10月1日からDVDリッピング違法化&違法DL刑罰化、改正著作権法が可決・成立
20日午後に開かれた参議院本会議で、著作権法の一部を改正する法律が、付帯決議付きで可決・成立した。採決結果は、投票総数233、賛成221、反対12。
今回の改正では、内閣が提出していた改正案(政府案)に対し、衆議院の修正決議により、違法ダウンロード行為に対する罰則が加えられた。
違法にアップロードされた音楽・映像を違法と知りながらダウンロードする行為については、前回2009年の改正において、私的使用目的の複製の範囲外とされ、違法とされていたが、罰則は設けられていなかった(いわゆる“ダウンロード違法化”)。今回の改正では、このうち有償の著作物について、違法ダウンロードする行為に対し、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、または併科することと規定した(いわゆる“違法ダウンロード刑罰化”)。
あわせて、国・地方公共団体に対して、違法ダウンロードの防止に関する、未成年者に対する教育の充実を義務付けることや、違法ダウンロード刑罰化の対象となる有償の著作物を提供している事業者に対し、違法ダウンロード行為を防止するための措置を求める努力義務などを附則として盛り込んでいる。
政府案では、著作権法上の対象となる「技術的保護手段」が見直され、DVDなどに用いられる「CSS」などの暗号型技術を、この技術的保護手段に追加している。技術的保護手段を回避して行う複製は、私的使用目的の複製とは認められなくなり、刑事罰はないが違法になる(いわゆる“リッピング違法化”)。また、技術的保護手段を回避して複製するプログラム・装置を提供することは規制されており、違反者には刑事罰が科せられる(3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、または併科)。なお、コピーガードなどの技術的保護手段が用いられていないCDなどの私的複製については、違法化の対象外。
このほか、いわゆる“写り込み”について、写真や映像などに他人の著作物が写り込んでしまった場合でも著作権侵害にならないとする規定を整備。キャラクターが写り込んでしまった写真をブログで公開するといった行為が、著作権侵害にはあたらないことになる。
さらに、国立国会図書館によるデジタル化資料の自動公衆送信に関する規定を整備することで、絶版資料を公共図書館などに配信できるようにするとともに、図書館がこれら資料の一部複製を行えるようにする。
改正著作権法は2013年1月1日から施行するが、DVDリッピング違法化にかかわる規定(第30条第1項第2号の改正規定)や違法ダウンロード刑罰化に関する規定(第119条第1項の改正規定)などは、2012年10月1日から施行する。これに先行して改正法の公布の日より、国・地方公共団体に対して違法ダウンロードに関する教育・啓発を義務付ける規定(附則第7条)、有償の著作物を提供している事業者に対して違法ダウンロード行為を防止するための努力義務を求めた規定(附則第8条)などを施行する。
● 違法ダウンロード刑罰化規定の運用に、とりわけ配慮を求める付帯決議
衆議院から送付されていた改正案は、20日午前に開かれた参議院の文教科学委員会において採決され、全会一致で、原案通り可決すべきものと決定。あわせて、民主、自民、公明、みんなの党、国民新党、新党大地・真民主の各派の共同提案として、同法の施行・運用に当たって政府や関係者が配慮すべき事項を示した付帯決議案が提出され、これも全会一致で決議していた。
付帯決議では、「著作権法の運用に当たって、犯罪構成要件に該当しない者が不当な不利益を被らないようにすることが肝要」とし、とりわけ、今回の改正において衆議院の修正決議で追加された違法ダウンロード刑罰化に関する規定の運用は「警察の捜査権の濫用や、インターネットを利用した行為の不当な制限につながらないよう配慮すること」としている。具体的な、付帯決議の内容は以下の通り。
政府および関係者は、本法の施行にあたり、次の事項について特段の配慮をすべきである。
1)障害者の情報アクセスを保障し、情報格差を是正する観点から、録音図書等の作成を行うボランティア活動がこれまでに果たしてきた役割に鑑み、ボランティア団体が法人格の有無にかかわらず円滑にその活動に取り組めるよう努めること。
