2019年11月18日
【ヒットの法則51】アウディA4 3.2 クワトロとBMW330iを比較試乗して見えたブランドの本質
アウディにはBMWにはない独自の魅力がある。それは一体どこから来るのか。今なお語られることの多いテーマだが、2005年にアウディA4とBMW3シリーズがフルモデルチェンジした際、Motor Magazine誌でアウディA4 3.2FSIクワトロとBMW330iを比較しながらじっくりとそれを検証している。ともに走りに定評のあるスポーツセダンでありながら、その中身は実に対照的。その考え方の違い、そのメカニズムからくる走り味の違いは興味深い。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2005年7月号より)
純粋な技術オリエンテッドの傾向が強いアウディ
「必要とあらば、すべてのモデルを4WDに進化させる用意はある」、かようなコメントも聞かれるほどに、アウディが誇りとするクワトロシステムを搭載したモデルが世に送り出されてから、今年(2005)年がちょうど25年に当たる。
1980年のジュネーブモーターショーに、「アウディ・クワトロ」と呼ばれるフルタイム4WDシステムを標準装備としたアウディの乗用車の一号車が出展された。「技術のアウディ」なるイメージは、ちょうどこの頃に確固たるものになったと考えてもいいかも知れない。
クワトロシステムの実現は、ポルシェ社から同社の技術部長へと移籍をして来たフェルディナント・ピエヒが1976年の末にスタートさせたプロジェクトが実を結んだもの。 クワトロと同時進行で開発が進んでいた高出力エンジンとの組み合わせが、その後WRC(世界ラリー選手権)の舞台を席巻して行く…という話題はまだ記憶に新しい。
そんなヒストリーが代表をするように、アウディはメルセデス・ベンツやBMW以上に純粋な技術オリエンテッドの傾向が強いように感じられる。例えば、前面衝突によってパワーパックが後退する動きをワイヤーで拾い上げ、それを利用してシートベルトのたるみを巻き取ると同時にステアリングコラムを縮めるという安全ディバイスのプロコンテン(PROgrammed CONtractionTENtion)などは、クワトロシステムとともに「独自技術のアウディ」のイメージを高めるものであった。
しかし、そうした時代から比べると、最近のアウディ車のつくりはむしろオーソドックス化の方向を目指しているようでもある。それでももちろん、ハードウェア上で今なお興味深い部分は残る。例えば、FFをベースとしたクルマでは少数派の、パワーパック縦置きレイアウトはその一例だ。
トラクションをいかに有効に稼ぐかがポイント
A4 クワトロのエンジン/トランスミッションはFR車同様の縦置きレイアウト。エンジンをフロントアクスル前方にオーバーハングマウントし、その後ろにトランスアクスルをドッキング。エンジントルクは一度後方に伝わり、さらに前輪に伝えられる。まるでFRレイアウトに未練を残すかのようなレイアウトを今でも採用し続ける理由は、残念ながら、ぼくには明確にはわからない。エンジンをオーバーハングマウントするがゆえに当然フロントヘビーの傾向が強く、それを「前輪駆動時の優れたトラクション能力確保のため」と解釈することもできるが。
クワトロの場合、トランスアクスルの出口部分=プロペラシャフト付け根位置に置かれるセンターデフに、イニシャル時のトルク配分を50:50に設定したトルセンデフを採用し、75:25から25:75までの間で可変トルクスプリットを行う。後輪側駆動力をスムーズに取り出しやすいということもパワーパックを縦置きとしたひとつの理由とは考えられるが、現在ではパワーパック横置きのフルタイム4WD車も多数存在するから、これもまた決定的な要因とはなり得ないわけだが。
一方のBMW 330iはというと、縦置きされたパワーパックは、まるでキャビンの足元部分にエンジンが食い込むようなほとんど「フロントミッドシップ」のレイアウト。一般的には「Z軸回りのモーメントを減少させることで軽快な回頭性を得るための工夫」と理解されることの多い配置であるが、BMW車の場合、そもそもFRレイアウトのウイークポイントとされるトラクション能力の不十分さを少しでも補うべく、「リア荷重を増やすための手段」としてもこうしたレイアウトを採用している感触が強い。
実際、330iの心臓が発生する最大300Nmというトルクに対しても、トラクション能力が不足という印象はまず感じることはないし、それを証明するかのようにトラクションコントロールシステムが介入するシーンも稀なもの。ただし、それが成り立つのは「乾燥した舗装路上では」という注釈の下であることは付け加えておきたい。ひとたび雨、または積雪路面となったり、ダート路面に踏み込んだりすれば、そこではやはりクワトロシステムによって4輪がガッチリとスクラムを組んだA4のトラクション能力が圧倒的な強みを演じるし、今回の2台でも高速走行時によりリラックスした走りを味わわせてくれたのは、やはりA4の方だった。
