2018年11月23日
先手と後手の話 第2回 ~卓球界では~
さて、スポーツ界ではどうでしょう。メジャースポーツで明確に「先攻」と「後攻」があるものと言って思いつくのは野球くらいですが、野球は後攻が有利ですよね。ゴルフは他人のショットが風向きなどの参考になるので、前のホールでのスコアの良かった順にティーショットを打ちますね。そういえば、カーリングは、あれはどうしようもなく後攻有利ですよね。
やはりここで話題の中心に据えたいのは、「先手と後手」とは微妙に違いますが、ネットスポーツにおける「サーブ」と「レシーブ」の関係性です。
テニスはサーブ側が有利で、だからこそレシーブ側に「ブレイク」という概念が生まれます。見ている感じ、テニス界では「サーブ側有利」を修正しようという動きは全くないようです。サーブ権は両者に公平に与えられますし、強烈なサービスエースはテニスの魅力でもあります。すなわち、テニスはサーブ側有利を前提としたスポーツと言えます。
一方で、卓球界ではサーブ側の有利性を修正するために過去何度も細かいルール改正が行われました。卓球のルール改正の歴史はサーブ側を規制する歴史と言っても過言ではありません。では、テニスと同じように両者に公平にサーブ権が与えられる卓球において、なぜサーブ側を規制しようとするのでしょうか。
卓球において、サーブは唯一相手の影響を受けずに自分の思い通りにボールに回転を与えられる技術です。その回転がわからないとレシーブミスが多発します。卓球関係者は卓球を「魅せるスポーツ」「テレビ映えするスポーツ」にしたいと常々考えており、そのためにはラリー戦を増やす必要があると考えています。
サーバーの高度な技術により、その回転がわかっていないレシーバーがネットミスする様子は、競技経験者から見るとそれも卓球の魅力のひとつで、最近で言えば、吉村真晴のアップダウンサーブの回転がわからず唖然とする中国・許キン(当時世界ランク1位)の姿など大変面白かったのですが、一般的な視聴者の見方としては、なぜレシーバーが普通(に見える)サーブをネットミスするのかわからないので、映像として「テレビ映え」しません。その辺がテニスの強烈なサービスエースとの違いです。
具体的には、サーバーはエンドラインより後方かつ台より高い位置で手のひらの真ん中にボールを置いて静止し、そこから真上に16センチ以上回転を与えずに投げ上げて、それが上昇中ではなく落下し始めてからサーブを打つこととなっており、そこまでは長年変わっていないルールなのですが、打つ瞬間にインパクトを相手に見せないように身体や腕で隠したり(通称ボディハイドサーブ)、インパクトの瞬間に足で地面をバターンと蹴ってインパクトの音をかき消したり(通称バターンサーブ)、その辺をどのように規制するか試行錯誤して、過去何度もルールの文言が改正されました。 ※ちなみに、なぜ16センチかと言うと、卓球のネットの高さが15.25cmなので、少なくともネットの高さ以上は投げ上げようという意味です。
そこまで規制しても、やはり卓球はサーブが有利です。最近はチキータという台上レシーブ技術が開発されたので、以前ほどではありませんが、それでもやはりサーブ有利です。ただ、以前の1ゲーム21点制の時代はサーブ権が連続5本あったので、その5本の組み合わせが作戦上のポイントだったのですが、そんなこともテレビを見る一般視聴者にはわかりづらく、現在の11点制では、サーブ権は連続2本で、サーブの組み合わせの妙があまりなくなってしまいました。
なお、卓球でサーブが有利というのはシングルスの話です。ダブルスでは昔からレシーブ有利で、チキータ全盛となってからはなおさらレシーブ有利です。なぜなら、卓球のダブルスのサーブはコートの半分にいれないといけないからで、しかも、テニスのように左右交互ではなく、サーバー側から見て必ず右半分から出して、相手の左半分にいれないといけません。なので、左利きのレシーバーは必ず身体を台の中にいれてレシーブできるので、左利きならさらにレシーブ有利です。シングルスとダブルスで有利不利が変化するのが卓球の特色。
以上、卓球界における考察でした。第3回に続きます。
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Posted at
2018/11/23 21:08:41
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