長野市長に鷲沢氏(68)3選 新人の高野氏651票及ばず
任期満了に伴う長野市長選は25日投開票され、現職の鷲沢正一氏(68)=無所属、上松=が5万8379票を獲得、ともに新人で、5万7728票の元外資系ホテル日本支社長の高野登氏(56)=戸隠豊岡、3万1184票の民主党が推薦した元県商工参事の小林計正氏(61)=入山=の無所属2人を破り、3選を果たした。鷲沢氏と高野氏とは651票差の大接戦だった。投票率は48・82%で、過去最低だった2005年前回選の36・96%を11・86ポイント上回った。
現新の三つどもえとなった選挙戦は、8月の衆院選と、国政での政権交代の影響も注目された。政党とは一線を画し「市民党」を掲げた鷲沢氏が当選した一方で、民主党県連が市政転換を訴えて擁立した小林氏は最下位に終わり、地方での足場づくりを目指した党県連は今後、求心力の低下を余儀なくされそうだ。
鷲沢氏は、市議会6月定例会で出馬表明。議会最大会派の新友会や公明党市議団の推薦を受けたほか、複数の自民党県議も個人の立場で支援に回った。約200の企業・団体から推薦を取り付け、市内30地区ごとに後援会支部を設けるなど組織力や知名度を生かして先行した。
選挙戦では、健全財政維持や中心市街地活性化など2期8年の実績を強調。公共交通網の再生や中山間地の活性化などを訴えて05年に編入合併した旧町村部にも浸透し、猛追する高野氏を辛くも振り切った。
高野氏は、田中康夫前知事の元支援者ら、現市政に批判的な市民有志の要請を受けて立候補。共産党長水地区委員会などでつくる「市民が主人公の長野市政をつくるみんなの会」も支援した。現市政が検討する市民会館建て替えの白紙化など、市政の転換を強調。草の根型の運動で急速に追い上げたが、小林氏との間で現職批判票が割れたことも響いて及ばなかった。
小林氏は、国政と市政との連携を打ち出し、民主党の篠原孝氏(衆院1区)らが全面支援した。だが、党県連が当初、高野氏の擁立を検討するなど候補者選びをめぐって迷走したことや、出馬表明が10月7日と出遅れたことなどから、衆院選で広がった党への期待感を生かせなかった。
【長野市長選の出口調査から】 信濃毎日新聞社は25日投開票の長野市長選で有権者2000人を対象に出口調査を行った。日ごろの支持政党別では、現職の鷲沢正一氏が、自民党支持層の81%、公明党支持層の87%をまとめただけでなく、「支持政党なし」の40%、民主党支持層の20%にも浸透。全体で高野登氏、小林計正氏を上回る支持を集めた。
全体の38%を占め、最も多かったのは民主党支持層だった。そのうち、同党推薦の小林氏に投票した人は36%にとどまり、高野氏が44%でトップ。新人2氏が同党支持層の得票を分け合う格好になった。全体の21%だった自民支持層では鷲沢氏が新人2氏を大きく引き離し、高野氏は12%、小林氏は7%。共産党、社民党支持層はともに高野氏の得票が最多だった。
一方、全体の26%に上った「支持政党なし」の有権者の支持割合は、高野氏が48%でトップ。鷲沢氏が2番手につけ、小林氏は12%だった。
最も重視した投票基準は「公約・政策」が31%で最多。そのうち高野氏を支持した人が50%で、小林氏は28%、鷲沢氏は22%だった。「実績・経験」を挙げた人は全体の28%。2期8年市長を務める鷲沢氏への支持が85%に達し、高野氏は11%、小林氏は4%だった。
このほかの投票基準では「人柄」「年齢」などを基準に投票した人で高野氏の支持が最多。「政党や団体の推薦・支援」は小林氏が55%で最も多かった。
年代別の支持では、60代~70代以上で鷲沢氏がトップ。20代は鷲沢、高野両氏が並び、30代~50代は高野氏がリードした。性別では鷲沢、高野両氏は女性からの支持が男性を上回り、小林氏は男性の方が多かった。
地区別で見ると、鷲沢氏は2005年1月の合併前の旧長野市域で約4割の支持を集め、旧豊野町が60%、旧鬼無里村でも53%。高野氏は出身の旧戸隠村で65%を集め、トップだった。
信濃毎日新聞社は25日の出口調査とは別に、19~24日に期日前投票を済ませた有権者1860人を対象に出口調査も実施した。
信濃毎日新聞より
長野市長選 市民の声をより大切に
3人の争いとなった長野市長選挙は、現職の鷲沢正一氏が3選を果たした。新人の高野登氏の追い上げをわずかの差でかわした。
2期8年にわたる鷲沢市政を継続するか、転換するかが問われた選挙である。県都の市長選らしい戦いになり、投票率は前回を上回った。
実績を訴えた鷲沢氏に多くの支持が集まった。とはいえ、得票率は半分に届いていない。高野氏が票を伸ばしたのは、現市政に対する不満の表れだろう。重く受け止めなければならない。
地方分権の流れが加速する中、かじ取りは難しさを増している。歩みを確かにするため、市民の声に謙虚に耳を傾ける姿勢がより一層求められる。
鷲沢氏は、選挙戦を通じ「行政で一番大事なのは、市民の生活を守ること」と強調した。信濃毎日新聞社が事前に行った電話世論調査でも、市政で優先してほしい課題として、福祉・医療を挙げる人が多かった。
長野市は来年1月、上水内郡信州新町、中条村と合併する。都市問題と中山間地の問題がともに重要課題になってくる。
市民の暮らしをどう守り、活力を取り戻していくのか、積極的な取り組みが欠かせない。
現職に挑んだのは、元外資系ホテル日本支社長の高野氏と元県商工参事の小林計正氏の2新人である。ともに市政の転換を掲げて戦った。けれども鷲沢氏に対抗する勢力が二つに割れたことが響き、出遅れもあって逆転することはできなかった。
今回は民主党が政党色を前面に出して戦った点が目立った。大勝した衆院選の勢いで、党県連は小林氏を擁立し、公認候補並みの支援態勢を敷いた。菅直人副総理兼国家戦略担当相や原口一博総務相ら閣僚が応援に駆けつけた。
政権交代に続く市政交代を、ともくろんだけれど、結果は最下位だった。
擁立をめぐる迷走が影響したのだろう。候補者公募の形を整えたものの「擁立過程が不透明だ」との批判が出ていた。
政党の都合優先で市民不在だった。そう言われても仕方ない。
選挙戦で、政策論争が深まったとは言えない。世論調査では、長野市民会館の建て替えについて賛否は割れたままだ。
住民自治をどう高めていくか、公共交通をどう守るか、といった課題は山積している。鷲沢氏はさらに気を引き締めて、3期目に臨んでほしい。
信濃毎日新聞より
まずは鷲沢市長再選おめでとうございます。
正直、みんなの党支援の高野氏がここまで伸びるとは思っていませんでしたし、また、民主党推薦候補が思ったより伸びなかったのも意外でした。
651票の差とは非常に僅差なので、油断しないで長野市の発展に貢献してほしいものです。
特に、信毎の社説にも書かれていますが、課題は多いです。公共交通、高齢化対策等、解決しなくてはいけない問題を着手して、さらに住みよい街、長野市を作ってほしいものです。