2020年07月19日
【復活を予告】メルセデスAMG GT ブラックシリーズ登場へ 2段リアウイングか
最強最速のブラックシリーズ
メルセデスAMG GTに、最強グレードが追加される。「ブラックシリーズ」の復活である。
AMGが動画サイトに投稿したムービーには、AMG GTブラックシリーズが濡れたサーキットを走行する様子が収められている。
様々な角度からその姿を確認することができ、GT3やGT4のレーシングスピリットからインスピレーションを得ていることがわかる。
最も顕著なのは、リアに装着された2段の巨大なリアウイングだ。
その他の変更点としては、大型のリアディフューザー、冷却性を高める新形状のフロントグリル、その下の大きなフロントスプリッターなどが挙げられる。
ダウンフォースと高速走行時の安定性を高めることが、開発の主眼であったことは明らかだ。
ニュルブルクリンクで行われたプロトタイプのテストでは、GT Rのボディに新しいボンネットベントを取り付け、大幅にチューニングを施された4.0LツインターボV8を冷却していたが、少なくとも690psを発揮するとの情報がある。
加速力の面では、2020年半ばに登場する限定生産のハイパーカーAMG「ワン」に勝ると、AMGのボスであるトビアス・モアーズが昨年のニューヨークモーターショーでAUTOCARに語った。
「ワンを抜きにして、ラップタイムはAMG史上最速のものになるでしょう」
「走破性能が最も重要ですが、バランスを取ることでラップタイムも良くなると考えます」
現在、4.0L V8の最もパワフルなモデルはGT63 4ドアクーペで、638psを発揮する。
690psを超える可能性もあり、ブラックシリーズは585psのGT RとGT Rプロのピーク出力を簡単に超えることができるだろう。
911 GT2 RSの「素晴らしい相手」に
また、このカテゴリーで最も過激なスーパーカーのひとつである、700psのポルシェ911 GT2 RSとの差を縮めることになるはずだ。
モアーズによると、新たなブラックシリーズは「我々の隣人との素晴らしい競争相手になる」という。
AMG GTブラックシリーズは、サーキット走行に焦点を絞ったシャシーと空力性能の向上も施されており、AMG GT Rプロよりもさらに上を行くかもしれない。
このようなセットアップの結果、GTブラックシリーズの重量は1575kg前後となり、GT Rプロと同等かそれ以下となる。
最後のブラックシリーズは、SLS AMGをベースにしたモデルで、2013年に生産が開始された。
AMGで最もエクストリームなGTブラックシリーズは、7年間の休止期間を経て2020年に登場することになる。
メルセデスAMG GTに最強「ブラックシリーズ」、パワーは730馬力に決定 7月15日発表予定
メルセデスベンツは7月14日、7月15日14時(日本時間7月15日21時)から開催するオンラインイベントの「Meet Mercedes DIGITAL #6」において、メルセデスAMG『GTブラックシリーズ』(Mercedes-AMG GT Black Series)をデジタルワールドプレミアすると発表した。
「Meet Mercedes DIGITAL」は、メルセデスベンツのオンラインイベントだ。その第6回目では、メルセデスAMG GTブラックシリーズが初公開される。メルセデスAMG GT ブラックシリーズは、スポーツカーの『メルセデスAMG GT』の頂点に立つ最強グレードとして開発されている。
ブラックシリーズとは、メルセデスAMGのブランドスローガン「ドライビングパフォーマンス」を体現したピュアドライビングマシンだ。メルセデスAMGが、モータースポーツで培った最先端テクノロジーを注ぎ込んで開発。究極の運動性能と圧倒的な存在感を示すスタイリングを兼ね備えた少量限定生産車となる。
メルセデスAMG GTブラックシリーズは、メルセデスAMG史上、最も強力な市販車となる。パワートレインの詳細は明らかにされていないが、V型8気筒ツインターボエンジンは、最大出力が730hpに決定した。
この他、洗練されたエアロダイナミクス、インテリジェントな軽量設計、高いドライビングダイナミクス、表現力豊かなデザインを採用する。メルセデスAMGは、このブラックシリーズが、パフォーマンスとスポーツカーブランドの新しいフラッグシップモデル、としている。
メルセデスAMG GT、「ブラックシリーズ」の写真公開 実車は7月15日に発表予定
メルセデスベンツの高性能車部門のメルセデスAMGは、メルセデスAMG『GT』(Mercedes-AMG GT)の「ブラックシリーズ」の写真を公開した。7月15日、デジタルワールドプレミアされる予定だ。
メルセデスAMG『GTブラックシリーズ』は、スポーツカーのメルセデスAMG GTラインナップの頂点に立つ最強グレードとして開発されている。
ブラックシリーズとは、メルセデスAMGのブランドスローガン「ドライビングパフォーマンス」を体現したピュアドライビングマシンだ。メルセデスAMGが、モータースポーツで培った最先端テクノロジーを注ぎ込んで開発。究極の運動性能と圧倒的な存在感を示すスタイリングを兼ね備えた少量限定生産車となる。
ブラックシリーズは、2006年に『SLK55AMGブラックシリーズ』、2007年に『CLK63AMGブラックシリーズ』、2008年に『SL65AMGブラックシリーズ』、2011年に『C63AMGクーペ・ブラックシリーズ』が設定された。
