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イイね!
2007年12月18日

使えねー法律だな、おい!

使えねー法律だな、おい! 去年の夏、酒かっくらって女の子をナンパしに出かけようと車を運転した福岡の市職員(当時)が橋の上でRVに追突、被害車両は橋から転落して乗っていた一家のうち幼児3人が水死する「事件」があった。
 地検は、事故のあと逃走し隠蔽工作も行った被疑者を危険運転致死傷罪などで起訴し、この11月の論告求刑公判で懲役25年を求めて裁判は結審した。

 だから今ぐらいの時期は、年明け1月8日の判決公判に向け、担当判事は検察・被告人双方が裁判で述べ立てたそれぞれの主張を検討し最終の判断を固める作業を進めているタイミングにあたるはずなのだが、事ここに至ってから裁判所は福岡地検に対し、訴因変更(予備的訴因の追加)を命じてきた。

 ごく平たく言ってこれは「裁判所としては、この被告人を危険運転致死傷罪に該当するとして有罪判決を下すことはできない」と考えていると言う意味だ。地検が危険運転致死傷罪一本で起訴してきた以上、このまま判決を下すと被告人は、3人の子供を水死させるような事件(事故、とは言いたくない)を引き起こしておきながらなんら刑事罰を与えることもできず無罪放免せざるを得ない。
 それは幾らなんでも正義に悖る。となれば、現在の立証内容でも有罪の判決を下せる業務上過失致死傷(脇見運転)と道交法違反(酒気帯び運転)を起訴理由に盛り込んで貰わないと困る……。刑事罰を定めた法律条文でグレーゾーン(解釈や判断の余地)が広すぎるから、裁判所はどうしたって謙抑的な扱いをせざるを得なくなる。危険運転致死傷罪の法文がダメだから、こういうことが起こるんだ。誰だ、起草者。当時の法務委員会の委員。法制局も大概だな、まったく。

 地検が訴因変更に応じれば、1月8日の判決公判は流れ、新たな起訴事実に関する審理が再開されることになる筈だが(その場合は被告人側も特に大きくは争わないような気がする。基本的にこれまでの公判での主張に沿った形になるようだし)――前にも書いたことがあるんだけど、これ、おかしいでしょ。何がおかしいって、法律が。危険運転致死傷罪、なんぼなんでも使えなさ過ぎ。

 危険運転致死傷罪の構成や、訴因変更(命令)について思いっきり分かりやすく解説している司法浪人氏の記事を見つけた(「さむいし。」)。多くの人に読んでもらいたい内容だが、まぁそれはともかく。
 ものっ凄く解りやすいのがヒッジョーにありがたいし、なるほど今回、福岡地裁が訴因変更命令を出さざるを得なかったのはそういうことかと、仕組みが理解できるのだが……アタシゃそもそも、その罪を構成する要件自体が不適切だと思ってるのだ。
 他の犯罪類型との整合性の問題もあるので軽々に扱うことができないのは百も承知だが、故意性に関してのハードルが、あまりにも(殆んど必要以上に)高すぎる。

 僕の感覚で言うと「酒を飲んで車を運転」した時点で、危険運転致死傷に関する未必の故意が成立するよう取り扱うべきだ。
 つまり、酒気帯び運転や飲酒運転は「違反」ではなく「犯罪」として――より詳しく言うと、危険運転致死傷の未遂罪として――取り締まるべきであると思う。これは運用や解釈でカバーできる範囲を超えるので、そういう法改正をしなくてはいけないと思う。

 その場合、未遂の「罪」に対する法的制裁が過重ではないかと見ることも出来るが、そこは罰則規定をいくらか軽めにするとか、起訴便宜主義を「有効に」活用するとか、情状酌量を寛大に扱うとかで、つまり立法・刑事行政・司法の各段階でそれぞれ工夫すれば適切な水準を見出すことができると思うのだ。

