1代限りで販売終了となったスバルの名車5選
"一度乗ったらやめられない"と一部ファンにこよなく愛されるスバル車。そんな車を開発するスバルが、過去に生産していて1代限りで販売終了になってしまった車を5台紹介します。いったいどのような車があるのでしょうか。
(1)パーソナル軽クーペ「R1」
「R1」は、5ドアハッチバックとしてデビューしたR2に遅れること2年後の2005年に発売された軽自動車です。
ボディタイプは、3ドアのハッチバッククーペで、車体サイズは全長3,285mm×全幅1,475mm×全高1,510mmで非常にコンパクト。R2と比較して、全長110mm、ホイールベースで160mm短いボディの乗車定員は4名。ですが、実質的には2+2といったほうがしっくりくるレイアウトでした。
当初、エンジンはNAの660cc直列4気筒のみでしたが、2005年11月はスーパーチャージャー付きを追加。駆動方式は、FFと4WDが用意されていました。
特徴的なデザインは、発売年にグッドデザイン賞を受賞しています。
(2)7人乗りミニバンとして誕生した「エクシーガ」
2008年に販売が開始された7人乗りミニバンが「エクシーガ」です。エンジンや駆動方式は、スバルの王道でもある水平対向AWD。3代目インプレッサや2代目フォレスターと同じ、SIシャシーコンセプトによって生産されています。
デビュー直後のエンジンラインナップは、NAの2.0L水平対向4気筒と2.0Lターボの2種類でしたが、翌年には2.5LのEJ25型水平対向4気筒SOHCを追加し、3種類になりました。なお2.5Lエンジンは、2012年のマイナーチェンジで、同じ2.5Lながら、DOHCとなったFB25型水平対向4気筒にスイッチされています。
2015年になるとエクシーガは、ミニバンからクロスオーバーSUVにコンセプトを変更。それ以降「エクシーガクロスオーバー7」と名乗ります。しかし基本シャシーやエンジンなどに変更はなく、実質、エクシーガの系譜にあるモデルでした。
エクシーガクロスオーバー7は、2018年3月に販売終了。エクシーガとしては、1世代でラインナップから消滅することになりました。
(3)特徴的なウェッジシェイプが現在でも美しい「アルシオーネ」
2ドアクーペの乗用車で1985年に発売された「アルシオーネ」。リトラクタブルライトにウェッジシェイプという特徴的なスタリングを手がけたのは、スバル社員の故碇穹一氏です。
エンジンは、当初、1.8Lの水平対向4気筒のみでしたが、販売不振を脱するため、1987年に2.7Lの水平対向6気筒が追加されました。この2.7Lエンジンを積んだVXおよび1.8LのVRターボには、オートセルフ・レベリングつきエアサスペンションE-PS(エレクトロ・ニューマティック・サスペンション)が装備されたこともトピックです。
ハリウッド映画『ビック』に登場させるなど、アメリカでのプロモーションを大々的に行ったアルシオーネでしたが、売れ行きは期待していたほど伸びず、1991年にはジウジアーロがデザインを手がけたアルシオーネSVXにその座を譲りました。
(4)待ってろポルシェ「アルシオーネSVX」
フロントに、3.3Lの水平対向6気筒エンジンを搭載したフラッグシップクーペが「アルシオーネSVX」です。
1991年の発売で、キャノピーのようなコクピットを持つボディのデザインは、イタルデザインのジョルジェット・ジウジアーロ。駆動方式にVTD-4WD(不等&可変トルク配分電子制御4WD)の駆動方式と、電子制御付き4WSなど、当時、最新の技術が投入されていました。
デビュー前、水平対向の6気筒エンジンに4WDの組み合わせは、ポルシェ911の4WDモデルをちょうど前後逆にしたイメージもあり、多くの自動車ファンが登場を心待ちにしてたのですが、ミッションは4ATのみ、エンジンの最高出力も240psと平凡な数値で、期待はずれに終わりました。