公開されたメルセデスAMG GTブラックシリーズの写真からは、黒く塗装されたフロントリップスポイラー、サイドスカート、大型リアウイングや、専用デザインのフロントグリル、ボンネット、フェンダー、バンパー、ロールケージなどの特長が見て取れる。
The new beat is: 1-8-2-7-4-5-3-6. Listen to it on July, 15th. pic.twitter.com/pQ5aXCJJ7T— Mercedes-AMG (@MercedesAMG) July 13, 2020
Faster than its shadow. Follow me if you can on July, 15th. pic.twitter.com/CEeockX3Zr— Mercedes-AMG (@MercedesAMG) July 12, 2020
メルセデスAMG GT、史上最強の「ブラックシリーズ」発表…730馬力ツインターボ搭載
メルセデスベンツは7月15日、オンラインイベントの「Meet Mercedes DIGITAL #6」において、メルセデスAMG『GTブラックシリーズ』(Mercedes-AMG GT Black Series)をデジタルワールドプレミアした。
「ブラックシリーズ」とは、メルセデスAMGのブランドスローガンの「ドライビングパフォーマンス」を体現したピュアドライビングマシンだ。メルセデスAMGが、モータースポーツで培った最先端テクノロジーを注ぎ込んで開発。究極の運動性能と圧倒的な存在感を示すスタイリングを兼ね備えた少量限定生産車となる。
◆専用チューンの4.0リットルV8ツインターボ
メルセデスAMG GTブラックシリーズは、メルセデスAMG史上、最もパワフルな市販車となる。ドライサンプ潤滑システムを備えたメルセデスAMG の4.0リットルV型8気筒ガソリンツインターボエンジンを、強化して搭載する。
ブラックシリーズでは、ツインスクロールのターボチャージャーを減摩ベアリングに取り付け、スロットルレスポンスをさらに高めた。ターボチャージャーには大型のコンプレッサーホイールを装備。1時間あたりの空気供給量は、メルセデスAMG『GT R』の900kgを上回り、1100kgに達するという。大型のインタークーラーも装備されている。
これらの変更により、メルセデスAMG GTブラックシリーズは、最大出力730hp/6700~6900rpm、最大トルク81.6kgm/2000~6000rpmを獲得する。新しいカムシャフトと排気マニホールドが新しい点火順序に適合し、ガスサイクルをさらに改善しているという。
◆0~100km/h加速3.2秒で最高速325km/h
メルセデスAMG GTブラックシリーズは、リアアクスルに配置されている7速デュアルクラッチの「AMG SPEEDSHIFT DCT 7G」を介して、後輪を駆動する。この7速デュアルクラッチは、最大トルク81.6kgmに対応するよう強化された。7速デュアルクラッチのパフォーマンスやレスポンスは、よりサーキットに適したものに改良されている。
発進時のエンジン回転数の引き上げ、ホイールスリップコントロールの性能向上、スポーツタイヤのサーキットへの適合により、レーススタート機能が強化された。トランスミッション冷却性能も引き上げられ、ギア比も変更された。これらの変更により、メルセデスAMG GTブラックシリーズは、0~100km/h加速を3.2秒で駆け抜け、9秒以内に200km/hに到達する。最高速は325km /hだ。
エンジンとトランスミッションをつなぐ「トルクチューブ」は、カーボンファイバー製で重量は13.9kg。メルセデスAMG GTのアルミ製よりも約40%軽量だ。ドライブシャフトも、軽量なカーボンファイバー製とした。
◆モータースポーツの技術を採用したサスペンション
ブラック塗装のブレーキキャリパーとホワイトレタリングを備えた軽量なセラミック高性能コンパウンドブレーキシステムを、標準装備した。専用のブレーキパッドとディスク、最適化されたブレーキ冷却により、強力な制動力を発揮する。標準の鍛造アルミホイールも軽量化に貢献している。
ダブルウィッシュボーンとステアリングナックル、前後のハブキャリアは100%鍛造アルミ製とし、バネ下重量を軽減した。モータースポーツの技術が採用されたダブルウィッシュボーン式サスペンションは、ホイール支持とサスペンション機能を分離し、スプリングストラットとダンパーストラットを下側のラテラルリンクで支える。このため、上下動を最小限に抑えつつ限界に近い状況のコーナリングにおいて、路面の感覚を的確にドライバーへ伝える。リアアクスルのロアウィッシュボーンに採用したピロボールジョイントもモータースポーツから流用した技術だ。ウィッシュボーンブッシュより耐摩耗性が高いうえ、設計上まったく遊びがないことから、大きな荷重を受けてもトーインとキャンバーが変化しない。その結果、さらにドライバーの意思に忠実に走行することが可能になったという。
調整可能なメルセデスAMGのサスペンションを装備した。このモータースポーツのテクノロジーは、「AMGライドコントロール」の連続可変アダプティブダンピングシステムと組み合わされている。
AMGライドコントロールは、各ホイールの減衰力を走行中のハンドリング状況や車速、路面状態に合わせて自動調整する。この減衰特性の調整を高速かつ精密に行うために、ダンパー内に伸び側用と縮み側用のバルブを別々に備えている。コーナリング時やブレーキング時などにはダンピングレートが硬くなることで、ロールが効果的に低減される。なお、車速に応じた減衰力連続調整には、高速走行時にも最大限の接地性を確保することで安全性を高める効果もあるという。
