ル・マンと言えば1991年…

ル・マンと聞くとどうしても1991年の第59回大会で、マツダ787Bが総合優勝をしたことを真っ先に思い出す。
　これは僕が「どっちかというと」マツダ贔屓だからということだけではない。実はこの年の24時間レースの日、僕は最初に就職した会社からの転職活動で面接があり、有給を取得して上京していたのだ。横浜の実家に寄ってチラリと放送を見たとき、マツダ787Bはそれなりの位置を走っていた。
　夕方、当時勤めていた会社の寮に戻る途中で、面接先から電話がなかったかと実家に確認の電話を入れると弟が出て、そう言う電話はなかった事と同時に、やや興奮した声でマツダがトップを走っている事を教えてくれた。
　面接の結果について電話がないことは気にならないでもなかったが、マツダの快挙を聞くにつけ「これなら自分のほうも大丈夫なんじゃないか」と根拠もなく思えてきたものだ。

　結局マツダは総合優勝を果たし、僕の転職活動もそれなりに上手くいっていまの勤め先に転がり込むに至ったわけであるが、たまたまとは言え自分の人生のイベントと重なった出来事だけに印象がより深いのも必然だろう。

　そのル・マン24時間レースを、今年はテレビでは見られなかった。CSだかBSだかの衛星放送と契約していれば別のようだが、地上波放送（普通のテレビ）ではやっていないのだ。
聞くところによると、2003年で放送権契約が切れて、以後の契約を更新しなかったからだと言う。自動車モノと言うのは、テレビ番組にしても大して視聴率が取れず、権料とのバランスで見ると大赤字になるのだそうで、F1を放送している局の社内でも本音では「やめられるものならやめたい」と言う空気があるのだとか。聞いた話なのでどこまで本当か知らないけれども。

　そう言う、商売の理屈はともかくとして今年のル・マンではプライベーターの日本チーム（と言っていいのだろうな）が総合優勝を果たした由。アウディR8を使っていたそうだから、プライベーターと言ってもセミ・ワークスに近いのかな？と思わないでもないが、快挙は快挙である。
（改めて確認してみたところ、このチームのフルネームは「アウディスポーツ・ジャパン・チームゴウ」だそうで、事実上セミ・ワークスそのもののようだ）
　しかも新聞（ウェブ版）記事を読むと優勝した「チーム郷」は今年を最後にル・マンから撤退を決めていた由。まるで91年のマツダみたいだ。それに、アウディR8は…ミケーレ・アルボレートがテスト中に事故に遭って亡くなったのがこの車だったはず。
　色んなドラマが詰まっていた今年のレースが見られなかったのは、ちょっと残念だった。
それにしても、民放が権利を手放すとパクっと食いつく、日本唯一の全国放送局はなんで、このイベントには食指を動かさなかったんだろう。やっぱり費用対効果が見合わないのだろうか。