2020年05月18日
カルディナGT-FOURの再来!? 170ps限定500台のカローラツーリング2000リミテッド降臨!!
トヨタは5月13日、カローラツーリングの特別仕様車「2000リミテッド」を限定500台で6月1日から発売すると発表した。価格は262万200円。
このカローラツーリング2000リミテッドは、国内のカローラシリーズで初めて2Lエンジンを搭載し、トランスミッションはダイレクトシフトCVTを組み合わせており、パドルシフトによってなんと10速のマニュアルシフトが可能だ。
さて、突如発表された、2Lエンジンを積んだカローラツーリング2000リミテッドはいかなるモデルなのか、解説していこう。
文/ベストカーWeb編集部
写真/トヨタ
【画像ギャラリー】GT-FOURの布石!? 最強の170ps、2Lエンジンを積んだカローラの詳細写真
カローラ史上最強170psの2L、直4エンジン搭載!
カローラ史上最強の170psを発生する2L、直4エンジンを搭載したカローラツーリング2000リミテッド。FFのみの設定
エクステリアは切削光輝+ブラック塗装の17インチアルミホイールやシルバーメタリック塗装のルーフレールなどを特別装備することにより、スタイリッシュさを際立たせている
カローラツーリングに設定された限定500台の2000リミテッドの目玉はなんといっても、TNGA思想に基づいて開発された2Lダイナミックフォースエンジンを日本のカローラシリーズとして初めて搭載したことだ。
カローラの歴史を辿っていくと、ディーゼルエンジンを除き、2Lエンジンが搭載されたのは、TRDが企画し、1994年10月に発売したカローラTRD2000があるが、それ以外は見あたらない。
ちなみにこのカローラTRD2000はベースの1.6L、直4(4AG型、160ps/16.5kgm)から、180ps/19.5kgmを発生する3S-G型2L、直4エンジンに換装されているものの、あくまでTRDが改造したクルマのため、厳密には今回のカローラツーリング2000リミテッドが史上最強のカローラといっていいだろう。
1994年10月に発売されたTRD2000(AE101カローラGT改)はTRDが企画したものでベースの4AG型1.6エンジンから2Lの3S-G型に換装。価格はベース車が172万6000円だったが335万円
170ps/20.6kgmというスペックに関しても、1997年4月に登場したAE111型カローラGTに搭載された4AG型1.6L、直4(165ps/16.5kgm)が、カローラに搭載されたガソリンエンジンの最強モデルだったが、今回のカローラ2000ツーリングリミテッドはこのエンジンを5ps/4.1kgm上回り、最強スペックとなった。
ここで気になるのはトヨタ最強の快速スポーツワゴンと言われたカルディナGT-FOURの存在。
2代目、3代目に搭載された3S-GTE型2L、直4ターボエンジンは260psで、2代目カルディナGT-Tに搭載された3S-GE型2L、直4エンジンも190psだから、さすがに適わないが、今回の2Lのカローラツーリングリミテッドはこうしたスポーツモデルへの展開を期待させるものだ。
2002年9月に登場した3代目カルディナGT-FOUR。3S-GTE型2L、直4ターボエンジンは260psを発生
カローラツーリング2000リミテッドに搭載されているエンジンの型式はM20A-FKS型で、マルチホールの直噴インジェクターやロングストローク化により燃焼を高速化、VVT-iE(電動連続可変バルブタイミング機構)を吸気側に採用してレスポンスを向上させたユニットとなっており、最大熱効率は実に40%に到達しているという。
カローラツーリング2000リミテッドに搭載される170ps/20.6kgmを発生する2L、直4エンジン
以下に現行カローラツーリングが搭載しているエンジンを列記しているが、2Lエンジンがいかに高出力なモデルなのか見ていただきたい。
■特別仕様車カローラツーリング2000リミテッド
2L、直4(M20A-FKS型)/最高出力:170ps/6600rpm、最大トルク:20.6kgm/4800rpm
■1.8Lハイブリッド
1.8、直4(2ZR-FXE型)/最高出力:98ps/5200rpm、最大トルク:14.5kgm/3600rpm+72ps/16.6kgm(モーター)
■1.8Lガソリン
1.8L、直4(2ZR-FAE型)/最高出力:140ps/6200rpm、最大トルク:17.3kgm/3900rpm
■1.2Lガソリンターボ
1.2L、直4ターボ(8NR-FTS型)/最高出力:116ps/5200~5600rpm、最大トルク:18.9kgm/1500~4000rpm
ダイレクトシフトCVTはパドルシフトで10段変速が可能
10速のマニュアルシフトが可能なパドルソフトを備えるダイレクトCVTを装備
この高効率エンジンに組み合わされるトランスミッションはパドルシフトで10速の変速シフトが可能なダイレクトシフトCVT(パドルシフト付き10速スポーツシーケンシャルシフトマチック)を採用。
従来のCVTに発進用ギヤを追加し、機械損失低減やワイドレンジ化、変速追従性向上を実現。ダイレクトでスムースな走りと優れた低燃費性能(従来比+6%)を両立している。
ちなみに、標準のカローラツーリングは1.8L、直4がスーパーCVT-i(7速スポーツシーケンシャルシフトマチック付き)、1.2L、直4ターボが6速iMTを組み合わせている。
見た目はまさに羊の皮を被った狼!
