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2009年08月28日

ブリヂストン 第3世代ランフラットタイヤ

ポルシェ 959と夢のタイヤ

 最高出力450ps、最大トルク51kgm、0-100km/h加速3.9秒、最高速317km/h…現在でも超一級の性能といえるこれらの数値を、実に20年以上前に実現していたのが、1987年にデビューしたポルシェ959。ご存知のように、当時のポルシェの技術を結集して作られた究極のスーパースポーツである。

 そんな途方もない性能を誇ったポルシェ959の足元に標準装着されたのが、日本のブリヂストンによって開発された“ランフラットタイヤ”だ。
ブリヂストン 第3世代ランフラットタイヤ

 いくらクルマが圧倒的な高性能を発揮しても、その高性能を路面へと伝える術はタイヤのみ…そう考えると見識高いポルシェの技術の粋を集めて作られたこのスーパースポーツの性能を発揮するのに相応しいタイヤとして選ばれたブリヂストンのランフラットタイヤが、いかに厳しい基準をクリアしたかが伺い知れる。特にポルシェは、最高速を始めクルマの性能を確実に保証することで有名。つまりランフラットタイヤは当時の超一級の性能を保証するための絶対的な手段だったわけだ。317km/hでも心配なく走れるための。

 実はそれより前の80年代前半、ブリヂストンはホンダ・シビックの身体障害者用モデルに対しランフラットタイヤを共同開発した経緯がある。317km/hの超高性能を支えた一方で、身体の不自由なユーザーのために、パンク時に交換不要という利便性を提供したのだ。

 これがいわゆる“第一世代”のランフラットタイヤ。つまりその発想は生まれた時からあらゆる事象をカバーする要素を備えた夢の製品だった。事実ランフラットをひと言で説明するなら「パンクしても走れるタイヤ」。これまでの常識からすれば矛盾する表現だが、今やそれが現実なのだからこの言葉は実に哲学的だ。“パンクしても走れる”という事実は、パラダイムを全く変えてしまうだけの意味合いを持つ。まずパンクによる路上での立ち往生やタイヤ交換が不要となり、バースト時でも通常のタイヤ以上に走行安定性が確保される。さらにはスペアタイヤが不要となりスペアタイヤの生産と廃棄が消え失せ、車両開発時には有効スペースの確保やレイアウトの抜本的変更をも生む。

 ただし、夢の製品であってもまだ完璧ではなかったのも事実だった。

第3世代ランフラットタイヤ登場

 “パンクしても走れるタイヤ”を実現するには空気が抜けても車体を支えるだけの強度が求められる。ランフラットタイヤはサイド部分に補強がなされ、それゆえに通常のタイヤよりも硬く、当然重量も増した。

 しかしそうした部分は先述した数々の優れた要素でカバーできるし、車体の方でカバーできるものでもある。だからこそこのタイヤにBMWは白羽の矢を立てたのだろう。同社のスーパースポーツであるZ8や、5シリーズに採用を始め、2005年に登場した主力車種3シリーズでは標準装着という英断を下した。そしてこの時ブリヂストンもランフラットタイヤをさらに進化させ、硬い、重いというデメリットを出来る限り払拭する努力を行ったのだった。
ブリヂストン 第3世代ランフラットタイヤ

 それから4年が経った今年のジュネーブショーで、ブリヂストンはランフラットタイヤを第3世代へと進化させ発表した。その名も「3G RFT」。そして進化の幅を確認するため、世界中のジャーナリストを集めての国際試乗会が、イタリア・ローマ近郊にある同社のテストコースEUPGで開催されたわけだ。

 3G RFT最大の特徴は、先に記したデメリットをほぼ払拭したことにある。特に硬さがいかに通常のタイヤに近づいたかは“縦バネ指数”(乗り心地の指標)で一目瞭然。通常のタイヤを100とするならば、第1世代が120、第2世代が115となる。これに対して第3世代では105にまで改善され、通常タイヤよりわずかに硬い程度に収まっている。

