今年の4月に発売された新型「ステップワゴン」をレンタカーで試すことが出来た。出張の際に新千歳空港でレンタカーを受け取り、移動の足として「ステップワゴン」を使いながら検証しようという計画だったが、あいにく札幌は11月としては記録的な大雪(62年ぶり)に見舞われており、街中の除雪が追いついておらず、随所で渋滞が発生するなど、道路環境としてはかなり残念な状態であったが、逆にもし「ステップワゴン」がマイカーだったら...とリアルな視点で試せたようにも思う。このクルマは山道を攻めてインプレッションを綴るクルマではないのだから。
グレードは「G」(4WD/CVT)で価格は271.7万円。新型「ステップワゴン」の目玉であるテールゲートに横開き式のサブドア「わくわくゲート」が搭載されるグレードであり、確かに乗り出す前から多少の目新しさと言うか、盛り上がり(笑)を感じつつ、いざ運転席へ。
新型「ステップワゴン」のボディサイズは全長4690mm全幅1695mm全高1855mmでホイルベースは2890mm。車重は1740kgである。5ナンバー枠を目一杯使ったボディで、上方部の絞り込みも最小限に留めた見事な「箱型」である。海外輸出を考えない国内仕様車であり、このカテゴリーは安定した需要がある。ライバルであるトヨタ「ノア・ヴォクシー・エククァイア」・日産「セレナ」と永年に渡る三つ巴のセールス合戦を繰り広げているから、各社としっかり丁寧に商談を進めると結構激しい値引き合戦になる事でも有名。まぁ売れるクルマだからこそ、販促にも開発にも費用がかけられると言う訳で、今回「ステップワゴン」にはホンダ初採用となる直噴1.5L VTEC TURBOエンジンを搭載。直噴システム・小径タービン・デュアルVTCなどによる低回転域でのターボ効果により、常用域で2.4Lエンジン並みのトルクを発生し、多人数乗車時や坂道でも、スムーズな力強さを実現したとホンダが胸を張る最新鋭のダウンサイジングターボエンジンである。出力は150ps/5500rpm ・ 20.7kg-m/1600-5000rpmを発揮し、燃費(JC08モード値)は15.4km/L(4WD)である。
我が家は夫婦二名だから、「ステップワゴン」の様な三列シート車を日常で欲する事は皆無。それ故ある意味一番縁遠いジャンルのクルマかも知れない。正直、新型「ステップワゴン」の走りには大きな期待をしておらず、とりあえず新開発の直噴1.5L VTEC TURBOエンジンを試す事が目的であったのだが、新型「ステップワゴン」は総じてストレスの少ない「良いクルマ」だった。これはちょっとした収穫だったと思う。
全体的に実用的で、スッキリとしたデザイン言語で統一された内外装は最近のホンダらしいセンスを感じさせるもので、好感が持てる。(一時の宇宙船デザインはイマイチだったかと)どことなく、大ヒットした初代「ステップワゴン」を彷彿とさせる無駄なラインが少ないボディはファミリー層が飽きずに長く乗れそうだ。ライバルであるトヨタ「エスクァイア」の路線とは真逆のアプローチで、変にギラギラした偽物の高級感はこのクラスには不要だと思うが、実際の購買層がどう考えているかは判らない。新型「ステップワゴン」でソッチ系を担当する「スパーダ」は正直やり切れていないというか、半端な感じがする。リアルなアメリカンテイストもホンダの得意分野なんだから、どうせなら「N-BOX /(スラッシュ)」くらいの弾けっぷりを期待したいところだ。
一言で新型「ステップワゴン」を表現するならば、「物凄く運転しやすいクルマ」。動力性能も必要充分で、直進安定性も高く、乗り心地も適切(柔らか過ぎず、硬すぎず)。コーナリングも実用車としては得意な方だと書いて問題ない。パワステの設定がかなり軽い味付けなのは私の好みではないが、これも一般的には何ら問題はない。また、ボディサイズが5ナンバー枠内とは言え、全長は4690mmもあるから「コンパクト」とは呼びにくいサイズ。軽自動車やハイエースも真っ青と言う程に真四角なボディだから、車庫入れが抜群にしやすい。これなら運転に自信が無い方にもおススメ出来る。
自慢の「わくわくゲート」や床下に格納出来る三列目シートも今後このクラスのミニバンには必須の機能になるのではないか。私なら、この二点だけでも充分に「ステップワゴン」を選ぶ理由になる。
まぁ期待以上によく走り、各部の不満が無かったので驚いたわけだが、冷静に考えると、通常のオプション品や諸経費も入れると300万円を軽く突破するクルマ。これ位の走りはサラッとこなしてくれなければ投資する甲斐が無いのも事実。このクラスも随分と高価になった印象がある。
期待の直噴1.5L VTEC TURBOエンジンだが、1740kgの重いボディを苦も無く走らせ、ストレスを感じさせないのは立派。CVTとの相性も良く、過去に乗ったホンダCVT車の中で(私の知る限りにおいて)一番違和感がなかった。但し、燃費は期待外れ。大雪で平均車速が伸び悩んだことも要因だろうが、9.8km/L(満タン法)に留まったのは残念。但し、リアルタイム4WDシステムも進化しており、以前のホンダ4WD車は前輪のスリップを感じてから後輪へトルクが伝わるまでのタイムラグが大きく、あまり良い印象が無かったが、今回は非常に頼もしく感じられた。一方で、安全装備についてはこの価格帯にも関わらず、「Honda SENSING(衝突軽減ブレーキ等)」や「サイドエアバッグ(一列目)+サイドカーテンエアバッグ」がメーカーOPに留まるのは残念。一般的なファミリー層にこれらの安全装備を自らの選択として高額な追加費用を求めるのは誠実な商売ではない。これはホンダだけの問題ではないが、非常に残念だ。
新型「ステップワゴン」のテストは消化不良な環境で終えてしまっただけに、機会があれば、また違う季節の路面環境時に改めてテストをしてみたい。
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2015/11/28 19:11:49