腐草為蛍（ふそう ほたると なる）

芒種にある七十二候のうち、

撮影日は表題にある「腐草為蛍」。

くされたるくさほたるとなるとも言い、

腐った草が蒸れ蛍になることを指す。




もちろんそんな事実はなく、伝承の類いなのだが、

【１】





ある面で言い得て妙なところもある。

【２】





水場で枯れた草が何層にも重なって、

【３】





いつしか蛍の原型をなし、

【４】





夏至の夜、仄かに緑色の光を放ち始める。

【５】





赤茶けた枯れ葉は蛍の頭、

【６】





水腐った黒い葉はその胴、

【７】





尾部の灯りは緑の葉の名残りの色だ。

【８】





頭の中で想像するに、展開は荒唐無稽だけど、

【９】





それぞれの変化は不思議なリアリティも内包する。

【１０】






撮影地は23区を離れた武蔵野の片隅とはいえ、

【１１】





さすがに蛍を見ることは難しい。

【１２】





ならばせめて蛍になる前の草花たちを記憶に残し、

【１３】





夏至への手土産にしてみようかと思った。

【１４】





夏に向かって草花たちは、

【１５】





さらに生き生きと両手を広げ、

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梅雨の合間の陽光を受け止めていた。

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奇しくもこの時季、ホタルブクロの花が満開を迎えていた。

【１８】





腐草が蛍となって、芒種の夏はさらに深まってゆく。

【１９】





※X Pro2　XF 16-55㎜ F2.8 R LM WR


（了）