2)視覚障害者等への情報提供の充実に資するため、作成された録音図書等が有効活用できるよう、視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者のネットワークの構築に努めること。
3)違法なインターネット配信等による音楽・映像を違法と知りながら録音・録画することの防止の重要性に対する理解を深めるための啓発等の措置を講ずるに当たって、国および地方公共団体は、有償著作物等を公衆に提供し、または提示する事業者と連携協力を図り、より効果的な方法により啓発等を進めること。
4)有償著作物等を公衆に提供し、または提示する事業者は、インターネット利用者が違法なインターネット配信等から、音楽・映像を違法と知りながら録音・録画することを防止するための措置を講ずるように努めること。
5)著作権法の運用に当たっては、犯罪構成要件に該当しない者が不当な不利益を被らないようにすることが肝要であり、とりわけ第119条第3項の規定の運用に当たっては、警察の捜査権の濫用や、インターネットを利用した行為の不当な制限につながらないよう配慮すること。
6)付随対象著作物の利用に係る規定である第30条の2、検討の過程における利用に係る規定である第30条の3、技術の開発または実用化のための試験の用に供するための利用に係る規定である第30条の4、および情報通信技術を利用した情報提供の準備に必要な情報処理のための利用に係る規定である第47条の9については、関係者から、その具体的な内容が条文からだけではわかりにくいとの意見等があることを踏まえ、これらの規定の対象となる具体的な行為の内容を明示するなど、その趣旨および内容の周知を図ること。
7)国立国会図書館による図書館資料の自動公衆送信等に係る規定の運用にあたっては、出版市場、とりわけ今後の発展が期待されている電子書籍市場等に不当な影響を与えないよう留意すること。
8)デジタル化ネットワーク化の進展にともない情報化が急速に進展する中、著作権に関する知識が多くの国民にとって必要不可欠のもになっていることに鑑み、学校等における著作権教育の充実や国民に対する普及啓発活動に努めること。
この付帯決議を受けて、平野博文文部科学大臣は、「その趣旨に十分に留意して対処していきたい」とコメントした。
なお、改正案については、衆議院の修正決議で追加された違法ダウンロードの刑事罰化に対して、民主党の森ゆうこ委員が前日19日の文教科学委員会の質疑で反対の意を表明していた。しかし、20日の同委員会では冒頭に委員の移動が報告され、森委員は19日に辞任したとして、別の民主党議員を選任。このほか2名の委員についても移動が報告され、全会一致での決議となった。
Internet Watch より
著作権法改正が成立しました。
ここ連日、コンテンツビジネスの事を取り上げてきましたが、興味深い記事をいくつか取り上げたいと思います。
「市場を公正なものに」「CDが売れるようにはならない」──著作権法改正案、参院で参考人質疑
岸博幸の発言
> 「日本の文化を守る点から不可欠。良いコンテンツ、良いアーティストに資本投下したレコード会社が正当に報われるようにしなければならない。ネットで無料入手できる環境は改める必要がある」とした。
そもそも、良いコンテンツであれば購入したいと思いますしユーザーにとってもフェアな物であれば賛成されると思いますが、実際良いコンテンツと思われるものってここ最近、少数な気がするのは気のせいでしょうか。
おいらが最近買った音楽CDの大半ゲームミュージックですが、J-POPは買う程の物があんまりありません。
> 「コンテンツはなるべく無料でいい」という、「アメリカのネット企業などが作った価値観」がそのまま入ってきている状況で、「日本企業が日本型ビジネス作っていかなければならない。そのためにも市場を公正なものにしなければならない」と指摘する。
その日本型ビジネスと言うのが破綻しつつあるのですが…
例えばFacebookやツイッターは日本でも浸透しつつありますが、日本ではそれなりに普及したi-Modeは世界的な展開で派手に失敗しましたが?
