している。
見た目やうるささと比較して、想像ほど運転が難しくないことにも驚く。クラッチペダルは重く反応は鋭いものの、急に繋がるような扱いにくさはない。ギアの回転数を調整してくれるシンクロメッシュが備わった、4速MTも変速しやすい。
サーボレスのブレーキは、温度が上昇すれば良く効く。すべての操作系が調和していて、ドライバーに優しい。
唯一、質実剛健なステアリングホイールはしっかり握っている必要がある。ワイドなフロントタイヤが、ワダチに沿って右往左往しようとする。
このワイルドなEタイプは、イーガル(Egal)と呼ばれている。EタイプのEに、ギャラクシー(エンジン名)のガルを組み合わせた造語だ。1960年代に、レーシングカーとして制作されている。
ジャガーのシャシーに、フォードのV型8気筒エンジンが搭載されている。排気量は本来7.0Lだったが、近年にアメリカで受けたレストア時に、8.5Lへボアアップされている。ダイナモテストでは、608psと82.8kg-mを発揮したという。
素晴らしく病みつきになるほど速い
他の道路利用者がいなくなるのを見計らって、アクセルペダルを僅かに傾ける。イーガルが勢いよくダッシュする。選んでいるギアは関係ない。反応は即時的で、あっという間に遠くでぼやけていた先行車両へ追いつく。思わず大笑いしてしまう。
車内は轟音で満たされ、低回転域に沈んでいない限り会話は難しい。信じられないほど素晴らしく、病みつきになるほど速い。公道では上澄みしか味わえない。解き放つには利用されなくなった飛行場と、狂気じみた勇気が必要そうだ。
イーガルを発案したのは、ロブ・ベック氏とジェフ・リチャードソン氏という2人。ベックは第二次大戦時にパイロットを務め、退役後に絵画の額縁を制作するビジネスを立ち上げた。世界的な評判を獲得し、英国王室御用達にもなったという。
事業で成功を掴んだベックは、以前から好きだったジャガーへの情熱を思う存分発揮させた。彼の叔父に、英国ミッドランド自動車クラブのメンバーだった、レスリー・ウィルソン氏がいたことも影響を与えた。
「叔父のベックはジャガー・オーナーとして、ちょっとした記録保持者でしょうね。公道用とサーキット用、沢山のクルマを所有していました。ある人物のコレクションを、丸ごと買い取るほど」。と、甥のアラン・ブルックス氏が笑う。
「投資になると考え、ガレージにコレクションを保管していました。でも、価格が上昇する前に手放してしまったようです。仕事を引退したタイミングで」
476psの6997ccビッグブロックを選択
一方のリチャードソンは、スキルのあるレーシングドライバーだった。1948年にはシルバーストーン・サーキットで開かれたレースで、ERAライレーというマシンをドライブしている。
1949年からはRRA(リチャードソン・レーシング・オートモービル)チームを立ち上げ、レーシングカーを開発。エンジニアとしても高い評判を獲得した。
彼のスキルは多彩で、作るものを選ばなかった。1970年代には、第二次大戦中の怪我が悪化し片方の膝下を切断する手術を受けた。依頼していた義足工場がストライキで停止すると、彼は自ら義足を2本作ったという。
1本は日常的な歩行用。もう1本はクラッチペダルを踏みやすく改良を加えた、運転用だった。
イーガルを着想する以前、ベックとリチャードソンはジャガーXK120のチューニングを手掛けていた。その経験を活かし、EタイプのシャシーへアメリカンV8をドッキングするという手法に帰着したようだ。
選ばれたのは、427cu.in(6997cc)のビッグブロック。フォード・ギャラクシー・ユニットだった。1964年後半の記録では、デイトナ仕様のチューニングで476psを発揮していた。
このエンジンは、ジャガー製の直列6気筒より59kg重かった。そこで2人は鋳鉄製のマニフォールドやベルハウジングを交換し、340kgまで軽くした。それを迎えるボディとシャシーは、1962年式のジャガーEタイプ・ロードスターだった。
フェラーリ 250GTOを引き離す加速力
フロントサブフレームは、大きなエンジンを搭載する都合上、幅を広げる必要があった。トランスミッションはオリジナルのジャガー社製。フォードのエンジンと結合させるためフライホイールとクラッチは専用品で、アダプタープレートを介している。
スターターモーターの位置を上にずらしたり、ステアリングコラムの構造を再設計するなど、伴う変更か所は少なくない。ジャガーの4HU型ディファレンシャルやドライブシャフト、ユニバーサル・ジョイントが、巨大なトルクを受け止めた。
