R32GT-Rのパーツ代は?維持費は?オーナーの生の声は?「名車を維持するための処方箋」
昭和から平成、新元号になっても乗り続けていきたい名車があります。その名車を健康的に乗り続けていくためには、どうすればいいのでしょうか? 現代のクルマに比べると、やはり維持費がかかりますし、欠品パーツも出てきます。それでも乗りたいという人も多いことでしょう。
そこで、名車を維持するための最適な方法を「処方箋」として紹介していきたいと思います。また乗り続けているオーナーさんの生の声を聞いて、大変ためになる維持する秘訣も聞いています。
第1回目は、絶大な人気を誇るR32GT-Rです。さて、どんな処方箋を出しましょうか。
文/松村 透(クルマ業界に精通するディレクター、ライター)
写真/松村 透
初出/ベストカー2018年12月10日号
取材協力/日産プリンス東京モータースポーツ室
■BNR32GT-R(1989~1994年)
R32型スカイラインGT-Rは、16年ぶりにGT-Rの名が復活したことで、1989年5月22日に発表した際には、スカイラインファンだけでなく、日本中のクルマ好きがよろめきたった。1990年~1993年にかけて、全日本ツーリングカー選手権での26戦全勝という偉業ももはや伝説である。
しかし、アメリカでは、製造から25年経ったクルマを排ガス検査なしで輸入して走れることができる「25年ルール」により、その多くが輸出され、中古車価格が高騰しているのは周知のとおり。
そのいっぽうで、日産が「NISMOヘリテージパーツ」としてR32型GT-R用純正パーツの再生産を決断したことは、多くのオーナーに喜びをもって迎え入れられた。
■R32GT-Rオーナーの生の声
■一ノ瀬憲人さん(53歳)「新車で手に入れて28年間乗り続けています」
●所有車:1990年式スカイラインGT-R
●購入時期:1990年(新車購入)
●所有年数:28年
●走行距離:28万km
●購入価格:約500万円
まずはR32GT-Rの生の声を聞いてみた。ひとり目は1990年に新車で購入してからなんと、28年、28万km乗り続けている一ノ瀬憲人さん。
「当時、スカイラインGTS(R31型)に乗っていました。箱根の芦ノ湖スカイラインに行った時にGT-Rを見かけて、それが格好よくて……。その帰りに、お世話になっているディーラーに寄って契約してしまいました」
と語る一ノ瀬さん。念願だったGT-Rのオーナーになってみて感じたことは?
「GT-Rを通じて、たくさんの友人ができたことです」
愛車がコミュニケーションツールとして重要な役割を担っているようだ。ただ、年数が経過しているクルマだけに、維持するための苦労もあると思うが……。
「なじみのディーラー(日産プリンス)やショップ(目黒メンテナンスサービス)が頑張ってくれるので、大きな苦労はありませんが、古いクルマでも不安なく乗っていける体制を、もっと整えてほしいとは思いますね」
人間同様、頼れる主治医の存在は心強い。では28年間向き合ってきて感じる、R32型GT-Rの魅力とは?
「現代のクルマにも見劣りしない動力性能、日常使いもできる万能性、絶妙なボディサイズ、30年近く所有しても飽きないことです」
最後にR32GT-Rの購入を考えている方へメッセージを。
「本来の性能を発揮できれば、ノーマルでももの凄く楽しいクルマです。ただ、アテーサE─TS、スーパーHICASなど、ほかのクルマと比べて部品点数が多いので、メンテナンス費用はそれなりに確保しておいたほうがいいと思います」
■大澤哲也さん(52歳)「発売当時から欲しかったクルマを手に入れた喜び」
●所有車:1993年式スカイラインGT-R Vスペック
●購入時期:2000年
●所有年数:18年
●走行距離:18万km
●購入価格:約380万円+諸経費
続いて、前の愛車もスカイラインだったという大澤さん。しかしR32型には特別な思いがあったようだ。
「発表当時から欲しかったのですが、4ドアが必要な事情があり、R32のタイプM、そして4ドアのR33GT-Rと乗り継ぎました。ですがR32GT-Rへの思いが募り、縁もあって、今のクルマを手に入れることができました」
念願のR32型GT-Rを手に入れた率直な気持ちは?
「小学生の頃から『大人になったらGT-Rを買おう』と心に決めていました。念願だったR32型GT─Rを手に入れる夢が叶い、すべてに満足しています」
入手から18年とのことだが、純正部品の入手状況についてはどうなのだろうか。
「現時点では、ディーラーや専門のメンテナンスショップのおかげでなんとかなっていますが、シート、シートベルト、ガラス、アテーサ関係の部品が欠品しています。メーカーには、純正部品のさらなる拡充と値下げをお願いします」
大澤さんにとって、R32型GT-Rの魅力とは?