所詮は何でも課金と言う方式は最終的には失敗すると思うのですが…
久保利英明の発言
> 「刑事罰をもってダウンロードまで規制しないともう日本のコンテンツビジネスはもたないのではないか」
規制するしない以前に、日本のコンテンツビジネスは世界では全く通用していませんが。一番最後に成功したのって写メールくらいしか覚えが無いんですが…
市毛由美子の発言
> 「刑事罰化する前にやることがある。アップロード側の刑事罰化に抑止効果があったのかの検証すら聞いていない」
> 「抑止的効果として導入するのであれば抑止的効果があるのか、どうか違法アップロードへの刑事罰執行状況を勘案しながら慎重に協議すべきだ」
これは後で出てくるフランスのスリーストライク法(HADOPI法)に繋がりますので、後ほどコメントします。
津田大介の発言
> 「違法ダウンロードの被害は6800億円近いという調査結果があるが、CDのピーク時だった90年代後半の市場が6000億円だったのに、被害が6800億円というのはバーチャルに過ぎるのではないか」
> 「ネットは知る権利のために使われている重要なものであり、この問題は音楽業界の保護だけではなく、情報通信の秩序にかかわるものだ」
> 「CDが売れるようになるかというとならない。たぶん下がっていく」
特にこの辺は異論はありません。
> 「文化庁の予算は1000億円だが、諸外国に比べても全然安い。韓国は日本の5倍の5000億円をかけ、国策としてコンテンツを輸出している」
この韓国のコンテンツビジネスのテコ入れが功をなしているかどうかはわかりませんが、実際、iTunes StoreではK-POPが掲載、販売されております。
それに比べて、日本はどうか?コンテンツの輸出に積極的とは思えません。
そういえば、以前、国立メディア芸術総合センターと言う話題があった事を覚えていませんか?まぁ俗称はアニメの殿堂だとか、国立漫画喫茶だとかと揶揄されておりましたが、当時の説明の動画がありましたのでご覧ください。
VIDEO
ここではアニメや漫画がメインとなっていますが、要はコンテンツビジネスを育てる為の仕組みを2008、2009年に作ろうとしたのですが、頓挫しました。
つまりはコンテンツビジネスを潰しているのは他でもない過剰な規制ではないのでしょうか。
実際、
> 質疑では、「スリーストライク法」を導入したフランスで、違法ダウンロードが減ったことで音楽業界の収益が上がったのか、議員から問われた岸教授が「音楽配信市場は規制によって売り上げが伸びた」と答えたものの、フランスの音楽産業自体はマイナス成長だったことを指摘され、「経済状況などの要素によって変わる。検証を始めた瞬間に多くの変数が出てくる」と、規制による効果の検証は難しいとした。
これ先程述べたフランスのHADOPI法の事ですが海賊版の横行は減りましたが、CDの販売は上がってはいません。
参考:
仏スリーストライク法、著作権侵害を激減させるも売上は上がらず
> 2011年の仏デジタル音楽市場は、前年より25%伸びて1億1000万ユーロ、うちダウンロード配信は5600万ユーロ(+18.4%)、ストリーミング・サブスクリプションサービスは3900万ユーロ(+73%)、着信メロディは1400万ユーロ(-7%)。サブスクリプションサービスではSpotifyとDeezerが強く、合わせて2600万ユーロ(+89%)。2011年の合法ダウンロード配信サイトへのアクセスは、前年より19%上昇(3970万→4740万)。
> 一方、フィジカル音楽市場は減少を続け、4億1200万ユーロ(-11.5%)。デジタル、フィジカルを合わせた全体では3.9%の減少
つまり時代は既にCDやDVDと言う媒体は消えつつあります。にも関わらず先ほどの著作権法の付帯決議を見ると
> 4)有償著作物等を公衆に提供し、または提示する事業者は、インターネット利用者が違法なインターネット配信等から、音楽・映像を違法と知りながら録音・録画することを防止するための措置を講ずるように努めること。
これ言い換えれば、CCCDを復活させよともとれかねない決議にしか思えません。実際
SONY BMGのコピー防止CDがrootkitを組み込む
