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あの日から４年の歳月が流れた。


■ 被害に遭われた方、関係者の方々に

　 衷心よりお悔やみ申し上げます。





その日は年度末が迫る忙しい金曜日だった。

会議と会議の合間の時間で、珍しく自席にいた。

14:46突然大きな揺れを感じた。

ビル内の緊急地震速報が鳴り響く。

これまでに経験のない振幅の横揺れだった。

ブラインドが大きな音とともに揺さぶられ、キャビネの抽斗が勝手に開く。

立っていられず椅子に座る。

外を見れば他の高層ビルが折れんばかりに恐ろしく揺れているのが確認出来た。

眼下の広場には多くの人が集まり始め、各ビルを指さしながら言葉を交わしていた。

「窓から離れた方がいい！」と緊迫した声が飛ぶ。

【１】





「とにかく食料を調達しておけ！」「防寒具もある物を全部用意せよ！」

はじめにメンバーに出した指示。

エレベーターが停止しているため、高層階と地下の行き来は苦行と化す。

執務スペースの窓際に設置された5台の大型モニターにNewsを映し、

刻々と塗り替えられる状況を確認する。

「携帯が使えないらしい。家族の安否は公衆電話かネットで」

「不在スタッフの安否確認をせよ！」「現地の状況を確認出来ないか？」

「帰宅時の交通網も調べておけ！」「くれぐれも無理な帰宅は控えるように」

【２】





やらなければならないことが山積みで、みな異常事態に遭遇し当惑したあの日。

しかし、震源から遠く離れた東京の混乱は、原則として身の危険を伴うものではなく、

普段の快適な生活が乱されることを不安視したものだったようにも思えた。

その後、被害のあまりの大きさ、そして原発の惨事があからさまになる過程で、

絶望的な無力感が募っていた。


４年という時が経過してなお、人間の愚かさと自然災害の消えない爪痕が残る。

復興は未だ道半ばであり、故郷に帰ることさえ許されない方々が残る。

しかし当事者以外の記憶は徐々に薄れ、やがて風化していってしまう恐怖。

あの震災に学び、それを後世に活かすためには、記憶を新たにせねばならない。

次世代に確実に語り継がねばならない。

【３】





被害に遭われた方々のご冥福を祈ると同時に、志半ばで旅立たれた方々に思いを馳せ、

尊い犠牲を背景としながら、同じ過ちを繰り返さず安全な暮らしを築き上げることこそが、

残された我々に与えられた重要な使命でもあるはずだ。

【４】





幸福な生活は儚く脆い。永遠は幻。

それでも人は夢を紡ぎ、希望を描くことができる。

かすかな光明を糧として明日を生きることができるはずだ。

あの日を悼み、記憶を胸に深く刻もう、

すべての人の心に、小さな明かりを灯し続けるために・・・。

【５】





（了）