日本経済の“エンジン”であるトヨタ自動車が2年連続の赤字になる。営業赤字は、平成21年3月期の4610億円から22年3月期には8500億円まで拡大する見込みだ。正念場のトヨタの“切り札”が、18日に発売するハイブリッド車の新型「プリウス」と6月に社長に就任する創業家の豊田章男氏だ。7万台超の先行受注を集めたプリウスと創業家の求心力で、反転攻勢を狙う。だが、切り札は、いずれも“もろ刃の剣”の危うさもはらんでいる。
御曹司への気遣い?
「足元を固めながら、成長していくと言い続けていたが、どこかにムリ、ムダ、ムラがあった」
渡辺捷昭(かつあき)社長は、最後となる8日の決算発表会見で反省の弁を繰り返した。
自動車業界や株式市場の目を見張らせたのが、22年3月期の業績予想だ。71年ぶりの歴史的な赤字となった前期の2倍近い8500億円。国内の製造業としては過去最大の規模だ。
「どうしてそんなに赤字が膨らむんだ。ウチは脳天気といわれないか」
100億円の営業黒字予想を公表したホンダ幹部は、肝を冷やした。
株式市場関係者には、「前期は3度も業績の下方修正を余儀なくされたが、御曹司に同じ恥をかかせるわけにはいかない。かなり保守的に見積もったのでは」(アナリスト)とのうがった見方まである。
確かに、今年初めにはトヨタ社内にも「業績は21年3月期が底。後はよくなるだけ」との楽観的な見方があり、創業家への“大政奉還”に踏み切った。
300万台超のムダ
だが、トヨタが抱え込んだ“ムリ”や“ムダ”は予想以上だった。
それまでの拡大成長路線で戦線を広げてきたトヨタは、世界の自動車需要の3割が“蒸発”する中、300万台を超える過剰設備を抱え込んだ。安易なV字回復のシナリオを描けるような状況にはない。
未曽有の危機の中、船出することになった章男氏だが、新体制は着々と固まっている。
渡辺社長時代に退任し子会社に出ていた前川真基トヨタアドミニスタ社長、伊原保守トヨタ輸送社長のほか、稲葉良●(「目」へんに「見」)中部国際空港会社社長らを役員に呼び戻す異例の人事を断行。トヨタ生産方式を生み出した故大野耐一氏の最後の弟子の1人といわれる林南八技監を役員に登用した。林氏は65歳で内規に反するが、生産現場のムダにメスを入れるための人事だ。
幹部は「現場第一主義を掲げる章男さんの眼鏡にかなった人材を、オールトヨタで選び出し、体制を再構築した」と解説する。
チーム章男の決断
“チーム章男”の最初の成果といわれるのが、新型プリウスの価格設定だ。
当初、性能を大幅に向上させた新型の価格を現行モデルの約240万円から引き上げる考えだった。
2月にホンダが最低価格189万円の「インサイト」を発売し、ハイブリッドの“大衆化”が一気に加速。だが、現経営陣は「1500ccから1800ccになるプリウスと、1300ccで後部座席に大人が座ると、天井に頭をこするようにインサイトとは“格”が違う」(関係者)と静観を決め込んでいた。
これに対し、章男氏は販売現場からの意見を集約させ、生産現場には、どこまでコストを低減できるか調査を指示。最後は章男氏の「鶴の一声」で、205万円に決まったという。
章男氏に近い関係者は「インサイトつぶしではなく、消費者が安いハイブリッドを求めている現実が原動力になった」と明かす。
ただ、“チーム章男”の決断を危惧(きぐ)する声もある。販売店も想定できなかった安値設定によって、他のトヨタ車種が売れなくなるというリスクをはらんでいるためだ。
販売店関係者は「ウチはトヨタ自動車であって、プリウス自動車じゃない」と不満を隠さない。
「創業家出身者だからこそ、過剰に膨らんだ生産設備や“聖域”といわれるディーラー網に大なたを振るうことができる」(トヨタOB)
章男氏への期待は大きい。だが、一方で、周囲がその顔色をうかがう“イエスマン”ばかりになれば、その決断も鈍る。
ともに“もろ刃の剣”のリスクをはらんだプリウスの快走で、社内を活気づかせることができるのか。章男氏は就任前から早くも正念場を迎えそうだ。
産経新聞より
正直なところ豊田家に大政奉還してもこの未曾有の危機からどれだけ回復できるか不明なところがあります。
それまでの拡大成長路線で戦線を広げてきたトヨタは、世界の自動車需要の3割が“蒸発”する中、300万台を超える過剰設備を抱え込んだ。安易なV字回復のシナリオを描けるような状況にはない。
これだけの過剰設備がありながら生産調整だけで乗り切れるとは思いません。かつてGMや日産が行った悪しき轍を踏んでいるようにしか見えません。
渡辺社長時代に退任し子会社に出ていた前川真基トヨタアドミニスタ社長、伊原保守トヨタ輸送社長のほか、稲葉良●(「目」へんに「見」)中部国際空港会社社長らを役員に呼び戻す異例の人事を断行。トヨタ生産方式を生み出した故大野耐一氏の最後の弟子の1人といわれる林南八技監を役員に登用した。林氏は65歳で内規に反するが、生産現場のムダにメスを入れるための人事だ。
どこまで脱奥田トヨタができるのでしょうか?
