前ブログに記載のとおり、
ジョンソンタウンの続編を掲載する。
この特殊なエリアが目指すもの、いわば
ライフスタイル・コンセプトを見てみたい。
昨今、古き佳き時代と比べ、人同士の関わりが激減し冷淡になったと言われる。
特に都市部においてはその傾向が顕著だと。
【1】
確かにそうかも知れない。
それだけプライバシーが守られる環境が整い、
個を尊重するマインドが醸成されたとも言えるわけだが。
【2】
人は独りでは生きていけないと言う。
【3】
人間の様々な欲求のうち、他人からの認知を根源とするものは少なくない。
【4】
それに物理的なもの、例えば相互扶助的なものが加わるわけだから。
【5】
普通に考えて、高齢化が進めば尚更だ。
【6】
にも関わらず、濃密な人間関係が失われている現状は何なのだろう。
【7】
核家族化によってファミリーという概念が薄らぎ、
単身のライフスタイルがカタログ化されたこと、
またそうした風潮を社会全体が容認あるいはある面で推奨した結果なのか。
【8】
少し話が逸れてしまうが、最近「限界集落」という言葉をよく耳にする。
【9】
いわゆる過疎化が進み、集落としての体をなさなくなるケースを指す。
【10】
自治体が何とか下支えしようとしても、集落自体に自立の力が失われており、
村などコミュニティの活性は疎か、現状の維持すらままならない状態。
【11】
こうした話は、何においても都市部への偏重が顕著な日本では珍しくはない。
【12】
一方、限界集落の危機から見事に脱出もしくはその過程にある集落を
メディアが取り上げる機会を目にするようにもなった。
【13】
果たして限界を脱した事例での成功のカギは何だろうか?
個々に差はあろうが、最大公約数は次の4点ではないだろうか。
①若年層の流入
②収入源の確保
③地域への愛情、誇り、自信
④率先垂範型リーダーの存在
理屈が理解できたところで、これらの項目が実現できるわけではなく、
並々ならぬ努力の蓄積があって初めて徐々に結果に繋がっていくのだろう。
【14】
そう考えると、まさに危機からの脱出は尋常ならざる出来事なのだ。
【15】
話を戻すと、ジョンソンタウンは廃墟と化したエリアを再生した好事例だ。
【16】
ローカルな大規模事例とは単純比較は出来ないだろうが、
活性化に相応のたゆまぬ努力があったことは疑う余地がない。
【17】
つまり、
① 古民家を活かしながらリニューアルし、平成ハウスも併設することで、
「おしゃれ」な街を形作り、維持継続し、若者たちにアピールする
② ショップを誘致し、街としての情報発信源・収入源を確保しながら、
更に話題性のあるショップの追加誘致に繋げるスパイラルを構築する
③ 特殊性のある洒落た街並みに住まい、ひいては暮らしを創り、
観光客を呼び込み、住人の満足度を上げ、更なる利点の先鋭化を図る
④ 実際は知る由もないが、コンセプトを掲げ、一貫性を持って、
エリア開発を行ったデベロッパーが存在した(のだと思う)
等が、ジョンソンタウンのジョンソンタウンたるところではないかと感じた。
【18】
公式HPからそのコンセプトを探ると次の点が掲げられていた。
【19】
・歴史を継承しながらの安全で快適な暮らし
・ピースフルでリラックスした時間
・趣味を楽しむ自由で自分らしい過ごし方
・ボーダーレスでありながら確保されるプライバシー
お題目としてコンセプトを掲げることは多くの企業・個人が行っているが、
それを実現できている主体者は極めて少ない。
【20】
そして不思議なことに、人はこの手の話に潜む虚構に敏感に反応する。
綺麗なフレーズに隠された嘘を、五感で見抜く人は存外多いものだ。
【21】
裏を返せば、賞を取るほどに活性化が図られたジョンソンタウンは、
「コンセプトと現実の乖離が少ない」ということだと分かる。
【22】
1996年からリニューアルを続け、2015年に受賞するまで、
実に20年近い月日をかけて、コンセプトの拡充と実現にあたったのだ。
【23】
もちろん過去には様々な理由で街を離れる住民も存在したのだろうが、
街全体の再開発を阻害する要因にまでは至らなかったわけだ。
【24】
という目線でもう一度街を眺めてみると、各ショップも一般住民の方も
アメリカ郊外の暮らしを楽しみ、全身でそれを満喫している姿が眩しく、
単なる来訪者の1人である自分ですら、風景の一部になれる気がした。
【25】
2回に亘り長々と書き連ねてしまったが、機会があれば、
ぜひご自身の眼でジョンソンタウンの魅力を見極めてみて欲しいと思う。
【26】
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
※Leica Q(Typ116)
(了)