さらに、AMGドライブユニットシステムのボタンを押すか、「AMGダイナミックセレクト」のドライブモードを使用することで、アダプティブダンピングシステムの特性を調整できる。日常走行の快適性を優先する「C(Comfort)」、ニュルブルクリンクの北コースのような一部起伏があるようなサーキット走行に適した「S(Sport)」、鈴鹿サーキットなどのグランプリサーキット走行に適した「S+(Sport Plus)」の3つのシフトモードを採用している。
タイヤは、ブラックシリーズ専用のミシュラン「パイロットスポーツカップ2 R MO」。サイズは、フロントが285/35ZR19、リアが335/30ZR20とした。サーキット向けに、ハードコンパウンドがオプションで選択できる。
◆9段階に調整できるAMGトラクションコントロール
「AMGトラクションコントロール」もモータースポーツの技術が採用されたシステムだ。駆動輪であるリアアクスルのスリップ量を、9段階であらかじめ設定することができる。操作は、エアアウトレット下のセンターコンソールにある専用ダイヤルで行う。設定の違いによって、リアホイールに許されるスリップ量が変化することから、さまざまな路面状況に対応する。
レベル1は、ウエット路面を、安全に余裕を保ちながら走行する設定。一方、レベル9ではリアアクスルのスリップを最大限許容する。選択された設定は、ロータリースイッチを囲むLEDゲージに表示される。この表示方式もレーシングカーから採用している。マルチファンクションディスプレイのセンターディスプレイにも設定が表示される。
AMGトラクションコントロールの利点は、仮想μシミュレーターや制御装置が処理するさまざまなデータを利用して、状況を瞬時に予測できることだ。駆動するリアホイールの最大許容スリップ量は、AMGトラクションコントロールの選択レベルに応じて計算される。加速中にホイールスリップが上限レベルに達すると、AMGトラクションコントロールはこの許容量を超えないようにエンジン出力を調整する。このため、車体は設定されたスリップ量の中で加速を続ける。調整には「AMGリミテッド・スリップ・デフ」の効果も含まれる、としている。
最強の「メルセデスAMG GT」! 「ブラック・シリーズ」が登場!
4L V8ツインターボは専用チューンにより730ps/800Nmを発揮。0-100km/h加速は3.2秒
7月15日、ダイムラーは「メルセデスAMG GT」の新たな最高峰モデルとなる「AMG GTブラック・シリーズ」を発表した。
メルセデスAMGモデルに設定されるブラック・シリーズは、2006年に登場した「SLK 55」を皮切りに、2007年に「CLK 63」、2008年に「SL65」、2012年に「C63」、そして2013年に「SLS AMG」と、これまで5モデルに設定された経緯がある。パワートレインはもとより、エアロダイナミクスやシャシー、足まわりといった主要コンポーネントに手が加えられ、通常モデルのAMG車とは一線を画す、とりわけエクスクルーシブなモデルに位置付けられる。
メルセデスAMGのトビアス・ムアース会長は、このたびの発表に際して次のようにコメントしている。
「この新しいGTブラック・シリーズは、最新AMG車のハイライトであり、2006年に確立された伝統を継承しています。6番目を数える今作はAMGのマイルストーンであり、アファルターバッハ(メルセデスAMGの本拠地)の驚くべき開発能力や専門知識の確たる証拠で、私はこのユニークなスーパースポーツカーを開発したチームを誇りに思っています。GTブラック・シリーズは、今や成功したGTシリーズの最高峰を象徴しており、そのパフォーマンス、ルックス、ドライビングダイナミクスは他の追随を許しません。このプロジェクトはメルセデスAMGにおける私の仕事に有終の美を飾るものとなり、本当に感謝しています」
ムアース会長がコメントのなかで感謝の意を表したのは、メルセデスAMGを離れることが決定しているから。ちなみに8月からはアストンマーティンのCEOに就任することがすでに明かされている。
4L V型8気筒ツインターボエンジンは、ターボチャージャーに大型のコンプレッサーホイールや大型インタークーラーを装備するなど、専用仕立てとすることにより、730ps/800Nmを発揮。リヤに搭載する専用セッティングを施した7速DCT(AMGスピードシフトDCT 7G)との組み合わせにより、0-100km/h加速を3.2秒、0-200km/h加速を9秒未満でこなす加速性能を実現する大きな原動力となっている。最高速は325km/hだ。
ダブルウイッシュボーン形式のサスペンションやステアリングナックル、ハブキャリアはすべて鍛造アルミニウムで製造。これによりバネ下質量を減らし、ステアリングからのフィードバックをより明確にし、コーナリングパフォーマンスを向上させている。
タイヤは専用にカスタマイズされたミシュランの「パイロットスポーツ・カップ2 R MO」でサイズはフロントが285/35ZR19、リヤが335/30ZR20。
ドライブモードの「AMGダイナミックセレクト」は、「コンフォート」、「スポーツ」、「スポーツプラス」の3モードを設定。コンフォートとスポーツは公道向け、スポーツプラスはサーキットトラック向けと大まかに分けられるが、スポーツモードはウエットコンディションのサーキットトラックでも有効だという。
センターパネル中央部のダイヤル操作によってレベルを調整できるAMGトラクションコントロールも、ブラック・シリーズ専用セッティングが施されている。レベル1からレベル9まで選択でき、レベル1では、ウエット路面で安全に余裕を持った走行に適しており、一方レベル9では後輪のスリップ量を最大限に許容する。