ちなみに、国内ではアルシオーネの後継として発売された「アルシオーネSVX」ですが、海外では単に「SVX」で、アルシオーネとは別の車種として販売されていました。
モータースポーツで活躍した軽「ヴィヴィオ」
スバリストたちが愛してやまない軽自動車といえば「ヴィヴィオ」です。1992年にレックスの後継モデルとして発売されました。
四輪独立懸架のストラット式サスペンションや、上級グレードに搭載されたEN07型660cc直4SOHCスーパーチャージャーエンジンなど、クルマ本来の性能にこだわって設計されています。なかでも、スバルのモータースポーツベースグレードに共通の名前を持つRX-RAは、フルタイム4WDとされ、ラリーやジムカーナなどで活躍しました。
数々のマイナーチェンジやグレード追加などを繰り返しながら、生産が続けられていましたが、軽自動車のトレンドがトールワゴンに移行したため、1998年に生産終了となりました。
普通車に負けない強い印象を残した軽自動車がある一方で、スタイリングとコンセプトでは欧米のメーカーにも引けを取らないフラッグシップを生産するなど、振り幅の大きいスバル。
エンジニアのこだわりが垣間見れるクルマ作りが、"スバリスト"というファンを生んでいる理由なのかもしれませんね。
ステラではなくR1でR1eを市販化出来ていたら三菱のiとの関係ももう少し違ったのかな~なんて思うけど結局受けないんだろうな…トヨタでiQ出してもイマイチな訳だし、スズキでツインとかも…
ねぇ
アルシオーネとアルシオーネSVXは後継って解釈でも良かったんじゃね?
エクシーガはクロスオーバー7を合わせた時のモデルの長さは頑張ったと思うけどね…3代目インプレッサの頃に登場して5代目インプレッサが登場するまでいた訳だからさ
ヴィヴィオはプレオへ引き継いだ時に他メーカーとやり合う為にトールワゴンタイプになったのは販売的には良かったのかな?
「STI名車列伝」インプレッサWRX-STi(GC系)はココが神ポイントだった
ラリーストを目指す筆者が諦めた夢のマシン、 それがインプレッサ初の「STiバージョン」
1994年1月に発売された初代SUBARU・インプレッサのSTiバージョン(GC8)は、月産100台限定の受注生産。「Handcrafted & Tuned by STi」の専用ステッカーが付いた伝説のマシンながら、セダンで30.3万円、ワゴンで36.3万円アップと破格のプライスだった。 そんなSTi初のバージョンを、生粋のスバリスト「マリオ高野」が振り返る。
SUBARU・インプレッサWRX(GC8)に初めて「STiバージョン」が設定された時のことはよく覚えている。筆者がGC8を購入したのが1994年の1月で、ローンが通りそうだからあとはハンコを押すだけ、というタイミングでこれが登場したのだ。 エンジンだけでも鍛造ピストンや軽量ハイドロリックラッシュアジャスター、専用ECUが付いてノーマルプラス10psの250ps。しかもバランス取り済みと垂涎の内容だった。 さらには高出力タービンに「フジツボ」製のマフラー、大型リアウイング、エクセーヌ張りのフロントシート、クイックシフト、タワーバー、専用タイヤまで付くという、まさに超ウルトラバリュープライス。普通に考えたら選ばない理由はなく、即決あるのみだったのだが、問題は”改造車扱いとなるためにJAF公認競技には出場不可(当時)”ということ。
GC8に乗り換え後は本気でラリーに出るつもりだったので、コレを買うとラリーストへの道が閉ざされてしまうとなればNG。自分の輝かしい将来が閉ざされてしまっては元も子もないと、断腸の思いで購入の候補外となった。 ラリーストになるためGC8を買うのならば、さらに走りに特化したグレード”RA”にすべきところが、”黒の標準車のABS付きならすぐ納車できますよ”と、長期在庫車のA型をススメられ(当時の心はブレブレ)、1秒でも早くGC8が欲しかったことから、飛びついたのがいまも所有するGC8だ。
