2020年01月07日
【東京オートサロン】BH、スーパーGTオークション開催 ポルシェ935/ストラトス出品へ
2020年最初のオークション
text :Kazuhide Ueno(上野和秀)
photo:BH AUCTION
日本初の本格オークション・ハウスとして2017年に活動をスタートしたBHオークション。
以来、積極的な活動によりコレクターズカー・オークションを日本のクルマ愛好家に広めてきた。
そのBHオークションにとって2020年のキックオフ・イベントとなるのが、1月10日に東京オートサロン内で開かれる「スーパーGTオークション」である。スーパーGTとの共催されるもので、当日はスーパーGTに因んだチャリティ・オークションが併催される予定である。
主役は、ポルシェ935K3/80クレマー
出品されるのはスーパーGTを闘ったBMW Z4 GT3、ポルシェ911 GT3-Rに加え、GTアジアで活躍したマクラーレンMP4-12C GT3。
さらに、1995年のニュルブルクリンク24時間レースと1996年と1997年のスパ24時間レースで総合優勝を勝ち取ったBMWワークスカーの320 ST、日産プリンス・スポーツコーナーで1972年に製作されたスカイライン2000 GT-Rのレーシングモデルと、マニアックなラインナップが用意された。
スーパーGTオークションと謳うが、実質的な主役といえるのがグループ5シルエット・フォーミュラ時代の王者だった「ポルシェ935K3/80クレマー」。
930ターボをベースにクレマーが935K3/80として製作したもので、エンジンは3Lのル・マン仕様が搭載されレースで活躍した。
近年はル・マン・クラシックを始めとする国際格式のクラシック・レースに参加していたこともあり、FIA HTPペーパーも取得しており即参戦可能なコンディションに保たれている。
現時点では予想落札額はまだ発表されていないが、開催日までには発表される予定。国際的に見てもオークションにほとんど姿を現さない貴重なモデルなだけに、硬派なポルシェ・ファンには見逃せない1台となろう。
ランチア・ストラトスも用意
ポルシェ935 K3/80クレマーと共に注目したいのが、「ランチア・ストラトス・グループ4仕様」だ。
ストラダーレからコンバートしたものだが、1976年のワークス仕様に仕上げられ、その完成度は高くランチア社の製造証明書も付属している。こちらの予想落札額は7000~8000万円と発表されている。
なお出品される車両はオークション開催時までに変更される可能性もあるので、最新情報はBHオークションのウェブサイトなどで確認されたい。
オークションは、千葉県・幕張メッセで開催される東京オートサロン内のイベントホールで、2020年1月10日に行われる。
参加には入札者登録が必要で、ウェブサイトから事前に申し込むか、もしくは手続きに時間はかかるが当日の申し込みもできる。
Posted at 2020/01/07 23:20:39 | |
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自動車業界あれこれ | 日記
2020年01月07日
ゴードン・マレー、新作「T.50」を語る。アナログ ドライバーに捧げる最後のスーパーカー【前編】
Gordon Murray
ゴードン・マレー
ゴードン・マレーが新しいスーパーカーを造る。その発表を聞きつけた我々は、おっとり刀でマレーの元を訪ね、膝を突き合わせてその全貌を語ってもらった。ここではその前編をお送りする。
1トン未満の車重+自然吸気V12+MTという奇跡のレシピ
「1万2000rpmまで回る650bhpのV12を背中に積んだロータス・エリーゼ。まさにそんなクルマだよ!」
無論この新しいスーパーカーがエリーゼをベースに造られていないのは明らかだ。マレーは「T.50」と名付けられた新しいハイパーカーが、いかに獰猛で荒々しいのかをわかりやすく表現したにすぎない。
堂々と、そして朗々と語る彼の言葉を聞くうちに、聞き手の心拍数もどんどんあがっていった。マエストロの調子はいまや最高潮だ。興奮のほどが表情にも声音にもはっきり表れている。
マクラーレン F1から四半世紀。マレーはますます勢いを増して、いよいよスーパーカーの物語に帰ってきた。
