2011年05月29日
究極のブーストアップ その⑦~現車合わせセッティングとは?~
その⑥の続きです。
「究極のブーストアップ」について,長々と書いてきましたが,今回で一旦終わりにしようと思います。
まだまだ書くネタはあると思うんですが,また掘り下げすぎて底が見えなくなりそうなので。。。(^o^;
パーツセレクトについても書いてみようかと思いましたが,現時点ではあまりおもしろいこと書けないので「ボツ」にしました。(笑)
最後は,「現車合わせセッティング」について書いてみようと思います。
といっても,現車合わせセッティングの方法論を書くわけではありません。
これからショップ等で「現車合わせセッティング」をしようと思っている方の少しでも参考になれば。。。
と思い書きました。
私の中では,セッティング後の車とのつきあい方が,
今よりももっと楽しくなるか,つまらなくなるかの分かれ道
だと思っているからです。
力が入りすぎて,とても長い文章になってしまいましたが,読んで頂けると幸いです。m(_ _)m
「究極のブーストアップ」をする際,私はパーツにばかり目が行っていました。
インタークーラーはどこのを使うとか,NAスロットルはなぜいるかとか,
エキマニは換える必要があるのかとか。。。
もちろん,これらのパーツそれぞれに善し悪しがありますから,どのパーツを選ぶかは重要です。
ですが,そればかりに気を取られて,大事なことを忘れていました。
それが「現車合わせセッティング」です。
「そんなの当たり前だろ?」
と思われる方もいると思いますが,意外と抜けてしまうことだと思います。
前置きインタークーラーと言われると
○○のは高いとか,○○のは安いとか。。。
コアが大きいとか,厚みがあるとか。。。
いろんなメーカーのものを比較しますよね?
ですが,「現車合わせセッティング」ってネットや広告の情報だけでは
高いか安いか・・・しか比べようがありませんよね?
高いか安いかしか比べようがなかったら,安い方を選びますよね?
・・・というように,値段だけで決めてしまっていないでしょうか?
「現車合わせセッティング」って“値段”よりも“内容”のほうが重要ではないでしょうか?
いろんなエンジンの補記類パーツをつけて,最後にそれらのパーツの性能と,
エンジンの性能を最大限引出すことができるか否かは「現車合わせセッティング」に
かかってくるのではないでしょうか?
この行為こそ,ショップの差が最も出るところではないでしょうか?
セッティング次第では,
壊れない快調なエンジンになるかもしれないし,
すぐに壊れてしまうエンジンになるかもしれないし,
壊れないけどなんか吹けの悪いエンジンになるかもしれないし。。。
実は一番重要なところではないでしょうか?
ロデックスタイルさんの「現車合わせセッティング」は高かったです。(^-^;
ロデックスさんはなぜ高いのか本当に丁寧に説明してくれました。
対話していくなかで,
「現車合わせセッティング」って,ものすごく曖昧な定義の言葉なんだな。。。
と私は思いました。
①街乗り~高速~サーキット・・・あらゆるシーンを想定し実走行でセッティングする
②シャシーダイナモ上で実走行を想定した負荷を与えセッティングする
③そのショップで実績のあるセッティングデータを入れて,不具合がないか確認する
①~③の全てが「現車合わせセッティング」として行われているようです。
③は不具合が出なければそれで終わり!
