最近の新車にはほぼ搭載される自動ブレーキ用カメラ、なぜドラレコ用と兼用できないのか
■先端技術の塊! 自動ブレーキで用いられるカメラの特徴とは
もしものとき、ドライバーがブレーキを踏む前に、クルマが自動でブレーキをかける機能を一般的に「自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)」と呼びます。仕組みはシステムによって異なりますが、カメラを用いて周囲を検知しているものも多いです。
一方、交通事故時の様子を記録するカメラがドライブレコーダー(以下、ドラレコ)です。カメラを用いている点で共通していますが、自動ブレーキ用のカメラはドラレコ用とどう異なっているのでしょうか。
2019年4月に池袋で発生した高齢ドライバーによる痛ましい事故は、今なお記憶に新しいところ。それに伴って、人々のクルマの安全に対する関心も高まっているほか、自動ブレーキを装備する「サポカー」についても多くの媒体で報道されています。
まずは、自動ブレーキはどのような仕組みになっているのかについて、順を追って説明していきます。
自動ブレーキで重要なことは、クルマの前方の状況をしっかり検知することです。
ドライバーは、前方に対する検知は目で行っています。一方、自動ブレーキ(クルマ側)で検知に用いるのは、カメラやレーザー、またはレーダーなど。こうした各種デバイスをどのように組み合わせるのかについては、自動車メーカー各社の設計思想によって違いがあります。
カメラの構成にもバリエーションがあり、単眼カメラ(1つのカメラ)やステレオカメラ(2つのカメラ)、そして最近では単眼カメラを3つ用いるクルマも登場しています。
こうしたカメラは、ドライブレコーダーのように周囲を録画するためのものではありません。この分野を専門とするトヨタの技術部門の幹部は、次のように話します。
「自動ブレーキで用いられるカメラは、ドラレコ用とは画像に対する考え方が異なっています。そのため、レクサス車を含めて現行モデルに搭載している自動ブレーキのカメラで、ドラレコ機能と併用することは難しいです」
※ ※ ※
こうしたカメラは、モノや人などの形状や動きを確認することに特化した設計になっています。筆者(桃田健史)はトヨタ以外の自動車メーカーで単眼カメラの映像を見たことがありますが、鮮明度を重視したものでないことはすぐに分かりました。
このような技術領域は「画像認識」といわれます。自動運転や無人ロボットに関連する技術として、いま世界各国で技術の競争が激化している分野です。
アメリカでは、画像認識の研究で名高いマサチューセッツ工科大学(MIT)やカーネギーメロン大学(CMU)の学生や研究者が、グーグルやアップル、また中国の大手IT系企業に高待遇で就職することも珍しくありません。
■安心安全なシステムを作るための地道な開発工程とは
単眼カメラは現在、さまざまな自動車部品メーカーが製品を作っています。
日本ではトヨタ系部品メーカーの「デンソー」が有名で、海外ではドイツの「コンチネンタル」や「ボッシュ」、スウェーデンの「オートリブ」が代表的です。
一方、画像認識の技術は、カメラに使用する半導体の技術力に大きく影響されています。この分野ではインテルが買収したイスラエルの「モービルアイ」、またゲームの分野でも有名なアメリカの「エヌビディア」が大手です。あなたが普段乗っているクルマのなかにも、イスラエルの技術が盛り込まれているかもしれません。
最近ではクルマ用の画像認識の回路で、「ソニー」が大躍進していることも付け加えておきます。 では、2つのカメラを使うステレオカメラでは、どのメーカーの技術が進んでいるのでしょうか?
欧米の自動車メーカーの多くは、コンチネンタルをはじめとしたドイツ系部品メーカーを使っています。
一方、日本でステレオカメラといえば、やはりスバルのシステム「アイサイト」です。アイサイトの場合は、スバルと「日立オートモティブシステムズ」による共同開発となっています。
このシステムは、「ぶつからないクルマ?」という、かなり大胆なキャッチコピーを用いた宣伝で一躍有名になりました。以前は、アウトドアに適したRV車や、スポーツブランドの「STI(スバル・テクニカ・インターナショナル)」がブランドイメージの主流だったスバルですが、最近ではアイサイト目当てで購入する人も増えています。
あるスバル関係者は「『レガシィ』向けに価格を一気に落として搭載した頃から一気に普及した」と、アイサイトの歴史を振り返ります。
またアイサイトの特徴について、開発を担当した技術者は次のように話します。
「アイサイトは開発にあたって、公道を実際に走って調整が行われています。さまざまな状況を技術者自身が体感することで、スバルとしての味付けをじっくりと行っています」
※ ※ ※
当然、単眼カメラ・ステレオカメラのいずれにしても、他の自動車メーカーも公道での実験を重視していることに変わりはありません。
アイサイトの場合も、トヨタと同じく画像認識に特化した設計のため、現状ではドラレコ用カメラと併用することはしていません。
こうした、自動ブレーキ向けのカメラの今後について、前述のトヨタ幹部は「将来的には、ドラレコ用カメラと併用することも十分にあり得る」と証言しています。ただし、その時期について明言はしませんでした。
目的が違うモノを「付いているんだから機能させろ」っていうのは無理があるでしょ…
車高ダウンで機能停止?? 保証が受けられない?? 自動ブレーキは車高調整に対応できないのか
昨今は被害軽減ブレーキを搭載した車両が非常に多くなってきている。よそ見や人間の死角からの飛び出しなどにも対応し、自動車の安全性を引き上げている技術だ。
しかしそんな被害軽減ブレーキ搭載車両には多くの制約が伴う。例えば車高の上下だ。スポーツモデルなど車高を下げたいオーナー、もしくはSUVなどで車高を上げたいオーナーなどには死活問題だろう。
いったいどこまで車高の上下をすると被害軽減ブレーキは作動しなくなるのか。実際に試したジャーナリストに聞いてみました。
文:国沢光宏/写真:SUBARU
ベストカー2019年5月26日号
■「自動ブレーキは車高に敏感」は真実なのか?