切削光輝+ブラック塗装の17インチアルミホイールや215/45R17タイヤ、シルバーメタリックのルーフレール以外は他のモデルとの見た目の差はない
エクステリアでは、切削光輝+ブラック塗装の17インチアルミホイールやシルバーメタリック塗装のルーフレールなどを特別装備して、スタイリッシュさを際立たせているが、他のモデルと大きく変わっておらず、派手さはない。大げさかもしれないが、羊の皮を被った狼的なモデルといえそうだ。
ボディカラーには、特別設定色の「レッドマイカメタリック」「ブルーメタリック」を含む計4色を設定している。
7インチのオプティトロンメーターや9インチのディスプレイオーディオ、レッド加飾、グレーのステッチなど派手さはないが随所にこだわりをみせる2000リミテッドのコクピット
インテリアでは、カローラ ツーリングの上級グレードに相当する装備に加え、フロントシートは、ホールド性を高めるとともに、表皮にはっ水加工を施した上級ファブリックスポーツシートを採用。
インストルメントパネルオーナメントやセンタークラスターなどにはレッド加飾を用いるほか、センターコンソールやドアアームレストにはグレーのステッチを効かせるなど、細部までこだわったデザインとした。
さらに、シートヒーター(運転席・助手席)、ステアリングヒーター、エアクリーンモニター、ナノイーを特別装備して快適性も向上。
そのほか、ブラック加飾を施した9インチのディスプレイオーディオや立体的に見えるオプティトロン3眼メーター+7インチTFTカラーマルチインフォメーションディスプレイ、カラーヘッドアップディスプレイといった先進的な装備も充実させた。
カローラツーリング2000リミテッドの価格は262万200円。ちなみに1.8Lガソリン車が201万3000~236万5000円、1.8Lハイブリッドが248万500~279万9500円、1.2Lターボが245万8500円。ハイブリッドの上級モデルより若干安い価格設定となっている。発売は6月1日から。早く試乗してみたいものだ。
フロントシートは、ホールド性を高めるとともに、表皮に撥水(はっすい)加工を施した上級ファブリックスポーツシートを採用
■カローラツーリング 特別仕様車2000リミテッド 主要諸元
●全長×全幅×全高:4495×1745×1460mm
●ホイールベース:2640mm
●車両重量:1370kg
●エンジン:直列4気筒DOHC
●排気量:1986cc
●最高出力:170ps/6600rpm 最大トルク:20.6kgm/4800rpm
●トランスミッション:ダイレクトシフトCVT(パドルシフト付き10速スポーツシーケンシャルシフト)
●フロント/リアサスペンション:マクファーソンストラット/ダブルウィッシュボーン
●タイヤサイズ:215/45R17
●WLTC複合燃費:16.6km/L、WLTC市街地燃費:12.2km/L、WLTC郊外燃費:16.8km/L、WLTC高速道路燃費:19.4km/L
●価格:262万200円
同時に2台の特別仕様車も発売!
カローラ特別仕様車G-X“PLUS”
カローラ特別仕様車G-X“PLUS”
カローラツーリング2000リミテッドが発表された同日の5月13日、トヨタはカローラ、カローラツーリングの特別仕様車「G-X“PLUS”」「HYBRID G-X“PLUS”」を設定して発売した。
G-X“PLUS”/HYBRID G-X“PLUS”は、カローラ、カローラツーリングの「G-X」をベースに、インテリジェントクリアランスソナー(パーキングサポートブレーキ[静止物])、バックガイドモニターなどの安全装備に加え、外からの視線にも配慮したUVカット機能付のプライバシーガラスを特別装備。
インテリアでは、メーターまわりやステアリングホイールなどにシルバー塗装を施し、レジスターノブをサテンメッキ加飾として上質感を付与した。
G-X“PLUS”の価格はカローラが197万2300円、カローラツーリングが204万9300円。HYBRID G-X“PLUS”の価格はカローラが243万9800円~263万7800円。
カローラ ツーリング特別仕様車G-X“PLUS”
カローラ ツーリング特別仕様車G-X“PLUS”
トヨタ・カローラに装備充実の特別仕様車”G-X PLUS”を設定 ツーリングは2Lガソリンも500台限定発売
2リッターガソリンは新型カローラとして日本市場初投入
トヨタ自動車は、カローラならびにカローラツーリングに、特別仕様車「G-X”PLUS”」、「HYBRID G-X”PLUS”」を設定した。さらに、カローラツーリングには2リッターガソリンエンジンを搭載した”2000 Limited”を500台限定で発売する。G-X”PLUS”系は5月13日より発売、2000 Limitedは6月1日(月)より発売される。
注目の2リッターガソリンエンジンを搭載する2000 Limitedは、TNGA思想に基づいて開発されたダイナミックフォースエンジン。カローラシリーズとして日本市場に初めて投入される。パドルシフト付き10速スポーツシーケンシャルシフトマチック「Direct Shift-CVT」を組み合わせたことで、力強い走りと燃費の良さを両立している(WLTCモード燃費は16.6km/L)。
エクステリはは切削光輝&ブラック塗装の17インチアルミホイールや、シルバーメタリック塗装のルーフレールなどを特別装備。スタイリッシュさを際立たせたデザインに仕立てられている。ボディカラーは特別設定色のレッドマイカメタリック、ブルーメタリックを含む全4色を用意。
インテリアは、カローラツーリングの上級グレードを基本とし、フロントシートはホールド性を高めた形状を採用。さらに、表皮には撥水加工を施した特別な上級ファブリックスポーツシートとなっている。
インストルメントパネルオーナメントやセンタークラスターにはレッド加飾を施した。さらに、センターコンソールやドアアームレストにはグレーのステッチをあしらったことで、カタログモデルとは異なる雰囲気になっている。
また、フロントシートヒーターやステアリングヒーター、エアクリーンモニターやナノイーを特別装備。さらに、ブラック加飾を施した9インチディスプレイオーディオ、立体的に見えるオプティトロン3眼メーター+7インチTFTカラーマルチインフォメーションディスプレイ、カラーヘッドアップディスプレ特別装備採用し、機能性も充実させた。