サスペンションとブレーキは、レース用アイテムにアップグレード。ラジエーターとオイルクーラーも強化された。ボンネットは軽量なものへ交換され、フェラーリ250 GTO風の3つ並んだエアインテークが見た目の特徴となった。
記録では、リチャードソンはイーガルの凄まじい可能性に驚いたようだ。同時に、ノーマルのEタイプのように操縦できるものの、特にインボード構造のリア側でブレーキが過熱気味だという問題も発覚したらしい。
初戦となったのは、1964年6月20日のシルバーストーン・サーキット。ベックは10周のスポーツレーシングカー・イベントで優勝を掴んだ。続く8月には、グレートブリテン島の西、カッスルクーム・サーキットへ舞台を移した。
そこには、レーシングドライバーのロン・フライ氏とピーター・クラーク氏がドライブする、フェラーリ 250 GTOが待っていた。それでも、圧倒的な加速力でイタリアン・サラブレットを大きく引き離し勝利している。
この続きは後編にて。
ジャガーEタイプxフォード・ギャラクシー 8.5L V8エンジンのイーガル 忘れられない衝撃 後編
1965年のカッスルクームで大クラッシュ
1964年10月には、南中部のチャーチ・ローフォードで開かれたスプリント・レースにイーガルは参戦。ロジャー・マック氏が駆る軽量なEタイプ・ロードスターを凌駕し、44.5秒というベストタイムを記録している。
シーズン最後となった中東部のオウルトンパークでは、最後にトランスミッションが破損してしまうものの、1964年全体では好成績を残した。
イーガルを製作したロブ・ベック氏とジェフ・リチャードソン氏は、純正トランスミッションがシーズン終了まで耐えることを願っていた。見事にそれは叶ったようだ。
1965年はボルグワーナー社製のトランスミッションに換装されるが、カッスルクーム・サーキットでのテスト走行中、高速コーナーでギアが抜けコースアウト。大クラッシュに見舞われるなかで、ベックは一命をとりとめた。
彼はその事故をきっかけに、勝利を追い求めなくなったらしい。甥のアラン・ブルックス氏が振り返る。
「ベックおじさんはそれ以来、穏やかになりました。叔父の母、わたしの祖母はまだ生きていて、レースで命を危険に晒していることへ不安を抱いていました。考えて、レースを諦めたようです」
1966年は、F1も戦ったレーシングドライバーのクリス・サマーズ氏が、リビルドされたイーガルを運転した。ベックとリチャードソンも、サーキットへ足は運んでいた。
ベックは、ブライトン・スピードトライアルに参戦。時速146マイル(234.9km/h)でフィニッシュし、クラス2位を奪取している。スピードに対する熱意は、完全には消えていなかったのだろう。
ドライバーを思わず笑顔にさせる個性
1967年になると、2人はバリー・ウィリアムズ氏をドライバーとして採用。「パワーが高すぎてグリップ力が足りず、運転は恐ろしいものでした。それでも第1コーナーの侵入には有利で、多くのレースで勝利しましたが」。と、後にウィリアムズが話している。
それ以降、ベックとリチャードソンはイーガルを売却。複数のオーナーを介して、1970年代半ばにトム・マッカラム氏が購入した。幼い頃からモータースポーツ・ファンで、自身もチューニングされたジャガーXK120やEタイプでの参戦経験を有していた。
「わたしもイーガルを思う存分楽しみました。ボブ・カーという人物と北部のドゥーン・ヒルクライム・サーキットのパドックで、自分のEタイプと交換したんですよ」。とマッカラムが振り返る。
「そのイベントでは、ヒルクライムへ参戦しました。ドゥーンのコースは手強いのですが、それでもイーガルはドライバーを思わず笑顔にさせる個性がありましたね。優勝もできました」
「別のクラシックカー・イベントでは、予選でポールポジションを獲得しています。2位はライトウエイトEタイプで、スポーツカーやオープンホイールのマシンが混戦するレースでした」
「本番が始まると路面はウェット状態になり、イーガルには適さないコンディションに。最終的には僅差の2位を掴んでいます」。とマッカラムが回想する。
アメリカのレストアで当初と違う姿に
彼が購入した時点で、イーガルはネイビーブルーに塗装されていた。ホイールはボラーニ社製のワイヤータイプから、現在も履いているJAピアース社製のアルミホイールに交換されていたという。