エクステリアは、軽量化の促進とともに、エアロダイナミクスが追求されていることが明確に表現されている。これはGT3マシンをはじめとするレースカーから技術的フィードバックを得たもので、フロントスプリッターやボンネットフード、ルーフ、リヤウイングといったパーツはカーボンファイバー製。フロントスプリッターは「ストリート」と「レース」の2モード設定され、レースモードではより路面から近い位置まで下降し、ボディ下部に流れる空気を加速させる、いわゆる「ベンチュリ効果」を生み出しフロントのダウンフォースを高める。
一方、カーボン製テールゲートに装着されるリヤウイングには、上部中央に最大20度の範囲で角度が変更する可変フラップが組み込まれた。このフラップはAMGダイナミックモードに合わせて電動で調整し、ダイナミクスを最適化する。
このほか、ほぼ完全にパネル化されフラットになったアンダーボディやリヤディフューザーなど、エアロダイナミクスを高める策が多彩に取り入れられた。その結果、AMG GTをベースとしていながらも独特のルックスになっている。
エクスクルーシブナッパレザーと「DINAMICA」マイクロファイバ-を組み合わせたインテリアはブラック基調で、オレンジの差し色がシートやステッチに用いられ、マットブラックカーボンファイバートリムやAMGカーボンファイバーバケットシート、グロスブラックが特徴のAMGインテリアナイトパッケージと合わせて独特の雰囲気を発散する。なおこの差し色はオプションでグレーが選べる。
オプションのAMGトラックパッケージを選択すると、チタン製チューブによるロールケージや4点式シートベルト、消化器などで構成するロールオーバープロテクションシステムが搭載される。
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最高出力730ps! 史上最強のV8エンジンを搭載する「メルセデスAMG GT ブラックシリーズ」デビュー【動画】
Mercedes-AMG GT Black Series
メルセデスAMG GT ブラックシリーズ
最強を謳う「ブラックシリーズ」6番目のモデル
メルセデスは、史上最もパワフルな新開発V型8気筒ツインターボエンジンを搭載した「メルセデスAMG GT ブラックシリーズ」を発表した。アグレッシブな専用デザイン、作り込まれたエアロダイナミクス、最新素材の組み合わせにより、これまでにないドライビングダイナミクスを実現している。
最強のAMG GTの称号を掲げたこの公道走行可能なスーパースポーツは、メルセデスとAMGのモータースポーツにおける豊富な経験が惜しみなく注ぎ込まれた。フラットプレーン・クランクシャフトが採用されたV8ツインターボは、最高出力537kW(730ps)を発揮。AMG GT3由来のデザインに加えて、速度域により可変するアクティブ・エアロダイナミクスが搭載されている。
トビアス・ムアース会長、ブラックシリーズが最後の作品に
メルセデスAMGは、妥協を許さないスポーツ性能、特別なエクステリア、モータースポーツ由来のテクノロジーなどを投入した少量限定車「ブラックシリーズ」を展開してきた。今回のGT ブラックシリーズは、6番目のモデルとなる。
ブラックシリーズは非常に希少性が高いものの、コレクターのガレージで埃をかぶるために作られたのではない。レーシングトラックで抜群のタイムを叩き出せる性能を持ちながら、一般公道も走行可能な車両として開発されている。AMG GT ブラックシリーズは、この伝統の最新作であり、メルセデスAMGのV8エンジン搭載車で最もパワフルなモデルとなった。
メルセデスAMGのトビアス・ムアース会長は、メルセデス AMG GT ブラックシリーズについて、以下のようにコメントした。ムアースはこの後、アストンマーティンの新CEOになることが決まっている。
「この新しいGT ブラックシリーズは、2006年に確立された“ブラックシリーズ”の伝統を引き継いでいます。6番目のブラックシリーズは、AMGが打ち立てた新たなマイルストーンであり、アファルターバッハの高い技術力を証明しています」
「あらためて成功を収めてきたGTファミリーの絶対的な頂点に立つ、このユニークなスーパースポーツを生み出したチームを誇りに思います。GTブラックシリーズのパフォーマンス、エクステリア、運動性能は他の追随を許しません。このプロジェクトは、AMGでの私の仕事の締めくくりとして素晴らしいものとなりました。皆さんに心から感謝しています」
最高出力730ps・最大トルクは800Nmを発揮する「M178 LS2」
一般的にV型8気筒エンジンには、4気筒分のクランクピンが90度位相で配置されている「クロスプレーン」と、全てのクランクピンが180度位相で配置される「フラットプレーン(フラットクランクシャフト)」というふたつのバリエーションがある。AMG製V8エンジンはこれまでクロスプレーンを採用してきた。クロスプレーンは特徴的なエンジンサウンドを持ち、抜群の滑らかさと低回転域での高トルクが特徴となる。
今回、アファルターバッハのエンジニアは、4.0リッターV型8気筒ツインターボエンジンの排気量を最大限活用するために、フラットプレーンの採用を決定。クランクとピストンの取り付け角度が180度となった結果、より俊敏なスロットルレスポンスを実現している。