 それを実現した技術の主役が今回試乗したプロトタイプタイヤに適用された、新たなサイド補強ゴムの採用。これはナノプロテックを採用したポリマーを用いることで、カーボン分子の擦れによる発熱を抑える。ランフラットタイヤはこれまでサイドに負担がかかり発熱することで耐久性が低下した。これを防ぐために厚いゴムを使っていたし、その分重さがあった。しかし今回の新サイド補強ゴムはそれを改善できたわけで、これまでより薄く軽く作れる。ゆえに“硬い”“重い”を払拭することができるわけだ。

 また今回のプロトタイプには採用されていないが、ブリヂストンではさらに新たな技術を2つ開発した。ひとつは空気が抜けてタイヤに荷重がかかると、サイド部分が発熱するが、この時の熱を用いてプライを収縮させて張力を持たせて変形を抑えるナイロンポリエステルを用いた新プライがそれ。加えてタイヤサイドの熱を走行時の風を使って冷やすためのクーリング・ファンは、タイヤのサイド部分にフィンを与える構造となっておりSUV用のサイド部分に厚みがあるタイヤに有効だという。この2つは装着するクルマや用途によって採用するのだという。

5シリーズがEクラスになった!?

 さて解説が長くなったが新たな第3世代のランフラットがどうだったのか? これを履かせた試乗車はBMW5シリーズだったが、走らせた瞬間にメルセデス・ベンツEクラスになった! といえるくらいの違いが確認できたのだった。いや大げさではなく本当に。

 第2世代のランフラットとの比較試乗が行えたが、比べると第2世代のランフラットタイヤの印象は善くも悪くも“ソリッド&ヘビー”なもの。それが“マイルド&ライト”な感覚に生まれ変わっていた。

 もともとBMW5シリーズはプレミアムサルーンとしてはスポーティな乗り味を持つが、それが第2世代のランフラットの特性と相まって、ビシッとした乗り味と切れ味鋭いステアリングフィールが実現される。その5シリーズに第3世代を組み合わせると、路面からの当たりが確実にマイルドになり、ステアリングフィールも滑らかな感触に変わる。この辺りが「Eクラスになった!」と表現した部分。また同時に第2世代にあった重みが薄れ、軽やかさが増した点が、路面からの当たりと滑らかさを増幅しているのだ。

 また実際に第1世代と比べて第3世代では重量も5%軽くなっているため、タイヤの転がり抵抗も3%低減されている。これによりフィーリングが滑らかに感じるのはもちろん燃費に対してもメリットを生んでいる。もっともランフラット装着時点でスペアタイヤが不要と考えれば全体重量で既に軽いわけだが。

 もっともここから推測できるのは、単に以前よりも“柔らかく軽く”なったということだけでなく、タイヤ自体の味付けの幅が広がった、という点だろう。試乗タイヤはプロトタイプだけに、第2世代との違いを明確に表現したはず。それに今回試したサイド補強ゴムは以前より薄く軽いのだから、必要によってはもう少し厚く重い設定にしても従来より好印象を生むはず。そう考えるとクルマの特性に併せて“味”を変えることも可能だ。

広がるランフラット市場

 これまでの硬さ/重さを解消したことで、ランフラットタイヤは通常のタイヤと変わらぬものになりつつある。ただし車両側には空気圧モニターが必要で、これとセットで初めて使えるシステムでもある。ただこれに関しても例えばアメリカでは新車への装着が義務化されている他、日欧でも標準化の動きがあるため、ランフラットタイヤ採用の可能性は広がりつつあるわけだ。

 いま、車両側では効率追求が盛んだ。それはハイブリッドシステムの採用やEVなどに代表されるパワートレーンの改革に代表されるが、他にも軽量化や省スペース化が急務となっている。そうした時にもランフラットタイヤは大きく貢献する。特にスペアタイヤ・レスによる軽量化と省スペース、もしくはスペースの有効利用は、車両レイアウトにまで関わる要素になる。極端な言い方をすればクルマの一部の形状を変える可能性もある。

 また最初の方で記したように、“パンクしても走れる”ことの利便性は極めて大きい。最近のクルマは以前に比べれば格段にパンクしなくなったが、それでもJAFの出動件数のトップを占める要因。そう考えると渋滞を生まないという部分にすら貢献する。