T.50の開発には選ばれし技術者たちが携わっている。たとえばエイドリアン・ニューウェイはそのひとり(F1及びCARTのカーデザイナーでエアロダイナミクスの専門家。2006年以降はレッドブル レーシングに在籍)。彼がラビットハッチ(兎小屋)を彷彿させるハッチゲートを提案したと聞けば、きっと貴方も納得するだろう。
しかし、何より我々が息を飲んだのは、そのあまりにも純粋主義的な信条である。車重は1トンに満たず、エンジンは1万2000rpmを優に超えて天まで吹け上がる自然吸気のV型12気筒。組み合わされるのはもちろんマニュアル・ギアボックス・・・めまいがしそうではないか。
マクラーレン F1で目指した夢を、最新技術でもう一度
マレーに言わせれば、T.50を開発する理由は明快だ。
「自動車の設計キャリア50年を祝うのに、もう1台のスーパーカーを造ること以上にふさわしい方法があるだろうか。私はそう考えました。現代最新のスーパーカーのそれぞれについて、自分で残念に感じているあらゆる要素を取り除いたクルマをね。理由のふたつ目は、それを誰もやっていないということ。かつてマクラーレン F1で掲げた目標の達成へ再び乗り出すことは至極当然に思えたんです。私のツールボックスにしまってある技術や素材のすべては、30年の時を重ねて、進化し蓄積し続けてきたのですから。T.50の車重を1トン未満に抑えられたのもそのおかげです。現時点で、燃料以外の液体類をすべて充填した状態の車重が983kg。乾燥重量でごまかすようなことはしません。クルマが走ることのできる状態でなくては意味がありませんから。我々が考える真の重量とは、つまりそういうものなのです」
マレーとクルマについて語り合えるのは、とても大切な時間だ。自信に満ち溢れていて人柄もよく、紡ぎだす言葉はどれも魅力的。洋服の着こなしも粋で華やか。彼は手元に置いたスケッチブックへさらさらと手際よくペンを走らせていく。グレイヘアーをオールバックに撫でつけて、南アフリカ流のアクセントの英語で歯に衣着せぬ意見をずばりと言う。そして、これと思った場所へまっすぐ迷わず飛び込んでいくのがマレーという人なのだ。
「このプロジェクトを単なる懐古主義とは思われたくないし、実際そうではありません。ベースとしたのは、かつて我々がマクラーレン F1で定めた目標と信条そのもの。30年前のそれが、現在もそのまま通用するのです。かつ、2トンの電気自動車や複雑なハイブリッドが主流になる前、つまり今こそ実現するべきだと考えました。EVもHVも、バッテリーがフルに充電されていなければ最大の性能は発揮できません。たとえばそういうクルマを指して『こいつの最高出力は1200hp、最大トルクは800lb ft(1085Nm)だ』なんて言われると、正直いってうんざりしてしまう。それが発揮されるのは極めて限られた状況下のみ。結局は看板倒れなのです」
「マクラーレン F1の開発時に、性能目標は一切立てませんでした。これは本当です。報道陣に対して、最高速度や0 – 200m加速のタイムについて、目指すべき数字を語ったことは一度もありません。軽くてパワフルにしたら、速いクルマが完成した。そういうことです。最高速度や加速、サーキットのラップタイムで競い合うことにはまったく関心がありません。ましてや馬力にも。私がやろうとしているのは、究極のドライバーズカーをもう一度定義し直すこと。かつてのマクラーレン F1はそういうクルマだったし、ある部分では今もそうあり続けています」
誰でも運転できるクルマではいけない
マレーは軽いクルマが好きだ。
「以前、フェラーリやアストンマーティンなど、最新のスーパーカーを全車乗り比べてみたんです。しばらくの間一緒に過ごすことになったマクラーレン 720Sは、かつて私が運転した中で最も優秀なスポーツカーかもしれません。しかし、総毛立つような感覚はなかった。720Sから降りたとき、あなたはこう思うでしょう。『おばあちゃんでも運転できちゃうだろうな』と。サウンドもそそらない。マクラーレンらしくないスタイリングも好きになれませんでした。風洞実験で行き着いた結果だとか、260mph(約420km/h)を目指したらこうならざるをえないとか、そういう説明は気に入らない。そんなものは弁解にすぎないでしょう」
そして話題はマクラーレン F1に戻る。