もう一方のG-X”PLUS”は、G-Xグレードをベースにインテリジェントクリアランスソナー[パーキングサポートブレーキ(静止物)]、バックガイドモニターなど安全装備を充実させている。また、UVカット機能付きのプライバシーガラスも特別装備した。
インテリアは、メーター周りやステアリングホイールにシルバー塗装をプラス。レジスターノブはサテンメッキ加飾を施し、上質感を与えたワンランク上のモデルに仕立てられている。
メーカー希望小売価格(税込み)は下記の通り。
カローラ G-X“PLUS” 197万2300円 カローラ HYBRID G-X“PLUS” 243万9800円(2WD)/263万7800円(4WD) カローラ ツーリング G-X“PLUS” 204万9300円 カローラ ツーリング HYBRID G-X“PLUS” 251万6800円(2WD)/271万4800円(4WD) カローラ ツーリング “2000 Limited” 262万200円
Posted at 2020/05/18 21:51:50 | |
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自動車業界あれこれ | 日記
2020年05月18日
IHI:世界初、航空機用100kW級高出力パワーエレクトロニクスの空冷化に成功
IHIは、航空機の環境負荷低減に向けて、エンジンを含む航空機システム全体のエネルギーマネジメントを最適化する「航空機・エンジン電動化システム(MEAAP:ミープ*1)」の実現を目指し、様々な研究開発を推進している。その一環として、このたび、パワーエレクトロニクス(*2)の液冷が困難な分野に適用できる空冷技術を開発し、航空機用としては世界で初めて、100kW級高出力パワーエレクトロニクスの空冷実証に成功した。
地球規模の気候変動対策として、自動車を中心に電動化技術開発が進められているが、航空機においても、安全性・環境適合性・経済性といった社会のニーズに対応した軽量・低コストかつ安全性の高い新たなシステムが求められている。MEAAPは、単なる機器の電動化に留まらず、従来有効利用されず排出されている客室の空気を電気機器の冷却に利用するなど、航空機システムの最適化による飛躍的な低燃費の実現を目指している。
電動化により燃費改善が期待できる一方、パワーエレクトロニクスなどの発熱増を伴うため、発熱抑制が重要な問題となっている。従来、航空機用パワーエレクトロニクスの冷却は、冷却水や冷媒の循環装置や熱交換機などを用いる液冷方式だが、今後電動化を推進する上では、主翼周辺やエンジン周辺などへ循環装置の設置が困難であることや、配管などの重量増加による燃費悪化、液冷の整備性の悪さなどの解決が必要となっている。
航空機に搭載されるパワーエレクトロニクスは、小型軽量化・高出力化され、狭い面積に大きな発熱が集中するため、これに対応した排熱技術が必要。IHIは、従来有効利用されずに大量に機外へ排出されている客室内の空気を冷却に活用する、クリーンで効率のよい空冷システムの実現を目指し、技術開発に取り組んできた。同社が保有する熱・流体・構造解析技術により、パワーエレクトロニクスの高出力密度化に有用な高排熱密度・低損失な新構造ヒートシンク(*3)を開発するとともに、ヒートシンクに大量の空気を送風するブロアには、車両用ターボチャージャ技術を生かし、オイルフリーでセルフ空冷設計の小型高速回転電動ブロアを開発した。これらの組み合わせにより、航空機に搭載できる空冷ユニットを実現し、本年2月に、IHI技術開発本部(神奈川県横浜市)にて100kW級パワーエレクトロニクスを対象とした空冷化の実証試験を実施し、このたび、実用性を確認した。
なお、本開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「航空機用先進システム実用化プロジェクト」の委託業務「次世代エンジン電動化システム研究開発」において実施したもの。
IHIは、2030年代の実現を目指すMEAAPに向けて、機器の電動化開発を継続して行うとともに、航空機システム全体の電動化・最適化に取り組んでいく。また、この空冷システムは、冷却水やオイルが使えない環境での自動化・分散動力化・高効率化などの幅広いニーズに対して電動化を提供することが可能。IHIのパワーエレクトロニクス技術を生かし、今後、モビリティ分野を含むあらゆる産業へ、今回開発した空冷ユニットをはじめとするクリーンな電動エアマネジメント技術を活かしたシステムの提供を検討していく。
(*1) MEAAP:More Electric Architecture for Aircraft and Propulsionの略。
(*2) パワーエレクトロニクス:電力用半導体素子を使い、モータなど大電力を制御するシステム。
(*3) ヒートシンク:発熱する電気部品に取り付け、フィンと呼ばれる金属板に空気をあてることで排熱する部品。本開発では、一般的にヒートシンクの空気上流から下流にかけて空気温度が上昇するため、排熱性能が不均一になること、および、面積が狭い場合に、フィンの高密度化が必要となる一方で、空気抵抗が増大し、排熱効率が低下することが課題だった。
Posted at 2020/05/18 21:37:28 | |
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自動車業界あれこれ | 日記
2020年05月18日
新型ゴルフGTIはMT&内燃機関にこだわる!
新型フォルクスワーゲン「ゴルフ」のハイパフォーマンス・バージョンの「GTI」の詳細が、一部ジャーナリスト向けに発表された。オンライン上でおこなわれたプレゼンテーションに参加した小川フミオがリポートする。
サーキットでの走りを重視
フォルクスワーゲンが新型「ゴルフGTI」の詳細を(ようやく)発表した。本来、2020年3月のジュネーブ自動車ショーで発表される予定だったものの、新型コロナウイルス感染拡大に伴いショー自体が中止になったため、ズレこんだ。シャープなスタイルと、かなりスポーティな操縦性がセリングポイントである。
新型ゴルフGTIの“バーチャル・プレゼンテーション”は、5月初旬、スカイプ上で開催された。世界中のジャーナリストが対象だった。
The new Volkswagen Golf GTIドイツ本社からは、デザインを統括するクラウス・ビショフ氏、車両ダイナミクス&シャシー制御システム責任者のカルステン・シェーブスダト氏、そしてフォルクスワーゲン・ワークスドライバーのベンヤミン・ロイヒター氏が参加した。3人が説明するGTIの内容を、コンピューター画面で見聞きし、質問があればテキストを打ち込む、という形式のプレゼンテーションだった。
