2018年08月15日
チョイ乗りでも感動するほどのスポーツカー、アルピーヌA110はポルシェ718ケイマンの超好敵手
新型アルピーヌについに試乗(ちょい乗り)する機会を得た編集者による、カジュアルなレポート。それにしてもこの優しい乗り心地と、気持ちの良いコーナリングはなんだ! 個人的には718ケイマンを買うのであれば、ほぼフル装備で790万円のアルピーヌA110を購入することをお勧めする。新型A110がMRを選択したウンチクとともに、ちょい乗りの印象をお届けしよう。PHOTO◎神村 聖(KAMIMURA Satoshi)
ついに日本上陸を果たした新型アルピーヌA110。限定50台のプリミエール・エディションは即完売してしまったが、今年中には通常のラインナップモデルが再度導入されるそうなので、狙っているエンスーの方は心配無用だ。
ところで、新型アルピーヌA110は「なぜ初代のようにRRを採用しなかったのか?」。その疑問は6月25日に掲載したカースタイリング編集部・松永氏のレポートによって解説されているが、今一度おさらいしておこう。なぜならば、MR化は必然であり、新型アルピーヌA110を語る上でのキーワードになるからだ。
まず第1の理由。これは「初代A110がもし現代まで生産され続けたらどのようなフォルムになるか?」をテーマに考え抜き、できるだけ再現しようとした新型のデザインにある。デザイナーによると初代A110デザインのハイライトである、リヤガラスからテールエンドに流れる流麗な角度を再現しようとすると、リヤ後部にエンジンを搭載するのは不可能だったという。
また、デザイナーのこだわりとして可変リヤウイングは絶対に採用したくなかった。だが、最高速度250km/hに達するスポーツカーにおいて、強力なダウンフォースは必須。そこで採用されたのがフラットフロアとリヤ下部の巨大ディフューザーだ。フラットフロアでボディ下部の流速を高め、巨大ディフューザーで効率的に空気を抜く。これにより250km/h走行時にはフラットフロアで190kg、リヤディフューザーで85kgのダウンフォースを得ることに成功したのだ。
そして第2の理由。それは初代A110の敏捷で小気味良いコーナリングを現代のクルマで実現するには、MRが最適なレイアウトとアルピーヌが確信したからに他ならない。走りのためにはMRしか選択肢はなかったという。
つまり“デザイン上の制約”“運動性能の実現”という2つの要素があいまって、必然的にMRレイアウトで新型A110は誕生したのだ。
そんなウンチクを語ったところで、新型アルピーヌA110の実車にちょこっと試乗する機会があったのでその印象をお届けしよう。
一般道、高速道路と約50kmほどドライブしたが、まず驚くのはその乗り心地である。スポーツカーというと引き締まった硬めの乗り味(特に近年のルノー・スポールはその傾向が強かった)をイメージするが、まるでプレミアムサルーンを運転していると錯覚するほどに、路面の凹凸をいなしてくれる。「そうだよな、これが旧来のフランス車だったよな」ついつい、ドライブしながらそんなことを口ずさんでいた。かつてのフランス車の美点が甦った感じだ。
すこし、アクセルを踏んでみる。わずか2000rpmから320Nmを発生する1.8L直列4気筒ターボが背後から気持ちの良い咆哮を発した。周囲の流れに合わせて首都高速のコーナーを曲がってみる。ステアリングを切った分だけ忠実にノーズがスイスイと向きを変える。わずか1110kgという車両重量が効いているのだろう。路面からの芳醇なインフェメーションを伝えてくるステアリングに感動しながら、コーナーの曲率に沿って一定舵で走っているだけでも脳内アドレナリンが吹き出してきた。首都高速の凹凸路面を踏んでも相変わらずドライバーは不快な振動すら感じることがない。ブレーキの効きも極めて自然。カックンもなければ、初期制動が強いこともない。
