トヨタのTHSをどう縦置きボクサーに載せた? スバルXVの2モーター式ハイブリッドシステムとTHS
ロサンゼルスショーで正式発表されるスバル・クロストレックのハイブリッド仕様。2モーター式と発表されていることから、そのトランスミッションのカットモデルより、トヨタのハイブリッドシステム(THS)との関係を考察してみる。
今回のクロストレックハイブリッドについて、トランスミッションにおける、スバルから発表されているスペック原文は以下のとおり。
■ Transmission
Lineartronic® CVT (continuously variable transmission) integrating two motor generators; includes X-MODE and Hill Descent Control; “B” range for engine braking slope control; air-cooled transmission oil cooler; SI-DRIVE performance management
■ Motor Generators
MG1 Operates as power generator to charge and maintain the high-voltage hybrid battery. MG1 is also the starter motor and generator for the gasoline engine.
MG2 supplies electrical drivetrain power output for the hybrid and electric vehicle (EV) driving modes. Also provides charging for the high-voltage hybrid battery during regenerative braking.
MG2 output: 118.0 HP / 148.9 lb-ft of torque, 0-1,500 rpm.
MG2のパフォーマンスをSI表記に換算すれば、出力は10kWで、トルクが65Nm/0-1500rpmということになる。
写真左方からのエンジントルクは、Primary reduction drive/driven gear:平行軸歯車を用いる一次減速を経て、Motor generator 1(MG1)へ。通常のインナロータ式の三相交流永久磁石式同期電動機だろうと思われる。MG1からの出力はPlanetary power slit:動力分割機構へ流れる。遊星歯車機構を用いているがクラッチ/ブレーキの類が見当たらないことから、THSと同じシステムを用いているようだ。
動力分割機構を経たのちに二次減速される。二次減速のドリブンギヤはTransfer drive gear(トランスファギヤ)と同軸タンデム配置となっていて、前軸駆動のためのトルク配分へと系統が分かれている(黄枠)。
ギヤ比/歯数が発表されていないので見た目からの判断だが、一次減速比はそう高くなく(ほぼ1:1レベルか)MG1へ、対する二次減速は減速比が大きい(「Reduction=減速」とあるが、むしろ増速に見える)。さらにその後段でMotor reduction Planetary(遊星歯車機構によるモーターリダクション機構)でトルクを増大、MG2へと入力する仕組み。MG1と同じく、インナロータ式の三相交流永久磁石式同期電動機だろう。
後輪へのトルクフローはMG2後のElectric controlled couplingで断続する仕組みのよう。つまり、高効率を図り普段はFWD、滑りやトラクション不足を車両が検知した際にAWDという使い方ができる。トランスファギヤは常時噛み合い式なので、前輪は常時駆動。FWDの際にも回生によるエネルギー回収が図れる。
変速機のスターティングデバイスがエンジンとの完全断続機構を備えているならFWD/AWDによるモーター走行も可能、いっぽうでRWD走行というのは機構的に無理のようだ。
では、ここで本家THSの横置き式を眺めてみよう。現行プリウスに搭載されているユニットである。
エンジントルクの入力は遊星歯車機構のプラネタリギヤキャリアへ。MG1は同じく遊星歯車機構のサンギヤに接続されているので、エンジントルクでMG1を回転させることができる。リングギヤはMG2への経路としてあり、MG2用減速機構を経てMG2本体へと通じている。
このハイブリッドトランスミッションの技術的なトピックがふたつあり、ひとつがMG1/MG2の配置を別軸としたこと、もうひとつがMG2減速機構を平行軸歯車式に改めたことだ。ともに、先代に対して著しい小型軽量化と伝達効率の良化を実現している。
横置きは軸数が多くて奥まっているからわからんという方のために、縦置きのTHSもご紹介しよう。レクサスLCから搭載が始まったマルチステージハイブリッドと称するタイプである。
主要な機械構成要素は横置き/スバルの2モーター式と同じ。ユニークなのは、プロペラシャフト出力直前に、遊星歯車機構を備えていること。欧州などの超高速域にもTHSが対応できるように本機構で4段で変速、本体側の制御と合わせて10段変速制御を実現している。
THS-IIの技術をベースに生まれたスバル初のPHVモデル「クロストレック ハイブリッド」
