この車に乗り始めて4年半が過ぎた。
モデル末期だったW204はFMCで
W205へとステップアップした。
この辺で少し愛車への思いを語ろう。
63最大の魅力であるエンジンは,
新型移行に伴いダウンサイジングされた。
従来の65%の排気量となる一方、ツインターボが装備された。
これによって出力は5%、トルクも20%程上積みされたことになる。
【1】
決して負け惜しみではないのだが、個人的には過給機は好きではない。
これまで過給機付きの車にも複数乗ってきたし、
サブカーのMINIにも過給機が備わるのだが「それでも」である。
【2】
勿論、これは絶対的なものではなく、比較論の問題なのだと思う。
昔のターボ車と違って今の過給機付きエンジンにはラグはないだろうし、
扱い難いピーキーな特性もないだろう。
【3】
しかし一方でどうしても過給が始まった際は独特の音が混じってくるし、
大排気量でグイグイ加速する感覚とは一味違うことも事実だと思う。
【4】
音や感覚なんて運転技量に直接結び付くものではないのだから、
どうでもいいじゃないかという意見があるのも分かって敢えて言うなら、
車を操るという行為には、単に速く走らせるということだけではなく、
車と一体となる、つまり人馬一体の感覚も大切な要素だと思うのだ。
【5】
その大切な感覚の構成に、視覚や聴覚が含まれる。
実速度は別にして、過ぎ行く路面をどの位置から確認するか、
アクセルに込める力とエンジン音がどう呼応しているか、
ステアリングにどのような情報が流れてくるか、
身体に伝わるビートは心地良いか、
自分の身体と車の動作の間に雑味が少ないほど運転は面白い。
【6】
安全性や積載性や利便性や快適性を無視するなら、
きっとカートのような車が最もFun to Driveだろう。
【7】
話が逸れてしまったが、自分自身は大排気量でかつ、
レスポンスの良いエンジンをこよなく愛するということなのだと思う。
なんと昭和的でバブルな発想なのだろうと苦笑してしまう。
【8】
まぁそうでもないよという部分を併せて主張するなら、
それがこれ見よがしにあることを見せたくはないということかも知れない。
【9】
C63の愛すべきは、ごく普通のセダンに見えるという点だ。
勿論詳しい方には遠目でも看破されるが、一般的にはよく分からない。
あぁ小さいベンツね、でスルーされることが多いだろう。
【10】
しかしこの車は「脱いだら凄いんです」ではなく、
「踏んだら凄いんです」の部類で、ウルトラクイックではないものの、
もりもり来る圧倒的パワー&トルクでどこまでも猛烈に加速してゆく。
【11】
低速時でもアクセルをラフに扱うとV8独特のドロドロ音を奏で、
下手をすると歩行者を驚かせてしまうから気を付けなくてはならない。
コンフォートモードの低速域でアクセルをやや雑に開け閉めした際、
車体がギクシャクしてまるでノッキングを起こしたようになることがある。
【12】
だから、街中では特にジェントルな運転を意識しているし、
路面が滑り易い環境ではFRであることを忘れぬよう心掛けている。
もともとM156は高回転型のエンジンなのだが、低速域においても、
アクセル開閉に忠実な吹け上がりで応えてくれるのだから。
【13】
燃費は確かに良くはない。
直前の愛車V8 5,000ccのゲレンデよりはいくらかましだが、
街乗りで4km/L程度、高速でも8-9km/L台がイイところだろう。
自動車税や保険料だってバカにならない。
【14】
しかしそれらを補って余りある魅力を持った車であるには違いない。
サーキットに持ち込んでフル加速しなくともM156の魅力は堪能できる。
即ち日常の全域で車と暮らす楽しさを教えてくれる稀有な存在なのだ。
それにやはり、我が家的には舞との想い出もふんだんに残っているしね。
【15】
新しい技術を搭載した魅力的な車も多くなってきて、さてどうしよう?
という思いもなくはないもののC63の濃厚な味はまだ捨てがたい。
【16】
自分の場合、この先のカーライフは「終わり方」を見据えながら、
慎重かつ計画的に買換時期・車種選定をしていかないといけないだろう。
C63との想い出はどれも素敵なものだった、と最後に振り返れるよう、
これからも安全運転を心がけていきたいと思う。
【17】
※Fujifilm GFX 50S Fujifilm GF63㎜ F2.8 WR
(了)