やや気になったのは軽量なサベルト製スポーツシートの着座位置だ。3段階の高さ調整がボルトによって可能となっているが、借り出したクルマは中間の位置に設定されていた。この位置だとややアップライトな姿勢で、筆者はステアリングと足がやや接触してしまうことがあった。体型にもよるが、オーナーとなったら最も低い位置に設定したほうがより気持ち良い走りを享受できるはずだ。
アルピーヌA110はルノーが持っている技術力を結集させたすごいスポーツカーだ。はっきり言って、プリミエール・エディションの790万円は、バーゲンプライスじゃないか、快適装備も標準で備わっているし! ちょい乗りだけでもこれほど感動するのに、ワインディングを走ったらどうなるのだろう……。やや興奮しながら、走行を終え、試乗をお願いしているジャーナリストにクルマを託した。クルマを降りる時、インパネ中央の液晶にふと目を奪われた。そこには夜空に映る満点の星空が映し出されていたのだ。どうやらヘッドライトと連動する形で、点灯中は星空が映し出されるらしい。洒落た小憎い演出に、ニヤッとしてしまった。
さて、編集者によるラフなレポートはここまで。詳細なアルピーヌA110試乗記はGENROQ10月号(8月25日発売)でたっぷりとお届けするので、ぜひご覧ください。
SPECIFICATIONS
アルピーヌA110プルミエール・エディション
■ボディサイズ:全長4205×全幅1800×全高1250mm ホイールベース:2420mm トレッド:F1555 R1550mm ■車両重量:1110kg ■エンジン:直列4気筒DOHCターボ ボア×ストローク:79.7×90.1mm 総排気量:1798cc 最高出力:185kW(252ps)/6000rpm 最大トルク:320Nm(32.6kgm)/2000rpm ■トランスミッション:7速DCT ■駆動方式:RWD ■サスペンション形式:F&Rダブルウイッシュボーン ■ブレーキ:F&Rベンチレーテッドディスク ■タイヤサイズ(リム幅):F205/40R18(7.5J)R235/40R18(8.5J) ■パフォーマンス 最高速度:250km/h(リミッター作動) 0→100km/h加速:4.5秒 ■環境性能(JC08モード) 燃料消費率:14.1km/L ■車両本体価格:790万円
【超名門復活!! 欲しい!!】アルピーヌA110抽選会inフランス大使館&カタログモデル発売間近!!
2018年7月15日(サッカーロシアW杯でフランス代表が優勝を決める12時間前!!)、港区南麻布にある在日フランス大使館にて、アルピーヌA110の初回限定車「プルミエール・エディション」(790万円)の抽選会が実施されました。本稿ではその抽選会の様子をお届けします。
文:ベストカーWeb編集部
■フランス大使が直々に抽選!?
2017年3月のジュネーブショーで世界初披露された「アルピーヌA110」。往年の名車であり、クルマ大好きフランス人の(特にスポーツカー大好きフランス人の)魂の拠り所となっている「アルピーヌ」ブランド復活の第一弾として用意したこのクルマが、いよいよ日本での納車を開始する。
初期限定車「プルミエール・エディション」が用意されたのは、全世界で1955台(アルピーヌブランドが誕生した1955年を記念してこの台数となっている)。このうち日本の割当台数は50台。ここに応募総数1021名が「買いたい!」と集まった。
抽選を担当したのは、なんと在日フランス大使ローラン・ピック氏。
車両価格790万円で、まだ乗ったことも見たこともないクルマに1021名が応募するのも驚きだが、現役のフランス全権大使が抽選を担当するというのも異例。それだけこの「アルピーヌ」というブランドの復活がフランス人にとって重要であり、日本のクルマ好きにとっても待ち遠しかった証明であるといえよう。
奇しくも抽選会が実施された7月15日(日)は、革命記念日(7/14)祝賀レセプション当日。パーティには河野太郎外務大臣も出席し、日仏友好160周年を記念して、取材陣は両国の友好を祝う場面に立ち会うことができた。
■フルアルミで車重わずか1.1t
さて、今回抽選の対象となったアルピーヌA110は、前述のようにアルピーヌブランド復活第一弾を飾るにふさわしい2シータースポーツカー。
