前回C63AMGの系譜について書いた。
今回はベースであるCクラスについて触れたい。
Cの前身は1983年の190 W201に遡る。
<Photoは全て'13 W204 C63AMG PPG>
190シリーズが登場するまでMBは、今では考えられないほどシンプルな構成だった。
つまり、Sとコンパクト(現Eクラス)、SL/SLCおよびGというラインナップである。
【1】
そのうち、後者の2車種は一部のエンスー向けの提供だったことを思えば尚更単純だ。
待望の190の国際デビューは1982年12月、国内市場には1984年12月に投入となる。
【2】
発売当時のエンジンは、2リッター直4SOHCのM102型4A/Tのみであった。
M102型は115psだが、Cd値=0.33、1,230kgの車重には十分であったらしい。
【3】
販売価格は535万円と、決して手に入れやすい設定だったとは言い難いが。
190は翌年以降、5M/T・190D・2.3-16等を投入し、ラインナップを拡充させてゆく。
【4】
その後1988年にサイドプロテクションパネルを装着するなどのMCを経て、
2.5-16や2.5Dターボ、スポーツライン、DTMモデルなどをさらに追加していった。
【5】
そもそも大型=高級車を作ってきたMBに、なぜW201を開発する必要が生じたのか?
【6】
大きく3つの要素があったと言われている。
すなわち、
①最大市場である米国の燃費およびディーゼル規制
②競合社の展開するプレミアムコンパクトへの対抗(BMW3やAudi80)
③成長市場だった日本のサイズ規制(5ナンバー枠問題)
がそれである。
【7】
しかし、世界に真に衝撃を与えたのは、MBから小型車が発売になったことではなく、
W201のオーバースペックな作り、そしてその極上の乗り味にあったと言えよう。
【8】
190はコンパクトシリーズに比べ、30㎝短く10㎝狭く300kgも軽い、5ナンバーサイズだった。
にも関わらず、当時のSと遜色のない剛性感や乗り味を備えていたとされる。
【9】
その真髄は、まず足回りにあった。
世界初のマルチリンク式リアサス、これと対をなすストラット式フロントサスを採用した。
【10】
俊敏な身のこなしと重厚な乗り心地を両立させるという難題をやってのけたのである。
190に採用されたこの方式は、MBの基礎技術として、自動車業界に多大な影響を与えた。
【11】
そしてボディ構造もこの車の特徴のひとつだ。
MBがSクラスの開発で培った品質基準や安全性を、この小さな車に注いだのである。
【12】
7000トン級のプレス機で鍛えられた強靭な高張力鋼板を熟練工が手で組み上げる。
【13】
こうした製造工程やコスト、部品点数は事実上Sクラスと同等であったとされる。
そのため、190は販売台数が増えれば増えるほど、MBの赤字が膨らむとさえ言われたのだ。
【14】
これらオーバークオリティ気味の姿勢は、MBの真骨頂であり、後の業界標準を規定したのだろう。
しなやかさと重厚さを兼ね備えるメルセデスライドの幕開けもここに始まったのである。
【15】
190シリーズの登場から既に30年以上の時が経過した。
【16】
世界の環境や技術の進歩には隔世の感がある。
【17】
当時W201は「小さな車は大きな車の代替になり得るか」を世界に問いかけた。
【18】
30年以上経ったいま、果たしてその答えは出されているのだろうか?
【19】
そして僕等は、自動車という枠組みを超えた先に、どのような未来を思い描いていくのだろう。
【20】
※EOS 6D Carl Zeiss Makro-Planar T*2/100㎜ ZE【Top/2/4/6/8/10/12/14/16/18】
EOS 6D SIGMA Art 35㎜ F1.4 DG HSM【1/3】
EOS 5D MarkⅢ EF85㎜ F1.2L Ⅱ USM【5/7/9/11/13/15/17/19-20】
(了)
Posted at 2015/02/23 22:14:28 |
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