8世代目になったゴルフGTIとはどんなクルマなのか? フォルクスワーゲンの開発陣による解説を端的にまとめると“コンパクト・スポーツカー”。サーキットでの走りのよさが何回も強調されていたのが印象的だった。
「開発目標は、サーキットの高速コーナーをまわるとき、よりニュートラルなハンドリング特性を持ちつつ、リアは高いスタビリティを確保することでした」
開発者のシェーブスダト氏が述べる。
The new Volkswagen Golf GTI「EA888 evo4」と呼ばれるエンジンは、2.0リッター直列4気筒ガソリンターボ。180kW(245ps)の最高出力と370Nmの最大トルクを発揮し、前輪を駆動する。7代目ゴルフで「GTIパフォーマンス」という特別なモデルに搭載されたパワーユニットだ。
ギアボックスは6段マニュアルが標準で、オプションで7段ツインクラッチ式AT(DSG)が用意される。「マニュアル変速機はやはり大事か?」という筆者の質問に対し、シェーブスダト氏は「それが純粋主義者の選択です」と、答えてくれた。「ただし、変速スピードなどはあきらかにDSGが上なので、あとはエモーション(好み)の問題」と、つけくわえた。
快適性も両立
新型ゴルフGTIは、「ニュルブルクリンクを相当走りこんだ」と、シェーブスダト氏が胸を張るように、走りにこだわったという。とくに凝ったメカニズムの駆動系がポイント。注目すべきは「ビークルダイナミクスマネジャー」だ。
コーナリング中にアクセルを踏んだとき、内側のタイヤにブレーキをかけることで、アンダーステアを軽減する「XDS+」と、 ダンパーの減衰力や電動パワーステアリング特性をコントロールするアダプティブシャシーコントロール「DCC」を、統合制御するシステムである。目的は、前輪駆動車につきもののアンダーステアを打ち消し、「完璧なニュートラルステアの実現にある」と、メディア向け資料には記されている。
The new Volkswagen Golf GTIさらに、「ビークルダイナミクスマネジャーによって、正確かつ反応のするどいハンドリングを実現した」と、記されていた。
ステアリング・ホイールはステアリング・ギア比が見直され、従来よりクイックになっているそうだ。
「あまりにステアリングがシャープなので、テストコースにパイロンを並べてスラローム走行をしたとき、最初はうっかりパイロンに接触してしまいました」
ワークスドライバーのベンヤミン・ロイヒター氏は苦笑まじりの声で、開発エピソードを述べた。ステアリング・ホイールを切ったとき、車両が反応するまでの時間を誤ったのだ。「まるでスポーツカー」というのが感想である。
The new Volkswagen Golf GTIいっぽう、「長距離ドライブ時の快適性も確保しています」とのこと。
「前輪は正確に動くこと、後輪は安定していること。これが重要なのです」と、シェーブスダト氏は述べた。1975年に初代ゴルフGTIが登場して以来、卓越したスポーティさとともに、すぐれた快適性を両立させてきた”伝統”に忠実であることを強調した。
The new Volkswagen Golf GTIGTIの電動化は当分ナシ?
デザイン面では、新しいデジタル・デザイン・ツールが活用されているのは、すでに以前の記事で述べた通り。「短い時間にもかかわらず、精緻なデザインを作り上げた」と、デザインを統括したクラウス・ビショフ氏はほこらしげに述べる。
「デザインの主眼は、高性能を視覚的に表現することでした。たとえばフロントは、低く見えるよう腐心しました。GTIがスポーツカーであることをより強調したつもりです」
新型は、ボンネットをできるだけ下げ、ヘッドランプの上にはアイブラウ(眉毛)のようなアクセントを設け、さらにハニカムパターンのアンダーグリルを採用した。
「Not too loud, not too silent(過剰でなく、かつおとなしすぎない)」
デザインについて、この英文がたいへん興味ぶかかった。
ハイパフォーマンスカーのEV化が進むなか、パワフルなガソリンエンジン搭載のホットハッチの”余命”はどれくらいだろう? この質問については、フォルクスワーゲン開発陣の考えを聴かせてもらう時間はなかった。残念。
ただしプレゼンテーション内では「ハイブリッドの需要があるのは承知しています。そういうひと向けには、プラグ・イン・ハイブリッドモデルの『ゴルフGTE』を用意しています。操縦性と燃費を高次元でバランスさせたモデルです」という説明があった。GTIの電動化の話は一切ナシ。どうやら、ゴルフGTIの電動化は当分なさそうだ。
新型ゴルフGTIの日本への導入は2020年後半以降という。果たして、どんなクルマに仕上がっているのか? GTIやGTEとともに、体験できる機会を楽しみにしよう。
The new Volkswagen Golf GTIMARTIN MEINERS文・小川フミオ
【すでに素晴らしいホットハッチ】VWゴルフGTI 新型開発車両の助手席へ 前編
8代目ゴルフGTIプロトタイプの助手席へ
text:Greg Kable(グレッグ・ケーブル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
せっかくフォルクスワーゲン・ゴルフGTIに乗るなら、普段なら助手席は選ばない。理屈抜きに、スリリングなドライビングを体験できるから。
でも、今回試乗するのは、最新の8世代目ゴルフGTI。英国のショールームに並ぶのは、2020年後半が予定されている。
世界屈指のテストコースで、開発途中のGTIを、1時間ほど楽しませてくれるという。またとない機会。今日ばかりは助手席でも構わない。
いくつもの書類にサインをし、厳重なセキュリティをクリアする。ドイツ北部、広大な敷地に広がるフォルクスワーゲンのエーラ・レッシエン開発センター・テストコースへの入場を許された。
わたしの隣りに座っているのは、フォルクスワーゲンのドライビング・ダイナミクスを取りまとめるエンジニア、カルステン・シェブスダット。新しいGTIのギアを7速に入れ、終わりの見えないストレートで、フラットアウトしている。
テストコースの路面は極めてスムーズ。部分的に4車線がある。全長は8.7kmもある。