全長4205×全幅1800×全高1250mm、ホイールベース2420mm。サイズはほぼトヨタ86と同じで、直4、1.8Lターボ(252ps/32.6kgm)エンジンをミドシップに搭載。これにゲトラグ製の7速DCTを組み合わせている。JC08モード燃費14.1km/Lで、ポイントはフルアルミモノコックによる車両重量1110kgという軽量にある。うーん、乗ってみたい。
メガーヌR.S.やルーテシアR.S.に興奮した皆さまは、ぜひ狙いたい1台だ。
今回フランス大使館で実施された50台の抽選により、当選者にはルノー・ジャポンから順次連絡が入っている。段階的に納車されてゆく見込みで、これは羨ましい。
いっぽう(特に今回の抽選で漏れてしまった皆さまが)気になるのは、限定車の発売後の展開。一瞬で売り切れた50台では少なすぎる。
すでに本国発表済みの「ピュア」と「レジェンド」という通常2グレードが、カタログモデルとして近々発表する(年内とみられる)とのこと。期待して待っていよう。
カタログモデルの価格についてルノー・ジャポンに聞いてみたところ、「うーん……今回のプルミエール・エディション(790万円)は、かなりお買い得価格だと思います……」とのこと。な、なるほど。
これぞ蘇る伝説!! 伝説のフレンチスポーツ アルピーヌA110は今もホットだ
フランスのスポーティーカーといえばいまでこそルノーやプジョーなどが有名だ。しかしラリーなどで先に活躍を始めたのは今回紹介するアルピーヌA110。
1963年に発売されたアルピーヌA110は進化を遂げ、1973年にはアルピーヌ・ルノーがマニファクチャラータイトルを獲得するなど輝かしい功績を収めた。
そんなA110("エー・ワン・テン"と呼ぶのが通)が2018年、復刻され日本に上陸した(詳細はこちら)。50台限定のプレミエール・エディションはすでに完売したものの、今後は通常ラインアップも発売開始される。
そんなアルピーヌA110に初代A110オーナーだったジャーナリスト鈴木直也氏に試乗してもらった。そのA110の痛快なキャラクターは現代に甦ったのか?
文:鈴木直也/写真:池之平昌信
■"ちょうどいいサイズ"のスポーツカーが復活した
昨年のジュネーブショーで公式デビューを果たした新アルピーヌA110。
日本に上陸した最初の50台は抽選による販売となったが、輸入元アルピーヌ・ジャポンによるとその応募者は1000人を超えたという。
これは「かつての名車」復活という話題性はもちろん、同時に「手頃なサイズの本格スポーツカー」が少なくなっていた、という事情も見逃せない。
近年新しく登場するスポーツカーといえば、デザインも馬力も(そして価格も)過剰な"ハイパーカー"ばかり。
マツダ・ロードスターを偉大な例外とすれば、ポルシェ・ボクスター/ケイマンあたりがエントリーレベルで、その下に大きなギャップが生じていた。
新アルピーヌA110は、その真空地帯を埋めるには最高のキャラクターだ。
ご存じのとおり、オリジナルA110はルノー量産車のメカニカルコンポーネンツを利用し、その上に軽量なFRPボディを架装して造られたリアエンジンスポーツカーだが、だからといってただのライトウェイトスポーツというわけではなかった。
クルマ好きなら雪のチュリニ峠を疾走するA110の写真を一度は見たことがあるだろう。走りの良さだけではなく70年代のラリーシーンを席巻した華麗なモータースポーツヒストリーもA110の魅力。
敏捷なハンドリングと軽量なボディを武器に、初代WRCチャンピオンの栄光に輝いた競技車両としてのポテンシャルの高さも素晴らしいのだ。
A110を現代に復活させるにあたっては、このオリジナルA110のキャラクター継承が強く意識されている。
モダンにアレンジされてはいるがひと目でA110とわかるスタイリング。オールアルミモノコックによる軽量なボディ(1110kg)。
空力パッケージ優先でリアマウントを諦めてミッドシップとなったエンジンは、1.8L直4ターボ252ps。
伝統に従って(?)さほどパワフルではないのはご愛嬌だ。ロータス・エリーゼほどスパルタンではないが、ボクスター/ケイマンより競技志向で硬派なイメージ。新A110のポジションはそのあたりにある。