「グループAのレーシングカーと同じ目線でドライブができること、そしてRB26エンジンのサウンドです」
今後、手に入れたいという方に向けてメッセージを……。
「新車から30年近く経っているクルマです。歴代オーナーがメンテナンスに手間とお金をかけているかでコンディションが異なります。多くの個体をチェックしてください」
中古車を手に入れる際、焦らずにじっくりと時間をかけて探してみるのがよさそうだ。
■プロが教える、このクルマの実情
現オーナーの声を聞いてみたところで、ここではその道のプロ「日産プリンス東京モータースポーツ室」の小山氏に取材を行った。R32型GT-Rのタマ数や、すぐに乗れるような個体は見つけられるのだろうか。
「年々、状態のよい中古車が減っていることを実感しています。しかし、リフレッシュすることを前提で購入すれば、長く乗っていくことは可能だと考えております」
では、購入時や維持していくうえで気をつけることは?
「高年式車両や低走行車両であっても必ず修理が発生することを念頭に置いて購入・維持してください。そして、車両本体+メンテナンス代に回せるよう、予算に余裕を持たせておくように心がけてください」
気になる純正部品の供給状況についても伺ってみた。
「ヘッドライトや外装部品のほとんどがすでに製造廃止となっています。エンジン本体も製造廃止ですが、現在は中古部品なども利用してメンテナンスを行っています。純正部品がないために修理できないという状況ではありませんね。今後は再生産やヘリテージパーツでの復刻が予定されていますけど、オーナーさんや今後手に入れる予定の方は、どうか大切に乗ってほしいですね」
ズバリ、R32型GT─Rの魅力とは?
「純然たるGT─Rのフィールが色濃く残るクルマです。速いだけではなく魂を感じさせてくれます。これほど潔く『勝つことだけを追い求めているクルマ』はこの先生まれてこないと思います」
プロさえも魅了するGT─Rは本当に偉大な存在だと改めて実感する。では、最後に購入を検討されている方へアドバイスを……。
「古いクルマだけに、見えない場所(下回りから見た錆)は特に念入りにチェックしてください。また、ご購入を検討されていらっしゃる方は、私どもが用意しているリフレッシュプランも視野に入れてみてください」
極上車であるように見せかけて、実は錆だらけというケースも少なくない。プロのアドバイスを参考に、程度のよい個体を見極める目を養っておくべきだろう。
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■R32型GT-Rの今後はどうなる?
今後、1台でも多くのR32型GT-Rを後世へと受け継いでいくには、パーツの再生産や、ヘリテージパーツの復活が鍵になることは間違いない。
しかし、多くのオーナーにとって部品の価格高騰は避けてほしいというのが偽らざる本音だろう。中古部品やリビルト品を駆使してやりくりしていくノウハウの蓄積や情報の共有、同じクルマを所有する者同士のネットワークも重要だ。
メーカーやプロショップとユーザーが手を携えてこのクルマを維持していくことが一層求められている。
次回は初代NA型ロードスターをお届けします。お楽しみに!
初代ユーノスロードスターのパーツ代、維持費、オーナーの生の声は? 「名車を維持するための処方箋」
1989年9月にデビューした初代ユーノスロードスターは、2シーター+オープンスポーツカーという、古典的なクルマ作りの手法を甦らせ、クルマの楽しさはパワーだけではなく、操る楽しさにあることを世に訴えたのです。
人とクルマが一体になる「人馬一体感」を再発見させてくれたクルマでした。
日本が世界に誇る名車を新元号になっても乗り続けてほしいという思いから、この初代ロードスターのオーナーさんの生の声をはじめ、精通するプロフェッショナルにもパーツの状況や維持費、クルマの魅力を語ってもらいました。
はたして、初代ロードスターには、どんな処方箋が出るのでしょうか?
文/松村 透 (クルマ業界に精通するディレクター兼ライター)
写真/松村 透
初出/ベストカー2018年12月10日号
■NA6CE/NA8C Roadster(1989年9月~1997年12月)
歴代ロードスターのなかでも「初代モデルでなければ」というユーザーは多い。ボディカラーや内装の雰囲気次第では輸入車に間違われることも。もはや、時代を超越した美しささえ感じられる佇まいだ。
■初代ロードスターオーナーの生の声
まずは初代ロードスターのオーナーさんに、維持していくコツ、長く乗る秘訣、どんなことに魅力があるのか、聞いてみた。
■大川 亨さん(50歳)「このクルマを通じ、たくさんの友人ができました」
●所有車:1990年式ユーノスロードスターVスペシャル
●購入時期:1990年(新車購入)
●所有年数:28年
●走行距離:15万km
●購入価格:約250万円?(失念)
新車で購入して以来、28年間所有しているという大川さん。手に入れようと思ったきっかけを伺ってみた。
「運転した時の手応えや、オープンカー特有の気持ちよさに魅了されました」
実際に手に入れてみて、よかったことは?