「グリップを強めるため、ダンロップのスリックタイヤに自ら溝を切って履かせていました。車高が低く、ヒルクライムでボディがバウンドしてもエグゾーストに当たらないよう、スキッドプレートも溶接しました」
「激しく走ると、火花が散るんです。楽しかったですよ。何よりトルクが凄かった。ちょっとやりすぎなクルマが大好きでしたからね」
1980年にマッカラムはスティーブ・モース氏という人物から電話をもらう。英国車用の部品製造業をロサンゼルスで営む人物で、単刀直入にイーガルを購入したいと希望を伝えてきたという。
「大切に乗っていたので、想定した価格を2倍にして提案しました。それでも彼はイーガルを諦めませんでした。住宅ローンと2人の子供を理由に、売却を決めたんです。ちょっと馬鹿げた考えでしたね。モースさんは25年ほど所有したようです」
さらに別のアメリカ人コレクターへ渡ったイーガルは、最近になって英国のジャガー専門家、クリス・キース-ルーカス氏のもとへやって来た。レストアされたばかりだったが、久しぶりに再会したマッカラムは仕上がりへ納得できなかった。
クルマを作ったベックとリチャードソンの頃とは、異なる見た目になっていた。キース-ルーカスも疑問を抱き、マッカラムへ相談したようだ。
ジャガーとフォードが融合したEタイプ
フロントノーズのエアインテークも、当時の画像と形状が違っていた。ボンネットが交換された可能性があった。記録写真をさかのぼり、1968年にエアインテークの形状が変えられていたことを発見したそうだ。恐らく、修復が目的だったのだろう。
キース-ルーカスは、クルマを調べるほど独創性の高い内容に関心を強めていった。1960年代にリチャードソンが手掛けた、ガス溶接の跡などにも惹かれたという。
結果的に、ボディシェルとフロント・サブフレームはオリジナルのままだった。シャシーには、2人が試行錯誤したトランスミッション用のブラケットが残っていた。見た目的には大幅に手が加えられていたが、内側ではイーガルは健在といえた。
キース-ルーカスが内容に納得すると、イーガルは新しい所有者のもとへ引き渡された。2021年の夏に開催された、英国のジャガーEタイプ・クラブの60周年記念イベントで、華々しく披露されている。
現在は違っているが、1960年代当時の姿へ戻す計画が立てられている。このクルマに関わった多くの人物が、過去を共有するために協力を申し出ているらしい。
1台限りといえる、ジャガーとフォードが融合したEタイプ。V8エンジンの響きには、1度体験すれば忘れることのできない衝撃がある。イーガルが人々へ与える興味や関心は、サウンドに負けないくらい大きなもののようだ。
協力:CKLデベロップメンツ社、クリス・キース-ルーカス氏、ジェームズ・フレイザー氏、アラン・ブルックス氏、トム・マッカラム氏、ピート・ストウ氏
Posted at 2022/09/19 20:24:15 | |
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2022年09月18日
GR86 & BRZをよりスポーティに、フロントリップスポイラーなど発売 ブリッツ
チューニングパーツメーカーのブリッツ(BLITZ)は9月14日、トヨタ『GR86(ZN8)』、スバル『BRZ(ZD8)』をスポーティに演出するエアロパーツを発売した。
GR86/BRZの純正バンパーに対応するフロントリップスポイラーは、塗り分けにも対応するデザインで、リップタイプながらフロントマスクをよりスポーティに演出。LINE LEDの有無が選択できる。リアサイドディフューザーは、リアバンパー両サイドに装着することで、迫力とアクセントを与える。リアウインドウガーニッシュは、リアウインドウとトランクの間をスムーズに埋めることで整流効果を発揮。その他のBLITZエアロとのマッチングも考慮した設計で、より自在でオリジナリティのあるカスタマイズを実現する。
価格はフロントリップスポイラーがLED付8万8000円、LED無しは6万0500円。リアサイドディフューザーは4万9500円、リアウインドウガーニッシュは3万8500円。
Posted at 2022/09/19 20:14:41 | |
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2022年09月17日
マツダ『ロードスター』次期型「NE」を初スクープ!ボディはワイド化、MHEV+スーチャー搭載も!?