デジタルのスピードメーターは249km/hを表示している。シェブスダットは新しいゴルフGTIと、2013年発表の先代とのドライビング特性の違いを、熱心に説明してくれる。
「高速域でも非常に安定しています。荷重がかかった時のリア側の剛性を高め、バランスを改善させ、ライン取りを向上させています」 ダッシュボード中央のモニターをなぞりながら話す。ドライビング・モードを、よりスポーツ志向のものへ変更した。
マイルド・ハイブリッドは不採用
突然、何の前触れもなく、シェブスダットはステアリングホイールを四分の一ほど切って、すぐにカウンターを当てた。「非常にレスポンスに優れ、従来以上に安定性も増しています」 そう話しながら、隣の車線を勢いよくまたぐ。ステアリング修正を加え、姿勢を整える。
横方向にかかる力は巨大なものだった。筆者のみぞおち辺りに強い力がかかる。プロトタイプはすぐに落ち着きを取り戻し、何もなかったように疾走を続ける。
新しいゴルフが登場したばかり。最新のゴルフGTIは、まだ知らないことだらけだ。でも、標準のゴルフとは違った印象を受ける。よりエネルギッシュでスポーティ。洗練性と落ち着きは、通常のゴルフと変わらないところにある。
駆動方式は、名高い血統にもとづいて前輪駆動。ライバルは、フォード・フォーカスSTやホンダ・シビック・タイプR、ルノー・メガーヌR.S.。引き続き、激しい競い合いとなる。
2020年に登場する8代目も、7代目と同じEA888型と呼ばれるエンジンを搭載する。2.0Lの直列4気筒ターボガソリンだ。
一度は電圧48Vのマイルド・ハイブリッド化を示唆していたが、フォルクスワーゲンは先代モデルに引き続いて、純粋な内燃エンジンのみの搭載を決定した。8代目ゴルフの標準モデルには、オルタネーターによる電動アシストも採用されているのだが。
7代目GTIパフォーマンスに近い動的性能
8代目ゴルフGTIの最高出力は、245psを4700rpmから6200rpmで発生。最大トルクは、37.6kg-mを1600rpmから4300rpmの範囲で生み出す。
通常の7代目ゴルフGTI比で見れば、15psと2.0kg-mの増強となる。一段高性能だった、7代目GTIパフォーマンスと同じ数値だ。
トランスミッションは、標準が6速マニュアル。オプションで、ステアリングホイールにシフトパドルの付く、7速デュアルクラッチAT、DCTも選択できる。プロトタイプもこちらだった。
電子制御のリミテッド・スリップデフも装備される。フォルクスワーゲン流に呼ぶと、XDS。コーナー内側のタイヤのスリップを検出し、電子制御のスタビリティ・コントロールを介して左右個別にブレーキを掛け、トラクションを維持する。
フォルクスワーゲンは、まだ動的性能の具体的な数値の多くを明らかにしていない。だが、標準のゴルフGTIは、先代のゴルフGTIパフォーマンスに近いことを、シェブスダットはほのめかした。つまり、0-100km/h加速は6.2秒付近だろう。
ちなみに彼は、初代フォード・フォーカスや、ポルシェ911GT3 RS 4.0など、評価の高いモデル開発にも取り組んできた人物。7代目ゴルフGTIの戦略を展開し、最新GTIでも2段階のラインナップを計画しているという。
従来のGTIパフォーマンスはなくなる。標準のゴルフGTIが、それに代わる性能を得ている。先代では限定生産となっていたサーキット走行前提のグレード、クラブスポーツが、GTI TCRと交代してレギュラーになる。
まだ多くの細かい調整項目が残っている
GTIクラブスポーツには、先代のGTI TCRと同等のチューニングを受けたEA888型が搭載される見込み。7代目ゴルフGTI TCRは、最高出力290ps/5400rpm、最大トルク37.6kg-m/1950rpm-5300rpmだった。
それ以外の駆動系に関する情報はない。ダイナミクス性能に関わる部分だからだろう。
エーラ・レッシエン開発センターで確かめられるのは、新しい標準のゴルフGTIが、どんな走りをするのかということだけだ。
このコースには、ほとんど何でもある。数分間はアクセルをベタ踏みできる、地平線へ消える長いストレート。遠心力を借り、適正な速度ならステアリングホイール操作が不要となる、大きなバンク角の付いたコーナーも。
インフィールドにはハンドリングコースもある。あらゆる種類のカーブや、路面状態が用意されている。
クルマにとっては、かなりきついテストのはず。公道に出ることなく、さまざまな条件で、限界領域付近での挙動も確かめることができる。
1974年にフォルクスワーゲンがゴルフGTIを発表して以来、クルマを際立たせてきたダイナミクス性能を、8代目も養うことができたのだろうか。従来以上の幅広い顧客を獲得するのに充分な、訴求力を備えているのだろうか。
「まだ多くの細かい調整項目が残っています。すべてのコンポーネントが対象です。新しいゴルフの開発当初から、予め組み込まれていたプロセスです」 と、シェブスダットは説明を続けた。
この続きは後編にて。
【すでに素晴らしいホットハッチ】新型VWゴルフGTI 開発車両の助手席へ 後編
メカニズムのネットワーク化
text:Greg Kable(グレッグ・ケーブル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
8代目フォルクスワーゲン・ゴルフGTIの開発でも、出発点となっているのは、多目的なMQBプラットフォーム。このクラスでは最高水準の剛性を備えた、スグレモノだ。
新しいゴルフでは、先代ではスチール製だったフロントのサブルームを、アルミニウム製としている。以前のゴルフGTIクラブスポーツS用に開発されたものに似ている。
3kgの軽量化だけでなく、電動パワーステアリングや、マクファーソンストラット式のフロントサスペンションの取り付け剛性を高める役割を持つ。
ステアリングは、予想通り可変レシオが標準。ダイレクト感は増すそうで、センター付近でのレシオは14.1:1。2回転でロックトゥロックとなる。新しいソフトウェアを採用し、ステアリングレスポンスを向上。セルフセンタリングもより素早い動きを得ている。
もう1つの開発の鍵となっているのが、ビークル・ダイナミクス・マネージャー(VDM)と呼ばれるシステム。ステアリングやスロットル、トランスミッション、アダプティブダンパーなどをネットワーク化し、集中管理する。
このシステムで、4本のダンパー調整をより高速化し、姿勢制御を向上させ、乗り心地も改善。高速走行時でも明らかだったように、クルマ全体の安定感が高まっている。
