東京都庭園美術館 Part2　〜アール・デコの息づく邸内〜

先日に続き庭園美術館を掲載。


今回は主に内装・調度品をセレクト。

いずれもアールデコの息吹を強く感じる。




そもそもアールデコとは一体何か？

【１】





アールヌーヴォーに続き1925年前後を中心に欧米で流行・発展した装飾の一傾向で、

その原義は装飾美術とされる。

【２】





幾何学図形をモチーフにした記号的表現や、原色による対比表現などの特徴を持つが、

その装飾の度合いや様式は多種多様である。

【３】





アールヌーヴォーは植物を彷彿とさせる有機的なデザインを主流としていたが、

アールデコはエジプトやアステカ、東洋の文化・美術、キュビズムなどの融合体。

【４】





代表的な作例は、マンハッタンのロックフェラーセンターやエンパイヤステート、

クライスラービル等の摩天楼、ウォルドルフやエセックス等の老舗ホテルがある。

確かに、共通する装飾美を感じさせる存在感ある建造物ばかりだ。

アールデコは必ずしも建築様式だけに見られるわけではなく、

例えば、かのココ・シャネルもアールデコの影響を強く受けていると言われる。

【５】






日本では大阪府庁舎や新宿伊勢丹、聖路加病院、学士会館などが挙げられる。

いずれも古めかしいのにどこか斬新さを醸し出す名建物たちが並ぶ。

【６】






その中でも旧朝香宮邸は、アールデコの最たるものだ。

【７】





前回アップした外観のみならず、その内装にしても調度品にしても、

【８】





やはり古くて新しい、独特の美意識を湛えた文化的資産だと感じる。

【９】






調度品は、直近のデザイン家具のような素材とは明らかに異なるが、

【１０】





当時としては相当にモダンであったろう意匠に程よくマッチした質感で、

【１１】





経た時に燻され、我々の眼に心地よさや安心感、観る喜びを訴えかけてくる。

【１２】





最新の家屋や家具に当然機能は劣後するだろうが、それを埋めて余りある、

【１３】





おそろしく洗練された存在感、デザインコンシャスぶりは比類ない。

【１４】





こうした装飾技法がここ最近再び見直されつつあるらしい。

【１５】






フランスを源流とするアールデコが純粋な和のテイストと絶妙にブレンドされ、

【１６】





旧朝香宮邸の設計・建造が実現されたと言えるのだが、異文化と技術（者）の融合、

【１７】





すなわち両者の結実こそが、新しい世界観を切り拓いたことにも他ならない。

【１８】





「知識はあっても行動がない」「理論が立っても実践できない」ではなく、

「産む」と「育てる」が噛み合ってはじめて人として成就するように、

【１９】





旧朝香宮邸も、意志と知識、技術と技量が一体化されたことによって、

優美な姿を今ここに留め、我々にその完成された美学を伝えることになったのだ。

【２０】






白金の地で静かな時を刻む旧朝香宮邸。

【２１】





酷暑を冷涼で優雅なアールデコ様式の建物でやり過ごしながら、

ひとときの自由研究を愉しむなんて、オトナたちの最も贅沢な夏休みかも知れない。

【２２】






※EOS 6D　SIGMA Art 35㎜ F1.4 DG HSM


（了）