注目のプライスは最初の50台の“プルミエールエディション”で790万円。“素”のケイマン6MTより100万円ほど高いが、ケイマンもPDK仕様をベースにいくつかアクセサリーを選ぶと、ほぼ似たような価格となる。
■A110はサラブレッドではなく"生活感が漂う"
初代からの伝統に従って、コクピットはレース仕様っぽい機能美を感じさせるデザインだ。
試乗車の"プルミエールエディション"は、軽量なサベルト製スポーツシートが装着され、フルハーネスのシートベルトが似合いそうな雰囲気。
助手席トゥボードのアルミ製ステップも、ラリー車のナビシートを思わせる演出だ。
センターコンソール部の赤いボタンで始動するエンジンは、前述のとおり1.8L直4ターボだ。
日産系のブロックをベースにルノースポールがチューンしたユニットは252ps/320Nmを発揮。トランスミッションはゲトラグ製7速DCTのみが用意される。
試しに各ギアで自動シフトアップするまで全開で踏んでみると、トルクカーブに頭打ち感はなく6700rpmのレッドゾーンまで淀みなく吹き上がる。
ポテンシャル的には車重1トンちょいだから十分以上にパワフルで、たとえサーキットランでもパワー不足を感じることはないはず。
筑波サーキットなら1分5秒くらい楽に出せそうな実力はあると思われる。
ただし、エンジンのキャラクターはポルシェやフェラーリのように「いかにもサラブレッド」というものではなく、基本的には量産車からの流用という生活感がある。
この辺もオリジナルのA110と共通のテイスト。
■250psと侮るなかれ!! ブレーキの快感は最高
やはり、量産車ベースで巧みにスポーツカーを仕立てるのが、アルピーヌのお家芸というわけだ。
その代わりというわけではないが、ハンドリングとブレーキングはいかなる基準を持ってしても「ファンタスティック!」としか言いようがない。
いまどき250psでは絶対的な加速はそれほどめざましいものではないが、その速度エネルギーを殺すブレーキフィールの素晴らしさといったら、ちょっと他に比べるものがない。
軽量だからよく止まるといった単純なものではなく、リア荷重が大きいことによる減速時のバランスの良さ、ソリッドでコントロール性抜群のペダルフィール、絶妙なタッチで介入するABSなど、まさに「ブレーキングそれ自体が喜び」と言いたいほどに気持ちがいい。
これだけブレーキフィールが良ければ、減速からコーナリングへ移行する過渡域もスムーズそのものだ。
ステアリングレスポンスは過度にクイックではなく、いわゆる「切れは切っただけ」素直に反応するタイプだが、ロードインフォーメーションの正確さがピカイチ。
ハードにブレーキングしつつターンインといった厳しい状況でもフロントのグリップ感が手に取るようにわかるし、そこでブレーキ踏力をわずかに増減してフロントタイヤのグリップを探るようなデリケートな操作にすら正確に応えてくれる。
ドライバーの操作に対してこれほど超精密なレスポンスで応えてくれること自体が驚きなのに、それが十分以上にコンフォータブルな乗り心地/居住性と両立しているのがまた驚異的。
ハンドリングにすべてのリソースを投入したロータス・エリーゼのダイレクト感と、高い完成度を誇るボクスター/ケイマンの洗練ぶりが両立している、そんな印象なのだ。
じつを言うと、ぼくは35年ほど前にオリジナルのアルピーヌA110(1300VC)を購入し、15年ほど所有していたことがあるのだが、旧A110オーナーを持ってしてもこの新型は期待以上の仕上がりと断言できる。
単なるノスタルジー趣味ではなく、栄光の時代を築いたオリジナルA110のエッセンスを、きわめて洗練されたカタチで蘇らせてくれたのが本当に素晴らしい。思い出バイアス抜きに、ここ10年で最高のスポーツカーと評価したいと思います。
Posted at 2018/08/15 18:50:42 | |
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