
2022年5月22日(日)。
またもやバラの世界史的アプローチ。
今回からはAPS-CのX-T4での画像。
レンズは50-140に1.4のエクステ付で。
※写真と本文に連動性はありません。
これまでの回でご紹介したように、アレクサンダー大王の東方遠征や十字軍などの
影響によって、オリエント諸国からヨーロッパへとバラが移動する機会が
劇的に増え始めた。もちろんそうなれば交配も盛んになるというものだ。
1870年頃にペルシアからオーストリア・オランダへ、黄バラのロサ・フェチダ・
ペルシアナが伝わっている。この頃まで、ヨーロッパには黄バラはなかったのだ。
こうしたことを背景に、アジアの植物が盛んにヨーロッパへと持ち込まれたのが
いわゆる大航海時代である。ヨーロッパのプラントハンターたちは、
危険を冒してでも茶や胡椒など有用な植物、権力者が喜ぶ珍しい植物を求めて、
こぞって東洋を目指している。
そんな中、ヨーロッパのバラはついに歴史的な出会いを果たす。
バラという花自体に一種の革命が起きることになったのである。
最初に中国バラの標本をヨーロッパへと持ち帰ったのは、
スーパー植物学者カール・フォン・リンネの弟子のピーター・オズベックだ。
リンネ先生はこのバラを“ロサ・インディカ”と命名した。
無論「インドのバラ」という意味になるのだが、それは、
バラがインドを経由して運ばれたために産地を混同したのだと思われる。
18世紀の末頃になってヨーロッパに現れる庚申バラは、チャイナローズ、
もしくはベンガルローズと呼ばれるようになった。
ベンガルというのは東インド会社があったインドの一州のことで、
これまたインドのバラと勘違いされて命名されたわけだ(笑)
北米大陸の原住民然り、インドは間違われやすい国なのだろうか???
庚申バラはそれまでの欧州のバラには無かった鮮やかな赤の色素を持っていた。
…中国からヨーロッパへ持ち込まれ、多くの新種の親となった4つのバラがある。
①1792年伝来 スレイターズ・クリムゾン・チャイナ
「スレイターの深紅の中国バラ」

鮮やかな深紅の花色は、白~濃いピンクや紫のバラしか目にしたことのない欧州の人々を驚かせた。
②1793年伝来 パーソンズ・ピンク・チャイナ
「パーソンズのピンク色の中国バラ」

①のスレイターズ・クリムゾン・チャイナよりも育てやすく増やしやすかったため、
イギリス中に普及していった。「ピンクのバラ」「中国バラ」などと呼ばれる
定番品種として、後にノワゼット系やブルボン系のオールドローズを生み出してゆく。
ヨーロッパのバラには無く中国バラにあった性質の一つが、四季咲き性。
他のバラが散ってしまった後も繰り返し花を咲かせるこの品種は、
当時の人々にとっては画期的、驚異的だったことだろう。
③1809年伝来 ヒュームズ・ティー・センテッド・チャイナ
「ヒュームのお茶の香りの中国バラ」
欧州に自生しない「茶」も17世紀に中国や日本から持ち込まれた植物だった。
当時のイギリス人にとっては「お茶といえば中国、中国といえばお茶」だった。
そのイメージが先行してか中国バラのすっきりした香りは「ティーの香り」とされ、
中国バラの大きな特徴の一つになったのだった。無理矢理感は否めないけど。
もうひとつ、上の絵からは分かりにくいのだが、整った剣弁高芯の咲き方も、
この花の特徴であり、中国バラが初めてもたらした形質だった。
欧州へと渡ったこの品種から、剣弁高芯先でお茶の香りの「ティー系統」の
オールドローズが生み出される。現代の切り花バラは「ハイブリットティー系統」
がほとんどだが、名前からも分かるようにティー系統の交配種なので、
このヒュームズ・ブラッシュやその仲間の中国バラが源流になるわけだ。
④1824年伝来 パークス・イエロー・ティー・センテッド・チャイナ
「パークスの黄色い茶の香りの中国バラ」
カラーバリエーションが少ない欧州にいよいよ持ち込まれたのが黄色のバラだ。
実際の「パークス・イエロー」はより淡いクリーム色といったところだが、
それでも黄色やパステルカラーの新しい花色のバラを多く生み出す親品種となった。
「四季咲き性」「お茶の香り(ティー)」「鮮やかな赤色」「黄色」 、
これらの性質をもった中国のバラがヨーロッパの人々を驚かせ、
ヨーロッパのバラに革命を起こしていったといっても決して過言ではない。
今週水木と広島/福岡だったが、人流や人出が急速に回復しているのを実感した。
特に空港や航空会社ラウンジやホテルや繁華街はビフォーコロナの様相だった。
帰りの福岡ではスイートラウンジが大混雑でANAラウンジに移動したほど。
以前那覇で同じ経験をしたが、あれはJAL(ダイヤラウンジ)だったから、
ファースト利用者も含まれ、しかも分割新設されたダイヤが狭小なことを思えば、
今回はその比ではなく、大幅に人出が戻ってきているのは間違いない。
いや、存外ラウンジにアルコール類が復活したことが大きかったりして(爆)
そう言えば、中洲の賑わいもなかなかのものだったしなぁ。となると、、、
インバウンドが戻るのは経済再生には不可欠だろうけど、ちょっと怖いな(^^;)
来月の出張時はどうなっていることやら・・・。
今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
つづく・・・。
FUJIFILM X-T4 FUJINON XF50-140㎜ F2.8 R LM OIS WR + XF1.4x
(了)