【東日本大震災】「カンバン方式」限界 工場の部品調達深刻
東日本大震災は25日で発生から2週間。生産再開の動きも出始めたが、部品供給の停滞がメーカーに与える影響は今も深刻だ。東京電力福島第1原子力発電所の事故に伴う計画停電で電力も十分に確保できず、金融市場は不安定なまま。産業復興の道筋は見えない。
ホンダは24日、27日までとしていた国内での自動車生産休止を4月3日まで延長すると発表した。トヨタ自動車は28日からハイブリッド車(HV)3車種の生産を再開すると発表したものの、自動車業界は今も部品調達難に苦しんでいる。
「過去の災害で部品供給が止まったように、今回も在庫部品を極力持たないカンバン方式の限界があらわになった。この方式がコスト削減効果を持つのも事実だが、もろ刃の剣だ」。明治大学の富野貴弘准教授はこう分析する。
トヨタに代表されるカンバン方式は、効率的な生産でコスト競争力を高めるための大きな強みとなる。だが、自動車には2万~4万点の部品が使われ、うち1つでも欠ければ生産はストップする。平成7年の阪神大震災、19年の新潟県中越沖地震でも部品調達が途絶え、自動車各社は生産停止に追い込まれた。災害・事故のたびにカンバン方式の弱点は指摘されてきた。
今回、自動車部品メーカーの中には生産拠点が壊滅的被害を受けたところや、東京電力福島第1原子力発電所周辺に工場がある社もあり、100社以上が生産を再開できない状況。自動車各社の在庫部品は25日までに底を突き、ほとんどの東日本以外の生産拠点でも生産を停止している。
特にホンダ系の部品メーカー、ケーヒンの打撃は大きい。同社が生産拠点を持つ宮城県角田市周辺には下請け、孫請けの中小企業が点在。これが津波などで壊滅的被害を受けてエンジン制御機構などの基幹部品を出荷できなくなり、「生産再開でホンダが出遅れる可能性が高い」(大手部品メーカー)とも指摘される。
必要以上の在庫を持たないのは電機各社も同じ。ソニーは「種類によっては部品在庫が逼(ひっ)迫(ぱく)している」といい、静岡や愛知などにある液晶テレビやカメラの5工場は31日まで生産を一時停止。この5工場については、海外への生産移管も検討しているほどだ。
部品調達難に加え、計画停電が生産に及ぼす影響も深刻だ。日本経済の“屋台骨”であるものづくりの現場は、震災後の混乱からなかなか抜け出せない。
産経新聞より
製造業にいなかったり、経済の事をかじってないともしかしたらなじみの薄い言葉かもしれませんがこのカンバン方式、海外では
Just in time
Toyota Production System(TPS)
Lean Manufacturing
等と言われ、世界の経済学(ミクロ経済)やモノづくりの現場では頻繁に出る用語です。
おさらいとしてこのカンバン方式は何ぞやと申しますと
1)必要な分を必要な分だけしか作らない
2)人の動きやジェスチャー、あらゆる無駄を排除し不良品を出さない(効率化)
3)作ったものは作り置きせず、即配送し作り置きは可能な限り0にする(所謂ゼロストック)
そもそもこのカンバンというのはあの街中の大きいカンバンの事ではなく
薄い鉄板、プラスチック、紙をラミネートした札表などが用いられている。カンバンには、部品名および数量が書いてある。
最初、こっちで学生時代カンバンってどういう意味だって聞かれたときはカンバン=○○製パンとか▽□商店とか書かれた看板の意味だと説明したら、モノづくりの世界では所謂オーダー表や生産指令書などがカンバンと言われていると説明されました。
なのでタイトルにカンバン方式と書かれていてもなんじゃこりゃという人も思いあえて補足事項を付け加えました。
もう少し詳しく知りたい方は関連情報URLにトヨタのオフィシャル情報のサイトのURLを掲載しましたのでご参照ください。
では本来の話に戻りますが
> 「過去の災害で部品供給が止まったように、今回も在庫部品を極力持たないカンバン方式の限界があらわになった。この方式がコスト削減効果を持つのも事実だが、もろ刃の剣だ」
すでに中越沖地震の際
リケンという工場が被災して生産が止まったのは記憶に新しいところだと思います。
その際にはこういう事もあったりしましたけどね
(新潟県中越沖地震)自動車部品製造会社リケンへの給水のため、周辺住宅への水道閉める(NHK)
2007年にこういうことが起きながらもカンバン方式を続けると言う事は今の製造業が如何に目先のコスト削減にしか目が向いていないかという証明なんです。
> 特にホンダ系の部品メーカー、ケーヒンの打撃は大きい。同社が生産拠点を持つ宮城県角田市周辺には下請け、孫請けの中小企業が点在。これが津波などで壊滅的被害を受けてエンジン制御機構などの基幹部品を出荷できなくなり、「生産再開でホンダが出遅れる可能性が高い」(大手部品メーカー)とも指摘される。
なにもこれホンダだけに限ったことではないのですがカンバン方式が採用されるとサプライヤーすべてに適用されるんですよ。つまりメーカー、一次供給先、下請け、孫請けと連鎖されているわけなんですよ。
メーカーや一時供給先が稼働可能でも、下請け、孫請けが被災するとそこで止まります。なにせこのカンバン方式の最大の弱点
製造拠点並びに流通が破たんするとそこですべて止まる
どういう事かという製造拠点、所謂町工場が被災するとそこで止まるのでその先で物が作れなくなるのは当たり前かと思います。
では流通はとなると、基本的にストックゼロを概念としている以上、定期的にトラックなどで配送しなければなりません。そのトラックが使ってる道が液状化して使い物にならなくなったり、あるいはトラックが故障や事故で配送不能となったり、もっと単純に渋滞につかまっただけでもものが作れなくなります。
某工場なんかでは朝からすごいトラックの行列が起きているというのを聞いたことがあります。しかもストックゼロですから頻繁にトラックで配送しなければなりません。つまり、輸送量が増えれば増えるほどCO2が増える、所謂エコと反するんですけどね。
よく輪番停電が問題沙汰にされていますが、日本のモノづくりのシステムが見直される時期に来たと思います。たぶんこれでも続けるとなると余程のうまみがあるのかもしれませんけどね。
最後に付け加えておきますがこのカンバン方式
トヨタの特許
となっておりますので、金せびられないようにしとかんと…(しかも、これの講習、かなり高い金を払わないとダメと聞いたことがあります)
なんせトヨタは以前なんか被災した会社(町工場)を支援すると言っておきながら法外な請求をしたこともあると聞いてますからね(ソースを調べてみたのですが削除されたみたいです)
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Posted at
2011/03/27 07:21:17