そして、様々な改良が施されたAMG製V8ツインターボエンジンは、新たに「M178 LS2」という型式名が与えられた。新しいカムシャフトとエキゾーストマニホールドの採用により効率は向上。最高出力537kW(730ps)、最大トルクは800Nmという、メルセデスAMG史上最もパワフルなV8エンジンの称号も手にしている。
スロットルレスポンスやスタート時の反応を改善
ツインスクロール・エキゾースト・ターボチャージャーは、4ドア仕様の「AMG GTクーペ」と同様にアンチフリクション・ベアリングを採用し、スロットルレスポンスを最適化。コンプレッサーを大型化したことで、エア供給量もAMG GT Rの900kg/hから1100kg/hに増加した。また、インタークーラーも大型化されている。
エンジンの刷新により、パワーやトルク、レスポンスの向上に加えて、そのエンジンサウンドも大きく変化した。もちろん走行性能も進化しており、0-100km/h加速は3.2秒、0-200km/h加速は9秒以下、最高速度325km/hというスペックを実現している。
強大なパワーはAMG製7速スピードシフトDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)を介して後輪を駆動。従来のAMG GTと同様に、最適な重量配分を実現すべくリヤアクスルにトランスアクスルを採用する。また、トランスミッションの冷却も改善された。
エンジンとトランスミッションをつなぐトルクチューブは、従来のアルミニウム製からカーボンファイバー製に変更。約40%の重量を削減し、13.9kgもの軽量化を実現した。また、ドライブシャフトにもカーボン製が採用された。
ゼロ発進加速を最適化するローンチコントロール機能も改善。スタート時のエンジン回転数を増加し、ホイールスリップコントロールをより繊細に制御することが可能で、さらにレーストラックに適したスポーツタイヤを採用したことにより、スタートレスポンスが大幅に改善されている。
大型化された新形状のラジエーター・エアインレット
エアロダイナミクスは、AMG GT RやAMG GT R PROと同様に、AMGの技術陣により徹底的に煮詰められている。今回、レース仕様のAMG GT3とAMG GT4から、様々な技術がキャリーオーバーされた。
大型化された新形状の「ラジエーター・エアインレット」はGT3から採り入れられた。中央のエアインレットからは、ホイールアーチクーラーにも直接フレッシュエアが供給されるようになり、従来存在していた2基のアウターエアアウトレットが廃止されている。フロント周辺のエア流量を最適化し、フロントアクスルのダウンフォースレベルを向上するだけでなく、ブレーキ冷却効率もアップした。
また、エアカーテンにより空気の流れをコントロールし、ホイールに向けて誘導。ホイール前部に設置されたフリックと組み合わせることで、ドラッグを大幅に低減し、ダウンフォースを増加させることができる。
走行条件に合わせて展開するフロントスプリッター
カーボンファイバー製フロントスプリッターは、手動での角度調整が可能(公道仕様/サーキット仕様)で、様々なサーキットコンディションに合わせてアジャストできる。レース仕様に設定すると、フロントセクション下部に逆ウイングプロファイル形状のフロントディフューザーが形成される。
走行速度が上がることで、スプリッターは自動的に下へと展開。アンダーボディのエアフローを大幅に加速させることで「ベンチュリー効果」が発生し、フロントアクスル周辺のダウンフォースレベルを増大させる。高速コーナリング時にはより正確なコントロールが可能となり、優れた安定性を発揮。コクピットのドライバーはステアリングでその効果を実感することができるだろう。
モータースポーツから直接派生したコンポーネントとして、2基の大型エアアウトレットを備えた新形状カーボンファイバー製ボンネットがある。この大型エアアウトレットは、エンジンルームから出る熱気を斜めに配置された冷却ファンを通して放出。ダウンフォースを増加させると同時に空気抵抗を減少させ、エンジンを冷却するためのエア総量も最適化される。
可変フラップを備えた2段式大型リヤウイング
Aピラーとサイドウインドウ周辺を通過したエアフローは、完全に刷新されたリヤセクションへと導かれる。
大型ディフューザーを備えた新形状のリヤエプロン、左右に配置されたツインテール・パイプトリム、サイドホイールアーチ・ベンチレーションに加えて、革新的なカーボンファイバー製2段式リヤウイングが採用された。2枚のブレードは、様々な路面状況に合わせて調整が可能となっている。
ボトムウイングは上段よりも幅が狭く、これはフロントからのエアフローに合わせた形状が採用された。軽量かつ堅牢なカーボンファイバー製ステーはマットブラックにペイントされ、テストにより空力的に最適化された形状になっている。リヤウイングはカーボンファイバー製テールゲートにボルトで固定されている。
アッパーウイングは中央に可動式フラップを備える。このアクティブエアロダイナミクスは、走行状況と選択された「AMG ダイナミクス」のモードに合わせて、自動的に20度の範囲で調整される。フラットポジションは空気抵抗を低減した最高速度重視のセッティング。立ち上がったポジションは、リヤアクスル周辺のダウンフォースを増加させることで、ブレーキ性能とコーナリングの安定性を向上させる。
AMG ダイナミクスは「ベーシック(Basic)」「アドバンスド(Advanced)」「プロ(Pro)」「マスター(Master)の4つのモードを用意。250km/hまではフラップが自動展開し、250km/hを超えると空気抵抗を減らすためにフラットポジションとなる。