・・・正直ヒドイとは思いますが,こういったショップもあるようです。
安くやろうと思ったら,③は安くできますよね。。。
今回,「究極のブーストアップ」をお願いしたロデックスタイルさんでは,
①の実走行でセッティングしています。
実走って危ないと思います。下手をすれば客の車をぶつけることもあるでしょう。
現車合わせってシャシダイでやるショップも多いと思いますが,合理的な方法だと思います。
客の車をぶつけることもなければ,自分の命を危険にさらすこともありません。
それなのに,わざわざ実走でセッティングするのには理由があるようです。
ロデックスさんに,なぜ実走行でセッテイングするのか聞いてみると,返ってきた答えは
「シャシダイでは実走行の負荷を完全には再現できないから」
なんだそうです。当時はよくわかっていなかったので勉強しました。
以下,できるだけ簡単に説明します。(^-^;
現車合わせセッティングは,
「燃料マップ」と「点火マップ」を作り込むこと
だと私は理解しています。
セッティングの細かいところまで説明できるほど,勉強できていませんので,(^o^;
ここでは,「燃料マップ」と「点火マップ」の例を示します。
まず燃料マップです。形状よりも,「軸」に注目してください。
次に点火マップです。
http://www.asahi-net.or.jp/~VS6N-MRYM/romtune/na8crom.htmlより引用させてもらいました。
どちらのマップも,横軸はエンジン回転数です。
縦軸はどちらも吸入空気量です。
吸入空気量=エンジン負荷=走行抵抗
と言えると思います。
つまり,
「走行抵抗が,エンジン制御に重要な吸入空気量を決めてしまう」
ということなんです。
(空ぶかししている状態(=ほぼ無負荷)ではブーストもかかりませんよね。)
ということは,
「セッティングする車の走行抵抗を如何に忠実に再現するかで,
セッティングの善し悪しが決まる」
ということなんです。
*********以下の説明は読み飛ばしてもらっても結構です。**********************
走行中の車にかかる走行抵抗は,以下の4つです。
走行抵抗(R)=ころがり抵抗(Rr)+空気抵抗(RAir)+加速抵抗(Ra)+勾配抵抗(Rs)
ここで,
ころがり抵抗Rr=μr×W
空気抵抗RAir=CD×A×(Va)2
加速抵抗Ra=(W+△W)×a/g
勾配抵抗Rs=W×sinθ
W:車両総重量
μr:ころがり抵抗係数
CD:空気抵抗係数
A:前面投影面積
Va:対気速度
ΔW:回転部分相当重量
a:自動車の加速度
g:重力加速度
θ:傾斜角
また・・・難しい式が。。。と思われるかもしれませんが,この走行抵抗のうち,
シャシダイと実走行で何が違うかだけ説明します。
まず,ころがり抵抗は実走行をシャシダイでほぼ再現できますし,
もともと小さな抵抗なので,無視してもそれほど支障はないはずです。
次に,空気抵抗は,シャシダイで再現するには,
車速に合わせて風量を制御可能な巨大な送風機が必要です。
普通のショップにあるシャシダイではまずないと思います。
空気抵抗は意外とバカにできません。
RAirの式にあるように,速度の2乗に比例するからです。
例えば,100km/h=27m/sですから,計算すると,数百kgの抵抗になります。
シャシダイでのセッティングでは多くがこの抵抗を無視しているはずです。
また,走行中に車が受ける風速は,走行抵抗だけでなく,吸入空気温度にも影響します。
・・・ということは,
巨大な送風機がないと,シャシダイでセッティングするのは難しいのではないでしょうか?
加速抵抗は,車を加速させるのに必要な力です。
シャシダイで再現するには,ローラー式シャシダイであれば,
車両重量とローラー部分の慣性重量を合わせれば可能ですが,
合わせるためには緻密な制御が必要です。
自動車メーカー等の非常に高価なシャシダイならできると思いますが,
通常のパワーチェックに使うようなシャシダイでは,そこまでの制御はできないはずです。
勾配抵抗は,斜面を登るのに必要な力です。
これを通常のシャシダイで再現するのはほぼ不可能と考えます。
これをやるには,電気的に制御可能なシャシダイで,予めコースを想定したプログラムを組み,
それに忠実に従ってアクセル操作をしなければならないはずです。
加速抵抗よりはるかに難しい制御になるはずです。
****************************************************************************
また小難しい説明をしてしまいましたが,(^o^;;
言いたいことは,
「通常のパワーチェックするようなシャシダイで,
実走行における走行抵抗を完全に再現するのはムリ!」
ということです。
そこを十分にわかっているからこそ,ロデックスタイルさんでは,
危険を冒してまで実走行でのセッティングをしているそうです。
これから「現車合わせセッティング」をしようと思っている方には,是非