マツダを代表するライトウェイトスポーツ『ロードスター』次期型の開発がいよいよスタートしたようだ。そのプロトタイプをスクープサイト「Spyder7」のカメラが初めて激写。世界が注目する「NE」ロードスターの姿とは。
初代ロードスターは1989年に登場、「ユーノス店」第一弾モデルとして『ユーノス ロードスター』(NA型)の名称で発売。1998年にデビューした2代目(NB型)では『マツダ ロードスター』に変更、2005年にはプラットフォームを刷新した3代目(NC型)が発売。現行モデルである4代目(ND型)は2015年に登場している。すでに発売から7年が経過し、次期型「NE型」の開発がスタートした。
捉えたプロトタイプは、現行モデルのNDのボディを装着したテストミュールだ。ノーズに微妙なカモフラージュが施され、現行型のフェイスリフトを装っている。しかし騙されてはいけない。グリルをはじめ、ヘッドライト、スリムなコーナーエアインテークなどのパーツは一切変更されていない。
一方でよく見ると、リアフェンダーがワイド化されていることがわかる。後輪のすぐ前を走る配線はこれがフェイスリフトではなく、次期型の初期プロトタイプである可能性を示す。ワイド化される後輪のトラクションなどのデータを収集しているのだろう。次期型「NE」は、同じホイールベースを維持しながら、より広いスタンスを特長とするスポーツカーになると思われる。
マツダは次期型「NE」に、独自の後輪プラットフォームを採用し、ガソリンエンジンを搭載することをアナウンスしており、フルエレクトリック(BEV)化はない。「SPCCI」(火花点火制御圧縮着火)を実現した2.0リットル直列4気筒エンジン「SKYACTIV-X」に48Vマイルドハイブリッドを組み合わせ、さらにスーパーチャージャーを搭載する可能性もあるという。
ロードスター次期型のワールドプレミアは、2024年内が有力とみている。
Posted at 2022/09/19 20:09:13 | |
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2022年09月16日
4モーター1197psのエイリアン アリエル・ハイパーカー 最新BEVの試作車へ試乗 前編
他に例を見ない大胆なスタイリング
レーシングカーを運搬するトレーラーから、アリエルが開発を進める最新モデルが姿を表した。サイズは小さいが、そのデザインは他に例を見ない。
往年のグループCカーのように丸いコクピットにはガルウイング・ドアが備わり、その周囲を無数のフィンが取り囲んでいる。後ろ姿はジェット戦闘機のようでもある。
見る角度によっては、少々やりすぎなほど大胆。細部までしっかり作り込まれており、実際に走行も可能だという。筆者が知っているアリエルとは、まったくの別物だ。
このクルマは、新世代となるバッテリーEV(BEV)。「ハイパーカー」とアリエルは呼ぶ。英国編集部は部外者として世界で初めて、光栄にも運転させてもらう機会を得た。
まだ朝霧が残る火曜日の早朝、アリエルの本拠地があるグレートブリテン島の南西部、サマセットからほど近い飛行場に招かれた。第二次大戦以降、使われなくなってから約80年が経過しており、滑走路はだいぶ傷んでいる。
フェラーリやポルシェなどのスポーツカー・メーカーが新モデルを発表する場合、大抵はエアコンの効いたホールに大勢が呼ばれ、巨大スクリーンの前でプレゼンテーションが実施される。実際にステアリングホイールへ触れることはない。
だが、アリエルの方法は違う。今回のゲストは筆者たちのみ。手を伸ばせば触れられる距離に、実車が停まっている。
最高出力1197ps、最大トルク185.1kg-m
何という強烈なスタイリングだろう。マクラーレンSLRを、ギュッと縮小してディフォルメしたようにも見える。アリエルを率いるサイモン・サンダース氏によれば、複数の候補があったものの、大胆さが足りないと却下したらしい。
最終的に選ばれたデザインがコレ。空気力学的にも、しっかり煮詰めているという。
シャシーの構造はアリエル・アトムに近い。ボディに開けられた隙間から、タイヤと美しく加工されたダブルウイッシュボーン・サスペンションのアームがチラ見えする。サイズやプロポーションは、より馴染みのあるクルマ的ではある。