 今の危険運転致死傷罪の条文では、極端なことを言うと、夜な夜な首都高湾岸線に出没しては時速二百何十キロで走り回ってる腕自慢が、60キロ制限の幹線道路を120キロで走行中に事故を起こし幾人も死傷させたような場合「被告人の運転技量ならばこの速度で車が制御不能と言うことはできず、よって危険運転致死傷罪は成立しない」というよう判断が是とされる余地がある。
 或いは、常習的な酔っ払い運転ドライバーが「過去にも頻繁に一升酒をかっくらって運転することがあったが一度も事故を起こしたことがない。高々二合徳利一本空けたくらいの状態で起こしたこの事故では危険運転致死傷罪は成立しない」とも。

 や、勿論「そーゆー条文なんだから仕方ないじゃん。別にそれだって、自動車運転致死傷罪や道交法違反で裁けば有罪取れるんだし」と言うのだって一つの考え方で、それもアリだ。
 でも、だったらますます「何のためにわざわざ危険運転致死傷罪なんて新設したの?手間隙金かけて。意味ねーじゃん」ってことになるんじゃないかなあ。




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Posted at 2007/12/19 14:02:53

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この記事へのコメント

2007年12月19日 23:50
激しく同意です手(グー)雷
飲酒・酒気帯びの事故は100%危険運転と判定しない限り、この手の事件は減らないですよがまん顔
でもこの犯人の判決後を思うと、あまい判決の分だけ世間からの重圧も相当のしかかり、弁護士側のやってることは結果依頼人を苦しめることになるのではないでしょうか?
飲酒で事故→逃走→隠ぺい工作→自己擁護→反省皆無では出所しても誰も係わりたくないですよ走る人
コメントへの返答
2007年12月20日 12:02
 危険運転致死傷罪が新設される前からの考えなんですが、そもそも「酒を飲んで車を運転する」こと自体を、単に違反行為と言うくくりでしか取り扱わないことが不適切だと思うんですわ。違反じゃなくて犯罪だろ、と。

 そりゃ確かに、軽く引っ掛けて時間もたったし大丈夫だろうと思うケースだってあるでしょうから、機械的に一律処罰するのも社会慣行的に「行き過ぎ」の感もありますので、そこには裁量の余地があってもいいと思います。

 ただし、事故を起こしたドライバーが酒を飲んでいた場合には問答無用で厳しく処罰すべきだと。
 とりわけ今は危険運転致死傷罪の規定があるのですから、それを積極的に活用すべきだと思いますし、条文の不備が原因で(僕は、これが大きいと思ってます)適用できるケースが狭められてしまっているならば、法改正をしてでも「適切に」その条文が使えるようにするべきだと考えます。

 ただ福岡のこの事件に限っての話ですが、事故当時報道された目撃情報のことを考えると、仮に隠蔽工作をしなかったとしても危険運転致死傷罪を構成しているかどうかは、若干微妙な部分があると思っています。

 というのは、被害車両は追突された衝撃で手を施す間なく歩道に乗り上げ欄干を突き破って転落したのではなく、もしかしたら転落自体は回避できた可能性が考慮できるだけの時間的余裕があった、と見なすこともできるからです。
 つまり被告人の危険運転(飲酒運転)と追突事故までは明確な因果関係は認められても、それに引き続いて発生した3人の幼児水死の間に「直接かつ明白な」因果関係はないという理屈立てにも一定の説得力があるということです。

 僕も、心情的には飲酒運転→追突事故→転落→幼児水死は一体不可分の一連の事象と見なした判断をして(厳しく処罰して)欲しいとの願望がありますが、飲酒運転→追突事故/転落→水死と、前後を切り分けて取り扱うほうが論理的には妥当だと感じているのが悩ましいところです。

 いずれにしても、トコトン自己保身しかしないような被告人には、法的にはともかく社会的に極めて厳しい制裁が待ち受けているに違いないですね。

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