その後わずか3カ月ほどでSTI車もJAFの登録車両として承認され、普通に競技に出られるようになって愕然。標準のGC8でも死ぬほど楽しかったが、特徴的なリアウイングを見るたびに、買い逃したことがいまだに悔やまれる。 ラリーストを目指すがゆえに購入しなかったという人は他にも居るはずです(笑)。
“RA”ではないのにI/Cウォータースプレイを装備。 最大トルクの発生回転数は3500rpmと、標準車よりかなり低かったと記憶しております。
「神ポイント」 ●わずか30万円高で夢のようなチューニング内容 ●STiバージョンの知名度を上げた功績 ●ワゴンまでもが30psもアップしていた
(TEXT:マリオ高野) (リポート:スバルマガジン編集部)
「STI名車列伝」じつは3列目の乗り心地が抜群によかった奇跡のミニバン「エクシーガtS」
今からでも購入候補に挙げたくなる傑作車
2009年に発売された『エクシーガ2.0GT tuned by STI』に続く、STIの7シータースポーツ第2弾『エクシーガtS』は、ミニバンにとって真に正しい乗り心地とは何かを教えてくれる一台だった。スバルのモータースポーツ部門であるSTIが与えたエッセンスについて振り返ってみたい。
【エクシーガtS】
ついにスバル・クロスオーバー7の生産も終了し、”エクシーガ・ロス”にさいなまれる日々を過ごすスバリスト諸兄も多いことだろう。アメリカで出た7シーター車のアセントを日本に! との声もあるが、仮に導入されてもランクル200級のサイズはデカすぎて奥さんが運転できないなど、エクシーガユーザーの受け皿にはならない。エクシーガユーザー、および7人乗り車を所望するスバリストたちはどうすればいいのか!?皮肉にも、我らがエクシーガの終焉を待っていたかのようにステップワゴンの『モデューロ』やノアヴォクシーの『GR』、セレナの『ライダー』などが台頭し、他銘のスポーツ仕立てのミニバン市場が盛り上がっている(少なくともメーカーは盛り上げようとしている)のが悔しいところだ。そこで思い出していおきたいのが『エクシーガtS』。2012年にアプライドでエクシーガがE型へ移行したタイミングで設定され、「ブレンボ」ブレーキや18インチの『ポテンザRE050A』など、前作チューンドバイSTIよりも硬派な武装を提げていた。SUBARU車としては最重量級の1620kgという車重をあまり気にせずブレーキが踏み倒せるとあって、スポーツドライブ時の精神的限界が大幅に向上。エクシーガ本来の7シーター車としては極めて高次元な運動性能を満喫できたことが記憶に新しい。
思えばエクシーガは走りの素性が秀逸ゆえに、熱い走りを望むユーザーは決して多いとはいえないまでも、そのホット度は高く、意外とハードなチューニングが施されることが少なくなかった。SUBARUマガジンでお馴染みのライター山本シンヤさんもtSに先駆けて自らの愛車エクシーガをSTIバージョンのような雰囲気に仕立てていたが、そこまでイジリたくなるほどの魅力に溢れていたクルマなのだ。
そんなエクシーガだが、tSは、STIの開発陣が全座席の乗り心地を入念にテストしてチューニングした成果として、運転席と同じかそれ以上に3列目シートの居心地が秀逸であることを改めて強調しておきたい。運転して楽しいミニバンは少し増えたが、スポーツ走行時でも3列目の快適性が保たれるのは、筆者の知る限りエクシーガtSだけだ。
無駄な動きを排してサスペンションの動きを最適化してやれば、結果的に子供に優しい環境となる。その考えを具現化。「神ポイント」●7人乗りでもブレンボ&ポテンザで硬派に武装●STIの職人が徹底的に煮詰めた3列目シートの快適性●多少のスポーツ走行なら子供が酔わない
(TEXT:マリオ高野)(リポート:スバルマガジン編集部)
「SUBARUマニア各付け検定」あなたのスバル崇拝度はどれくらい?<機能編>
SUBARU好き「いもっち」が出題する難問、あなたの”スバオタ”番付けはいかほど?
