「電力や民需弱さがリスク、一段の政策対応を」IMFの年次審査
【ワシントン=柿内公輔】国際通貨基金(IMF)は19日、日本に対する2011年の年次審査報告書を発表し、「電力供給と民需の回復の遅れ」が日本経済のリスクと指摘した上で、もう一段の政策対応を日本政府に促した。
報告書は「日本経済は回復の兆候を示している」と分析。「サプライチェーン(供給網)は見込みより早く復旧しつつある」とした上で、日本経済は今年後半に回復へ向かうという見通しを示した。11年の日本のGDP成長率はマイナス0・7%で、12年は復興需要で2・9%まで回復すると予想している。
東日本大震災に伴う財政コストは数年にわたり国内総生産(GDP)の2~4%に及ぶと予測。「プライマリーバランス(基礎的財政収支)の大幅な改善を伴う、より野心的な中期財政戦略が必要」として、歳出見直しと消費税増税などの包括的税制改革を促した。
産経新聞より
> 国際通貨基金(IMF)は19日、日本に対する2011年の年次審査報告書を発表し、「電力供給と民需の回復の遅れ」が日本経済のリスクと指摘した上で、もう一段の政策対応を日本政府に促した。
電力供給の安定と内需拡大がデフレ対策に有効なのは、少々経済をかじった方なら理解できると思います。
> 「プライマリーバランス(基礎的財政収支)の大幅な改善を伴う、より野心的な中期財政戦略が必要」として、歳出見直しと消費税増税などの包括的税制改革を促した。
平たく言えば、これ、麻生閣下が内閣総理大臣になったとき、所信表明で行っていたことなんですよね
緊急な上にも緊急の課題は、日本経済の立て直しであります。
これに、三段階を踏んで臨みます。当面は景気対策、中期的に財政再建、中長期的には、改革による経済成長。
第一段階は、景気対策です。
(中略)
第二段階は、財政再建です。
我が国は、巨額の借金を抱えており、経済や社会保障に悪い影響を与えないため、財政再建は、当然の課題です。国・地方の基礎的財政収支を黒字にする。二〇一一年度までに成し遂げると、目標を立てました。これを達成すべく、努力します。
しかし、目的と手段を混同してはなりません。財政再建は手段。目的は日本の繁栄です。経済成長なくして、財政再建はない。あり得ません。麻生内閣の目的は、日本経済の持続的で安定した繁栄にこそある。我が内閣は、これを基本線として踏み外さず、財政再建に取り組みます。
第三段階として、改革による成長を追い求めます。
改革による成長とは何でありましょうか。それは日本経済の王道をゆくことです。すなわち、新たな産業や技術を生み出すこと、それによって、新規の需要と雇用を生み出すことにほかなりません。「新経済成長戦略」を強力に推し進めます。
阻むものは何か、改革すべきものは何か。それは規制にあり、税制にある。廃すべきを廃し、改めるべきは改めます。
強みは何か。勤勉な国民であり、優れた科学と技術の力です。底力を解き放ちます。日本経済は、幾度となく厳しい試練に対して果敢に応じ、その都度、強くなってきました。再び、その時が来たのであります。
以上、三段階について申し上げました。めどをつけるには、大体三年。日本経済は全治三年、と申し上げます。三年で、日本は脱皮できる、せねばならぬと信じるものであります。
つまりこの所信表明演説で発言したことを実行することにより、復旧・復興並びに財政健全化が達成されるということになります。
ところが、他の新聞を見てみますと、全く同じソース(IMF)でありながら、論調がかなり違っております
先ずは読売新聞から
「日本、予想より早く回復」…IMFが見通し
【ワシントン=岡田章裕】国際通貨基金(IMF)は19日、日本に対する年次審査報告を発表した。
東日本大震災の影響について「経済活動は予想よりも早く回復している。(製造業の)供給面は今夏に平常化し、年後半は回復に向かう」との見通しを示した。2011年の経済成長率は前年比0・7%減と落ち込むが、12年は2・9%増に回復すると見込んでいる。
報告書は、企業が復興需要に対応して、生産設備を増強するための資金需要が高まる結果、金利が上昇する可能性があるとした。そのため、企業の資金調達を支援し、景気回復を後押しするため、「日本銀行がさらなる金融緩和策を取る用意があることを歓迎する」との見解を示した。
読売新聞より
読売新聞は産経新聞と大きくかけ離れておりませんが、増税のことは取り上げられておりません。
次は新聞社ではありませんが時事通信の記事を御覧ください
デフレには追加緩和が有効=復興財源は消費税で-IMF