最高出力1197ps、最大トルク185.1kg-mを彼らは主張する。その数字にふさわしい、エイリアン的な存在感だ。
本格的なボディをまとう量産車は、アリエルでは初めて。試乗車はプロトタイプで、ボディパネルには成形の容易な3Dプリンターが用いられたが、量産版ではカーボンファイバーで仕上げられるという。ハイエンド市場へ合致するように。
アリエルなのだから、もっと内部構造が見えた方が良いと筆者は感じた。アトムのように、駆動用モーターやガスタービン・エンジンが動く様子を観察したい。その方が、このメーカーらしい。
ナンバーを取得できるクルマを目指し、問題は多く残っているという。クラッシュテストや風洞実験、排気ガスの測定などが控えている。フレームが露出しないボディだとしても、ここまで複雑な造形は認可を得るのも大変そうだ。
レンジエクステンダー用ガスタービン搭載
キャビン後方のシルエットは、フォルクスワーゲン・ビートルっぽくもある。情報を知らなければ、小さなV8エンジンがフロントに隠れていると聞いても、疑問は感じないかもしれない。
実際のところ、このハイパーカーに積まれているのは1基299psを発揮する駆動用モーター。タイヤそれぞれに、合計4基が搭載されている。駆動用バッテリーは62kWhの容量で、フロアの下に敷き詰められている。
発生する熱を放出するため、冷却システムはかなり複雑なものだという。リア側には電動ファンが並ぶ。その中央には、ロケットブースターのような排気口も。
「これはレンジエクステンダー用のガスタービン・エンジンです。しかし、残念ながら今回は動かせません。サプライヤー側が仕上がりに納得しておらず、機能させないように頼まれています」
「実際に動かすと、サウンドはジェットエンジンのようですよ。このスタイリングが正当化されると考えています」。とサンダースは笑顔で説明するが、今回はその言葉を信じるしかない。
これまでは、パイプフレームむき出しがアリエルの定番だったから、ドアを開くことに不自然さがある。シートはレザー仕立てで快適。シートベルトは一般的な3点式で、フロントやサイドのガラスもちゃんとある。
スポーツカーとして、従来のアトムより完成度は高い。日常的な乗りやすさも引き上げられたと、サンダースは自信を見せる。
この続きは後編にて。
4モーター1197psのエイリアン アリエル・ハイパーカー 最新BEVの試作車へ試乗 後編
4基の駆動用モーターが放つノイズ
アリエル・ハイパーカーのサイドシルは広いものの、低く乗り越えやすい。ガスタービン・エンジンが高い位置にあり、リアガラスは存在しない。後方視界はサイドミラー頼りだが、前方の視界は素晴らしい。
インテリアは、完成前のプロトタイプとはいえ、質実剛健的なデザインで美しい。量産仕様では素材の質感が改められ、さらに魅力的になるそうだ。レンジエクステンダーの起動スイッチは、ミサイルの発射ボタンのようだった。
飛行機のコックピット的に、ルーフ側にコンソールパネルがある。手を伸ばしドライブを選択すれば、準備完了。アクセルペダルを徐々に傾けると、静かにハイパーカーが発進した。
シャシーには、まだ防音材が備わらない。ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2の巻き上げる小石が、アルミ製のタブシャシーに当たる。
前後左右から、合計4基の駆動用モーターが放つノイズが響いてくる。ちなみに、2基の後輪駆動版も予定されている。BEVとして悪くない音だから、量産版にも残って欲しい。人工的なサウンドチューニングは必要ないように思う。
車外には、クルマの接近を知らせる低いハミングのような音が再生されるが、車内ではほとんど聞こえない。モーターのローターが発する悲鳴のような高音と、高圧電流が流れるシステムの電気的な唸りが、速度の上昇とともに大きくなる。
ドリフト・モード付きのドライブモード
静止からの加速は、1197psという最高出力から想像するほど野蛮ではない。アクセルペダルの操作に対する、駆動用モーターの調律が穏やかなためだ。
乗り心地は若干硬め。ステアリングホイールは重く、安定感がある。レシオはロックトゥロックが3回転と、クイックではない。開発技術者のトム・マクラーレン氏によれば、あくまでも現在は仮の設定だそうだ。