走りの質感を求めて凝った足回りを設定
サスペンションシステムは、アウディ A4が4輪ともに一種のダブルウィッシュボーンタイプ。一方のBMW 3シリーズはフロントがストラット式で、リアがダブルウィッシュボーンを形成する5リンク式と、形式的には比べれば特にフロント側がよりシンプルなデザインであるのが特徴だ。
ここには、両者のフロントサスンションに掛かる荷重の大小が大きく関係をしていると推察できる。A4 3.2クワトロの前軸荷重は1トン超。一方、330iのそれは780kgほどと、比べれば実に200kg以上もA4の負担が大きい。この差がA4に「より凝ったフロントの足回りを要求した」とも考えられるし、FFベースながらライバルFR勢に負けない走りの質感にこだわったアウディが、「敢えてこだわりの足を採用した」とも想像できる。
事実、A4は高速時のフラット感の高さではヒケをとらない一方、タウンスピードではむしろしなやかな印象。ただし、比べるとサスペンションが路面凹凸を拾うことによるフロア振動が常にある程度感じられるのが、A4のちょっと惜しい点だ。
完全ニューモデルのBMW3シリーズが、ケース剛性の高いランフラットタイヤを履いてもそれに決して負けることのないボディ剛性感を演じていることを思うと、新型を謳うアウディA4にも「サスペンションの素性の良さをさらに生かすのであれば、よりしっかり感の高いボディが欲しい」というのがぼくの本音だ。
ともに電子制御式の6速AT、新しいミッションを模索?
電子制御式の6速ATというスペックが共通するトランスミッションは、確かにその出来栄えは双方甲乙をつけがたい。ただし、こうしたトルコン式ATとエンジンとのマッチングという観点では、個人的には「A4の方がやや上」とも感じられる。
330iが特別な問題を抱えるというわけではない。が、よりメリハリの効いたパワーフィールの持ち主であるBMWの新しい3Lの心臓には、トルコンスリップから訣別できるMT、もしくは2ペダルMTのSMGとの組み合わせの方が、その美点をより生かしきることができるのではと想像される。
ちなみにアウディでは、A3などパワーパック横置きモデル用にはDSGなる最先端のトランスミッションを設定。縦置きパワーパック車にはトルコンATとともにFFモデル用のマルチトロニックと呼ばれるCVT方式が混在し、ひとつのメーカーがまったく異なる3タイプの2ペダルトランスミッションを採用するという複雑な状況を生み出している。
これを、様々な車種に最適なユニットをあてがう「複眼の思想」と見るか、それとも単なる技術進歩の1つの中間過程に過ぎないと見るかは議論の分かれるところだろう。ただし、この件に関して、今でもアウディから明確な将来的ビジョンの声が聞かれないのは、少々気になるポイントだ。
ところで今回の両車の例からも明らかなように、手法は異なっても「これからのガソリンエンジンは直噴方式が主流」という考え方では、アウディもBMWも共通しているようだ。さらに、BMWがバルブトロニックなるスロットルバルブレス技術にまで踏み込んだところは、やはり「エンジン屋の意地」ということでもあろう。
こう見てくると、以前よりは目立たなくなったとは言え、現在でもアウディ独自の技術的フィロソフィは色濃く残っている。それらが巧みにバランスして、メルセデス・ベンツやBMWのFR勢に迫る走りの質感を実現させているのだ。(文:河村康彦/Motor Magazine 2005年7月号より)
アウディ A4 3.2 FSI クワトロ(2005年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4585×1770×1430mm
●ホイールベース:2645mm
●車両重量:1660kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3122cc
●最高出力:255ps/6500rpm
●最大トルク:330Nm/3250rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:613万円(2005年当時)
BMW 330i(2005年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4525×1815×1440mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1550kg
●エンジン:直6DOHC
●排気量:2996cc
●最高出力:258ps/6600rpm
●最大トルク:300Nm/2500-4000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●車両価格:625万円(2005年当時)
