2020年04月05日
【スーパーカー年代記 037】ランチア デルタS4はグループBを終焉させた悲運のスーパーウエポン
クルマ好きなら一度は憧れたことがあるだろうスーパーカー。その黎明期から現代までをたどる連載企画。第37回は「ランチア デルタS4」だ。
ランチア デルタS4(1985-1986年)
ラリー 037で1983年のWRCメイクスチャンピオンとなったランチアだが、もはやミッドシップRWDでは限界が見えており、次なるウエポンとして1985年末に送り出したのが、デルタS4だった。その車名から推測できるように、ボディシルエットはFF2BOXのデルタを継承しているが、クロームモリブデン鋼によるフレームにグラスファイバー製のボディを組み合わせ、ノーマルのデルタとの共通部品はきわめて少ない。ちなみに、S4のSはスーパーチャージャー、4は4WDを意味する。
グループBの規定によりデルタS4は200台が生産され、このうち20台は本来の目的であるWRCへ参戦するためのコンペティツィオーネに改良され、残りの180台がストラダーレとして限定販売された。ストラダーレではグラスファイバー製だったボディは、コンペティツィオーネではさらなる軽量化と剛性の確保を狙ってカーボンファイバー製へ変更され、フレームには一部チタニウムが用いられていた。
ミッドシップ搭載されるエンジンは、KKK製のターボチャージャーとアバルト製のスーパーチャージャーというダブルの過給システムを備えた1759ccの直4DOHC 16バルブ。これは前回紹介した205ターボ16同様、当時の規定で過給器係数の1.4をかけても排気量を2500cc以下に収めるためだった。また、それぞれの過給器用にインタークーラーも2つ備えられていた。
ターボで過給された空気はインタークーラーを経てスーパーチャージャーに導入され、再度インタークーラーで冷却されてエンジン燃焼室に至るという、複雑な過給システムだった。パワースペックはストラダーレでも最高出力は250ps、最大トルクは29.7kgmを発生したが、WRC参戦マシンでは最終的には600psを超えるレベルにまで増強されていたという。
もちろん駆動方式はフルタイム4WDで、センターデフにビスカスカップリングを採用していた。サスペンションは前後ともラリー 037からランチアが積極的に採用してきたダブルウイッシュボーン。そのジオメトリー設定の自由度は高く、フロント側ではウイッシュボーンのピボット変更も可能な構造だった。
1985年11月のRACラリーでデビューウインを飾ったデルタS4は、その後もランチアの狙いどおりの大活躍を続けるが、1986年のツール・ド・コルスでドライバーのトイヴォネンとコ・ドライバーが事故死。これを機にグループBによるWRCは1986年シーズンで終了することとなり、デルタS4はランチアのワークスWRCマシンで唯一、無冠のモデルとなった。
ランチア デルタS4 ストラダーレ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4005×1800×1400mm
●ホイールベース:2440mm
●重量:1200kg
●エンジン種類:直4 DOHCターボ+S/C
●排気量:1759cc
●最高出力:250ps/6750rpm
●最大トルク:29.7kgm/4000rpm
●駆動方式:縦置きミッドシップ4WD
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:205/55VR16
Posted at 2020/04/05 09:50:18 | |
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2020年04月05日
【725ps超えか】アストン マーティン 新しいV6ハイブリッドエンジンを自社開発
1968年以来、初の自社製エンジン
text:Lawrence Allan(ローレンス・アラン)
アストン マーティンは、自社設計の新しいハイブリッドV6パワートレインの詳細を、初めて明らかにした。
このエンジンは、2022年からヴァルハラの中型スーパーカーに搭載予定となっており、すでに広範な動力計試験を受けている。
1950年代から1960年代のアストンの有名なエンジニアである、タデク・マレックにちなんで、TM01というコードネームが付けられている。
この、ターボチャージャー付き3.0L V6は、同社にとって1968年以来、初の自社製エンジンとなる。
通常のハイブリッドと、プラグインハイブリッドの両方を含む「新しいハイブリッドシステム」に採用される。
現段階の情報では、725psを発生するDBSスーパーレッジェーラの最上級モデル以上のパワーを発揮する、同社の最も強力なエンジンとなると言われている。
極めて高いパフォーマンス
6つのシリンダーヘッド内のターボ取り付け部分の「ホットV」構造と、ドライサンプを特徴としている。
コンパクトなため、フロントマウントとミドマウントの両方のアプリケーションに、適応可能となっている。重量は200kg未満。