SUBARUが大好きなSUBARUフリーク。そんなSUBARUフリークのことを総称する”スバオタ”。 そんな”スバオタ”仲間に入りたいというアナタに送る「マニア各付け検定」。さぁ、あなたは何問クリアできますか~?
第1問【BRZに流用できる現行型のスバル純正ホイールは?】
難解度★★★☆☆
SUBARU車のなかでは少数派となってきたH-P.C.D.が5-100サイズの純正ホイール。 BRZではインセット48となっており、現行モデルではフォレスターのサイズと同じで流用が可能。旧モデルであれば先代XVや先代アウトバックなども流用できる。スポーツカーにSUV用のホイールを装着してワイルドな印象を与えるのもアリです。
正解:現行型フォレスター
第2問【BPレガシィ(前期)のリアフォグはなぜ全点灯しない?】
難解度★★☆☆☆
LEDタイプのリアフォグランプを採用した、BP型レガシィ。左側のバックランプとのレンズ面積を同一としたデザインだが、ストップランプとの距離を確保するために右側2列はダミーとなっている。ちなみに後期型ではデザインが変更されダミー部分はなくなった。
正解:道路運送車両法によりストップランプとの距離を確保するため
第3問【アセントに採用されたスバル初の快適装備は?】
難解度★★★★☆
これまでSUBARUのクルマでシート関連の快適装備といえば、パワーシートやシートヒーターがあるが、じつは高級車を中心に採用が拡大されているシートベンチレーションを初採用。レザーシートでも夏場の蒸れから解放してくれる。
正解:シートベンチレーション
第4問【SUBARU車で不等長エキマニを最後に採用したモデルは?】
難解度★☆☆☆☆
ひと昔前まで、SUBARUの代名詞とまでいわれた不等長エキマニの奏でるボクサーサウンド。 2003年に4代目レガシィが登場すると各モデルが等長化されていき、最後の不等長エキマニ採用モデルは、3代目インプレッサWRXだった。しかも、EJ25搭載のAT専用モデル・インプレッサWRX STI A-Lineである。
正解:インプレッサWRX STI A-Line
第5問【A型レオーネの4WD・AT車の「AUTO 4WD」。ブレーキング時やキックダウン時に4WDになるシステムだが、さらにもうひとつ4WDになる条件がある。それは?】
難解度★☆☆☆☆
制動、加速、悪天候時にのみ4WDとなることで、パートタイム4WDのデメリットであるタイトコーナーブレーキング現象を最小限に抑えたシステム。制動時はブレーキスイッチ、加速時はキックダウンスイッチ、そして悪天候時に作動させるワイパースイッチにも連動していた。 原始的な方法だが、確実にその条件で4WDにさせるアイディア機能である。
正解:ワイパー作動時
第6門【ウインカーのワンタッチ機能を初搭載したSUBARU車は?】
難解度★★★★★
レーンチェンジャー付きフラッシャーという名前でジャスティに装備。その後SUBARU車から設定が消えるが5代目レガシィのマイナーチェンジ(D型)で再び登場。 現行モデルではマイナーチェンジ後のBRZにも追加装備されたことで、サンバー以外の全モデルに採用されている。
正解:ジャスティ
第7問【アルシオーネSVX S4で、3色のボディカラーのうちライトシルバーメタリックだけに装備されるアイテムは?】
難解度★★☆☆☆
ブライトグリーンマイカとボルドーレッドマイカはブロンズガラスだったが、ライトシルバーメタリックのみ車体色との兼ね合いでUVカットガラスが採用された。ちなみにインテリアカラーもシルバーのみグレーとなる。
正解:UVカットガラス
第8問【3代目までのレガシィや2代目までのインプレッサ/フォレスターに装着されたエアクリーナーと同じモノを採用していた自動車メーカーは?】
難解度★☆☆☆☆