何しろ拡大路線は1990年代半ばからですが、この時期の社長を見ると
# 豊田達郎(とよだ たつろう、1992年~1995年、第7代社長。現相談役)
# 奥田碩(おくだ ひろし、1995年~1999年、第8代社長。現相談役)
# 張富士夫(ちょう ふじお、1999年~2005年、第9代社長。現会長)
# 渡辺捷昭(わたなべ かつあき、2005年~2009年、第10代社長。現職)
まさに奥田以降拡大路線に繋がりこれだけの損失を出したのですから。
章男氏は販売現場からの意見を集約させ、生産現場には、どこまでコストを低減できるか調査を指示。最後は章男氏の「鶴の一声」で、205万円に決まったという。
すでにコスト削減の固まりになっているトヨタ車がこれ以上のコスト削減となるとムリ、ムダ、ムラの徹底排除が原則となっているTPSの無理が起きると思うんですよ。となると国内でそんな価格を出すのは不可能な以上…
トヨタ、成都工場を移転して生産能力を増強
中国第一汽車集団公司(一汽集団)とトヨタの生産合弁会社である四川一汽トヨタ(Sichuan FAW Toyota Motor Co., Ltd.:SFTM)は、2010年前半を目処に四川省成都市の工場を現在の成都市成華区から、同市内成都経済技術開発区(龍泉)新区に移転し、新工場の生産能力を現在の年間1万3000台から、3万台に引き上げることを発表した。
SMTFは、前身の四川トヨタで1998年11月に設立され、2005年7月には新たに四川一汽トヨタとして設立。同社は、今回移転する四川省成都市の工場と吉林省長春市の工場の2つの工場で生産をしている。成都工場は、2000年10月から生産を開始し、コースター、ランドクルーザープラドを生産。また
長春工場は、2003年10月から生産を開始し、ランドクルーザー、プリウスを生産していて年間生産能力は1万台となっている。
成都工場の移転、生産能力増強に伴う投資は約36億元。成都工場の能力増強に伴い、SFTM全体の生産能力は長春工場と合わせて年間4万台となる。
Carviewより
すでにトヨタで中国製エンジンが日本国内で使われている以上、さらなるコストダウン、低価格で行うとなると205万円のプリウスは支那製、あるいは部品を支那から調達する以外方法が無いと思うんですよ。
トヨタが創業家社長で拡大路線転換へ
2009年 01月 21日 08:25 JST
[東京 20日 ロイター] トヨタ自動車(7203.T: 株価, ニュース, レポート)が14年ぶりに豊田家からトップを迎えるのは、1990年代半ばからの拡大路線を転換し、利益重視の原点に立ち返るためだ。
膨張した生産・販売体制の見直しや、次世代技術の絞り込みが不可欠で、その過程で起こりうる摩擦や混乱を抑えるには、創業家が前面に立って旗を振る必要があると判断したとみられる。しかし、社員の世代交代が進み、多様な文化的背景を持った従業員が増加した今、豊田章男新社長が狙い通りに求心力を発揮できるかどうかは、未知数との声が同社の内外から出ている。また、巨大企業のトップが再び特定の一族から選ばれたことで、同社の企業統治のあり方に疑問符が突き付けられる可能性もある。
<拡大一辺倒の空気に危機感>
「顧客第一、現地現物といった創業の原点に回帰する」──。社長昇格が内定した20日、豊田章男副社長は記者会見でこう強調した。トヨタの原点とは、競争力の源泉でもある「カイゼン」。創業以来、現場の従業員が自ら問題点を見つけ出し、小さな改善を積み重ねることで利益を高めていく手法をトヨタは「お家芸」にしてきた。
しかし、1995年に奥田碩氏(現相談役)が社長に就任して以降、トヨタは世界展開を一気に加速し、販売台数で世界一のゼネラル・モーターズ(GM)(GM.N: 株価, 企業情報, レポート) と肩を並べるまでに規模を拡大。栄光をつかみかけた瞬間に崩落が待ち構えていた。複数のトヨタ関係者によると、世界的に事業を展開した結果、人材不足が目立ち、コツコツと改善を重ねる余裕が現場からなくなり始めた。2010年の稼動予定が無期延期となった米ミシシッピ工場を含め、世界各地に次々と生産拠点を開設するなど、かつては「石橋をたたいても渡らない」と揶揄(やゆ)されるほど慎重だった経営姿勢も様変わりし、OBの中からは拡大一辺倒の雰囲気を危ぐする声が聞かれるようになった。
トヨタは2009年3月期の業績が初の営業赤字に転落する見通しになったことを受け、今後は世界販売(単体)が07年実績比17%減の700万台でも利益が出る体質に再構築していく。現在のトヨタは減産に次ぐ減産で、生産能力が過剰なのは明らか。円高がさらに進めば、採算が合わない「国内工場を統廃合し、生産の海外シフトをいちだんと強化せざるをえない」(外資系証券の自動車アナリスト)とみられている。右肩上がりの需要拡大を前提に整備されていた国内の販売網も、市場の縮小に合わせて再編する必要がある。