【ワシントン時事】国際通貨基金(IMF)は19日、日本経済に対する年次審査報告を発表、東日本大震災後の復興と、速やかな景気回復が最優先とした上で、復興財源は消費税率引き上げでまかなわれるべきだとの見解を表明した。また「金融緩和により、デフレリスクからの防御と回復促進が可能となる」として、状況次第では長めの期間の国債や民間資産の保有比率を増やすなど、日銀の一段の緩和が有効とした。
IMFは、日本経済は夏以降、回復すると予想。成長率は2012年には2.9%のプラス(11年は0.7%のマイナス)となるとの見通しを改めて示した。ただ、部品などの供給回復の遅れや電力確保の問題など、リスクもあると警告。こうしたリスクが現実のものとなれば、より規模の大きな財政政策の前倒し実施や追加金融緩和が必要となると分析した。
現行5%の消費税率については、12年に7~8%に引き上げることを提言。その後も財政健全化のための包括税制改革の柱として、数年中に15%まで引き上げることが好ましいとした。法人税率については、国内投資促進に向け、現在の40%から35%への引き下げが可能と指摘した。
時事通信より
内容的には産経+読売を2で割ったような感じです。
問題は次の2社です。大体、どこだかは見当がつくかと思いますが
ファイル:東日本大震災 IMF「復興財源、国債より税で」
国際通貨基金(IMF)は19日、日本に関する年次審査報告書を発表した。東日本大震災を受けての財政政策については「被害に遭ったインフラの復旧と速やかな景気回復を促すことが喫緊の課題」と強調。国債発行を抑制するため「税制措置で財源を確保することが望ましい」との見解を示した。
また、昨年まで再三、警鐘を鳴らしてきた財政再建への取り組みについては、日本政府の「10年代半ばまでに消費税率を10%に引き上げる」との方針を評価しながらも「政府債務削減への道筋をつけるため、より積極的な消費税引き上げが必要」と中期戦略の重要性を指摘した。IMFはこれまで、消費税を現在の5%から今後10年間で15%まで引き上げるよう提言していた。
日本経済の現状については「震災の被害から回復の兆候を示しており、今年後半から来年にかけて回復に向かうだろう」と指摘。12年の経済成長見通しを2.9%と予想した。11年の成長率については、すでにマイナス0.7%との見通しを発表しており、12年にかけて日本経済が順調に回復すると予想した。ただ、「依然として不確実性は大きい」とも指摘し、電力供給の回復の遅れや長期にわたる国内需要の低迷をリスク要因として挙げた。【ワシントン】
毎日新聞より
> 国際通貨基金(IMF)は19日、日本に関する年次審査報告書を発表した。東日本大震災を受けての財政政策については「被害に遭ったインフラの復旧と速やかな景気回復を促すことが喫緊の課題」と強調。国債発行を抑制するため「税制措置で財源を確保することが望ましい」との見解を示した。
景気回復を促すことが喫緊の課題と言う事を取り上げながら、「税制措置で財源を確保することが望ましい」という発言を次に持ってくるというのはどう考えても矛盾していると思うのは自分だけでしょうか?
> 日本政府の「10年代半ばまでに消費税率を10%に引き上げる」との方針を評価しながらも「政府債務削減への道筋をつけるため、より積極的な消費税引き上げが必要」と中期戦略の重要性を指摘した。IMFはこれまで、消費税を現在の5%から今後10年間で15%まで引き上げるよう提言していた。
要はこれ、復旧・復興、景気回復よりも、増税を謳う民主党政権の擁護に他ならないかと。
復興財源、増税が不可欠 IMFが対日審査報告
【ワシントン共同】国際通貨基金(IMF)は19日、日本経済に関する年次審査報告を正式発表した。東日本大震災の復興財源確保について「歳出削減の余地が限られていることから税制措置が欠かせない」と強調、日本政府が検討する所得税や消費税など「基幹税」を中心とした臨時増税構想の実現を求めた。
日本経済の見通しについては、今年後半からの回復を予想する一方、原発の一段の停止による電力供給の回復の遅れや、需要の弱さが長期化することなどにより「不確実性は非常に大きい」と警告した。
また、大震災からの復旧や景気回復を促すため「目的を明確にした補正予算編成が必要」と指摘。
47News(共同通信)より
> 東日本大震災の復興財源確保について「歳出削減の余地が限られていることから税制措置が欠かせない」と強調、日本政府が検討する所得税や消費税など「基幹税」を中心とした臨時増税構想の実現を求めた。
これ、おもいっきり、五百旗頭率いる復興構想会議の提言をそのまま支持していることになります。
残念ながら、朝日新聞はロイターか時事通信のものをそのまま載せているだけなので今回は見送りました。
同じソースでありながらここまで論調が違うのです。重要なポイントは一つの媒体に頼らず幅広い情報源を持つことだと思います。
個人的には日本の復旧・復興は増税よりも景気回復と内需の拡大と思います。