’90年代まで、SUBARUと提携関係にあった日産自動車。 サプライヤーも同じメーカーだった時期があり、エアクリーナーはスカイラインやセドリックといった日産の主要モデルと同一形状。よって、NISMOのエアクリーナーも装着できたわけだ。さらに、SUBARUでは旧タイプとなるエアクリーナーも、日産ではE52エルグランドやC26セレナといった最近のモデルも同じ形状を採用。サードパーティでの取り扱いはしばらく心配の必要がないだろう。
正解:日産
第9問【S208に装備されているインタークーラーウオータースプレーのタンク容量は?】
難解度★★☆☆☆
タンク自体は、GRB型WRX STI spec Cと同じもので、容量も変更なし。 自動噴射から手動式へ変更されたことで、「ここ一発というときに水がない…」ということがなくなるとのこと。ちなみに歴代モデルの最大サイズは、2代目インプレッサWRX STI spec C用。その容量は、なんと12ℓだった。
正解:3.7ℓ
第10問【新世代BOXERエンジンと4速ATを組み合わせた、唯一のモデルは?】
難解度★★★★★
SUBARU車のなかで最も早く新世代BOXERエンジン「FB型」へスイッチした3代目フォレスター。 2010年のマイナーチェンジで、FB20をNAモデルへ搭載。ただし、組み合わされるトランスミッションは従来と同じ4速ATであった。現行モデルはBRZを除き2ペダル車はすべてCVTとなっているが、4速ATと新世代BOXERとの組み合わせは、いまとなっては貴重な存在だった。
正解:3代目フォレスターNAモデル(SHJ型)
第11問【SUBARU車で唯一車内にパワステモーターを備えるモデルは?】
難解度★★★★☆
BRZの場合、ほかのSUBARU車がパワステモーターを装着する部分にエンジンが搭載されており、モーターを設置する場所がなく、ステアリングの近くに設置するコラムアシスト式と呼ばれる電動パワーステアリングを採用する。 極限までエンジンの搭載位置を低く、そしてキャビン側へ寄せた超低重心パッケージならではの発想だ。
正解:BRZ
第12問【D型に進化したWRX S4とレヴォーグのフレキシブルタワーバーが変更された理由は?】
難解度★★☆☆☆
D型に進化したWRX S4、レヴォーグでは「ツーリングアシスト」など、さまざまな改良が施された。 これにともない、エンジンルーム内のハーネスの取り回しなども変更。従来のフレキシブルタワーバーではハーネスと干渉するため、その形状が変更された。性能は変わりはない。
正解:エンジンルームのハーネス取り回しが変更のため
出題者:いもっち【井元貴幸】 スバオタから注目される「SUBARUマガジン」誌をはじめ、雑誌やウェブメディア、#スバコミなどで執筆活動を行なう傍ら、SUBARUモータースポーツの応援プロジェクトリーダーに就任。 愛車はB型レヴォーグ 2.0GT-Sアイサイト。
(リポート:スバルマガジン編集部)
なぜ、スバルのシンメトリカルAWDが理想と言われるのか
水平対向エンジンに、4WDを組み合わせるスバル。この構造は「シンメトリカルAWD」と呼ばれており、全世界に多くのファンをかかえています。そのシンメトリカルAWDの歴史と、メリットを紹介しましょう。文・立花義人
スバルのAWDはこうして生まれた
「スバルといえば4WD」。そんなイメージが世間に広まったのは、1970年代にさかのぼります。
当時、四輪駆動車といえば、”オフロードを走るジープのような特殊な自動車”ばかりで、乗用車と4WDを結びつける発想はありませんでした。
転機は1970年に訪れます。東北電力から宮城スバルに「ジープより快適で、年間を通して使用可能な、現場巡回用車両が欲しい」との要請がありました。
そこでスバル(当時の富士重工業)は、FFの1000バンに日産ブルーバード(510型)のリアアクスルをドッキングした四輪駆動車を製作しました。ちなみに、このときのエンジンは、バンよりもパワフルなff-1セダンの1,100ccでした。