ただし、ドライバーが急ブレーキをかけたり、コーナーでハンドルを切ったりした場合、フラップはすぐに展開。ダウンフォースと空気抵抗の増加により、ブレーキングとコーナリング性能を最適化する。このフラップは、センターコンソールにあるボタンを使ってドライバーが任意にコントロールすることもできる。
ブラックシリーズは、ダブルバブル形状の軽量カーボンファイバー製ルーフ、小型リップスポイラーを備えたカーボンファイバー製テールゲート、軽量薄板ガラス製前後ウインドウなど、“インテリジェント”なマテリアルを積極的に導入。大幅な軽量化を実現した。
3つのモードが用意された足まわりのセッティング
ダブルウィッシュボーン・サスペンションは、バネ下重量を減らすためにウィッシュボーン、ステアリングナックル、ハブキャリアなどを鍛造アルミニウム製とする。リヤアクスルの上下に配置されたボールジョイントはモータースポーツで使用されている強化パーツを採用。ブラックシリーズは明確なステアリングフィードバックを提供することで、コーナリング性能が向上している。
AMG GT Rと同様に、調整可能なAMG製コイルオーバー・サスペンションをチョイス。過酷なレーストラックでの使用に対応するため、モータースポーツで鍛えられた可変アダプティブ・ダンピング・システムが組み合わされた。このシステムは高度に電子制御されており、スピードや路面状況に合わせて、各輪の減衰レベルを自動的に適応させる。
コーナリングやブレーキング時に減衰力を強めに設定し、車両のロールを効果的に抑制。また、速度に合わせて減衰量を連続的に可変調整することで最高のロードコンタクトが確保され、高速走行時の安全性を高めることに成功している。
ドライバーは「AMG ドライブユニット」のスイッチを押すか、「AMGダイナミックセレクト」のドライブモードを使って足まわりの特性を調整することも可能だ。
AMGダイナミックセレクトは、「コンフォート(Comfort)」「スポーツ(Sport)」「スポーツ・プラス(Sport Plus)」の3モードを用意。コンフォートとスポーツは公道での走行に適したセットアップで、スポーツは足まわりのセッティングがより硬くなり、乗り心地など快適性は低下する。スポーツはウェットコンディションなど滑りやすい路面状況が続く場合には、レーストラックでも選択できる。
スポーツ・プラスはサーキットでの使用を想定。平坦な高速コースのホッケンハイム、バンピーなニュルブルクリンク・ノルドシュライフェなど、コース状況を自動的に認識し、ダンピング・レベルを自動的に適応させる。
2基の大型ディスプレイを備えたレーシーなコクピット
インテリアは、専用ナッパレザーにスポーティなブラックのDINAMICAマイクロファイバーが組み合わせられた。トップステッチにはレーシーなーオレンジのコントラストが施されている。インストゥルメントパネルと新デザインの軽量ドアパネルには、ループ・プルハンドルを採用。この軽量ドアハンドルは、ブラックのDINAMICAマイクロファイバーでトリミングされている。
マットブラックのカーボンファイバー製トリム、インテリアナイトパッケージにより、印象的なコクピットが実現。AMGカーボンファイバー製バケットシート(米国、カナダ、中国では未販売)は、軽量化と最適な横方向のサポートを両立。米国、カナダ、中国では、AMGパフォーマンスシートが標準装備される。また、インテリアにはグレーのトップステッチを施したオプションも用意された。
これまでのAMG GTファミリーと同様に、フルデジタル・インストゥルメントディスプレイを採用。ドライバーの前方には12.3インチのインストゥルメント・クラスターを配置し、センターコンソールには10.25インチのマルチメディアモニターを装備した。
インストゥルメントクラスターはAMG専用の「クラシック(Classic)」「スポーティ(Sporty)」「スーパースポーツ(Supersport)」という3種類のディスプレイスタイルが用意されている。「スーパースポーツ」モードでは、中央にレブリブカウンターが配置され、マニュアルトランスミッションモードでのシフトアップを促す「シフトライト」など、幅広い追加情報を表示する。
ロールケージを備える「AMGトラックパッケージ」
米国、カナダ、中国以外のマーケットでは「AMGトラックパッケージ(AMG Track Package)」をチョイスすることができる。このパッケージには、ロールオーバープロテクションシステム、ドライバーシートと助手席用4点式シートベルト、サーキット専用消火器が含まれる。
ロールオーバープロテクションシステムの軽量チタン製ロールケージは、メインロールバー、シートベルト取り付け用ブレース、2基のリヤブレース、リヤのX形状ブレースで構成。ロールケージを装着することで安全性はもちろん、ベースモデルの高い車両剛性をさらに向上させ、ドライビング・ダイナミクスを大幅にアップさせる。
【SPECIFICATIONS】
メルセデスAMG GT ブラックシリーズ
エンジンタイプ:4.0リッターV型8気筒ツインターボ
総排気量:3982cc
最高出力:537kW(730hp)/6700-6900rpm
最大トルク:800Nm/2000-6000rpm
トランスミッション:AMG スピードシフト 7速DCT
駆動方式:RWD
最高速度:325km/h
0-100km/h加速:3.2秒
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Posted at 2020/07/19 10:42:49 | |