「このクルマを通じて、たくさんの友人ができたことです。この取材もそうですがロードスターを手に入れたからこそつながった〝縁〟は確実にあるように思います」
マツダが2017年12月からNA型ロードスターのレストアサービスを始めたとはいえ、純正部品の入手に苦労するようなことはあるのだろうか。
「特に苦労はありません。以前は幌が欠品していましたが、再生産のおかげで手に入るようになりました。一過性ではなく、どうか長く続けてほしいです。
ただ、Sリミテッドという赤い内装の限定車に乗る友人は、クラッシュパッドやシートベルト、内張りの部品が欠品で困っていますね」
多くの限定車が発売されたクルマだけに生産数が限られているモデルほど純正部品の入手に苦労しているようだ。
ところでユーノスロードスターの魅力とは?
「いろいろ手を加える余地があるところですね。ただ走っているだけで笑顔になれることも大きな魅力です」
これから手に入れようと思っている方にメッセージを。
「古い年代のクルマになりつつあります。長期間、動かしていなかった個体を直すにはやはりお金がかかります」
程度のよい個体を探すなら、見た目や走行距離だけにとらわれないほうがいいのかもしれない。
■田澤 昇さん(59歳)「ロードスターは父と娘の絆を結ぶ大切な存在」
●所有車:1992年式ユーノスロードスターVスペシャル
●購入時期:2009年
●所有年数:9年
●走行距離:約13万km
●購入価格:43万円
9年前にユーノスロードスターを手に入れた田澤さん。これが2台目だという。
「以前、5年ほど所有していたのですが、もらい事故で廃車となり、知人のクルマを乗り継ぎました。サーキット仕様だったため、大幅に手を加える必要がなかった点もよかったです」
純正部品の入手に苦労するようなことはあるのだろうか。
「意外に思われるかもしれませんが、ありません」
田澤さんのお嬢様もロードスターに乗っているという。しかも、サーキット走行までこなす本格派だ。
「ショップが主催する走行会へ参加し、常勝チームの方々に娘に運転を教えてくれと頼み込みました。娘は数台のNB型(2代目)を乗り継ぎ、今はNA8C型を所有しています。親子2台でサーキットを走っています(笑)」
父と娘にとって、ロードスターは親子の絆を結ぶ大切な存在なのだろう。
「マツダには『このクルマを作ってくれてありがとう!』と伝えたいです。同年代のスポーツカーを運転したあとに乗ると『正確な挙動を示すクルマであること』が実感できます。
サーキットでも持てるパワーを目いっぱい使えば、ハイパワーのスポーツカーを追い回せます。ただし、コーナーでの話ですが……」
未来のオーナーへひと言お願いします!
「まず信頼できるショップとのつながりを持ち、そのうえで自分がクルマに求めることをしっかり伝えてください」
信頼できる主治医の存在があってこそ、充実したカーライフが送れるのだ!
■プロが教える、このクルマの実情
ユーノスロードスターもその道のプロ、新潟県の「RSファクトリーSTAGE」の田畑氏に取材を行った。まずはタマ数や、すぐに乗れるような個体について聞いた。
「流通台数はかなり減っていますが、年代を考えると多いほうです。専門店が面倒を見ていた個体は、仮に見た目が年式相応でも、細部までメンテナンスが行き届いている可能性が高いです」
では、購入時や維持するうえで気をつけることは?
「古いクルマだけに、板金修理やオールペンされていたり、幌が傷んでいる傾向にあります(幌は交換を前提に)。修復歴の有無にこだわらず、きちんと修理されていればOKくらいの気持ちで探してみてください。
エンジンは非常に丈夫ですが、20万kmオーバーも珍しくないなど、一般的に走行距離が伸びているものが多い印象です。しかしメンテナンスが行き届いている個体であれば安心して30万kmくらいは乗れますので、走行距離よりもメンテナンスが行き届いているかどうかを重視してください」
気になる純正部品の供給状況については?
「マツダがレストアサービスに力を入れてくれているおかげで、NA6CE型に関しては部品に困るケースは少ないです。ただ、価格が高いことがネックになっていますね。そこで中古パーツを用いて修理したり、新たに製作して対応することもあります」
田畑氏にとって、ユーノスロードスターの魅力とは?