 そう考えるとランフラットタイヤは“人に優しい”製品だということも判ってくる。利便性を高め、安全を確保し、道路環境にも自然環境にも貢献し、クルマそのものを変える…と利点尽くしなのでである。

 ならば価格は? そこが一番の課題だろう。現時点でランフラットタイヤは、通常のタイヤに対して2~3割高いわけだが、ブリヂストンは生産数を増やすことで価格を下げていくというから、今後は改善されていく可能性が高いと思われる。

 最後に、ランフラットタイヤの定義とはISO規格で80km/hで80km走行可能なタイヤを指しているわけだが、実際には規格が定める以上のメリットや、可能性を持つ製品なのだと認識したい。

 もっとも既に20年以上前、317km/hの最高速の保証と、身体の不自由なユーザーに対する利便性の提供という、対極とも言えるメリットを実現していた夢の製品だったわけで、その夢は現在、確実に手の届くレベルになろうとしているのである。

Carviewより

確かにBMWに乗り換えてからスペアタイヤの事は気にせずに済むようになりました。

以前はスペアタイヤの空気圧等を気にしながら走っておりましたが現在では、気にせず、走りだけに集中できます。

ただ、BMW自体の乗り心地が固いのか、タイヤが固いのかが不明でしたが、個人的にはそこまで固いとは思いませんでしたね。

でも、この第三世代で乗り心地も改善してもらえると助かりますが…入手先と交換できるところが少ないのが気になります。

もうすぐ2万キロだし、3万キロ前後で変えるようになると高いからなぁ…まぁ後は耐久性がどこまで持つかでしょうねぇ
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Posted at 2009/08/28 18:33:33

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この記事へのコメント

2009年8月28日 19:03
理想はランフラットタイヤですが、やはりコストの問題が…。
安全コストを削ることはできないと言っても…。
コメントへの返答
2009年8月28日 20:13
確かに高いですよ。
普通タイヤに比べると3割増しなので。
ただ、使う回数が少ないスペアタイヤを積むか、いかなる条件でも走りきれるRFTならRFTでしょうね。

石橋だけでなく、ミシュランや他メーカーも参入してもらえるともっと安くなるんですけどね。
2009年8月28日 20:42
パンクの心配がないのは気楽ですよね。
値段さえ高くなければ、最高なんですが(;´・ω・)

コメントへの返答
2009年8月28日 20:48
問題はその価格なんですよね。
ただ、スペアタイア等を考えたりすると若干の値上がりは仕方がないかなぁという気もします。
2割増しくらいならだとうなんですけどねぇ。
2009年8月29日 9:09
おはようございます。
日本メーカーは確実に技術を進歩させてますね。
以前、タイヤ屋さんで聞いたんですが、一般ユーザーの多くは安いタイヤにしか興味をしめさないですね。と言っておられました。安ければ外国産でもかまわないと。
自分は安全が第一なんでタイヤは高くても性能で決めています。
コメントへの返答
2009年8月29日 20:16
おいらも以前安いブランドタイヤ(所謂オートバックスブランドタイヤみたいなもの)を使ってシトロエンBXをお釈迦にしたので、それ依頼タイヤはミシュランと決めております(たまにGood Yearとかにしますが)

KumhoとかHankookなんかは危なくて使えません。
2009年8月29日 10:00
四駆でもランフラットがあれば…などと思ってしまいますが、空気圧下げて走るということができないんでしょうね(笑)

けど、クロカン用ではなく、林道~ダート用には最高かもしれません! RVR、山中で2回パンクしているのでww
コメントへの返答
2009年8月29日 20:18
あ~そういうのあれば便利でしょうねぇ。
特に杏杜さんみたいに泥んこ遊びをする場合は。

RVRで山中で2回パンクですか?!
きついっすね、それ(;´Д`)

プロフィール

「最高の仕上がり http://cvw.jp/b/205797/47125536/
何シテル?   08/02 19:13
どうも、在仏歴2X年を終えて帰国したHeeroと申します。 最近、みんカラの活動はほぼ冬眠状態です(;´Д`)
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