「まだチューニングには殆ど時間を割けていません。ダイナミックな性格付けにしたいと考えているので、サスペンション・スプリングやダンパー、ステアリングのレシオなどは、これから徐々に詰めていく予定です」
ドライブモードとして、エコとスポーツ、シリアス、ファンという4種類が用意されていた。最後のファンは、いい換えればドリフト・モードだ。デルタ・コスワース社によるシステムを実装するが、これも開発段階とのこと。
駆動用モーターの制御には、トルクベクタリング機能も加えられる予定。スポーツ・モードを選ぶと、最高出力の80%まで引き出せるようになる。というわけで、このハイパーカーの実力を確かめられる段階にはまだない。
ブガッティ・ヴェイロンを超える加速力
少なくともプロトタイプでは、駆動用モーターは回転開始からフルパワーを発揮するまで1秒ほど掛かる様子。静止状態でアクセルペダルを踏み込むと、初動の勢いの次に、65km/h前後で第2のパワーの波が襲ってくる。
恐らく、トラクションコントロールが低速域でトルクを抑制しているためだろう。試乗した古い滑走路の路面は良くなかった。
グリップ力が高まると、あっという間に160km/h以上へ急加速する。シートへ背中を押し付ける、凄まじい勢いで。
アリエルの技術者によれば、0-161km/h加速を5秒以下でこなすという。ブガッティ・ヴェイロンを超える加速力といえるが、今回の体験の限り、大げさな主張ではないようだ。
カント角のないコーナーで操縦性を確かめてみたが、シャシーの能力は上澄み程度しか味わえなかった。それでも、グリップ力だけでなく横方向の姿勢制御、操縦性のバランスなどは感心するほど高いといえる。
コーナーの進入時にフロント側へ荷重を移せば、テールスライドへ持ち込むことも難しくない。アクセルペダルを緩めるとフロント側に回生ブレーキが掛かり、リア側の自由度が高まる。
カーボン・ポジティブの工場で生産
アリエル・ハイパーカーの運転は、プロトタイプでも間違いなく楽しい。完成したクルマへ試乗できるまで、これから2年ほどの開発期間が必要らしいが、その時が待ち遠しい。
それまでに、ハイパーカー用の新しい工場も竣工する予定。カーボン・ニュートラルではなく、カーボン・ポジティブ、実質的にはCO2を回収できる施設になるとのこと。
BEV化が迫るなかで、画期的な変革が生じようとしている。英国の小さなアリエルは、同規模のメーカーが追従すべき新スタンダードを生み出そうとしている。
21世紀が始まって20年が経過した。次の20年は、これまで以上に印象的なものになるのかもしれない。アリエル・ハイパーカーへの試乗で、素晴らしい時代が始まるような気がした。
アリエル・ハイパーカー4WD プロトタイプのスペック
英国価格:100万ポンド(約1億6500万円)以下(予定)
全長:4298mm
全幅:2152mm(ドアミラー含む)
全高:1354mm
最高速度:249km/h(予想)
0-100km/h加速:2.09秒
航続距離:−
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:1685kg
パワートレイン:クワッド電気モーター+ガスタービン・エンジン
バッテリー:62.0kWh
急速充電能力:−
最高出力:1197ps
最大トルク:185.1kg-m
ギアボックス:−
Posted at 2022/09/16 22:28:57 | |
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自動車業界あれこれ | 日記
2022年09月15日
水樹奈々さんがF1日本グランプリの国歌独唱担当に 「全力で想いを込めて歌わせていただきます!」
2022年9月15日 発表
■ 「全力で想いを込めて歌わせていただきます!」と水樹奈々さん
鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)は9月15日、「2022 FIA F1 世界選手権シリーズ Honda 日本グランプリレース」の決勝レース(10月9日開催)直前に行なう国歌独唱を、水樹奈々(みずき なな)さんに決定したと発表した。