> (Rootkitを)削除するとCDドライブへのアクセスができなくなる不具合が生じるため、SONY BMGにコンタクトするようにと言い添えている。
これも先のブログで取り上げましたが、単にアクセス出来ないだけの問題だけではなく、最近のカーステレオやナビは当然ながらCDを読み込む機能がついていますし、HDDが搭載されている物も多数あります。こうなると大規模な被害が出る可能性は十分にありますし、だれがわざわざ問題が起きかねない物を購入するのでしょうか。
まとめると
1)文化の発展にも貢献しない
2)世界展開する気もない
3)過去の技術に固執し
4)世界の兆候から自ら乗り遅れ
5)全く新しいビジネスの展開すら考えていない
これではどう考えても日本のメディアビジネスは衰退する一方でしょう。
まぁ今の日本のビジネスを見ても衰退していますしね。コンテンツビジネスだけじゃないんですよ、衰退しているのは
例えば白物家電製品、フランスの電器屋に行くとSiemens、Miele、Whirlpoolは当然ありますが、最近増えているのがSamsung、LG、ハイアールの家電製品でして、前はパナやシャープもありましたが今ではシャープが細々やっているくらいで、日本メーカーはほぼ全滅。
携帯電話に至ってはフランスのキャリアの大半は
- Apple iPhone 4S
- Samsung Galaxy SIII
この二つしか推していません。SonyのXperia Sの宣伝はほとんど見かけませんし、あってもまだ出たばかりなのに1ユーロ販売(新規契約のみ)すらされています。つまり売れないってことなんですよ。パナに至っては扱っている所を探すと言う惨憺たる状態です。
こんな感じでモノも売れない(しかも大半は支那製)、コンテンツも売れないじゃガラパゴス化も良い所かと。
それにコンテンツの場合、現在K-POPは圧倒的にマイノリティとなっていますが、これが仮にメジャーになってからJ-POPが進出した場合、K-POPしか知らない人から見たら
J-POPはK-POPのモノマネか?
と思われるでしょう。実際にはあべこべだったとしても、こういう事が起きるんですよ。ましてや一度は海外進出してもその後のフォローが無ければ衰退しますし、ましてや撤退なんかしたら、そんなのあったっけ?と思われるだけです。
まぁ今のJASRACやコンテンツビジネスのあり方を見ても今のままでは
音楽産業崩壊を自ら望んでいる
と言う風にしか思えませんが。それに、海賊版の横行が下がるかわりに売り上げも下がったとなったら今度は確実に
Apple (iTunes StoreやiTunes Match)
You Tubeの様な動画サイト
Deezeerの様なストリーミング配信サイト
が音楽産業崩壊させたと難癖付けてくるのは火を見るより明らかですが。実際レコード協会は
私的違法ダウンロード罰則化の法案成立を受けて日本レコード協会がコメント
> 法案成立を受けて、日本レコード協会の北川直樹会長は同日、次のようなコメントを発表した。「今後、改正法の趣旨を広く皆様にご理解いただくための広報活動を積極的に行うとともに、ユーザーに対するよりよいサービスの提供に一層努めていく」。さらに、「今回の法改正によりインターネット上で蔓延する著作権侵害行為が減少し、健全なインターネット社会が実現することを期待するとともに、新たな音楽・映像の創作活動に一層努めていく」と意欲を見せた。
> 日本レコード協会は、「音楽や映像の動画共有サイトやP2Pファイル共有ソフトでの不正なダウンロードが音楽創造のサイクルに重大な影響を及ぼしているため、他の音楽関係団体とともに今回の法改正の必要性を訴えてきた」という。
より良いサービスではなくより著作権保有側に都合のいいサービスを提供すると言った方が正直ですし、実際あからさまに日本語の通用する動画共有サイトを敵視していますからね。まぁいっその事10月1日以降、どのくらいのCD・DVD販売店やレンタル店が消えたり、CDの売り上げがどの位上がるのか興味ありますけどね。まず、上がると言う事は無いでしょうけど。
そのうち日本ではあまりにも著作権法が厳しいから音楽すら消える可能性もありますけどね…
VIDEO
まぁこういう事例もある訳ですから…