「NA8C型を新車から所有していますが、最近は特にこのクルマを通じた人と人のつながりが素晴らしいと感じますね」
最後に、購入を検討されている方へメッセージをお願いします。
「価格の安い個体を買って少しずつ修理していく楽しみ方もありだと思います。若い世代の方にもこのクルマならではの世界観を味わっていただきたいですね」
公私ともにユーノスロードスターに魅了された田畑氏だからこそ伝えられる熱いメッセージだ。
レストアサービスや部品の再生産が始まり、特に注目を集めている両モデル。しかし、メーカーやショップがどれほど環境を整えても、やはりオーナーの愛情こそが良好なコンディションを維持するうえで重要なのは、言うまでもない。
※初代ロードスターの中古車はこちら!
■初代ロードスターの今後はどうなる?
今回、複数のオーナーに取材を試みたが、純正部品の調達にはそれほど困っていないという意見が多かったことが印象的だ。実際、マツダが復刻した部品は150あまりにおよぶ。
多くのユーザーがレストアサービスや純正部品の再生産を歓迎している一方で、価格が高騰していくことを懸念している声も少なくなかった。
全国には、ユーノスロードスターに惚れ込んでいるからこそショップを立ち上げ、豊富なノウハウでユーザーを支えるプロフェッショナルたちがいる。
自分の方向性に合っていそうなショップを訪ねたり、ディーラーとの使い分けなど、オーナー同士の情報交換を活用して自分にあった主治医を見つけたい。エンジンは基本的に丈夫だというが、油脂類の管理には常に気をつけておきたい
気がつけば30年選手。プロショップの豊富なノウハウが、頼りになることも多いのだ。
■マツダのレストアサービス
http://www.mazda.co.jp/carlife/restore/service/?link_id=sbnv
第2世代GT-Rオーナーに朗報! R32に続きR33&R34も純正補修部品の再生産がスタート!
R32も再生産部品のラインアップがさらに拡大!
日産自動車とニッサン・モータースポーツ・インターナショナルとオーテックジャパンは、国内外問わず今もなお絶大な人気を誇るスカイラインGT-Rの製造廃止となった純正補修部品を再供給する「NISMOヘリテージ」活動を行っている。2017年12月に、第1弾としてBNR32型の純正部品を再生産。ユーザーからの反響をもとに、今回、BCNR33型ならびにBNR34型のパーツも再生産されることが発表された。
今回新たにラインアップされたのは、1995年1月~1999年1月まで販売されたBCNR33型と、1999年1月~2002年8月まで販売されたBNR34型。まずは走行に欠かせない外装部品やホース・チューブ類からの再生産が決定し、11月29日より発売されている。
また、現在販売されているBNR32GT-R向けには、新たにラインアップを拡充している。走行に必要な部品のほか、ウェザーストリップやバンパーレインフォースといった、長く大切に乗り続けるために必要となってくるアイテムを設定。設定されるアイテム数は第1弾、第2弾と合わせて160部品にまで拡大。国内自動車メーカーの活動としては、最大規模の取り揃えとなる。
まだまだ現存台数も多く、大切に維持していきたいと考えている人の多いスカイラインGT-R。今後も再供給アイテムのさらなる拡大を検討しているとのこと。ぜひとも多くの個体を残せるよう、今後の展開に期待したい。
なぜ「スカイラインGT-R」純正品、続々と再生産? 新車メーカーが絶版車に取り組む背景とは
■絶版車の純正部品は年を追うごとに入手困難な状況に
1989年に発売された「R32型 スカイラインGT-R」は、現在も中古車価格が高騰していますが、これはアメリカなど海外へ流出しているのが原因のひとつといわれています。それに引きずられるように、後継モデルの「R33型/R34型 スカイラインGT-R」も価格が高騰して、いまや1000万円オーバーも珍しくない状況です。
1980年代から1990年代の絶版車の高騰は「スカイライン」に限った話ではありません。ホンダ「NSX」やトヨタ「スープラ」、ポルシェ「911」なども程度がよいと軒並み新車価格以上で売られています。
モノの値段は需要と供給で決まります。ここまで高騰しても買うユーザーがいて、価値が認められているクルマであるということです。
そんななか、日産は2018年11月29日に、「スカイラインGT-R」用「ニスモヘリテージパーツ」をR32型に加え、R33型、R34型にも拡大し、発売すると発表しました。
この「ニスモヘリテージパーツ」とは、純正部品のことで、すでに生産が終わった純正部品を再生産、再販売するということです。なお、部品の販売はニスモからとなっています。