その車両で、1971年の2月から東北地方の積雪地域において検証を行った結果、従来の乗用車とは比較にならないほどの走行性能と、ジープよりも優れた快適性が確認されました。これにより完成したモデルが「ff-11300Gバン4WD」で、8台が試作され、東北電力と長野県の白馬村役場などに納入。さらに、同年の東京モーターショーでお披露目されることになります。
スバルが小型車市場に参入した最初のクルマであるスバル1000(1966年)は、エンジン振動が少ないというメリットに着目し、水平対向エンジンを採用しました。そしてそのわずか5年後、水平対向エンジンに4WDという組み合わせの『シンメトリカルAWD』の原型が誕生しました。
しかしff-11300Gシリーズは、すでに新型車のレオーネに移行することが決定していたため、量産化は「レオーネエステートバン(1972年)」からになりました。
これにより4WDは、単に悪路走破性を高める機構ではなく、路面状況が変化しても快適に走れる装備として着目され、以降、他メーカーも4WDの乗用車を設定するようになります。
シンメトリカルAWDのメリット
水平対向エンジンは、シリンダーが水平に寝ており、それが左右一対で向かい合う形式です。この方式は、直列式やV型に比べるとエンジンの全高が低いのが特徴です。そしてエンジンを低い位置に搭載することで重心も低く、左右の重量バランスにも優れています。
スバル車はこのメリットを生かし、エンジンの中心部分に位置するクランクシャフト、そしてトランスミッションからリアデフに至るまで一直線上にパワートレーンを配置して、左右対称(シンメトリ)の重量配分を可能としています。
この重量配分によって、4輪のタイヤにバランス良く荷重をかけることができ、AWDによるメリットをより一層高めることが可能になっています。
スバルは低重心、かつ理想的な重量配分がもたらすこの恩恵を最大の強みと考え、シンメトリカルAWDと呼んでいます。
ほかの4WDシステムとどのように違うのか
ほとんどのFF車は、直列エンジンを横置きに搭載しています。FFであれば、駆動系のパーツも少なく合理的なレイアウトとなりますが、この方式を4WD化する場合、横向きの出力(クランクの回転方向は車両の進行方向と90度と異なる)を縦向きに変換するための機構が必要で、この方式は結果的に重量増と走行抵抗増につながり、燃費も悪くなります。
一方、一般的な縦置きエンジンは、ドライブトレーンを一直線上に配置できることに加え、FFの4WDに比べて、プロペラシャフトも短くできるため、駆動ロスを少なくすることができます。
さらに水平対向エンジンを採用するスバルでは、前述した左右重量バランスにも優れているなどのメリットがあります。
こうしてスバルは、伝統あるAWDを、悪路走破だけを目的とした機構ではなく、降雪や降雨、また高速走行時における走行安定性を実現させる機構として進化させてきたのです。
シンメトリカルAWDがもたらす走りの安定感は、スバルの世界的な高評価にもつながっています。このシステムが今後どのように熟成されていくのか、非常に楽しみですね。
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文・立花義人
フリーライター。5歳の頃に自動車図鑑で見たアルファロメオのデザインに衝撃を受け、以降クルマに魅了される。様々なクルマの個性を知りたいと考え、免許取得後国産・輸入車問わず20台以上を乗り継ぐ。車検整備を取り扱う企業に勤務していた際、メンテナンスや整備に関する技術や知識を学ぶ。趣味はドライブ、食べ歩き。現在の愛車はパサート・ヴァリアント。
Posted at 2018/06/08 20:30:49 | |
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富士重工 | 日記