アダプティブダンパーは、最新版のダイナミクス・シャシー・コントロール(DCC)の1つとして、オプション装備が可能となる。
動的性能のためにナーバスさは望まない
フォルクスワーゲンによれば、VDMへDCCを含める複数の情報を伝えることで、電子制御デフ、XDSの機能も強化されるという。「特にハードコーナリング中は、従来以上に効果的に機能します」 とシェブスダット。
「フロントタイヤ左右へ分配されるトルクは、従来以上に細かな制御が可能です。これまでにも増して、複数の要因を加味して制御されます」
ドライブ・モードには、コンフォートとエコ、スポーツ、インディビジュアルが用意される。デジタルスライダーを用いて設定変更は簡単になった。各モードの間には追加ステップが設けられ、ドライビング特性を広範囲に選べる。
リアサスペンションは、7代目同様にマルチリンク式。車高は通常の8代目ゴルフより15mm低い。もちろん設定もGTI専用となる。
ホイールは17インチが標準。オプションで18インチと19インチも選べる。プロトタイプには18インチのホイールに、ブリヂストン・ポテンザS005タイヤを履いていた。サイズは225/40だ。
フォルクスワーゲンが新しいGTIで目指していることの1つ。それは、複数のメカを、複数の電子制御システムと連携させ、より優れた統一感と漸進性、鋭さを備えたドライビング特性を獲得すること。
7代目のシステムをベースにしながら、ネットワークを強化し、精度や落ち着き、安定性といったフィーリングも引き上げている。「究極のパフォーマンスのために、ナーバスなクルマは望んでいません」
「新しいシステムは、考えられるあらゆる状況下で、ドライバーとクルマとの信頼関係を高めるものです」 シェブスダットは、自信を伺わせる。
執拗に路面を掴み続けるゴルフGTI
エーラ・レッシエン開発センターのハンドリングコースでは、シャシー・バランスや機敏な身のこなしなど、調和の取れた挙動を感じることができた。
スポーツ・モードを選んだGTIは、鮮明にコーナリングしていく。フロントタイヤのトラクションを保つべく、電子制御デフは巧みに処理を続ける。
タイヤのグリップ力は秀抜。路面に細かなうねりがあっても、フロントタイヤは衝撃に耐え、外へ膨らまずにラインをキープ。ドライバーは不安感なく、コーナーの頂点めがけて勢いよくクルマを向けていける。
特に細かなバンプが続く、タイトな円弧を描く厳しい区間へ侵入する。8代目GTIを運転するシェブスダットは、アクセルペダルを深く踏み込み続ける。ステアリングの角度を一定に保っているが、GTIは内側の白い白線から逸れることなく曲がっていく。
助手席の筆者は、進入時の鋭い喰らい付きから緩なる場面を伺う。だが、GTIは執拗に路面を掴み続ける。
サスペンションには横方向への遠心力だけでなく、路面からの垂直方向の複雑な力も加わっている。しかし、跳ねることもなく、アンダーステアの予兆すらない。
次のコーナーは、長く伸びる左カーブ。シェブスダットは高速で侵入し、突然アクセルペダルを戻すと、再び目一杯蹴飛ばす。リアタイヤの安定性に驚かされる。ドライバーの挑発を受けても、プロトタイプは動揺することなく先を急ぐ。
7代目から大きな進歩を遂げつつある
幅広いドライビング・モードでの、優れた姿勢制御も新しいゴルフGTIの強みの1つ。低速域でのコーナーではある程度のロールも見せるが、改良を受けたアダプティブ・ダンパーの力もあって、従来以上に穏やかで漸進的だ。
8代目ゴルフGTIのハンドリングで、全体的な落ち着きは重要視している特性。乗り心地の面でも有効となる。
確かに、予想通りの硬さがあるものの、オプションの18インチタイヤでも鋭さは感じられない。垂直方向の動きは良くコントロールされ、コンフォート・モードを選べば、印象的なほどのしなやかさがある。
大きなバンプを超えた直後の、振動の収まりの早さも注目に値するだろう。乗り心地を確かめているうちに、助手席での試乗時間は終了となった。
恐らくこのクラスでは最強でも、最速でもない。だが、8代目フォルクスワーゲン・ゴルフGTIは、7代目から大きな進歩を遂げたようだ。
伝統のゴルフGTIとして、ベストといえる俊敏性とレスポンスを獲得しているように感じた。安定感が強く、限界領域での落ち着きも明らかに高い。
筆者が実際にステアリングホイールを握れるのは、あと数ヶ月ほど先。しかし、既に素晴らしいホットハッチが完成していることは、間違いなさそうだ。
フォルクスワーゲン・ゴルフGTI プロトタイプのスペック
価格:2万9900ポンド(397万円)
全長:4284mm(標準ゴルフ)
全幅:1789mm(標準ゴルフ)
全高:1456mm(標準ゴルフ)
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:6.2秒(予想)
燃費:-
CO2排出量:-
乾燥重量:1370kg(予想)
パワートレイン:直列4気筒1984ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:245ps/4700-6200rpm
最大トルク:37.6kg-m/1600-4300rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック
Posted at 2020/05/18 21:32:35 | |
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フォルクスワーゲン | 日記
2020年05月18日
RR&四輪独立サスを採用した最後のスバルオリジナルサンバー。すでにプレミアが付いているので、狙っている人は急げ!
RRに四輪独立サスを採用した軽トラ&バン
一家に一台、なくても困らないけれど、あると大変助かるのが軽バン、および軽トラックでしょう。
ホームセンターでのまとめ買いや大きな家具の購入、粗大ゴミを指定の場所まで運ぶときなど、広い荷室と圧倒的な小回り性能をもつ軽バン、軽トラックは非常にありがたい存在です。
また、ワンボックスタイプのバン(もしくはワゴン)であれば、シートを倒せば大人が十分横になることができるほどの広大なスペースが生まれ、趣味の相棒や車中泊にもピッタリですね。
それでは数ある軽バン、軽トラの中からどの車種をピックアップするのか? という問題にブチ当たりますが、今回は最後まで我が道を貫いたスバル サンバーをオススメさせてください!