水樹奈々さんは、声優として「ハートキャッチプリキュア!」「NARUTO -ナルト」など多数の人気作に出演する中、歌手としてもアルバム・シングル共に声優初のオリコン1位を獲得。圧倒的なライブパフォーマンスに定評があり、東京ドーム公演をはじめ、阪神甲子園球場や横浜スタジアムなど数々の巨大会場や海外での公演を成功させてきた1人。2022年7月には、約2年半ぶりとなるアルバム「DELIGHTED REVIVER」をリリースしたばかり。
今回の決定に水樹奈々さんは「3年ぶりのF1日本グランプリ開催という特別な機会に、国歌独唱という大役をいただき、喜びと緊張で震えております。父をはじめ、私の周りにはモータースポーツを愛する人が多く、私もその影響を受けカートライセンスを取得するなど、その魅力に惹きつけられて止まないファンの1人です。素晴らしいレースになりますよう、全力で想いを込めて歌わせていただきます!」とコメントを寄せている。
F1日本GP、”水樹奈々”が国歌独唱を担当! 3年ぶり開催に紅白出場の人気歌手・声優を起用
鈴鹿サーキットは10月7~9日に開催予定のF1日本GPの決勝レース前に行なわれる国歌独唱を、水樹奈々が務めると発表した。
F1日本GPは2019年の開催を最後に、新型コロナウイルスのパンデミックの影響から2年連続で開催が中止。2022年は3年ぶりの開催が予定されている。
決勝レース開始前には各国の歌手らによる国歌斉唱が行なわれるが、2022年の日本GPでは、水樹奈々が務めることが9月15日に発表された。
水樹奈々は声優として「ハートキャッチプリキュア!」「NARUTO -ナルト」など数多くの人気作品に出演する中、歌手としても活動。アルバム・シングル共に、声優として初のオリコン1位を獲得している。
2009年には声優として初めてNHKの紅白歌合戦に出場するなど、話題となった。2022年7月には約2年半ぶりのアルバムとなる『DELIGHTED REVIVER』をリリース。精力的な活動を続けている。
今回、F1日本GPでの国歌斉唱を務める事となった水樹は、次のようにコメントを寄せた。
「3年ぶりのF1日本GP開催という特別な機会に、国歌独唱という大役をいただき、喜びと緊張で震えております」
「父をはじめ、私の周りにはモータースポーツを愛する人が多く、私もその影響を受けカートライセンスを取得するなど、その魅力に惹きつけられて止まないファンのひとりです」
「素晴らしいレースになりますよう、全力で想いを込めて歌わせていただきます!」
F1日本グランプリで、人気声優・歌手の水樹奈々による国歌独唱が決定「全力で歌わせていただきます!」
9月15日、三重県の鈴鹿サーキットは、2022年10月7~9日に同地で開催されるF1第18戦『Honda 日本グランプリレース』での国歌独唱を、人気声優・歌手の水樹奈々さんが務めると発表した。
2019年以来、3年ぶりに日本に帰ってくるF1グランプリの決勝レース直前に行われる国歌独唱。この舞台に声優、歌手、そしてナレーターとして活躍する水樹さんが立つことが決まった。
水樹さんは声優として『ハートキャッチプリキュア!』や『NARUTO -ナルト』など多数の人気作に出演。また、歌手としてもアルバム・シングルともにに声優初のオリコンランキング1位を獲得するなど人気を博す。
その高い歌唱力から、圧倒的なライブパフォーマンスに定評があり、東京ドーム公演をはじめ、阪神甲子園球場や横浜スタジアムなど数々の巨大会場や海外での公演も成功させてきた実績を持つ。今年7月には、約2年半ぶりとなるアルバム『DELIGHTED REVIVER』をリリースした。
そんな水樹さんはF1日本グランプリでの国歌独唱が決まったことを受け、喜びと緊張で震えていますとのコメントを発表。さらに、自身もカートライセンスを所持していることを挙げ、モータースポーツファンのひとりであることを明かした。水樹さんのコメント全文は以下のとおりだ。
「3年ぶりのF1日本グランプリ開催という特別な機会に、国歌独唱という大役をいただき、喜びと緊張で震えております」
「父をはじめ、私の周りにはモータースポーツを愛する人が多く、私もその影響を受けカートライセンスを取得するなど、その魅力に惹きつけられて止まないファンのひとりです」
「素晴らしいレースになりますよう、全力で想いを込めて歌わせていただきます!」
Posted at 2022/09/15 22:35:33 | |
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