
2022年2月9日(水)。
今日で愛車と出逢ってまる9年になる。
当たり前だが同時に10年目に突入する。
これを機に改めてC63を語ろうと思う。
最近ネット上でM156に関する記述を見つけ、
大いに賛同し感化もされたようなので(笑)
さらにググると他の場所にも全く同一の文章(ブログ記事)が掲載されていた。
ともにソース未記載でオリジナルが不明のため、いずれもリンクは控えたい。
リスペクトの意味から文章の一部あるいは趣旨を流用させてもらいつつ、
自分なりの想いを込めた【C63AMGとM156】に変換させてもらった。
年甲斐もなく熱くなったためにかなりの長文・駄文になってしまったので、
ご興味のある方のみご一読ください。
【C63AMGとM156】
このクルマをひとことで表現すると『今となってはコンパクトなボディにV8のどデカいエンジンを積んだ変わり種』となるだろうか?あるいは『かつて生産された大食漢で獣の咆哮のようなサウンドを伴うマニアックカー』とか?
まぁ間違っちゃいないと思う、確かに。だけどこのクルマの本質を語るには、AMGの産んだセミレーシングユニットM156の存在そのものと、この珠玉の名機の素性や生い立ちに触れないわけにはいかないと思っている。
<AMGの決断>
いまさらだが、AMGは、古くからMBのカスタムクラフトを手がけてきた。
その歴史ある名門チューナーが、初めて100%自社設計によるハイチューンエンジンの開発を決断したのは、メルセデスを始めとする自動車メーカー各社がそろそろ環境問題に真剣に取り組み出した頃で、(今思えば)まさに絶妙のタイミングだったように感じる。
しかも、メルセデスエンジンに手を加える従来のアプローチではなく、自社の積年の悲願でもあったオリジナルパワーユニットとして、M156を企画・設計・開発したのだった。
そしてデリバリーは2006年のE63を皮切りに、それまでの5.5ℓ過給型M113に取って代わることとなり、AMG各車種は55から63系列にステップアップしていった。
<M156のスペック>
吸排気位相変化機構を搭載した自然吸気DOHC32バルブ 6.208ℓのM156は、最高出力457PS/6800rpm(当家のPPGは+30PSの487PS)、最大トルク61.2kgm/5000rpm、圧縮比11.3:1というベーススペックを誇った。AMGによって構成パーツの全てがレーシング仕様で新設計されたのだ。AMGが大排気量NAに拘ったのは「現代的な低回転トルク」と「スポーツカーらしい高回転高出力」を両立させ、併せて「鋭いレスポンス」や「官能的サウンド」を追求したためだという。
M156は、敬愛を込めてエンジンバカとも言われるDr.フリードリッヒ・アイヒラー氏によって、全くの白紙から企画・設計されている。
剛性を最重要視したクローズドデッキシリンダーブロック、僅か6.8mm間隔のライナーレスシリンダー、ロアスカート一体成型クランクキャップ、ロッカーアームを排し高回転域での追従性と信頼性を高めたシンプルなバルブ駆動、レスポンスの向上を狙うストレート形状のインテークマニホールドなど、レースで培われた高度なテクノロジーが惜しげもなく注ぎ込まれた。まさに至高のユニットである。
高出力エンジン独特のメカニカルノイズを伴うアイドリング状態から一気にレッドゾーンまで跳ね上がる鋭さは、とても排気量が6,208ccもあるとは思えない。吸気音、メカニカルノイズ、排気音、それらが渾然一体となって五感を刺激するハイチューンパワーユニットになっている。
この貴重な存在の6.2ℓ NAパワーユニットの系譜は、よりレーシーなM159がSLS AMGに継承されたのち、残念ながら市場から姿を消していった。恐らくこんなスペックのエンジンはこの先もう2度と造られることはない。
「2009年インターナショナルエンジンオブザイヤー第1位」、「ベストパフォーマンスエンジン第1位」に輝いた名機M156…。やがて幻のハイチューンエンジン伝説となってしまうのだろうか。いずれ空冷ポルシェのように価格が高騰し、手の届かない高嶺の花になってしまうのかも知れない。
<ドライビングプレジャー>
Cクラスには完全にオーバースペックのフロント6POD対向ピストン、リヤ4POD対向ピストンブレーキシステム。軽量コンパクトなC63は、その車格からずば抜けたフットワークと高い動力&制動性能を誇っているとカタログ上からは汲み取れる。実際はどうなのか?
