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2006年06月15日

異母姉妹

異母姉妹 1970年5月に発売された初代カペラのデザインには、ベルトーネの血が入っている……長くマツダでクレイ・モデラーをしていた石井誠と言う人が著した『人の想いをかたちに』と言う本に、そう書かれているらしい。「らしい」と言うのは、たまたま見つけたブック・レビューで知っただけで、僕はまだその本を未読だからだ。うむ、近々読まなければ。

 ところで、産みの母は別々だが男親が同じ姉妹を異母姉妹と言う。初代マツダ・カペラには、どうやらその異母姉妹が存在するらしいのだ。男親はイタリア人。名前はジョルジェット・ジゥジァーロ。そして異母姉の名は1969年末に発売された三菱コルト・ギャラン(初代)だ。

 三菱自動車とマツダを渡り歩いた自動車デザイナー、まぁここでは仮にAさんとしておくが、そのAさんに聞いた話である。
 彼がまだ三菱の禄を食んでいた頃、デザイン部門の倉庫にジゥジァーロの手がけたクレイ・モデルが転がっていたそうだ。実寸大のものなのか、縮小モデルなのかまでは聞かなかったけれど、コルト・ギャランのスタイリングは、そのクレイ・モデルを三菱内でアレンジしたものだと言う。

 後年マツダに移籍したAさんは、その倉庫で「コルト・ギャランの原型となったクレイ・モデル」を見つけて驚くことになる。それは初代カペラの原型なのだが、三菱にあったものと全く同一だったからだ。

 Aさんは述懐する。「ジゥジァーロの業績はとても評価しているけれども、同時に、こういう商売の仕方をしてたんだと判って、ものすごく幻滅した」と。「VWのように歴史と実績のある欧州のメーカーに対しては、初代ゴルフのように素晴らしくエポックな提案をするのに、相手が極東の新興の自動車会社だと、同一のデザイン案を複数の会社に黙って売ってたわけですから」。

 ただ続けて、こうも言った。
「一方的にジゥジァーロ氏を責めるのもフェアじゃないのかもしれない。と言うのも、発注したメーカー側の要求要件が、必ずしも明確でも具体的でもなかった可能性があるから」。
 ごく大雑把に、このくらいの寸法の4ドア・セダンをデザインして頂戴よと言われても、歴史も伝統もない新興メーカーの製品では、踏まえるべき過去からの企業カラーもないわけで、デザインの方向性も定めようがなかったのかもしれない。さらに、メーカーがどういう顧客を想定してどういう商品を提示したいのかも分からないでは、通り一遍の仕事しか出来なかろうと言うわけだ。

 ジゥジァーロ氏個人を弁護するもう一つのファクターがある。コルト・ギャランとカペラは、1969年の下半期から70年の上半期にかけて登場した車だ。当時開発のリードタイムがどの程度必要だったかはわからないが、デザインが確定してから1年半くらいで発売を開始するのは、流石に無理だったはずだ。
 両車が発売される約1年半前、ジゥジアーロ氏はベルトーネを去ってギアに移籍し、程なく経営不振のギアに見切りをつけて、自分の会社イタルデザインを立ち上げている。
 つまり極東の自動車メーカー2社に対して「あくどい商売」をしたのはジゥジァーロ当人ではなく、彼が当時在籍していたベルトーネ社だと見なしたほうが、妥当性が高いかもしれないのだ。

 世の中には、最近スキャンダルで話題になった和田義彦画伯のように、あからさまに他所様の作品を頂戴してきてしまった姿かたちのクルマも少なくないが、中にはコルト・ギャランとカペラのような例も、実は結構あるのかもしれない。
ブログ一覧 | 日本の車 | 日記
Posted at 2006/06/15 16:14:48

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この記事へのコメント

2006年6月16日 1:10
デザイナーが「お気に入り」を連発して高めようとする事はよくありますが、違うメーカーに同じモックアップがあるってのは驚きですね。
これはベルトーネ社が真犯人だと信じたいです。やはり企業では芸術より金儲け優先ですから…
あの頃の日本は、いいお客だったのかもしれませんね。

しかし、そのモックアップ、いすずにもあったんでしょうか?
コメントへの返答
2006年6月16日 12:32
常々、ジゥジァーロは同じモチーフの使い回しが激しい人だなぁと感じてましたが、なるほどデザイナーとしては、ちゃんと理由があるんですね。
 彼は随分と多作のようですから、他のデザイナーよりも余計に「使いまわし」が目に付くのかもしれませんけど、個人的にはちょっと……。渡辺美里の歌が、どれ聴いても同じに聞こえるような感じで(笑)。実はあんまり引き出しが多くないんじゃないかなぁと感じたりしています。