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メルセデスベンツ | 日記
2020年07月19日
「走り」重視のカローラが登場! 北米仕様にAPEXエディション追加へ
7月15日、トヨタ自動車の北米法人は、「カローラ」のスポーツグレード「APEXエディション」を発表した。
限定6000台
北米市場で販売されている現行カローラ・セダンに、限定6000台の、APEXエディションなるスポーツ志向のモデルが追加された。「SE」と「XSE」グレードに設定される。
サスペンションには、スポーツ走行を意識した専用チューニングが施され、車高は約15mm低められた。フロントとリアにはスタビライザーが追加され、コーナリング時のロールを抑えたという。
18インチのブラック・アルミホイールは、1本あたり約1kg軽いという。また、ブレーキの冷却性能も向上したとされ、こうした足まわりの変更にあわせて、電動パワーステアリングの味付けも調整されている。
ボンネットの下に収まるのは、169psと204Nmを発揮する2.0リッター直列4気筒ガソリンの自然吸気エンジン。組み合わされるトランスミッションはCVTと6MTだ。排気システムも見直され、より豪快な排気音が楽しめるという。
外装には、ブロンズのアクセントが入った専用フロントスポイラー、サイドスカート、リアディフューザーを装備。ルーフとミラーキャップはブラックになる。ボディカラーはシルバー、ホワイト、ブラックの3色。
内装には、ステアリング・ホイールやシフトブーツなどにブロンズのステッチが施される。シート表皮は、SE APEXエディションがプレミアムファブリックを、XSE APEXエディションが「SoftTex」と呼ばれる人工皮革を、それぞれ使う。
カローラAPEXエディションの価格や販売時期は今後明らかにされる。
文・稲垣邦康(GQ)
スゴい速そうな「カローラ」爆誕!? イケメンすぎる限定モデルを6千台限定で発売
■速さを求める特別なカローラが登場
トヨタの北米法人は、2020年7月15日に同社「カローラ」をベースにした限定モデル「カローラ Apex Edition」を新たに発表しました。6000台限定で発売するといいます。
2021年の特別な新モデルのカローラ Apex Editionは、サーキットなどでより速いタイムを目指すユーザーに向けて設定され、Apexとはそのサーキットにおいて速く走行するためにコーナの頂点を駆け抜けることを指しています。
外観デザインにおいては、フロントバンパー左右部のベゼルやサイドスカート、リアバンパーにブロンズアクセントを採用しています。
専用装備として、フロントスポイラーやリアディフューザーも備えるほか、リアトランクエアロスポイラーを追加オプションとして用意するなど、スポーティでエアロダイナミクスに優れたブラックボディキットを採用することで、高速走行時の安定性を向上させました。
また、足回りにはブラックに輝く18インチアルミホイールを採用。このホイールは、2.2ポンド(約1キロ)軽量化されているほか、ブレーキの冷却性能を向上させるようになっています。
カローラ Apex Editionは、カローラセダンのTNGA-Cプラットフォーム、マルチリンクリアサスペンション、169馬力の2リッターダイナミックフォースエンジンのポテンシャルを最大限に引き出すチューニングを施しました。
また、カローラのエッジの効いたスタイリングを強調する純正カスタムボディパッケージや、カローラエイペックス独自のスポーツチューンマフラーを採用し、パンチの効いた走りを実現しています。
カローラ Apex Editionには、10速パドルシフトを備えたCVTと、「SE」グレードをベースにした120台限定の6速MT(iMT)を設定。iMTとは、ダウンシフト時にエンジンの回転数を自動的に調整して変速するレブリットマッチング制御を採用し、スティックシフトのプロのようなスムーズな変速を可能にするものです。
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今回、2021年モデルとして特別なカローラ Apex Editionが設定されたほかにも、ベースとなるカローラシリーズでは、2020年モデルですでに標準装備だったApple CarPlayおよびAmazon Alexaに加えてAndroid Autoを追加したほか、さまざまな快適装備が搭載されました。
また、かつて設定されていた「Nightshade Edition」が2021年モデルのSEグレードで復活。スーパーホワイト、クラシックシルバーメタリック、ブラックサンドパールの3色の外観に、大胆なブラックのアクセントが施されています。
専用装備として、ブラック塗装の18インチアルミホイール、ブラックバンパー、フロントグリルサラウンド、ミラーキャップ、サイドロッカー、ドアハンドル、リアスポイラー、シャークフィンアンテナ、エクステリアバッジなど、Nightshade Editionの世界観に仕上げています。
Posted at 2020/07/19 10:34:52 | |
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自動車業界あれこれ | 日記
2020年07月19日
史上最強のポルシェ、911 GT2 RS のピストンを3Dプリンターで開発…最大出力730馬力に向上
ポルシェ(Porsche)は7月13日、3Dプリント技術を活用して、『911 GT2 RS』のエンジン用ピストンを開発した、と発表した。