しっかりとした質感のドアを開け室内に乗りこむと、ヘッドレストの無いシンプルなAMGオールレザーセミバケットシートが適度に身体をホールドしてくれる。否応なく高揚する気持ちを抑えスターターを押下すると、爆音とも言えるレーシーな雄叫びを上げ、6,208ccの大排気量エンジンが鼓動を開始する。
セレクターレバーをDレンジに入れブレーキペダルをリリースすると、大排気量が故のダイレクトなフィーリングで転がり始める。エンスーな諸兄ならこの時点で、専用補強されたシャーシ剛性が驚くほど高いことと、締め上げられたAMGスポーツサスペンションによる最高のフットワークが奢られていることに気付くだろう。
実際に走り出してみると、Cクラスというコンパクトボディのためか、速度の乗りも良く、少しスロットルを開けてやるだけでいつまでも続きそうな暴力的な加速Gがドライバーを襲う。これは自然吸気のシャープなレスポンスと大排気量ならではの強大なトルクがモーターのように滑らかな回転から絞り出されることによる。
3,000rpm越えるとカムに乗り一気にレブリミットまで登り詰める官能的パワーフィールにガラリと豹変する。直噴化が常識の現代においてあえて「ポート噴射」が選択されているため、高回転まで回しても頭打ちなど感じられない。そうかと思えば渋滞や街乗りも全く苦にしないフレキシビリティを兼ね備えており、乗り手を選んだキャブレター時代の気難しいレーシングエンジンとは厳然とキャラクターが異なる。
さらに、だ。
M156は速さだけではなく「官能性の高さ」も兼ね備えている。現代の直噴ターボはタイムラグが最小限に抑えられているとはいえ、やはりNAレスポンスとの差は比較の対象にならないだろう。シフトアップ直後でエンジン回転が落ち込んだときや、定速巡航から全開加速に移行する時など、反応が鈍くなりがちなシチュエーションでも、少し右足に力をこめてやれば、間髪いれず後輪に怒涛のパワーが伝わるフレキシビリティ・アジリティの高さがある。低回転から豊かなトルクがありながら、回せば回すほどパワーが漲っていくNAならではのレーシーなフィーリング、誤解を恐れず言わせてもらえば、AMGの本懐はやはりこのM156であると断じたい。
一般的なコンパクトクラスでは直4よりV6の方がフロントヘビーでワインディングにおける軽快感に欠ける印象があるが、C63は巨大なV8エンジンの重量が全く気にならない。一体どんな魔法を使ったのか?と考えてしまうほどアンダーステア傾向もみられず、ステアリングを切った分だけ正確にノーズがインに向いていく、正確無比なハンドリング性能も兼ね備えている。FRであるが故の小回りの良さも特筆すべき点だ。
フルスロットルを試すと雷鳴のような音が轟いた瞬間にESPインジケーターが点滅し、車両重量を無視した豪快な突進が始まる。Sモードでコーナー立ち上がり時に全開にするとリアタイヤは悲鳴を上げ、交差点でいとも簡単に横を向いてしまう。
しかし、少しトラクションをかけ、修正舵を与えてやるとものの見事に怒涛の加速状態に復帰する。また専用チューニングされたESPの恩恵により、かなりのリヤスライドいわば姿勢変化を許容するが、よほどのオーバースピードでない限り、スピンに陥る手前で制御が働き、安定方向に引き戻してくれる。
一度ESPが働いてしまうと再びフルパワーを引き出せるまでに少々タイムラグがあるので、この制御が働く少し手前で走ると気持ちよくスポーツドライビング(スライド走法)を楽しめる。調子に乗って走っているとふと公道であることを忘れそうになる。こうした際も、一旦ブレーキペダルに足を乗せると、強力無比な対向ピストンキャリパーと大口径ディスクローターが、いとも容易く一瞬で通常速度域へと回帰させてくれるのだ。
まさにM156/W204 C63AMGは、宝石のような珠玉の名機/名車であると感じる所以である。
<ポストM156>
昨今の地球環境問題とダウンサイジングの流れ。。。間違いなく当時のメルセデスとAMGエンジニアはこうなることを予見し、であるならと自らが歩み続けてきた足跡(存在意義)を歴史の1ページに刻むため、これまでの集大成として「最後の大排気量ハンドクラフトセミレーシングエンジン」の開発に取り組んだのだと思う。AMGの精鋭技術者が誇りと責任をもって一基のエンジンをたった一人で組み上げ、最後に自らの名前が刻まれたネームプレートを本人がエンジンカバーに取り付ける。
AMGの推測通り、M156の後継機「M157ツインターボ」には排気量のダウンサイジングと低公害タイプのターボチャージャーが採用された。550に載る、ロボットが組み立てた市販車用ノーマルメルセデスエンジンが運びこまれ、AMGは過給機や補器類の取り付けを行うのみとなった。ここで問題となるのは、排気量が700cc下がったことではなく、圧縮比が11.3:1から10.0:1に下がり、最高出力の発生域が6800rpmから5500rpmに下がったことだと思っている。圧縮比のダウンは、レスポンスとダイレクトでレーシーなフィーリングを鈍らせるし、最大出力発生回転域が下がることは、胸のすく様なシャープなフケ上りをスポイルさせるからだ。
「エンジンを手組みする」という作業は、パワーユニットに命を吹き込む儀式である一方、「補機類を取り付ける」という作業は単なる「組み立て」でしかない。
思い返せば、2011年のC63マイナーチェンジで、既にデビューしていたM157ではなく、M156が継続搭載されたことに「AMGの最後の想い」が凝縮されていると感じニヤリとしてしまうのは自分だけではでないはずだ。
現にM156の開発製造が終了したAMGからは、多くの優秀な人材が流出してしまった。全てのAMGモデルに関わりブラックシリーズも手掛けたアルント・マイヤー氏はBMWのMディビジョンに移籍し、F30型M3およびM4のチューニングを担当した。M156開発に携わったある技術者はVWに移籍し、ゴルフRのエボリューションモデルR400のパワーユニットを開発するなど、本物のレーシングエンジンをプロデュースしている。
手組みのできる精鋭技術者たちは、自らの存在意義を自問自答しながら新天地を求め始めており、このままでは高齢化と共に絶滅してしまうのではないかとさえ危惧されている。フェラーリやランボルギーニなどいわゆるスーパーカーを除けば、当時市販車で手組みされていたのはM156を除くと、既にコルベットZ06&ZR-1用のエンジンだけになってしまっていた。
コンパクトなボディに珠玉の名機M156 NAユニットを搭載したC63AMGは、
SLSを別格とすれば「究極のAMG」「最後のAMG」と言っても過言ではない!
と個人的には常々思っている。
だから、M156の火はまだ落とさない、これからも・・・。
長文・駄文、大変失礼しましたm(_ _)m
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