2018年05月28日
バレーボールにおける最近のポジション名について
現在開催中のバレーボール・ネーションズリーグTV中継で、選手のポジション名に「アウトサイドスパイカー」という表記があったので、最近変わりつつあるバレーボールのポジション名について言及します。
スポーツというものはルールが少しずつ変わっていくものなのですが、まず、バレーボールで、大会によって微妙にルールは異なるものの、現在のVリーグで、試合開始前に提出するスターティングラインナップとして記入される選手の人数って何人かご存知ですか?
① 普通の人は「バレーボールは6人制なんだから、スタメンは6人だろ」と思うでしょう。
② 少しご存知の方は、「いや、リベロ制度があるから7人だろ」と思うでしょう。
③ でも、正解は8人なんです。数年前からリベロ2人制が始まっているので、6人プラスリベロ2人の8人が最初に提出されて、リベロ2人の試合中の交代は自由となっています。
※筆者注:試合直前に提出するオーダー表にはスターティングリベロだけ記入して、セカンドリベロは記入しないので、その意味では「7人」なのですが、それより前にベンチ入りメンバーを提出する際には当然セカンドリベロの記載があって、実際の試合では2人のリベロの入れ替わりは自由なので、実質的に試合開始の時点で選手交代手続きなしに出場できる選手の人数は8人。そういうことを言いたかったのです・・。
これをどのように利用するかは戦術次第で、結局リベロ1人だけを使い続けるチームもあれば、試合の中でサーブの時はディグの得意なA選手、レセプションの時はレセプションの得意なB選手と、目まぐるしくリベロを替えるチームもあります。
というように、ルールによって戦術も変わっていく中で、最近のバレーボールのポジション名は、普通の人にはついていけない速さで変わりつつあります。
ひと昔前までは、レフト、センター、ライト、セッターだけでした。そこへリベロ制度が始まって、それから、戦術的にセッター対角に入る男子選手がバックアタックもするようになって、中垣内(現:全日本男子監督)を松平先生が「スーパーエース」と命名しました。山本隆弘もスーパーエースと呼ばれました。セッター対角が「スーパーエース」というポジションであるかのような誤解も生まれた気がします。ただ、これはチーム内での役割であって、ポジション名ではありません。
そのうち、海外ではセッター対角を「オポジット」と呼ぶようになりました。オポジットという英単語は「正反対の」というような意味で、バレーボール用語としては、セッターの正反対の位置でローテーションする、すなわち、セッター対角という意味になります。
オポジットという英単語の意味だけからすれば、レフトにだってセンターにだって対角の人はいるのですが、レフトの対角はレフト、センターの対角もセンターなのに対し、セッターの対角がアタッカーなので、戦術的にセッター対角というのは特別の意味を持つのです。
もう少し言うと、ローテーションのある6人制バレーでは、セッターが後衛にいる時は前衛にアタッカーが3人いるので多彩な攻撃が可能なのに対し、セッターが前衛にいる時はセッターが基本的に攻撃参加しないので、前衛アタッカーが2人になるので、攻撃のパターンが減る(相手がブロックにつきやすい)。その、攻撃が苦しい前衛アタッカー2枚の時に、セッター対角の選手は必ず後衛にいるわけです。だから、その選手がバックアタックができれば、攻撃の枚数が3枚となる。そういう意味で、男子の場合は特に、セッター対角には攻撃力のある選手をいれる意味があって、セッター対角、すなわちオポジットは重要なポジションになるわけです。
当初はオポジットというポジション名は主に男子で使われていましたが、今では女子でも使われているようです。
で、セッターとリベロというポジション名はそのまま残って、オポジットがいて、かつてセンターと呼ばれたポジションが今は「ミドルブロッカー」と呼ばれています。ミドルブロッカーの位置は後衛に下がるとリベロと交代するパターンが多いので、昔よりもいよいよブロックが主な仕事となっているわけです(リベロ制度がなかった頃は、センタープレーヤーも後衛に下がったらレシーブをしないといけませんでした)。
残るポジションはかつてのレフト。これが、ウイングスパイカーとかアウトサイドスパイカーとか呼ばれています。「アウトサイド」と「ウイング」は同じ意味です。ウイングスパイカーのうちの1人がオポジットに入る、という言い方もできます。
そして、ここに来て、「パスヒッター」と「ポイントゲッター」という言い方が出てきました。これは多分に作戦的な意味を持ったポジション名というか役割です。オポジットを含めたウイングスパイカー3人を、さらにレセプションを受け持つかどうかで区別します。
パスヒッターの「パス」とは、レセプション(サーブレシーブ)のことです。レセプションの精度によって「Aパス」とか「Bパス」とかテレビ実況で出てくるのを聞いたことがあるでしょう。
具体的な選手名で言う方がわかりやすいかもしれません。木村沙織はレセプションを必ず受け持つのでパスヒッターで、レフトの位置に入ります。長岡はレセプションをしないのでポイントゲッター(攻撃専門)で、オポジットの位置に入ります。その長岡が負傷しているので、新鍋が久光でも全日本でもオポジットの位置に入りますが、彼女はレセプションが得意なので、パスヒッターとしてプレーします。迫田は所属の東レで、チーム事情によりレセプションを任されたり免除されたりしました。パスヒッターとポイントゲッターの間をさまよっていたわけです。さらには、木村沙織の最終シーズン序盤に東レが不調だったため、確か正月休み明けから木村沙織とリベロ木村美里が姉妹で2人レセプション体制をとりました。こうなると、木村沙織の対角の選手もポイントゲッターとなり、コート内に同時に2人ポイントゲッターがいたことになります。
このように、バレーボールのポジション名は、ポジションだったり、役割だったり、ローテーションの中での位置のことだったり、ちょっとずつ次元の違うものが一緒に語られているので、非常にわかりづらいことになっていると思います。まあ別にわかりやすくする必要もないので、こういうことを理解しながらバレーボール中継を見ると、いろいろと面白いですよ。おわり
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バレーボール | スポーツ
Posted at
2018/05/28 21:19:17
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