「パッケージングのスタンダードを書き換えたのもマクラーレン F1でしょう。エンジンのサウンド、ペダルやシフトレバーやステアリングホイールから伝わる特別な感触や独特の視界、それにエアコンや十分な荷室といった日々に使える実用性も備えていた。我々はもう一度それを形にしようとしています。アナログドライバーのための本物の偉大なるスーパーカー。その最後の1台になるかもしれないと思っています」
ところでマレーは、現代のクルマを愛せるのだろうか。実際彼は、愛車のクラシックカーをじつに大切にしているようである。私たちが英国サリー州にある彼のオフィスを訪ねたときは、玄関前の一等地にロータス・セブン・シリーズ2が停まっていた。
しかし、少なからず興奮した面持ちでマレーは言った。
「新型のアルピーヌ A110を買いましたよ。実に楽しいクルマです。軽ければパワーもトルクもほどほどでいいのだということを証明してくれる。運転を楽しむために必要な速さをしっかり備えているしね。スーパーカーではないけれど、素晴らしい1台であることに間違いはありません。幅がもう100mmちょっと狭ければ、完璧な“motor car”になっただろうけどね」
マレーはクルマのことを決して“car”と略さない。かならず“motor car”と言う。(続く)
TEXT/Adam TOWLER
PHOTO/Angus MURRAY
ゴードン・マレー、最新作「T.50」の核心に迫る【インタビュー 後編】
Gordon Murray
ゴードン・マレー
マレーが聞いた顧客からの意外な声
マレーが新しいマクラーレン F1を造るとなれば、富裕層の顧客がだまっていないだろう。
「数年の間は、いろいろ声をかけられました。『もっとほかのクルマを造って欲しい』『大きくしないでくれ』、それに『なるべく小さく、使い勝手をよくして、マニュアル・トランスミッションにして欲しい』なんてね」
最後の声にマレーは驚いた。
「ひとつだけ諦めようと思っていたのが、マニュアル・トランスミッションでした。DSGは期待はずれで重量もかさむため、採用するつもりはなかった。狙いをつけていたのはシーケンシャルMTでした。それなのに『マニュアル・トランスミッションにして欲しい』という声があがった。彼らは、愛車の旧いポルシェ 911を引っ張り出したり、クラシックカーと再び触れ合いを持とうとしていると口々に言うのです。また、所有するスーパーカーは幅が広いから英国、とくにAロード(訳者註:英国の道路にはすべてコードが付されている。Mはモーターウェイ、Aは幹線道路、Bが一般道)などでは持て余してしまうと」
T.50は、マクラーレン F1より30mm幅広く80mm長いが、ポルシェ 911よりも“轍”はずっと小さい。
T.50のエンジンと空力性能以外はタダみたいなもの
言葉を決して飾ろうとしないマレーは、マクラーレン F1の欠点さえ臆せず語る。そのヘッドランプを「まったく不満足」と称し、ブレーキは「12ヵ月かけてカーボン・ブレーキを開発したが、できなかった」という。1.4kgを削ぐためにエアコンの質を落としたのもよくなかった、と。
しかし、T.50のエンジンと空力性能の前には「ほかの部分なんてタダみたいなもの」と冗談めかして言う。「自然吸気のV型12気筒。それ以外の選択肢はありませんでした」マレーはそう断言する。
「諸元データをもってコスワースを訪ね、まず目をつけたのが3.3リッターのユニットでした。ところが計算してみると、3.3リッターだと車重が900kgを上回ってしまう。3.9リッターなら1000kg未満で収まる上に、トルク・ウェイトレシオもよくなりました。しかも6.1リッターのマクラーレン F1よりもパワフルだった。このユニットをベースに2種類のセッティングを考えています」
マレーはさらに言葉を重ねる。
「まずは燃料噴射のタイミングを調整し(マクラーレン F1のスロットルワイヤーとは違い、T.50のそれは電子制御だが)、回転数とトルクを抑えたマイルドな仕様がひとつ。こちらは買い物やクルージング向けです。“フェラーリ流レヴ”と我々が呼ぶ、9000rpmまでのセッティングになっています。もう一方は1万2400rpmに達する仕様ですが・・・完成が待ちきれませんね。開発を始めたそのときから、私はこのクルマを感じ、走る姿を頭にありありと思い浮かべることができたんです。いまだかつて味わったことのない、最高のドライビングをきっと体験してもらえるでしょう」