スバルUSAは2018年11月20日、初のプラグインハイブリッド「CROSSTREK HYBRID(クロストレック ハイブリッド)」を発表した。クロストレックの日本名はXVだ。
実はこのクロストレック ハイブリッドは、日本ではプロトタイプと称して9月30日~10月3日に神戸コンベンションセンターで開催された「第31回 国際電気自動車シンポジウム・展示会」(EVS 31)に出展されていた。しかしその後日本でお披露目されることはなく、アメリカで2019年モデルとして発表されたのだ。
※関連情報:スバル初のプラグインハイブリッド車「クロストレック ハイブリッド」を米国で発表
このクロストレック ハイブリッドの正式のお披露目は11月30日から開幕する2018 ロスアンゼルス・オートショー」となる。この新型モデルは、カリフォルニア州大気資源局(ARB)との約束に従って送り出されるスバル初のZEV規制対応モデル第1号となる。
新プラグインハイブリッドはトヨタTHS-IIの改良型
クロストレック ハイブリッドに搭載されるPHVシステムは「スタードライブ・テクノロジー」と名付けられている。その意味は、スバル独自の水平対向エンジン、リニアトロニックCVT、モーター、シンメトリカルAWDを組み合わせたハイブリッドシステム名だとしている。
しかしプラグインハイブリッドの基本システムはトヨタのプリウスPHVのユニットだ。もちろん、プリウスPHVは横置きエンジン/横置きTHS-II改型のFF用のシステムなのだが、クロストレック用は横置きの2モーター/電気式CVTトランスファーを縦置き用ユニットに設計変更したものだ。
プリウスPHV用のTHS-IIは、モーターの複軸配置のリダクションギヤによる平行軸歯車化ユニットをデュアルドライブ化したユニットで、通常の駆動用のMGU2(モーター/ジェネレータユニットNo2)モーターに加え、急加速などの大負荷時には発電用のMGU1ジェネレーターを駆動モーターとして使用し2モーター駆動になるシステムだ。
このユニットを縦置き配置にし、しかも従来のスバルの縦置きトランスミッションに近い形状にまとめているのがクロストレック ハイブリッドのハイライトだ。レイアウト的にはMGU1をフロントデフの真上にやや左側にオフセットして配置し、MGU2をトランスミッションケース後方に、最後端に前後プロペラシャフトの出力部と一体化されたトランスファーを配置している。
そしてMGU1とMGU2の間にリダクション平行軸ギヤを配置している。このギヤ部分は横置き用のプリウスPHV用よりスペースに余裕がある。当然ながら、モーターの配置、ギアユニット、そしてトランスミッションケースはスバル専用になっている。このPHVの心臓部となるハイブリッド・トランスファーの部品の製造はトヨタが行ない、組み立てはスバルが担当する。
NEXT:リチウムイオン・バッテリー、PCUもトヨタ製
リチウムイオン・バッテリー、PCUもトヨタ製
PHVのもう一つの心臓部が、リチウムイオン・バッテリーとパワコントロールユニット(PCU)だ。クロストレック ハイブリッドはこれもトヨタ製のユニットを採用している。そのためバッテリー電力容量8.8kWhはプリウスPHVと同容量でバッテリーヒーター付きであることも共通だ。またPCUも同じものを使用している。
なお、リチウムイオン・バッテリーはリヤのラゲッジスペースのフロア上に配置されているので、ラゲッジスペースは通常のガソリンエンジン車より上下方向に狭くなっている。またPCUはリヤ席の足元下面に置かれている。
このように、クロストレック ハイブリッドのモーター/エンジン制御もプリウスPHVと共通だが、加速特性のチューニングはスバル独自になっているのかどうか、現時点では判明していない。モーター総出力は120ps、最大トルクは202Nm。
搭載エンジンはFB20型だ。当然ながらこのFB20型はハイブリッド専用の仕様で、高圧縮比、大量EGRを採用。このクロストレック ハイブリッド用は139ps/182Nmと発表されている。このエンジンはプリウスPHVの2.0Lエンジンの98ps/142Nmより出力が大きいのが特長だ。
常時AWDのハイブリッド
クロストレック ハイブリッドの性能は、バッテリーの電力のみで走行するEV走行距離は
27km、燃費性能はアメリカ方式のMPGe(Miles per gallon of gasoline equivalent:ガソリン等価換算燃費)で38km/Lと発表されている。
このクロストレック ハイブリッドが、プリウスPHVと大きく違うのは機械式の常時AWDであり、モーター駆動ならではのレスポンスのよさを活かし悪路走破性をベースモデルより高めている。
クロストレック ハイブリッドのエクステリアは、ハイブリッド専用のサテンシルバー加飾を加えたグリルや前後バンパーを採用し、インテリアは全体をブルー基調でコーディネートしている。またメーター表示、マルチインフォメーションモニターは専用の表示となっている。
さて、このクロストレック ハイブリッドは日本では販売されるのか? XVは日本では「e-BOXER」を搭載したXV アドバンスが発売されているため、このプラグインハイブリッドモデルの販売の可能性は低く、当面はアメリカ専用モデルとされる可能性が大きいと考えられている。
【週刊クルマのミライ】スバル初のプラグインハイブリッドに漂うプリウス感。電動エアコンを採用か?