Posted at 2019/11/18 21:59:15 | |
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AUDI | 日記
2019年11月18日
【スーパーGT】「マザーシャシーは周りに受け入れられなかった」つちやエンジニアリング土屋武士監督が車両変更の真意を語る
スーパーGT(GT300クラス)にマザーシャシーで参戦を続けてきたつちやエンジニアリングだが、来シーズンは不本意ながらもGT3車両に変更することを決断した。
最終戦もてぎが終わった後、チームを長年応援してくれるサポーターたちの前で涙ながらに車両変更のことを発表した土屋監督。その決断に至った経緯を訊いた。
「MCは周りに受け入れられなかった」土屋武士監督が来季車両変更の真意を語る
執筆: 吉田知弘
2019/11/16 13:12
2019シーズンいっぱいでマザーシャシーの使用を一旦取りやめ、来季は別のマシンで参戦することを宣言したつちやエンジニアリング。土屋武士監督が、その決断に至った経緯を語った。
スーパーGT(GT300クラス)にマザーシャシーで参戦を続けてきたつちやエンジニアリングだが、来シーズンは不本意ながらもGT3車両に変更することを決断した。
最終戦もてぎが終わった後、チームを長年応援してくれるサポーターたちの前で涙ながらに車両変更のことを発表した土屋監督。その決断に至った経緯を訊いた。
ホッピーさんの「来年クルマを変えよう」の一言がきっかけ
「今年の体制発表でも話した通り、応援してくれるみんなにリザルトを持って帰るシーズンにしたいと公言してスタートしましたが……フタを開けてみれば過去最低の成績でした」
「正直、自分でもどうして良いか分からない状態になって……。どうしようかと考えていたところに、ホッピーさんから『クルマを変更しよう』と言っていただいたのが、大きなきっかけでした」
そう語った土屋監督。ウエットコンディションでのレースとなった第7戦SUGO。予選では3番グリッドを獲得するも決勝では天気に翻弄され28台中27位という結果に終わった。そのレース後にメインスポンサーであるホッピーから、来季に向けた車両変更の提案があったという。そこから急速に話が進んでいき、実際には最終戦もてぎの前の段階で車両変更が決定したとのことだ。
改めて車両変更を決断したひとつの要因として、ドライバーや応援してくれる仲間たちを、これ以上ガッカリさせたくないという想いがあったと土屋監督は語った。
「やっぱりドライバーたちが可哀想なんです。あと、応援に来てくれている仲間たちも、みんなガッカリして(サーキットから)帰っていく姿を何度も何度も見ていました。それも非常に心苦しいところがありました」
「ドライバーたちに可哀想だというのと、応援してくれている人たちに申し訳ない。これがメインの理由です。それを提案してくれたのがホッピーさんでした」
水面下で進む“第2世代のマザーシャシー導入”と、そこで起きている“問題”
さらに土屋監督は、もうひとつの理由があると語った。
「マザーシャシーのジェネレーション2(次世代マシン)の話を進めていかなければいけない中で、現状でそれが止まってしまっている状況にあります」
2014年途中に開発着手が発表され、2015シーズンからスーパーGTの舞台で活躍するマザーシャシー。早くも導入5年目を迎え、水面下では次世代マシン『マザーシャシー ジェネレーション2(以下、MC Gen2)』の導入に向けた動きが始まっているという。
ただ、そこでネックになっているのが現在のGT300クラスで大半を占める『GT3勢』とのバランスをどう取るかだ。
「エンジンだったりシャシーだったり(問題は)色々あって、今のGT3車両との車体の重量差をはじめ色々な部分で(条件を)合わせられないかと、各チームからも話がありました」
「その中でもマザーシャシーは“モノづくり”という部分がしっかり活かされなければいけないし、コストがかからないものでないといけない。それは日本のレーシングカー/レース産業というところに対して(MC Gen2でも)非常に重要な部分です。しかしそれに対する話し合い、特にMC Gen2に関しては、GTAの中で止まってしまっています」
そう語った土屋監督。現行のマザーシャシーでも十分に戦っていけるという手応えはあるものの、徐々に増している“規制”を含め、風当たりが厳しくなってきているという。
「現状でも十分マザーシャシーでもいけるとは思いますし、今年は富士では速さを見せられました。でも、あの時はBoPの車体重量が1120kg(通常は1150kg)だったからということと、ロングレースの場合はタイヤ無交換作戦の効果が出てきやすい部分があるので、そこが大きく影響しました」
「ただ、僕たちがポールポジションを獲ったり速さを見せていくと、GT3を使っているチームから『マザーシャシーにもっと規制をかけよう』という話がたくさん出てきました」