世の中コンプライアンスだらけである。確かに決められたことしかしなければリスクなし。最近「自動ブレーキ付きのクルマは車高を変えると効かなくなる」というウワサが飛び交っているのだった。
多くの情報をカメラやセンサーで収集する自動ブレーキ。車高を変えることでそれらの角度が変わると機能しなくなるというが……
実際、スバル車に乗っている人たちの間では「アイサイトは車高に敏感。だからSTIで車高低くした車種を出そうとしても入念な試験や調整が必要なので簡単じゃない」という件、広く知られている。
この点、私もSTIに聞いて原稿で紹介した。結果、スバルディーラーでは車高調整式サス付きのクルマの整備を受けないケースも多い。
果たして自動ブレーキ付き車は車高調整式サスで稼働しなくなるのだろうか? 結論から書いてしまうと「極端なことをしなければ問題なし!」。考えてほしい。
ステーションワゴンなどラゲッジスペースに荷物たくさん積むと、前上がりの姿勢になる。この状態で前方を見ているセンサーは、車高を変えたクルマより酷いセンサー角になる。
STIの件と関係ない時、スバルに「ラゲッジスペースに荷物積んだらカメラが上を向いちゃいませんか?」と聞いたら「当然そういった使い方は想定しています。大丈夫ですよ~!」とキッパリ答えてくれた。
そらそうでしょう。自動車メーカーのロバスト試験(悪条件下での強さ)はけっこうハード。
だとしたらSTIで車高を20mm低くすることもできないのはなんでだろう? このあたりが我が国から元気を奪っているコンプライアンス問題でしょう。
■実験をしたら前後30mmダウンでも問題なし??
2年ほど前のこと。サスペンションを作っているTEINの藤本さんから連絡あり「車高を変えたら自動ブレーキが効かなくなるって本当でしょうか?」と聞かれた。
だったら試験してみましょうか、と言うと「やりましょう。クルマやサスペンションは用意します」。
ということで実際に車高変えを試してみた。例えばリアだけ40mmほど車高を落とした状態。
極端な積載状態などでもメーカーは試験を行っており、ある程度の許容性は併せ持つ。しかしながら純正部品以外を使えば保証がなくなるのは致し方ない
これ、ラゲッジに荷物をたくさん積んで上を向いてるイメージです。するとどうよ! スバルもトヨタも普通に稼働した。
逆にリアを標準。フロントだけ40mm落として試験すると、これまた普通に稼働。もう少し正確に書くと、リア落とした時は500mくらい走って学習制御したあと、普通に稼働するようになった。
フロント落とした時は学習制御なしで普通に稼働している。走行中、ノーズダイブすることは多いため、フロント車高低い時のロバスト性はリア低くするより強いということなんだろう。
ちなみにダメだったのは、リア40mmダウン。フロントを限界まで上げた酷い姿勢の時だけでした。
ということで、前後の車高を30mmずつ下げたり上げたりするくらいなら、自動ブレーキは普通に稼働します。
じゃなぜ「保証しない」と言われるかといえば、責任逃れです。試験をしていない部品付けても、何かあった時に保証することはできないということ。
個人的には「当然でしょうね」。そもそもノーマル状態に手を加えた時点でオウンリスクだと思う。
そんなユーザーが勝手に改造したものまでメーカーやディーラーに難癖付けられたってたまったもんじゃないでしょ
カメラなんだから自分でビデオカメラでもデジカメでも良いから目の前の対象物を撮ろうとした時に前か後を極端に傾けたらどこを撮影されるかなんてわかりそうなもんです
真っ直ぐ上げ下げする分には対象物の上を映すか下を映すかっていうのはあったとしても対象物との距離そのものは変わらない筈ですから
とは言えカメラで投影した対象物のサイズとかは正規の位置で正しく捉える事で事故を未然に防ぐための装備なのですから、メーカーとしては「正規の状態ではないので保証出来ない」っていうのが当然の事でしょう
Posted at 2019/05/14 22:05:58 | |
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