次世代技術の研究開発も、絞り込みが欠かせない。今まではハイブリッド車から燃料電池車まで幅広く取り組んできたが、業績が急激に悪化したことで、すでにトヨタはいすゞ自動車(7202.T: 株価, ニュース, レポート) との環境対応ディーゼルエンジンの共同開発凍結を決めた。トヨタの瀧本正民副社長は1月の米デトロイト自動車ショーで、家庭で充電可能なプラグインハイブリッド車が次世代自動車の主力になると強調しており、従来の総花的な開発姿勢を転換し、一段と取捨選択を進める可能性がある。
<目に見えない豊田家の支配力>
そのために必要とされたのが章男氏の社長昇格。創業家出身者が陣頭指揮を取ることで、態勢を抜本的に立て直す過程で生じる軋轢(あつれき)や摩擦、混乱を抑えたい考えだ。
米フォード・モーター(F.N: 株価, 企業情報, レポート) も欠陥タイヤ事件で経営が悪化した2001年に創業家出身者が登板したことがあったが、フォード家がフォード社の議決権40%を持つのとは異なり、豊田家のトヨタ株保有比率は2%程度とされる。それでもトヨタにとって豊田家は、創業の理念を体現する存在として目に見えない支配力を持ってきた。
トヨタでは新車を開発する際、チーフエンジニアが絶対的な統率力で関係部署を束ね、1台の車を作り出す。自身がチーフエンジニアとして「セリカ」などを開発した和田明広元副社長によると、それが可能になったのはチーフエンジニアの背後に、トヨタ中興の祖と呼ばれ、この制度を創設した豊田英二氏(トヨタ5代目社長)の存在をだれもが感じていたからだという。
豊田家の目に見えない影響力は社外にも及び、大半が独立資本の販売ディーラーをまとめ上げてきた。あるトヨタ系販売会社の社長は「ディーラーの社長や奥さんが亡くなると、本社の副社長や役員を葬儀に必ず参列させる。人の絆(きずな)を大事にする豊田家は、ディーラーの心をしっかりとつかんでいる」と話す。
<社長昇格に慎重論>
だが、章男氏が社長に昇格する今回の人事では、今さら創業家の力にすがることに対し、トヨタ役員の間で慎重論があったという。豊田家出身者が最後に社長を退いたのは1995年。それから14年、豊田家が経営のかじ取りをしていた時代を知らない若い社員が増えた。また、世界展開を加速してからは外国人の従業員も増加した。豊田家の系譜には、ヘンリー・フォード1世のような世代や国境を越えて広く名を知られる経営者はいない。社員は研修でトヨタの理念を学んではいるものの「入社時期や国籍によって、創業家に対する見方に違いはあると思う。豊田家がかつてほどの求心力を発揮するのは難しいかもしれない」と関係者の1人は言う。
さらにグループ全体で32万人を抱える企業のトップが再び創業家から選ばれたことで、トヨタの企業統治のあり方に批判が出る可能性もある。世界的な国内電機メーカーの元経営者は「2%程度の株式しか持たない特定の株主を優遇するのはおかしい。他の株主がなぜ怒らないのか不思議でならない」と話す。
確かに章男氏は、異例のスピード出世を遂げてきた。44才で取締役に就任してからは、ほぼ2年間隔で常務、専務、副社長へ昇格した。そのたびに「世襲」を指摘する声が上がったが、章男氏は本格参入して間もない中国市場を開拓したほか、インターネットを使った新しいマーケティング手法を導入した実績で、世襲批判を封じ込めてきた。
今回も批判を跳ね返すには、トヨタを立て直して実力を証明するしかない。そのためには単に原点に回帰するだけでなく、これまで同社をけん引してきた拡大戦略を超える、新しい成長の道筋を示すことが求められる。章男氏は会見で「豊田の姓に生まれたことについては、私に選択権はなかった。豊田章男として自分が信じること、自分できることに精一杯取り組んでいきたい」と語った。
◎トヨタの歴代社長
豊田利三郎 1937─41年
豊田喜一郎 41─50
石田退三 50─61
中川不器男 61─67
豊田英二 67─82
豊田章一郎 82─92
豊田達郎 92─95
奥田碩 95─99
張富士夫 99─05
渡辺捷昭 05─09(予定)
ロイターより
「顧客第一、現地現物といった創業の原点に回帰する」
どこまで徹底できるのでしょうか?
すでにさらなるコスト削減を要求し、場合によっては支那製自動車が入ってくる可能性が否定できない以上とても顧客第一には思えないのですが…
まぁトヨタが変わるには後10年程かかると思っています。