デミオが納車されて早くも約一ヶ月が経過。走行距離も1300kmを突破したのでそろそろファーストインプレッションを。但し、納車時からスタッドレスタイヤを履いているので、ハンドリングやロードノイズ等については暫定評価としたい。
「デミオ」の総合的な評価としてはスタイリング・動力性能・ハンドリング・コストパフォーマンス等を含め、充分に合格点を与えられる唯一の国産コンパクトカーと感じている。5ナンバーサイズのコンパクトカーでここまで真正面から欧州車と互角に渡り合える国産車が現れたというだけでも評価に値するのではないか。これまで私自身もコンパクトカーについて国産車は価格が安いんだから、質感・走り・安全装備等が多少劣っていても止む無しとダブルスタンダード的な評価をしていた部分がある。しかし、新型「デミオ」は欧州勢と同一の物差しで評価出来る事が嬉しい。どうしても「デミオ」はディーゼルエンジンばかりに話題が集中しがちであるが、このクルマの魅力はガソリンモデルでも色褪せ無い。むしろガソリンの普及グレード「13S」が145.8万円(2WD/6AT)で買える事がとんでもないバーゲン。正直、もう一台セカンドとして「13S」の5MTが欲しいくらいだ。
個人的にCVTの搭載が許容出来るのはエンジンのアウトプットが限定される軽自動車まで。それ以上の排気量でCVT搭載車をマイカーとしては選びたくない。となると、選択肢は事実上国内メーカーではマツダに限られる有様。CVTの採用は安易なカタログ燃費の向上だけを意識した誤った選択であり、世界的には6速以上の多段式ATへの回帰がトレンド。アイシンとジヤトコが本気になって開発すれば直ぐにも解決しそうな問題なのに...。
先日MCを実施したタイ生産の三菱「ミラージュ」は上級グレードの「G」が148.5万円(2WD/CVT)とデミオ「13S」より若干高価だが、その内容は貧相な1.2L 3気筒のパワートレーンをはじめ、全般的にお粗末なもので、デミオとの比較に値しない。生産コストの安いタイから輸入する割に、装備・品質・価格のすべてが劣り、消費者にとって「ミラージュ」を選ぶメリットを見出せない。一体誰に向けて商売をしているのかと怒りすら覚える。「ミラージュ」は精々100万円以下でなければ検討する価値は無い。三菱の商品企画は何をしているのか不思議。まぁ「ミラージュ」「マーチ」「パッソ・ブーン」はクルマに興味のある人がマイカーとして手を出すシロモノではない。
ガソリンに対して車両価格が高くなるディーゼルの「デミオ」には、ハイブリッド車の「アクア」や「フィット」も比較対象になるだろうが、本質的に都市部の渋滞路を多く走る環境ならハイブリッド。高速道路を中心に長距離走行が多いならディーゼルが有効だろう。もちろん、私のドライブ環境は明らかに後者。ハイブリッド方式と違い、冬期の暖房に電力を食われる心配もない。
まだ二回しか燃費データが取れていない状態だが、平均で20.0km/L以上走っている我が「デミオ」だが、道路環境によって燃費変動は結構大きい印象。太いトルクに任せ1200~1500rpmで巡行していると驚くような低燃費を示すが、グッとアクセルを踏み加減速を繰り返すと燃費はガクッと落ちる傾向。まぁそんなメリハリもマツダらしいところか。
そう考えると、「デミオ」が荷室や後席スペースをある程度割り切ってでも、適正なドライビングポジションの構築に拘ったのも理解できる。やはり主戦場はコンパクトカーと言えども、国を跨いで高速道を延々と走る機会が多い欧州向け。ただ、キャラクターはドイツ一辺倒ではなく、独・仏・伊の中間くらい(笑)。案外、面白い着地点の様にも感じる。ポテンシャルとしては、もっと過激なスポーツモデルを許容する余裕すら感じるもの。特にディーゼルエンジン搭載車はフロントヘビーで車重1130kgに対し、前軸重760kg 後軸重370kgと車検証に記載されているが、ガソリンモデルと直接比較しなければ、特に鼻先の重さが問題になる挙動は感じていない。燃費とモリモリ沸きあがるトルクに感心するばかりの1.5L小排気量ディーゼルエンジンの開発にマツダが苦労したであろうことは想像に難くないが、極低回転域のフィーリング(不感症)にはもう少しの改善余地がある。12/24発表の一部改良モデルでどこまで改善されたのか楽しみだ。
