まだ納車待ちをしている方には大変心苦しいが、私の「S660」ライフは終了とした。早い話が売却したのだ。購入当初からあまり長期間保有は考えていなかったが、このタイミングでの売却は想定外だった。
少し振り返ってみると、2013年の東京モーターショーで「ハスラー」と「S660」の購入を即決。「ハスラー」は諸般の事情により、OEM車のマツダ「フレアクロスオーバー」に変わったが、モーターショー閉幕後直ちに発注し、翌年2月末に「コペン」と入替で納車。一方「S660」は当初の噂より発売が遅れ、2015年4月まで待たされた訳だが、私が気がついた時には既に水面下での事前予約が殺到で年内納車は絶望的と言う状況の中、運良く(?)近所で初期配車枠が売れず持て余していた稀有な販売店をキャッチ出来たお陰で状況は一変。3月末発注→7月末納車となった。(まぁ逆を言えば、お祭り騒ぎの中でも売れ残る様な駄目な販売店でもある訳で、見事にアフターは最悪だった。)
ここで問題が発生。よもや「S660」がこんなにも早く手に入ると思わず、その直前にネットで発見した格安屋根開き物件として「二代目デミオ」のキャンバストップ仕様を衝動買いしていた。そんなこんなで自身初の経験となるマイカー三台所有体制に突入となった。まぁそれぞれそんなに高価なクルマではなく、維持費の安い軽自動車二台と、全てが気楽(笑)な激安中古「デミオ」だから助かった。(三台分の自動車保険はそれなりの金額になったが)なんにしても、今年はクルマ趣味を充分満喫出来たと思う。
さて本題の「S660」について、納車から約四ヶ月・2500km程を走行し売却となった。率直なところ、「S660」を買った事に満足しているし後悔は無いが、あまり深い愛着を感じる事が出来なかった。背景には棚ボタ的に「S660」が買えてしまった事があるかもしれない。
贅沢な話だがエンジンに対しボディや足回りが勝ち過ぎていて、スポーツカーとしての刺激や面白みに少々欠けた様に感じている。今後はもう少し癖があっても良いから、スポーツカーを駆る実感とか乗りこなすヨロコビを追及し、絶え間なく熟成を進める事をホンダには期待。特に、クルマのキャラクターにマッチしない事務的なエンジンサウンドは要改良ポイント。音量ではなく、音質の問題。パワーリアウインドウを積極的に下げて、エンジンサウンドを聴きたくなる様に作り込んで欲しい。過去のホンダVTECエンジンと同じにはならないだろうが、多少燃費を犠牲にしても手を入れるべきポイントだ。私の環境で「S660」の平均燃費は18.5km/L(満タン法)であった。あらためてMTは元来燃費が良いことを証明した訳だが、このクルマに低燃費なんて微塵も期待していない。もっとギア比をロー側に振って低速・低回転域の加速力を増しても良いのではないか。いずれ「TypeR(?)」をリリースする為にあえてやり残した部分なのかもしれないが、個人的にはもう少し辛口の味付けを期待していた。
正直、以前乗っていた「コペン」の方が全般的にドラマチックな味付けで、特にエンジンはサウンド・パワー共に(体感的には)スポーティだった。アチコチからギシギシ・ゴリゴリと低級音が鳴っていた事も許せるほど楽しいクルマだった。愛らしいスタイルも気に入っていたし。
一方で、「S660」の美点はミッドシップレイアウトの素性が生きるコーナリング。ハイグリップなネオバを履くこともあって、喜々としてコーナーに飛び込んでいけるのは大したもの。アジャイルハンドリングアシストの効果もかなりあるだろうが、不自然なフィーリングではなく、不必要に山道を駆りコーナーを攻めたくなるのは美点だ。また、軽スポーツとしては贅沢な四輪ディスクブレーキも特筆に値する。フィーリングも良く、実際の効きも素晴らしい。コーナーの立ち上がりでもう少し加速力が欲しくなるのは前述のとおりだが、やはりこのクルマはクネクネと入り組んだ山道を走り込んでナンボのクルマ。軽自動車初の6MTもショートストロークかつカチカチと節度感のあるシフトフィールはホンダスポーツの共通点で、「S660」を積極的に選ぶ理由となるものだ。私は約2500km程の走行距離に終わってしまったが、その大半を山道で存分に「S660」のコーナリング性能を楽しみながら距離を刻むことが出来たのは良い経験となった。世間では案外理解されない様だが、法定速度+α程度の速度域でも充分にスポーツカーを楽しめるのが軽スポーツの魅力である。
当然ながら全て承知の上で購入したつもりではあったが、やはりちょっとした手荷物なども全く積めないストイックなパッケージ(特に二名乗車時)はこのクルマに乗る回数を減らす要因となった。純粋にドライブを楽しみたい。そして物理的にもそれが許されるタイミングで有れば問題はないが、現実的にはドライブを楽しんだ先でショッピングをして帰る程度の事は日常茶飯事。そうなれば「S660」ではないクルマを選択するか、ドライブ終了後に別のクルマへ乗り換える手間が発生する。「コペン」と最大の違いはこの部分。また、折角のオープンカーであっても巻き取り式の「ロールトップ」は取り外し・収納が面倒で実際に屋根を外して走行したのは数回程度。どうしても短時間のドライブや雲行きの怪しいときは躊躇してしまった。まぁ同時期に簡単便利で大開口の「デミオ・キャンバストップ」が在籍していたから「S660」の不便さが際立ったのかも知れぬ。若い頃に乗っていたスズキ「カプチーノ」も屋根の開閉と外したトップの収納が面倒でほとんど屋根を開けなかった事を思い出した。もし私が遠方の職場までクルマ通勤をするとしたら、「S660」で通うのも悪くない。通勤なら荷物も限られる。
「S660」は未だ納車待ちが長く、今注文しても来年夏以降とか。そのお陰で買取価格も驚きの条件が提示された。車両本体はおろか、付属品や諸費用まで含めた支払総額にほぼ匹敵する買取金額だったのは助かった。現時点で「S660」の後継車は決めていない。これからは何かと動きが鈍くなる冬のシーズン。また来春以降にじっくり考える予定。とはいいつつも、「アルトワークス」が遠くの方からこちらへ手を振っている気がするのだが...。
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S660 | クルマ
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2015/12/16 14:28:27