「現車合わせセッティング」を「価格」ではなく,「内容」で決めて欲しいと思います。
セッティングに出すときに,
「現車合わせセッティングってどのようにしてやるんですか?」
と聞いてみることをお勧めします。
改めて,ロデックスタイルさんでの現車合わせセッティングの流れを聞いてみました。
(このブログを読んで頂いてるみんなが気になると思ったので。。。)
セッティングはロデックスさんが運転し,ロデックスさんが「先生」と呼ぶ
セッティングのプロとの2人で行うそうです。
① 初期データ入力(30分程度)
・ 空燃費計を取付後,初期データを入力し,エンジンをかけ,暖気をする。
・ 暖気をしながら,エンジンルーム内の最終チェックをする。
② 街乗り(20分程度)
・通常の街乗りを行い,街乗りでの使い勝手を確認しつつ,全開テストに向けて
初期データを補正。
③ 全開テスト(40分程度)
<全負荷>
・ 3速3000rpmから全開にし,レッドゾーンの7800rpmまで回す。これを2回繰返す。
※ この1回目が一番緊張するそうで,空燃費計から目が離せないとか。。。
<0ブースト>
・3速3000rpmからブースト0のパーシャルアクセルで7800rpmまで回す。
<加速増量補正>
・4速3000rpmから全開にし,4000rpmでキープ→全開→5000rpmでキープ→全開
→6000rpmでキープ→全開→7000rpmでキープ→全開→7800rpmでキープ ・・・
↑けっこう難しい運転ですね。(笑)
この後,その車のオーナーに合わせて,マージンを決定するそうです。
<高速域でのフィーリングチェック>
・素早くシフトチェンジしたり,アクセルをパカパカやったりし,フィーリングをチェックし,
気になるところがあれば補正をするそうです。
最後にもう一度,全負荷テストを行い,高速域でのセッティングは終了。
セッティングとしてはここまでで8割くらいの完成度になっているとのことです。
④ 最終チェック(90分程度)
・ミニサーキットやワインディングを想定し,中低速での限界走行でアクセルのレスポンスやドリフトでのパーシャル域のトルク感をチェックし,気になるところがあれば補正を繰り返す,とのことでした。
以上は,パワーFCの場合です。Vプロはもっとかかるそうです。
以上が私が聞いたロデックスタイルさんでの「現車合わせセッティング」の流れです。
セッティングに出す際,新品タイヤにし,走行距離もこっそりメモしておきました。
(いやらしくてすみません。(^-^;)
引取の際,タイヤにはきちんとスライドした跡が残っており,実走90kmのセッティングでした。
改めてロデックスさんに聞いてみました。
私「セッティングって通常1人でやりますよね?なんで2人でやるんですか?
セッティングを「先生」がするのなら,ロデックスさんは運転しなくてよいのでは?」
ロ「うちのお店から出すんですから,私が納得できないものは出しません。
だから私が1台1台運転してフィーリングを必ずチェックします。」
「先生」のことはとても信頼しているようでしたが,必ずロデックスさん自らが運転し,
納得できるレベルのセッティングを一緒にするのだそうです。
D1トップドライバーであったロデックスさんが,ほんのわずかな瞬間のアクセルレスポンス等,
オーナーの運転レベルでは感じ取れないところのわずかなフィーリングに拘って,セッティングしてくれる。。。
これって凄いことだと思います。
まさに「車に魂を込める」作業なんだと思います。
最初にロデックスタイルさんを訪れたときには何とも思わなかった,
「命かけて!営業中」
ようやくその意味がわかりました。
セッティングの「金額」は他のお店より高いですが,
私は,「作り込み」のレベルの高さへの対価として,適正であると感じました。
その①からその⑦まで,あれこれ理屈をこねましたが,
結局のところ,乗ってみて,体感した方が早いです。(^o^;
セッティング後,車好きの先輩を横に乗せてサーキットを走ったときの感想が印象的でした。
「速くなったね」とかではなく,第一声は
「別の車じゃん!!」 w(゜o゜)w
でした。私も全くその通りだと思いました。
セッティング後,S15に乗るのが楽しくなったか否か・・・
今更説明するまでもありません。
気になる耐久性ですが,ブーストアップから1年3ヶ月,
真夏のサーキット含めて15,000km走りましたが,
今のところノントラブルです。(^-^)v
以上,あくまで私が感じた所感です。
私としては大満足の「究極のブーストアップ」でした。
その⑦までお付合い頂き,ありがとうございました。m(_ _)m
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究極のブーストアップ | 日記
Posted at
2011/05/29 21:21:23
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