「僕はスポーツマンシップに則って、現在のレギュレーションにしてもBoPにしてもリスペクトしながらやってきました。しかし、今後リザルトを獲るため行動を起こすとなると、本当に心苦しいですけど……マザーシャシー(での参戦)を諦めるしかないというのが現状です」
マザーシャシーの強さが際立ったのは土屋監督もドライバーとして参戦していた2016年。ヨコハマタイヤと開発を進め、“タイヤ無交換作戦”を確立し、その結果シーズン2勝を挙げてシリーズチャンピオンを獲得した。
昨年からマザーシャシーのBoPウエイトの数値がプラス50kgに変更されたが、土屋監督はチャンピオン獲得の要因は“マザーシャシーのパフォーマンスが高いから”ではないことを強調した。
「今のGT3車両に優位性があるのも、タイヤ開発が進んできたからなのです。クルマとタイヤのマッチングがうまく噛み合った時に圧倒的な優位性が生まれる……これはスーパーGTのGT300クラスでは昔から変わらないことです。だから僕はマザーシャシー(の特徴)を活かしたタイヤ開発をいち早くやったので、2016年にチャンピオンを獲ることができました」
「また2016年は、GT3車両がたくさん新型車になって足踏みをしていたシーズンでした。そこを突いて僕たちはチャンピオンを獲ることができました」
「その後BoPのウエイトが50kgになって、富士以外では非常に苦しい状況でした。特にウエット路面はクルマの特性上、非常に辛かったです」
「MC Gen2の話が進んでいない状況で、このまま他のチームに言われて(現行のMC車に)規制がかかると、もっと苦しむことは目に見えています。経営的な観点から見ても、このままやっていくのは非常に辛いという部分がありました」
「マザーシャシーはエントラント全体から受け入れられなかったクルマ」
このようにマザーシャシーの継続使用を断念する経緯を語った土屋監督。結果的に“周りから受け入れられなかったクルマ”とだったと、悔しさを噛み締めていた。
「今のマザーシャシーに関しては、良い思い出もありますけど、一番最後の思い出があんな形で終わってしまったというのが……悔しすぎます。最終戦が終わった後もずっと(悔しくて)寝れませんでした」
「現行のマザーシャシーというのはエントラント全体が受け入れなかったクルマだと感じています。それに対してMC Gen2はみんなが受け入れてくれるクルマにして生まれなければいけないと思っています。もう2度とこんな思いはしたくありません」
「せっかく、(マザーシャシーは)職人を育ててくれるクルマだったはずなのに、それがみんなに潰されてしまった。日本の社会問題のひとつでもある“職人が生きていく環境をどんどん潰している”状況がここでも起きていると思います」
「僕の価値観としてはこのレースという舞台は職人を育てる環境でなければならないと思っています。でも、その価値観はみんなに殺されてしまった……これが現実です。なので、“職人 土屋武士”は今のレース業界に殺されてしまったと自分は捉えています。だからこそ、自分は職人が生きられる世界をちゃんと作りたいと強く思っています」
「一緒にやっている他のチームも含めて全体で考えていって、そこでの総意のもとに新しいマザーシャシーが生まれて欲しいなと思っていますし、そこに僕も尽力していきたいです」
2020年、つちやエンジニアリングの新たな挑戦
そして2020シーズン。つちやエンジニアリングはGT3車両を使う予定だという。具体的な車種はまだ明らかにされていないが、土屋監督の中ではどの車両にするのか決まっているようだ。
GT3車両で戦う2020シーズンは、“若い職人を育てる”ことをテーマに掲げてきたつちやエンジニアリングのチーム力を証明したいと力強く語った。
「ポールポジションを獲っても、速く走っても、全て『マザーシャシーが速いから』という一言で片付けられていましたが、今度は同じGT3車両を使って、完全に再現できるかわからないですけど、マザーシャシーを使っていた時と同じことができるようにチャレンジしたいと思っています」
「もし同じことができれば『人の技術、職人の技が強さの秘訣だったね、マザーシャシーが速かったわけではなかったね』ということを証明できるはずです。僕はそれを実現したいなと思っています」
GT300 用マザーシャーシの提案
うまくいかないね…
Posted at 2019/11/18 21:55:43 | |
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自動車業界あれこれ | 日記
2019年11月18日
曙ブレーキ 継続企業の前提に関する注記の記載が解消
曙ブレーキ工業は、取引先金融機関からの支援と、ファンドからの総額200億円の払い込み手続きが完了したことなどから「継続企業の前提に関する注記」の記載が解消されたと発表した。