現在はダイハツが製造するハイゼットのOEM車となったサンバーですが、2012年まで製造されていたスバルオリジナルの6代目サンバーは、他社のモデルにはない独自のメカニズムが多く採用されていました。
サンバーは初代から一貫してリアにエンジンを搭載し、リアを駆動する(4WDモデルも有)RRレイアウトと、四輪独立サスペンションを採用し続けてきました。
そのためトラクション性能も高く、荒れた路面でも四輪がそれぞれ凹凸にしなやかに対応するため、安定性が高いという特長があります。
また、最後までフルキャブ(運転席の下にフロントタイヤがくるレイアウト)を採用していたため、足元が広く、軽バン、軽トラにありがちな無理な運転体勢になる可能性が低いというのも美点でしょう。
そんな6代目サンバーは、軽自動車のボディサイズ規格が拡大された後の1999年に登場。
エンジンはこちらもこの時期のスバル軽の伝統である4気筒エンジンで、NAとスーパーチャージャーの2種類をラインナップ。
組み合わされるミッションは5速MT(トラックのみエクストラロー付き)と3速ATとなり、4WDモデルはMT車がパートタイム、AT車がフルタイム方式となっています。
デビュー当初のラインナップは、商用車登録のトラックとバン、そしてバンをベースに乗用ユースを意識し、機能的で快適性を高める装備を充実させたディアスの大きく3グレードで、99年10月には5ナンバー登録のワゴンであるディアスワゴンクラシックが登場。
これは過去のサンバーでも人気だった、丸目とメッキグリルをもつクラシカルなエクステリアが特徴的なモデルでした。
2002年のマイナーチェンジではディアスワゴンクラシックが消滅し、通常シリーズと同一の顔をもつディアスワゴンにバトンタッチ。
2009年には一足先に乗用モデルはアトレーワゴンのOEMとなり、バンとトラックのみ2012年3月まで生産が続けられました。
デビューから生産終了まで13年という長寿モデルだった6代目サンバーには、何度か特別仕様車の設定がなされましたが、その中でもずば抜けて注目度が高かったのが、2011年7月にサンバー発売50周年を記念してリリースされた「WRブルーリミテッド」です。
バン、トラック合わせて1000台限定でリリースされたこの特別仕様車は、その名のとおりスバルのラリーカーなどでお馴染みの「WRブルー・マイカ」の専用色をまとい、専用のブラックの表皮をもったシートにはイエローのステッチが施される非常に凝ったもの。
そのため、発売早々に完売した伝説のモデルなのです。
今、サンバーを狙うならどのくらいの予算が必要?
13年という長い間販売されてきた6代目サンバーだけに、価格の幅は非常に広くなっています。
ただ、最終型といわれる2009年9月以降のモデルに関しては、バンもトラックも高値安定。
もはや高値というよりはプレミア価格となっており、スーパーチャージャー付きの5速MTで距離の少ないものともなると、新車価格を超えるものも少なくなく、総額で180万円前後というものも存在するほど。
最終型のサンバーシリーズを探してみるその一方で、安いものでは総額10万円台から見つけることができますが、安いものは低年式であったり、過走行であったり、仕事で使われていたのか、かなりくたびれた印象のものが中心となります。
仕事のパートナーとしてはまだまだ活躍してくれると思いますが、レジャーのお供と考えるともう少しパリッとしたものが欲しいと思えてしまいます。
となると、予算的には60万~70万円程度は用意しておきたいところ。
このくらいの予算があれば、人気の高い装備充実ディアスのスーパーチャージャー付き、MT車で10万km未満も十分射程圏内に入ってきます。
逆にNAモデルの3速ATでも構わないということであれば、10万~15万円ほど低い45万~60万円くらいでもイケそうな感覚となります。
トラックの方もおおむね同じような相場感となっていますが、バンに比べてスーパーチャージャー付きの個体数が圧倒的に少なく、仕事で使われていた率も高くなるので、程度の良いものを探すには少々根気が必要となりそうです。
スーパーチャージャー付きでMTのサンバーディアスシリーズを探してみるNAでATのサンバーディアスシリーズを探してみる 気になる特別仕様車の「WRブルーリミテッド」ですが、コレクターズアイテム化していることもあるのか、市場には数台が存在するだけ、といった感じ。
どれも100万円は下らないプレミア価格となっていますが、実はベース車はスーパーチャージャーなしのグレードだったため、走りにこだわるのであればあえてのスルーでもいいかもしれません。
サンバー/サンバートラック WRブルーリミテッドを探してみるなお、サンバーには年式やグレードによってパワーウインドウやパワーステアリング、エアコンが標準装備でないものもあったため、安いと思って買ったらエアコンレスだった……という悲劇が起こる可能性もあります。
そのため、車両をチェックするときはそういった快適装備が備わっているかどうかも忘れずにチェックしましょう。
また、サンバーの持病としてはエンジンからのオイル漏れが挙げられます。
展示してある場所の地面にオイル漏れの跡があるような個体は論外ですが、エンジンルームを見てオイルまみれになっていないかどうかは確認しておきたいところです。
そして、エンジンルームを見るついでにリアバンパーの状態もチェック!