911GT2 RSは、先代の「991型」ポルシェ「911」シリーズの頂点に位置する高性能モデルだ。直噴3.8リットル水平対向6気筒ツインターボエンジンをベースに、可変タービンジオメトリー(VTG)を持つ大型ターボチャージャー、新設計の吸気システムなどを採用した。この結果、ポルシェの市販車としては、史上最強の最大出力700ps/7000rpm、最大トルク76.5kgm/2500~4500rpmを獲得した。
トランスミッションは、専用ギアレシオの7速PDKで、駆動方式はRR(2WD)だ。911 GT2 RSは、0~100km/h加速2.8秒、最高速340km/hというポルシェ史上、最速のパフォーマンスを実現した。
ポルシェは3Dプリント技術を活用して、この911 GT2 RSのエンジン用ピストンを開発した。これは、高い負荷がかかるドライブコンポーネントを、3Dプリンターで開発するという取り組みの成果だ。3Dプリンターでも、荷重に耐える構造を備えたピストンを生産することが可能になったという。
3Dプリンターで開発された911 GT2 RSのピストンは、レーザー溶融法を使用して、高純度の金属粉末から製造された。レーザー溶融法は、高エネルギーのライトビームを用いて金属粉末を溶融させ、スチール層を作り出すものだ。
また、このピストンは、911 GT2 RSの鍛造ピストンよりも10%軽量。ピストンには、従来の方法では成形できなかった冷却ダクトを設けることも可能になった。軽量なピストンのおかげで、エンジン速度を上げ、ピストンの温度負荷を抑えて、燃焼を最適化できるという。これにより、最大出力は700psから730psへ30 ps向上するとともに、効率も高めることができる、としている。
【5年以内に量産か】ポルシェ、3Dプリント技術でピストン開発 911 GT2 RSで検証、パワーアップも
軽量化により約30psアップ
text:Jesse Crosse(ジェシ・クロス)
3Dプリントの技術は、数年前から自動車部品の試作品製作に利用されてきたが、生産部品の製作にも利用されるようになってきた。
ポルシェは、エンジンの中で最もストレスのかかる部品であるピストンの3Dプリントに成功した。テスト機は、991世代の911 GT2 RSである。
このピストンは従来部品よりも10%軽量化されており、エンジンの回転数を300rpm上げることで、約30psのパワーアップに貢献している。
荷重や熱による大きな応力を受ける高性能エンジンのピストンは、通常はアルミ合金から鋳造または鍛造される。
ポルシェは、ドイツの部品メーカーであるマーレや、プリンターメーカーのトルンプと協力して、最先端のレーザー溶融法を開発した。
設計コンピューターから直接取得したデータをもとに、粉末状のアルミ合金を1層ずつ1200層に分けて融合させることで、ピストンが形成される。
トポロジー最適化ソフトウェアを使用して、力が大きくなる部分を特定し、素材の量が正確に使用されるようにする。
合金がレーザーの熱で高温になっている間、たるみや変形を防ぐために、一時的な支持構造がピストンの設計に組み込まれている。
この支持構造は、後に機械加工されるピストンのピンホールのような部分の内側に、ハニカムのように形成されている。除去作業の省略につながる仕組みだ。
溶融した金属を型に流し込む従来の鋳造技術や、プレスで形を整える鍛造技術では不可能な新しい機能をデザインに組み込むこともできる。
ポルシェはこのメリットを活かし、ピストンの外周を走るトンネルのような内部冷却ダクトを導入した。
工数に改善の余地 12時間で5個
このダクト内を流れる冷却オイルは、ピストンとシリンダーをシールするピストンリングの後ろの重要な部分で、ピストンの温度を20℃下げるという。
ダクトには、3Dプリントされた小さなオイルジェットが備わっているが、複雑すぎて従来の技術では作ることが難しい。
このソフトウェアは、自然界に見られる「バイオニック」デザインを利用して強度を高めている。ピストンの断面図は、筋肉や筋の集まりのように見える。
現在の生産体制では12時間で5個のピストンを作ることができるが、より洗練されたプリンターを使えば、3倍の15個に増やすことが可能だという。
試作品は911 GT2 RSのエンジンでテストされており、平均時速250kmで6000km、サーキット走行を135時間のアクセルべた踏みを含めて200時間シミュレートしている。
現段階では高価な工法であり、一貫した品質を確保するためには改善が必要だが、この技術は今後5年以内に量産車のエンジンに利用される可能性があるという。
さまざまな部品に利用を検討中
ポルシェは、冷却の流れと表面積を改善するため、ターボチャージャーのインタークーラーといった他の部品にも目を向けている。
また、オイルクーラーを内蔵した電動アクスルドライブにも取り組んでおり、3Dプリント技術を使えば部品数の削減につながり、組み立てが早く、2倍の剛性と10%の軽量化を実現できる。
ポルシェはまた、フルバケットシートにも3Dプリント技術を応用している。
3Dのポリウレタンベースの素材で作られた通気性のある「コンフォートレイヤー」に、膨張ポリプロピレンでできたシェルを接着するというものだ。
最初に40個の試作品がレースカーに搭載されるが、2021年からは硬さの異なる3つのバージョンが販売される予定となっている。顧客の体形に合わせたフィット感の高いシートも、後に発売される可能性がある。
Posted at 2020/07/19 10:31:21 | |
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