
国土交通省は、5月27日に開催された「第3回 知床遊覧船事故対策検討委員会」の配布資料を公開しました。
議事概要、検討委員会の結果(まとめ)については、今回、同様、次回開催時に公開されるものと推察しますが、既報の通り、概ね提案内容を実現していく方向を提案する形になったようです。
「資料3 テーマ別の検討」は、全47ページで、
1.船員の技量向上
2.設備要件の強化
3.利用者への安全情報の提供(事業者からの安全情報の提供等)
の3つのカテゴリで編纂され、それぞれ今回の検討委員会で議論されています。
どれも重要なテーマではありますが、今回、特に「2.設備要件の強化」の中で扱われている内容について、幾つかピックアップします。
まず、「現行制度:航行区域(船舶安全法施行規則第5条・第7条)」について、この区分けは、原則間違ってはいないと感じますが、明確に違いが分かる「平水」「沿海」「 遠洋・近海」は良いとして、本件事故の対象となる「限定沿海」については、その安全基準について、疑義を感じるところで、見直しは勿論として、委員会の意見としてある地域特性に応じた考え方の導入が正解のように感じます。
次に救命装置として、「小型船舶に即した新たな装備の開発(案)」の中で、「(船体からの移乗時の落水を防止する)スライダー付きの救命いかだ」「内部収容型救命浮器(周りにつかまらず全員を内部に収納可能な救命浮器)」が提案されていますが、現在、これらの装置は大型船舶を対象としてリリースされている装置で、仮に横浜港で言えば「マリーンルージュ」(総トン数:683t)クラスであっても搭載は船体構造、設置スペース的に難しいと感じます。
また、小型化が実現しても、本件事案の対象船舶クラスでは、やはり搭載できない為、これに代わる装置の開発が求められるところだと思います。
提案の中でも触れられていますが、船舶の大きさ、対象海域にそれぞれ即した装置の開発が必要だと思います。
そして「陸との連絡が常時可能な無線設備から、携帯電話を除外」
これは本当、現行法が携帯電話の登場より前に施行されていて、あとから携帯電話の特性をよく理解しないまま付記したのではないかと疑われても仕方ない部分かと思います。
前も書いたことがありますが、例えば「にっぽん丸」「ぱしふぃっくびいなす」「飛鳥II」で東京湾から出て相模湾に入ると、佐島沖、葉山沖、江ノ島沖と三浦半島、湘南の景色が肉眼で見えているところでも携帯電話会社によっては通話が不能(圏外)になります。
携帯電話網が整備されている首都圏であっても海上通信としては、完全でないことを考えると、これが「陸との連絡が常時可能な無線設備」として認められていたことが驚きです。
「平水」と「限定沿海」の違いをよく理解せずに法令を当てはめてしまったようにも感じます。
改めて、今回の知床遊覧船で亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に、未だ行方が分からない方々が1日も早く発見されることを切にお祈りしております。
そして、まだ7月の中間とりまとめ、年内目途の最終とりまとめと対策検討委員会は続きますが、ここで検討され提案された内容が、今後の海難事故防止に役立つものになることを願って止みません。
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Posted at
2022/05/29 02:08:41