アストンは、パワーとトルクのレベルは「それぞれのモデルに求められる特性によって決定します」と述べており、ほかのモデルにも、この新しいユニットが採用される可能性を示している。
また「ミドエンジンのスポーツカーの極めて高いパフォーマンス」を提供し、将来のユーロ7 CO2規制に適合するとのことだ。
このエンジンは、2023年型ヴァンキッシュにも搭載される予定となっているが、ハイブリッドDBXへの採用については、まだ明らかにされていない。
アストン マーティンのCEO、アンディ・パーマーは、新しいエンジンについて「パワートレインの自社開発という大きな課題に、チーム一丸となって挑戦しています」
「今後、このパワーユニットは多くのプロジェクトに必要不可欠なものとなります。大きな成果をあげることが出来ると確信しています」と述べている。
Posted at 2020/04/05 09:43:06 | |
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2020年04月05日
IHI:世界初、ジェットエンジン後方に搭載可能なエンジン内蔵型電動機を開発
IHIは本年2月、ジェットエンジン後方のテールコーン内部に搭載できるエンジン内蔵型電動機(250kW級)を、国内各社と連携し、世界で初めて開発した。
ジェット旅客機の運航機数は、旅客需要の増加に伴い、今後20年間で約2倍に増加すると見込まれる一方で、国際航空運送協会(IATA)は、航空機のCO2排出量を2050年に2005年比で50%削減する目標を掲げている。このためには、従来の技術改善のみならず、安全性・経済性を維持しつつ、環境性を飛躍的に向上させる新たな航空機システムの実現が必要だ。IHIは、航空機のCO2排出量削減に向けた技術革新として、エンジンを含む航空機システム全体のエネルギーマネジメントの最適化を目指す「航空機・エンジン電動化システム(More Electric Architecture for Aircraft and Propulsion:MEAAP」を提唱している。その実現に向けて、本年2月、ジェットエンジン後方のテールコーン(*1)内部に搭載できるエンジン内蔵型電動機(*2)(250kW級(*3))を、国内各社と連携し、世界で初めて開発した。
MEAAPは、単なる機器の電動化にとどまらず、現状、有効利用されず機外に排出されている客室の空気を電気機器の冷却に再利用するなど、エンジンを含む航空機システムの最適化により、飛躍的な低燃費の実現を目指すもの。これは、従来の複雑な油圧・空気圧系統などを不要とすることから、設計自由度や整備性の向上および質量軽減を可能とする。この実現に向け、IHIは国内外各社と連携し、様々な研究開発に取り組んでいる。
MEAAPを実現するための最大の課題のひとつが、消費電力の増大に対応する大容量の電動機の開発である。従来の航空機は、ギアやシャフト機構を介して、エンジン外側に搭載した電動機とエンジン回転軸をつなぎ発電しているが、この方式の大容量化は、機器の大型化による空気抵抗増加などを招く。そこで、新たに電動機をエンジン回転軸に直結するエンジン内蔵型電動機に関する研究開発が国内外で行われている。
エンジンのうち、最も運用性や整備性に優れる電動機の搭載位置はテールコーン内部だが、振動・衝撃・高温など、電動機にとっては過酷な環境であり、大容量電動機をエンジンに搭載する方法、またエンジンの排熱に対する電動機の耐熱性が技術課題となっていた。IHIは、300℃耐熱絶縁被膜を有する高密度成形コイルなどの電動機の高出力密度化に有用な材料技術を駆使した部品開発とともに、ジェットエンジンの研究開発で培った熱・流体・構造技術を活かした新開発の排熱システムを組み合わせて、テールコーン内部にエンジン軸直結で搭載できるエンジン内蔵型電動機を開発した。本年2月には、IHI技術開発本部(神奈川県横浜市)にて地上実証試験を実施し、定格出力250kWを達成した。
なお、本開発は新エネルギー・産業技術総合開発機構の「航空機用先進システム実用化プロジェクト」の委託業務「次世代エンジン電動化システム研究開発」において実施したもの。
IHIは、今後、この技術革新に求められる機器の電動化開発を継続して行い、その後、航空機システム全体の電動化・最適化に取り組み、2030年代にMEAAPの実現を目指している。今後、エンジン内蔵型電動機のジェットエンジン搭載実証の検討を加速するとともに、次世代航空機で期待されるハイブリッドエンジン化などを目指し、さらなる大出力化に向けた可能性を検討していく。
(*1) テールコーン:高温となるジェットエンジン低圧タービン後方に位置し,排気の流れを整える部品。
(*2) 電動機:本稿においては,電動機(Electric Motor)だけでなく発電機(Generator)の意味も含んでおり,航空機に必要な電力を発電するとともに,将来的に電力でファンを駆動することも目指している。
(*3) 250kW級:現在運航中の旅客機に搭載されている最大の発電機(250kVA)以上の出力を有する。
Posted at 2020/04/05 09:37:25 | |
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