パドルシフトも標準で備わるが、元来ディーゼルエンジンは回転数が低く、高回転型のガソリンエンジンの様にドカンとエンジンブレーキを効かせる様な仕様ではなく、積極的にパドルシフトを使うメリットは薄い。面白いのは、SKYACTIV-DRIVE(6AT)のセッティング。多くの国産車は減速時に燃費を意識して積極的にコースティングさせようと、シフトダウンを嫌がる傾向があるが、SKYACTIV-DRIVEは減速に合わせ積極的にシフトダウンを行い、再加速に備えて走りのダイレクト感を重視している。(欧州車のトルコンATには同様のセッティングが多く感じる。)
マツダが「i-Stop」と呼ぶアイドリングストップ機構はアイドリングストップする回数・時間共に物足りない。これは先代「アクセラ」に「i-Stop」が初採用された当時から感じる。色々な条件判断があるだろうが、もっと積極的にアイドリングストップして良いのではないか。もしくはスズキ車の様に、アイドリングストップを積極的に実施するか、快適性を重視するかの選択が出来るようにするのも手だろう。現時点では総じて多少粗削りなチューニングも散見され、完成された最良のパワートレーンとは言えないかもしれないが、マツダ開発陣が込めたメッセージを随所で色濃く感じられることが面白い。今後の熟成を期待したい。
インテリアもCX-3と共通のデザインながら、クラスの水準を超える質感とスポーティなデザインを好ましく感じている。正直、歴代のデミオが苦手にしていた部分なだけに、隔世の感がある。その核心は「マツダ・コネクト」によって生み出されている訳だが、どうにも市場の評判はイマイチだが日々改良が続けられており、特に実用上の問題は感じていない。しかし、iPodのプレイリストを切り替えたいとか、特定の曲を探したいとか、操作が複雑で走行中にはあまり触りたくない部分もある。やはり、長年積み重ねられたDINオーディオの操作性も捨てたものではない。
細かい話で恐縮だが、シートのリクライニングレバーの触感がイマイチとか、フロントとリヤドアの開閉音が違うとか、アームレストが装備されない等重箱の隅をつつくような不満点はあるにせよ、逆を言えば隅々粗探しをしてもその程度しか出てこないともいえる。そろそろマツダには「デミオ」に過激なスポーツグレードの追加や、カブリオレ・キャンバストップの設定等、販売台数は限られるだろうが、「デミオ」の商品力に幅を加えるような取組みにもチャレンジして頂きたい。マツダが目指す欧州のライバル達はそのあたりのモデル展開が巧い。あのワーゲンだって「クロスポロ」や「ポロGTI」を用意しているんだから。CX-5以降の新世代商品群を揃え、販売が絶好調な今だからこそ、コアなマツダファンを増やす取り組みに大きく投資して頂きたい。
今回マイカーとして「デミオ」を選択したのは、やはり1.5Lのクリーンディーゼルターボエンジンが5ナンバーサイズのコンパクトボディで楽しめること。そして、余計な言い訳が無いマツダ渾身の作であったことに対し、クルマ好きとして一票投じたかったこと。「デミオ」が無ければ、「フィアット500」か「プジョー208」あたりを検討していたかもしれない。納車後に感じていることは「デミオ」のデザインが良く練られており、見ていて飽きないクルマ。最近のマイカー中では写真の撮影枚数がかなり多くなっていて興味深い。今のところ、今回の選択には満足している。
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デミオ(DJ) | クルマ
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2016/01/11 00:59:24