同社は2019年3月期連結業績で、当期赤字182億円を計上するなど、業績が悪化したことから事業再生ADR(裁判外紛争解決)による事業再生計画を検討してきた。9月18日の債権者会議で全取引先金融機関が総額560億円の債権放棄を含む事業再生計画案に同意したことから事業再生ADR手続きが完了した。増資を引く受けた再生ファンドからの総額200億円の払い込みが完了した。これによって継続企業の前提に関する注記の記載が解消された。
また、同社の2019年4-9月期連結業績は売上高が、日本、北米の受注減少や中国での生産が減少したため、前年同期比19.0%減の1023億円、営業利益が同30.4%減の17億円となった。当期利益はにリコール関連損失78億円を計上したことに加え、取引金融機関からの債務免除益431億円の特別利益を計上し日本を中心とした固定資産の減損損失240億円や、事業構造改善費用12億円などの特別損失を計上したことから96億円となった。
Posted at 2019/11/18 21:48:22 | |
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自動車業界あれこれ | 日記
2019年11月18日
スバル/STI WRXファンミーティング2019
SUBARU FAN BOOST vol.4
スバル/STIは「WRXファンミーティング2019」を愛知県新城市の「ふれあいパークほうらい」でイベントを開催した。集まったスバルファンはWRXのオーナーを中心に約1000台のWRXが全国から集まり、イベントを楽しんだ。イベントではEJ型エンジンの開発に携わったエンジニア、車両開発担当者などがステージでトークショーを行ない、開発秘話など滅多に聞けない「ここだけの話」で会場を盛り上げていた。
ペター ソルベルグ登場
さらにスペシャルゲストとして2003年にEJ20型エンジンを搭載したインプレッサでWRC世界チャンピオンとなったペター・ソルベルグも登場し、その後チームメイトになるトミ・マキネンも現れ、来場者のテンションも最高潮になった。ステージでは二人のトークショーの他にペターはデモ走行も行ない、ドーナッツターンを狭小スペースで披露するなど、マシンコントールの確かさは微塵も衰えていないテクニックを見せつけた。
ふれあいタイム
スバルはEJ20型エンジンの生産終了し、30年の歴史に幕を閉じることを発表したが、その歴史にはWRC世界チャンピオンの獲得や複数回にわたるニュルブルクリンク24時間レースでのクラス優勝、そしてスーパーGTのGT300クラスで走るBRZに搭載する現役エンジンとしても活躍している。また、現在も市販車両のWRXにも搭載され、数多くのファンがいる。
そうしたファンたちは、開発スタッフとの「ふれあいタイム」で直接1対1での対話ができるチャンスがあり、愛車に対する想いを熱心に語る姿が印象的だった。
参加者の浅見さんは、純正タイヤにこだわりコンプリートモデル専用タイヤのブリヂストンRE070を探して装着。もともとレガシィのBG、BH、BPと乗り継ぎ、しかも全てスペックBだったというが乗り換えのタイミングで、MTに乗りたかったという理由から、2013年モデルを探して買ったという惚れ込みよう。STIの森さんへは、「限定車には特別なものがついているので、それを維持するためにレストア部門を作って欲しい」ということをお願いしていた。
STI開発副本部長の高津益夫さんはスバル時代、現行WRXの開発責任者。釧路から参加の工藤さんは、17年式のWRX D型タイプSを所有。「D型はロワグリルの面積を少し大きくして、重心の低いイメージの顔にした」と高津さんが説明し、工藤さんは、「お気に入りはこの黄色いキャリパーですね。ガンメタのホイールとすごくマッチしていて気に入ってます。もともとレガシィ派で、BF5からBG5にいってBE5、BL5と乗り継いでターボがなくなったので、フォレスターに変えました。でも、なんとなく合わなくて1年でWRXに変えました。自分が買った中ではこのクルマが一番かっこいいかな」と。
3月の富士スピードウェイにはBRZで参加。今回はS208で参加していた岩田さん。しかし話はBRZの話へ・・・センターパネルのオーディ周りの処理で、ピアノブラックの処理があるけどシルバー処理されているのが気になる。これを業者にお願いして・・・と、こだわりの強い岩田さんは、具体的なデザイン処理を自分でカスタマイズ。
一緒に写真に収まるのはスバルの商品企画本部 本部長の阿部一博さん。スバル車全体の商品企画を見渡す立場だが、スバルは組織上の立場が上になると直接ユーザーと触れ合う機会がへってしまう。しかし、役員自身がユーザーと直接触れ合うことも重要と考え、今回阿部さんも参加したという。阿部さんも、「ダイレクトにユーザーの声を聞き、フィードバックしていく」とコメントしてくれた。