「故・ポール・ロッシュ(1934~2016年。マクラーレン F1のV12を造ったBMW M社の名エンジン設計者)は素晴らしき友人であり、天才でした。私は彼に、フェラーリよりも高い回転数とパワーが必要だと言った。それを見事に実現してくれたんです。エンジンレスポンスも鋭く、カーボン製のクラッチプレートも採用しました。マクラーレン F1のオーナーはギアをニュートラルへ放り込んでスロットルペダルを“バン!”と踏み込むのが好きなんです。まるでリッターバイクみたいだからね」
1万2000回転まで0.3秒で到達するV12エンジン
もちろん、T.50のエンジンはさらに進化している。
「コスワースに1万2000回転以上まで回らなければいけない、と言うと彼らは歯ぎしりしながらも実現してくれました。アイドリング状態からレヴリミットに達するまでの所要時間はたったの0.3秒。もちろん透過式のアナログのエンジン回転計をしっかり配置しています」
T.50のエアロダイナミクスを考えるにあたり、マレーはロードカーの空力をいちから見直そうとした。マクラーレン F1に通じる美学を踏襲すべく、スポイラーやエアインテークの類いを排除。“ファンカー”と呼ばれた1978年のブラバム-アルファロメオ BT46Bの精神をなぞるように電動ファンを用いている。
「生まれてはじめて、自分の脳がパンクしそうでしたよ。我々の前には数々の可能性が横たわっていました。結果、導き出したのがブレーキング時にはダウンフォース量を自動的に増やし、圧力中心も移動できる構造です。さらに“ハイ・ダウンフォースモード”を設けることもできる。ダウンフォースを減らしたい場合にもファンが活躍します。仮想ロングテールともいえる“トップ・スピードモード”も考えています。より空気抵抗を減らし、燃焼消費も抑える設定ですね。アイデアはまだまだ尽きません」
話は最新作「T.50」のシャシーへと移る
「ショックアブソーバーは、コンベンショナルにこだわるべきか、電子制御式のアダプティブダンパーを選ぶべきか検討しています。私の第六感は前者にすべし、と囁いていますが。アルピーヌからは大切なことを学びました。気まぐれで造った部分はひとつもなく、すべてが正しく設計されていました。前後ともに純然たるダブルウィッシュボーン・サスペンションで、コンプライアンスブッシュの選択も適正、ねじり剛性も高く、しかも車体が軽い。必要なものをすべて備えているんです。我々もこのようにシンプルであるべきだと考えています。可変スプリングレート式のプッシュロッド・サスペンションを採用したのは、空力管理のためにほかなりません」
そう言われると、A110の弱点と言われているステアリングのことを尋ねないわけにはいかなくなった。
「A110の中でもっとも魅力を感じないのはステアリングですよ。最近はどんどん物事が進歩していって、人々は“マニュアル”ステアリングの感触を忘れてしまっている。たとえばロータス・エランやフェラーリ F40のステアリングは、世界一素晴らしい仕上がりだと思います。T.50には、今回まったく新しいシステムを用意しました。操作のアシストはもちろん行いますが、“感触”も提供します。現在、特許の申請を考えているので詳細は語れませんが、油圧ではなく、完全に新しいシステムと申し上げておきます。きっとそのステアリングが正確な操縦性をもたらしてくれるでしょう」
それからマレーは、なぜ最近のステアリングシステムに出来のよくないものが少なくないのか、明快な教えを我々に与えてくれた。
“オール ブリティッシュ”の体制で造るT. 50は、マレーにとっての誇りだ。100人の顧客のそれぞれと話しがしてみたいと思っているし、開発工程についてもつまびらかにしたいと考えている。
「この次にもまた新しいクルマを造っていきますが、年間100台以上生産することは決してないでしょう。私はアストンマーティンやフェラーリに相対する自動車メーカーになりたいわけではありません。我々は、人々が本当にいいと思ってくれるような楽しいクルマを造りたいだけなのです」
TEXT/Adam TOWLER
PHOTO/Angus MURRAY
Posted at 2020/01/07 23:14:25 | |
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