 そういえば、確かにいすゞにも随分関わってましたね。同じものがあっても不思議じゃないかも。
2006年6月16日 18:18
↑ 確かに、117coupeと初代FRジェミニを足して2で割った感があるような無いような(^^;。

自分はデザイナーではありませんが、折角暖めていたモチーフが埋没してしまう危機感?を考えれば、営業に廻るその姿勢は「有り」だと感じてしまうのですよ。
我ながら「嫌らしい大人」になったモノです・・(笑)。
コメントへの返答
2006年6月19日 10:18
返信遅くなりまして済みません。

 スタイリングにも時代の流行があるので、一概には模倣だ流用だと言い切れない部分もあるのですが、同時代のオペル・マンタ(初代)とかもこの系統のカタチですよね。…って、実はどれもベルトーネが噛んでたりして。

 こういう本文を書いていて言うのもなんですが、ある特定のデザイン工房が、ある特定の時期に出すデザインのテーマって、かなりの割合で「同じ案の使いまわし」になっているのは承知しています。
 ワン・オフにはそれがとても顕著で、カロッツェリア・ギアなんか「アイグル(=イーグル)」ってデザイン案をMGやらアルファ・ロメオやら複数のメーカーのシャシーに乗っけていて見た目区別がつきません(笑)。
 もっとも、ギアのケースはデザイン案先にありきで、それを気に入ったカスタマーが「オレのMGをこのスタイルで作ってくれ」「うちの1900SSをこのデザインで仕立ててくれ」とリクエストしたのでしょうけど。

 しかし余りあちこちで同じデザインを使うと、見飽きるというか、陳腐化するのも早いような気がするんですけどね…。
2006年6月17日 21:18
まあ、モーツァルトもフレーズの使い回し多いですしねえ。自分の生んだモチーフをもっと昇華させた形で出したいと言うなら分からなくもないところではあります。
ところでAさんって誰だろう…。
コメントへの返答
2006年6月19日 10:23
あはは、小説家でもいますよ。
多く見積もっても3つくらいのストーリーのバリエーションしか持ってなくて、そのマイナーチェンジ版で数だけ稼いでいる人。ジャック・ヒギンズとは言いませんが(笑)。ま、彼の場合は無名時代に複数のペン・ネームで書き飛ばしまくった量産品が一杯あるので、それらをヒギンズ名義に統一した結果「…全部一緒じゃん」てことになったのですが。

ところで、この「おしゃべり」なAさんって誰でしょうね(笑)。
2006年6月28日 19:40
前々から日本のオリジナルは、未だに半分も無い(一部メーカーは、完全モデルチェンジは100パーセント、4年後の準モデルチェンジだけが自社と思われるメーカーが、多いと思っていました。惰眠さんの、このブログを見て意を強くしました、特にあの時代は、殆どが...。

初代のカペラと初代のギャランでは、共通性が全く感じられませんが、前々から、「多分これは同じスケッチから」作り出したんだろうな思ったのが、何回かあります。

ギャランΣと同じ頃の(2代目?)マークⅡセダン、全体の形や面の彫りが同じです(多分、どちらも同じ「見本」から生み出したのかな~?と思っていました。

そして、初代レガシィセダンと同じ頃のコンチェルトセダン、特徴的なグラスセクション?なのに、同じ頃同じような形で、「不思議」に思ったものです。

ファッションと同じ様に、トレンドを探る意味で、イタリア辺りから、デザインスケッチを何枚も買って、それを元に自社で造っているのかも知れませんが...。
コメントへの返答
2006年6月29日 12:29
あの時代は……そうなんですよね~。仮に100%社内デザインだったとしても、よく言えば憧憬、悪く言えばサルマネが大変強く前面に出たデザインばかりだったように思います。

初代のカペラとコルト・ギャランにつきましては、僕の添付した写真にも問題があります。本文中のA氏が言及しているのはセダンなんですが、手元にあった画像がカペラのクーペだけだったもので……。

デザインにも流行はありますし、それ以外にも「コルベア・ショック」のような『世界中のデザイナーがこぞって真似をしたがる』事例もあるようですので、似て見える理由のミステリーも時々ダビンチ・コード的であったりします。そこがまた面白いんですが(笑)。

そういえばご指摘のギャランΣとマーク2、たしかにそうですね。
レガシィ(初代)のガラスはめ込みCピラーは…おぼろな記憶ですが、同時期にちょびっと流行(?)めいた動きが部分的にあったような気がします。記憶違いかもしれないですけど。

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