ペターの引退
イベント終了間際では、メディア向けにペーター ソルベルグのインタビューの機会もあった。
ーー今季を振り返って
「今季は自分のチームの運営で忙しかったですね。でも、このWRXファンミーティング2019の計画を聞いて、引退の世界ツアーの最中ですけど、ぜひ、このイベントに参加してファンのみなさんに伝えたかった。私は、プロの活動を止めますが、今後は自分のチーム運営に力を入れていきたいと考えています。他にも夢は他にたくさんあるんですよ」
ーー息子のオリバーについて
「息子はスバルモータースポーツUSAでスバルのレーシングスーツを着て優勝することが叶ったので、とても嬉しい。自分の引退の理由のひとつには体調を落としたこともありますが、息子が頭角を表してきたことが大きいです。来年は世界選手権に出るのでサポート役に回ることがベストだろうと。あ、私の体調はいまは回復しているので不安はありません」
ーー2020年に開催されるラリージャパンについては
「来年のラリージャパンは北海道より新城は東京に近いので、観客が多くなるでしょう。クルマも観客も多くなりますから、計画をキチンとする必要があります。そうすることで、今後もずっと安定してできることにつながりますし、それを期待したいです」
ーーEJ20型エンジンの終焉と引退が重なったことに関しては
「自分の引退では、これからエキサイティングな将来が待っていると思います。私の引退とエンジンの終焉は偶然重なりましたけど、STIのエンジニアが築き上げた歴史が背景にあり、特別な年になったと思います。未来は、環境や技術などすべてが変わっていくと思いますが、いい方向に進んでいくと思います。STIの社長平岡さんもEJエンジンを開発したした人なので気持ちが通じますね」
1000台以上のスバル 歴代WRXが集結!「WRXファンミーティング2019」はどんなイベントだった?
■1800人以上のスバル WRXファンが愛知県に集結した一大イベント
晴天に恵まれた2019年11月9日、愛知県新城市のふれあいパークほうらいにて「WRXファンミーティング2019」がおこなわれました。
長年に渡り歴代WRXに搭載されたEJ20型エンジンの生産終了に伴い、WRX STIの受注も2019年12月23日で終了。EJ20ファン、そしてWRXファン達に感謝の気持ちを伝える場として、スバルが企画したイベントです。
このイベントは開催の約2週間前に告知されたにも関わらず、抽選を通過した1000台強の歴代WRXと約1800人のWRXファンが全国から集まりました。
会場に到着すると、会場内の連絡道がWRXで渋滞しています。これは単にWRXを駐車するのではなく、モデルとボディカラーを揃えて駐車するという試みによるものです。
渋滞によりイベントの開始が予定より15分遅れてしまいましたが、駐車場はまとまりのある美しい景色になりました。
イベント開始前の駐車場を見ると、自動車メディアでよく目にする開発部門をはじめとするスバルやSTIのスタッフがユーザーのところに出向き、ユーザーと直接ディスカッションをしています。
このイベントにはスバルとSTIのスタッフが各部門から総勢30人ほど訪れており、ユーザーとメーカーとの距離の近さにスバルらしさを強く感じました。
イベントの柱は、歴代WRC参戦車両やニュルブルクリンク24時間レース参戦車両の展示」、EJ20開発スタッフによるトークショー、「スバルのWRC参戦で華々しい戦績を残したペター・ソルベルグ氏のトークショーとスペシャルデモランなど豪華なものです。
■WRXファンミーティング2019のトークショーで印象に残った言葉とは
まず、EJ20型エンジンに深く携わったスタッフによるトークショーがおこなわれました。
登壇者は現STI社長でスバル時代にEJ型エンジン、現在スバルの主力となっているFAとFBエンジン開発にも携わった平岡泰雄氏、スバルで開発ドライバーを長年務め現在はSTIでニュルブルクリンク24時間レースの総監督などを務める辰巳英治氏、スバルでWRXの商品企画を担当する嶋村誠氏です。
・平岡氏
「1989年に初代レガシィを出したときに、車体と同時にゼロから作ったエンジンがEJ型エンジンでした。この時はコストの安い直列4気筒にするという意見もありましたが、中嶋飛行機から始まったスバルのルーツであり、重心の低さによる高い運動性能などのメリットが大きい水平対向エンジンにしたことは、長期的に見て大英断だったと思います」
・辰巳氏
「ニュルブルクリンク24時間レースを走るWRXが11回走って6勝を挙げている大きな原動力は、EJ型エンジンによるものが大きいです。EJ型エンジンは信頼性・耐久性が非常に高く、レース中のエンジントラブルは1度もありません。
エンジンが壊れてしまうとテストもできず何も進まないので、これは非常に素晴らしいことです。またスバルの水平対向エンジン+AWDというシンメトリカル構造はニュルブルクリンク24時間レースでの大きな武器になっています。ですからスバルの水平対向エンジン+AWDは永遠に続くと思っています」