通常、フルモデルチェンジして従来型の生産が終了しても、部品は引き続き販売されます。しかし、生産終了後10年もすると需要のない部品は製造が廃止され、残った在庫のみを販売し、在庫がなくなるとほとんどはそのまま欠品という状態になり、もう買うことはできません。とくに外装部品や内装部品は欠品になるのが早い場合が多いです。
「スカイラインGT-R」も同様で、最終型の「R34型 スカイラインGT-R」は2002年に生産が終了となり、部品も欠品が多くなっていました。
そこで、2017年に日産/ニスモ/オーテックジャパンの3社が共同で、まず「R32型 スカイラインGT-R」の部品を再生産することになりました。
■「スカイラインGT-R」の部品が続々と再生産・再販売された理由は
「R32型 スカイラインGT-R」の部品で再生産・再販売されたのは、当初はワイヤーハーネス、ホース/チューブ、エンブレム、外装部品など、約80の部品からでした。
車検を通すための部品や、クラッチといった消耗品は以前から継続して入手できましたが、バンパーやエンブレムなどの外装部品は新品が入手できなかったため、オーナーには朗報だったことでしょう。
この取り組みが日産から発表された際に、ニスモの片桐隆夫社長に話をうかがうと「スカイラインGT-Rも年数が経つにつれて部品がなくなってきています。海外の方も含めてみなさん、大事に乗ってくださっていて、そこをバックアップしなければならないと思っていました。
大事な部品が入手できないという状況で、ニスモとしてできることを話し合ったとき、パーツを復刻するというアイディアが出ました。しかし、ニスモだけでは実現できません。そこで日産に相談をしたところ、快く協力を申し出てくれて、一気にプロジェクトを立ち上げ進めました」と語っていただきました。
※ ※ ※
これまでも、ある程度バックオーダーが溜まり、部品が再生産された例はありますが、メーカーが率先して再生産するのは非常に稀なケースです。
「スカイラインGT-R」の部品再販売の背景には、生産終了後でも一定数のユーザーがいて乗り続けていること。また、アフターマーケットの部品では替えがきかない部品があること。などの理由があげられます。
こうした取り組みは日産だけではありません。ほかの国産メーカーや、海外メーカーも絶版車の部品の再生産が行なわれています。
■ホンダ、マツダ、ポルシェが再生産した部品を供給中
ホンダは2017年に軽自動車「ビート」の補修用部品を再生産、再販売しました。それに先立って、純正オプションだったオーディオを、Bluetoothなどが使えるように新規に開発して2011年に発売しています。
また、マツダも2017年に初代「NA型ロードスター」のレストア(再生)サービスを始め、加えてハンドルやシフトノブ、フロアマット、ソフトトップ、そのほか補修用部品を復刻して販売を開始しました。
さらに、マツダはブリヂストンと共同して、「NA型ロードスター」発売当時の純正タイヤ「SF-325」を復刻して発売するなど、これまでにない取り組みとなっています。
海外メーカーでは、元々日本よりも純正部品の入手性は良好なメーカーが多かったものの、近年はだいぶ厳しい状況に変わってしまいました。そんななかポルシェが「ポルシェクラシック」というプロジェクトを立ち上げ、純正部品を再販しています。
顧客からのリクエストを受け、欠品だった部品が再生産された例もあります。
とくに興味深いのが、オイルやショックアブソーバーなどを現在の技術で作り直し、当時の性能以上のものを供給している点です。
ほかにも空冷911の純正オーディオのスペースにそのまま取り付けができる、カーナビゲーションシステムなども販売しています。
※ ※ ※
こうした取り組みに共通している点は、対象が長く愛されているクルマだということです。現存の割合がほかのクルマよりも高く、性能的に現代でも十分通用するモデルばかりです。
もっと古い40年、50年以上も前のクルマですと、さすがに普段遣いするのは厳しく、レストアや部品製作などは、これまでに紹介したものとは違うマーケットが存在します。
日本では車齢が13年を超える古いクルマの税金を上げ、環境負荷に対して懲罰的な税制になっています。一方で自動車メーカーは古いクルマの維持をバックアップしています。
日本において自動車産業は国を支える産業のひとつで、自動車生産大国ですが、旧車やクラシックカーをクルマ文化としてとらえるか、国とメーカーの考え方にまだまだ乖離があるようです。
なんでもかんでも増税して搾取しようとして昨今だと維持をするのも大変だけど…大事に長く乗ってもらいたいです
Posted at 2018/12/12 22:45:23 | |
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