日本ではe-BOXERと呼ばれるマイルドハイブリッドが追加されたばかりの「SUBARU XV」ですが、海外では異なるアプローチでの電動化が進んでいます。「クロストレック」と呼ばれる北米仕様に、まもなくプラグインハイブリッド仕様が登場、ロサンゼルスオートショーにて世界初公開されます。
「Subaru StarDrive Technology」と名付けられた新しいハイブリッドシステムは、2つのモーターを使用するタイプ。ひとつは発電とエンジン始動に使われ、もう一つが駆動と回生ブレーキに用いられるという構成です。
典型的なストロングハイブリッドといえるもので、エンジンを使わずにEVとして17マイル(約27km)の走行が可能と発表されています。その外部充電可能なリチウムイオン電池の総電力量は8.8kWh。ラゲッジスペースの床下に搭載されるため荷室は若干の上げ底になってしまいますが、公開されているオフィシャルフォトで確認する限り、後席をたたんだ状態でも使えるようですし、それほど実用性をスポイルしているというわけではなさそうです。
さて、日本ではフォレスターやXVに採用されている「e-BOXER」はスバル独自開発のシステムですが、プラグインハイブリッドとして開発された「Subaru StarDrive Technology」はトヨタの技術協力あってのシステムと言われています。
たしかにリチウムイオン電池のスペックを見るとプリウスPHVと同等に見えますし、なによりシフトパターンが「P・R・N・D・B」となっているのはトヨタ系ハイブリッドとの共通性を感じさせます(通常のXVではBポジションがなく、Dから横にスライドしてMとなります)。
トヨタ系ハイブリッドの象徴といえるプリウスは、エンジン補機のすべてが電動化されていて、ベルトレスとなっていることが特徴ですが、プラグインハイブリッドのスバル・クロストレックにおいてもエンジンルームを映した画像ではエアコンやオルタネーターといった補機は見当たりません。ただし、透視図ではウォーターポンプがベルト駆動されているのが確認できます。
なお、スバルのプラグインハイブリッドが用いるエンジンはもちろん水平対向で、2.0リッター直噴仕様となっています。また、プラグインモデルらしく、充電中の空調も可能というのは電動エアコンを採用しているおかげでしょう。エンジンをかけないのでガレージ内でもプリ空調を利用できるのはメリットといえるでしょう。充電のタイマー設定なども含めて、それらをリモート操作できる機能が備わっているということです。
(山本晋也)
今後はコイツが要らない子になるのか?(トヨタの場合プリウスの標準車もPHVも両方売れている印象だけど)
【SUBARU XV e-BOXER試乗】フォレスターのe-BOXERよりも元気な走りと乗り心地の良さが味わえる
SUBARU XVに追加された「Advance(アドバンス)」は、フォレスターの「Advance」と同様に最上級グレードであり、「e-BOXER」と呼ばれるマイルドハイブリッド仕様でもあります。
モーター最高出力10kw/モーター最大トルク65Nm、2.0L水平対向直噴エンジンの107kW(145ps)/6000rpm、188Nm/4000rpmというスペックもフォレスター「Advance」と同一で、CVT(リニアトロニック)の変速比も同じ。さらに、ラゲッジ奥に配置されている三菱電機製のリチウムイオン電池などももちろん同一です。
「SUBARU GLOBAL PLATFORM」を使う両モデルなので、違いはボディサイズや車両重量などになります。なお、車両重量の差は80kgで、もちろんSUBARU XV Advanceの方が軽く、全高もXVの方が155mmも低くなっています。
80kgの重量差は大差とはいえないものの、発進時の軽さ感や、街中でのストップ&ゴーもより軽快にスムーズにこなしてくれる印象で、高速道路でもこうした美点は十分に感じられます。
一方で、これは人によって好みが分かれそうですが、電子制御スロットルのセッティングが筆者にとっては過敏に感じられました。アクセル操作に対して予想よりもグッと加速しようとする飛び出し感は「e-BOXER」搭載車以外でも感じられます。
ただし、先述したように、人によってはこうしたフィーリングがスポーティな走りと映る人もいるでしょうし、もっとグッと走り出して欲しいという声もあるでしょう。
ハイブリッドとしては、「マイルドハイブリッド仕様」といえるモーターの使用頻度はフォレスターと同じ。ただし、EV走行、モーター走行、ハイブリッド走行を頻繁に切り替えているのがエネルギーフローのイラストからも分かります。逆にいえば、制御は巧みなので、バッテリー容量とモーターの出力を上げることで、ストロングハイブリッドへの強化も期待したくなります。
少し脱線しますが、「XV Advance」のバッテリー容量は4.8Ahで、先日発表された北米向けの2モーター式の「CROSSTREK HYBRID」は、25.0Ah。モーター出力も「XV Advance」よりも大きく向上しています。ただし、「CROSSTREK HYBRID」は「THS2」を活用したトヨタとのアライアンスによるものと想像できますから、自社開発の「XV Advance」とは異なります。
さて「XV Advance」に話を戻すと、フォレスター同様に乗り心地の良さが光ります。それでいながら路面追従性も良好で、うねりを伴ったコーナーなどでも重心の高さを感じさせず、安定した走りを披露してくれます。高速道路を使った長距離でも疲れを誘いません。
さらに、「アイサイト」のアダプティブクルーズコントロールやレーンキープの制御が高く、「ECOクルーズコントロール」による低燃費も魅力でしょう。ほかにも、SUBARUならではの高い悪路走破性を備えた4WDモデルとしての美点もあり、4WD+マイルドハイブリッド仕様を指名するのであれば、「フォレスターAdvance」も含めて見逃せない選択肢になりそうです。
(文/写真 塚田勝弘)
Posted at 2018/11/28 21:49:53 | |
トラックバック(0) |
富士重工 | 日記