・嶋村氏
「私は入社翌年からWRCプロジェクトに携わりましたが、初めはEJ型エンジンのパワー不足などで大変でした。1993年のニュージーランドラリーでの初代レガシィ最後のWRCでのスバル初優勝などもいい経験で、モータースポーツというのはクルマだけでなく人が鍛えられるという意味で、量産車へのフィードバックに繋がっています」
※ ※ ※
続いて、スバルからWRCへ参戦し、2003年にワールドチャンピオンを獲得したペター・ソルベルグ氏と、ソルベルグ氏のチームメイトを務めたこともあり、現在はTOYOTA GAZOO Racing WRTのチーム代表を務めるトミー・マキネン氏が登壇するトークショーがおこなわれました。
・ソルベルグ氏
「EJ20型エンジンは市販車用としてもモータースポーツ用としても素晴らしいエンジンでした。このエンジンは今年で長年の歴史に幕を閉じますが、それはエキサイティングな新しいことのスタートであると私は思っています」
・マキネン氏
「スバルは素晴らしいチームなので、ここでスタッフにまた会えたことがとても嬉しいです。スバルとの縁はフィンランドでスバルのクルマ販売や、ニュルブルクリンクでタイムアタックをしたことから始まっています。
いまでもトヨタのチームでレッキ(ラリーのコースを下調べする試走)に使うクルマにWRX STIを使ったりと、縁は続いています。スバルチーム時代ソルベルグは愉快で速く素晴らしいドライバーで、ベストなチームメイトだったと思っています」
トークショーが終わると、ソルベルグ氏には引退のメモリアルとしてSTIの平岡社長から花束が贈呈されました。
■ペター・ソルベルグ氏のスペシャルデモランはまさに圧巻のひとこと
現行WRX STIで辰巳氏がコースを紹介した後、ソルベルグ氏がハッチバックの先代WRX STIのグループNラリーカーで会場内の連絡道を走行しました。
初めて乗ったクルマでありながら、連絡道内の道幅6メートルほどのロータリーでコマのような速さでグルグルと回るドーナッツターンを連発。拍手喝采のなか、スバル車のDNAである乗りやすさやコントロール性の高さを披露してくれました。
さらにスペシャルラン後は、スバルチーム時代と同様にドアを開けたままクルマを走らせるハコ乗りと、屋根に仁王立ちするパフォーマンスも披露し、レーシンググローブとバラクラバ(ヘルメットの下に着けるフェイスマスク)を会場に訪れていた子供にプレゼントするなど、現役時代と変わらない旺盛なサービス精神も見せてくれました。
ソルベルグ氏のデモランの後は、次期レヴォーグとWRXの開発責任者を務める五島賢氏、エンジン開発をおこなう第二技術部副本部長の小倉明氏、商品企画本部長の阿部一博氏が登壇。WRXファンはもちろんのこと、クルマ好きには聞き逃すことのできないトークショーになりました。
・五島氏
「東京モーターショー2019でプロトタイプを公開した次期レヴォーグは、『継承と超革新』というコンセプトで開発していますが、次期WRX、とくにSTIは超革新以上の革命を目指して、皆さんが驚くようなクルマになるよう開発しています。マニュアルトランスミッションもスバルのDNAですので、継承できたらいいなと思っています」
・小倉氏
「昨今の自動車業界は電動化が騒がれていますが、当面は内燃機関が無くなることはなく、エンジン開発は非常に重要です。次期WRXにはパワーだけでなく、燃費や排ガスのクリーンさもEJ型以上のエンジンを搭載します。ちょっと時間はかかるかもしれませんが、みなさん期待して待っていてください」
・阿部氏
「現代のクルマは環境性能やコネクテッドといった、クルマを単に走らせる以外の要素も重要です。そういった事情もあってトヨタさんと提携しているのですが、トヨタさんとの提携をネガティブに捉えている人もいるかもしれません。
でもそれはむしろ逆で、我々はトヨタさんと結びつくことによって、いままでよりもっと楽しいクルマ造りができるようになるのです」
※ ※ ※
「WRXファンミーティング2019」は、始まりから終わりまで、スバルがいかにユーザーを大事にしているかヒシヒシと感じる素晴らしいイベントでした。
また、最後のトークショーではWRXをはじめとするスバルの将来に対して、「楽しさは絶対に残す」という開発陣の強い想いが印象的でした。
時代によってクルマに対する夢や楽しさの形は変わってきますが、スバルはクルマ造りが難しくなる厳しい時代でも「スバルらしい楽しいクルマ」を造り続けてくれることでしょう。
WRX STIは一旦絶版車種となりますが、次期レヴォーグやその先にあると思われる次期WRXの登場を楽しみに待ちたいところです。
マキネンとソルベルグの両雄を迎え、名機EJ20にサヨナラ。WRXファンミーティングに約1000台が集結!