リアエンジンのサンバーは通常の車と異なり、リアバンパーがボンネット代わりとなるため、鉄板でできており、雑に扱われてきた個体はここがベコベコになっていることも少なくないのです。
ということで、すでにプレミア価格となりつつある最後のRRレイアウトサンバー。
今後はこういった軽商用車が登場する可能性も低く、程度の良い個体は日に日に減少していく一方なので、欲しいと思った今が買い時なのかもしれません。
文/小鮒康一(フナタン)、写真/スバルスバル サンバーを探してみる▼検索条件スバル サンバー(1999年2月~2012年3月生産モデル)×全国スバル サンバートラックを探してみる▼検索条件スバル サンバートラック(1999年2月~2012年3月生産モデル)×全国スバル サンバーディアスワゴンを探してみる▼検索条件スバル サンバーディアスワゴン(1999年2月~2009年12月生産モデル)×全国スバル サンバーディアスバンを探してみる▼検索条件スバル サンバーディアスバン(1999年2月~2007年6月生産モデル)×全国
Posted at 2020/05/18 21:25:16 | |
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富士重工 | 日記
2020年05月18日
なぜ毎年進化する? 86/BRZは育てるクルマ! 両車の細かな違いとは
■スポーツカーは育てるもの? その真意とは
2012年に登場したトヨタ「86」とスバル「BRZ」は、「スポーツカーは育てる必要がある」という考えから毎年改良がおこなわれてきました。ちょっとマニアックになりますが、ここではその歴史を振り返ってみたいと思います。
1回目の改良(B型:2013年)は不具合対応(イグニッションコイル/エンジンノイズ)が主で、BRZのみ装備/オプションの見直しがおこなわれました。
2回目の改良(C型:2014年4月)は、フロントサスペンションメンバー/リアダンパー取り付けボルトのフランジ厚さをアップさせることで結合剛性アップとショックアブソーバーの特性変更(ピストン/バルブ/オイル)を実施。これらは従来モデル(A/B型)のユーザーもアップデート可能な内容で、多くのユーザーが試したと聞きます。
また、C型への進化と合わせて、86はZFザックス製アブソーバーとBBS製鍛造アルミホイール(18インチ)を用品設定。これらはメーカー自ら量産の枠を超えた“理想の86”として開発をおこなったことから、「ファクトリーチューン」と呼ばれました。
3回目の改良(D型:2015年4月)は、C型とは違い既販モデルが後から手を入れるのが難しい部分に手が入りました。
ボディは相対的にリア周りが弱いといわれていたので、リアバルクヘッド周りの板厚を上げることで剛性をアップ。
この変更に合わせて電動パワーステアリングの特性もアップデート。実はこれらの変更は次の改良への準備という意味合いもあったそうです。
4回目の改良(E型:2016年7月)は初の大幅改良となりました。エクステリアはフロントバンパー、ウインカー内蔵のフルLEDヘッドライト、フェンダーガーニッシュ、LEDリアコンビランプ、新デザインのリアウイング、アルミホイール(17インチ)などを変更。
インテリアは新デザインのステアリングホイール(直径365→直径362、回転慣性重量10%低減)、マルチインフォーメションディスプレイ内蔵の新デザインのメーター、さらに各パネル類の変更や配色も変更されています。
ボディ/シャシはD型での剛性アップに加えて、エンジンルーム内のV型のブレース取り付け部の剛性アップ、リアはホイールハウス内にパッチの追加とスポット溶接追加、フロアトンネルのブレースの板厚アップなどをプラス。体幹を鍛えたボディにあわせバネ/ダンパー(ショーワ製)/スタビライザーなどが再チューニングされています。
また、86では、ディーラーオプションだったザックス製ダンパーはメーカーオプションに昇格し全グレードに設定。
一方、BRZはザックス製ダンパーとブレンボ製ブレーキ、7.5Jアルミホイールを装着する新グレード「GT」を追加。その後、86にもそれに相当する「ハイパフォーマンスパッケージ」が追加されています。
パワートレインにもメスが入り、エンジンは吸排気系とエンジン内部のフリクション低減、ブロックの剛性アップを実施などにより、MT車は最高出力が200馬力から207馬力、最大トルクが205Nmから212Nmへとアップ。また、ファイナルは4.1から4.3にローギアード化され加速性能も向上しました。
■まだまだ進化は止まらない!? 次期型モデルはいつ出る?
5回目の改良(F型:2017年9月)は、D型と比べると変更は控えめながらも、より純度の高いハンドリングのためにステアリングの支持剛性強化とそれに合わせて電動パワーステアリングの特性を変更。また、リリースには記載されていませんがボディにも手が入っており、インパネ中央部の空調室内ユニット貫通穴の構造補強とリアバルクヘッド周りの板厚アップがおこなわれています。
また、86には量産コンプリートカー「GR」を追加。2017年に限定100台が発売されたニュル24時間レースカーのロードモデル「GRMN」譲りのアイテムを多数採用。GRMNのピュアな走りの良さを受け継ぎながらも、ハンドリングと快適性のバランスは“大人向けスポーツ”といった位置づけでした。
BRZは2013年/2015年に限定発売された「tS」の技術やノウハウを盛り込み、スバルとSTIが共同開発した量産コンプリートカー「STIスポーツ」を追加。量産モデル初採用のフレキシブル補剛パーツに加え、18インチアルミホイール&タイヤ、専用セットのサスペンション、専用の内外装などが奢られ、スポーツとプレミアムをバランス良くアップ。BRZのフラッグシップグレードにふさわしい1台となっていました。
6回目の改良(G型:2018年9月)は、BRZのみ空力操安の考えを盛り込んだリアアーチフィンの採用と、それに伴うダンパーチューニングの最適化を実施。
86の変更はありませんでしたが、2017年に設定されたGRの弟分となる「GRスポーツ」を設定。内外装はGRの意匠を継承、走りは「ハイパフォーマンスパッケージ+α」といった内容。
また、既販モデルにGR用パーツのなかから好みのパーツを選んでカスタマイズが可能な「GRパーツ」の販売もスタートされました。
7回目の改良(H型:2019年4月)は86/BRZ共に大きな変更はなく、ボディカラーの変更や内部突起法規対応の小変更のみでした。
ただ、開発陣の言葉を借りると、「現行モデルでやれることはほぼやり切った」ということだと解釈してもいいと思います。2020年に8回目言いたいところですが改良なく、H型が現行モデルとしての最終型となります。
ちなみに自分の86/BRZがどの世代のモデルなのかは簡単にチェックできます。車体番号やそのクルマ固有の情報が記載された「コーションプレート」が助手席ドアを開けた部分に貼られています。
ここに「アプライドモデル」と記載されていますが、86ならZN6、BRZならZC6に続きA/B/Cなどと記されていますが、ここで確認可能です。
このように86/BRZの進化・熟成の歴史は、スポーツカーとしての走りの“純度”を引き上げる歴史といっていいでしょう。
2代目となる次期型が2021年登場といわれていますが、初代で培ったノウハウや知見、ユーザーからのフィードバックは色濃く反映されているはずなので、大きなレベルアップは間違いないでしょう。
Posted at 2020/05/18 21:14:52 | |
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自動車業界あれこれ | 日記