2019年11月9日、全国から1000台ものWRXが愛知県新城市のふれあいパークほうらいに集結した。このイベントは2019年12月23日をもって生産を終了することとなったEJ20エンジン搭載の「WRX」を愛用しているスバルファンに向けた感謝のイベントである。
SUBARU WRXの魅力に魅入られたファンが約2000人近くが集まり、みなそれぞれ自身の愛車を披露したり、初めて顔を合わすファン同士でスバル愛を語りつくしていた。
参加者が全員集まったところで、スバルのスタッフとファンの交流会がスタート。現在エンジンやトランスミッションの開発に携わっている技術者や、 初代WRXの開発者、EJ20エンジンの開発者などスバルのレジェンド的存在と触れ合うことができファンも大興奮。
会場には歴代のWRXが多数配列されており、WRCで活躍してきた初代のGC8から現行のVAまで。ニュルブルクリンで戦い抜いたマシンや、なかには2019年11月11日に申し込みが締め切られたWRX STIファイナルエディションまで。このファイナルエディションは限定555台だが、申込数は1万2700! 約23倍近くの予約注文が入ったという。
販売ブースエリアにはスバルとの関わりの深いカスタマイズメーカーが出展。新商品からアウトレット品までここでしか買えないレアなパーツが展示販売されていた。ちなみにSTIブースでは人気商品のドライバーズキャップやウエア、ジャケットなどが午前中で完売してしまう人気ぶり。
午後をまわりイベントも後半を迎え、いよいよWRX、そしてEJ20エンジンの開発にかかわった当時の開発陣によるトークショーが始まった。
壇上に上がったのは現STI社長の平岡泰雄代表取締役、ニュルブルクリン24時間レース、SUBARU&STIチーム総監督の辰巳泰治氏、WRX STIファイナルエディション企画担当の商品企画主査 嶋村氏の3人。平岡社長はEJ20エンジンの開発にもかかわっていたこともあり、最後のEJエンジンについて多くを語ってくれた。
「EJ20エンジンに負けないようないいクルマ、いいエンジンを作り進化させて行きたいと思います」と平岡社長。
「今回のファイナルエディションは最後のEJ20エンジンに感謝を込めて企画したモデルになります」と嶋村氏。
「EJ20は終わっても、シンメトリカルAWDは永遠です。今まで培ってきたSUBARUの技術が今後自動運転の開発にも関わってきます」。と辰巳監督。
その後、スペシャルゲストとして今年引退を発表した元世界王者のペター・ソルベルク氏と、現役時代スバルで活躍し、現在TOYOTA GAZOO Racing WRTの監督を務めるトミ・マキネン氏が大歓声のなか迎えられた。
ソルベルク氏は、「スバルと一緒に世界で勝ち、歴史を作ってきたことはとてもすばらしい出来事でした」と語った。また、プライベートではインプレッサやレガシイ、スバル車以外にも乗っており、いろんなクルマを乗り体感し経験することで、レースで走るクルマの改善すべき点を研究している、とのこと。
マキネン氏には、「スバルとトヨタどっちが好きですか?」と鋭い質問が飛んだが、「秘密!」との返答。その後、「2011年にNBRでコースレコードを樹立したとき、一緒に働いたスバル、そしてSTIの皆様にとても感謝してます」と語った。
その言葉にキスで感謝の意を返したソルベルク氏。
イベントもいよいよ大詰め。ソルベルク氏によるスペシャルランが披露された。短いコースではあったが、みな世界の走りを目の前にして大興奮! 最後は優勝したときと同じパフォーマンスでファンに感謝を告げたソルベルク氏。
イベントがすべて終了し、最後はスバルスタッフ全員で感謝の意を込めファンの帰路を見送った。
〈文=編集部〉
Posted at 2019/11/18 21:45:48 | |
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富士重工 | 日記