1ドル=76円台で膠着状態、空洞化加速懸念
8月11日の東京外国為替市場は1ドル=76円台半ばで推移し、円は高値圏で膠着状態が続いている。このレベルが続けば国内生産の半分を輸出が占める自動車メーカーの生産がますます海外に流出しかねない。
自動車メーカー各社が今期の業績見通しの前提としている為替レートは1ドル=80~83円だ。これに比べ足元の為替はすでに4~7円も円高が進んだことになる。リーマンショック後、メーカー各社は1ドル=85~90円でも収益が出る企業体質へと転換する努力をしているが、さらなる円高の進行に企業努力が追いつかない状況だ。
もっとも足元の円高水準が長期にわたって続くことはないと見ている面もあり、各社の中期経営計画は日産自動車が1ドル=85円、富士重工業が同90円に前提を置いている。ただ、完成車の海外移管や部品の海外調達の拡大など、水面下では着々と、為替に影響を受けないための布石が打たれ始めている状況で、空洞化が一層加速する。
Carviewより
何寝ぼけた事を言っているのかと思われそうですが、最後までお付き合いくださると光栄です。
円高の時には必ず空洞化、空洞化という声がありますが、空洞化が起きるとしたら目線があまりにも輸出ばかりに気を取られており、足元がおろそかになっているような気がしてなりません。
まず円高ですが、当面は下がることなど無いでしょう。米国の国債評価がさがり、フランスも下がる可能性すら出ています。まぁアレに左右されすぎるのもどうかと思いますが。
となるとユーロとドルが落ちている以上、上がる通貨と言えばスイスフラン、日本円くらいでしょう。
と言ってもスイスの産業は精密機器と金融業位しかないですから、幅広い産業がある日本円が買われるのは致し方無いでしょう。
結構テレビや新聞などでも説明されていますがおさらいを。
通常が1$=100円だとします。これが1$=120円だと円安、1$=80円だと円高となります。
輸出の場合、車の価格が通常150万円=15000ドルとしたら、円安時だと150万円=12500ドルとなります。ということは円安時に15000ドルで売ると2500ドル(30万円)の儲けが出ます。これが為替差益となります。
これが円高になると150万円=18750ドルとなります。これを15000ドルで売ると3750ドル(30万円)の損が出ます。これが為替差損となります。
30万円の損を埋めるにはどうするかとなると
1)値上げする
2)150万円掛かるものを120万円で作り、為替差損を埋める
単純に言うとこんな感じでしょうか。今まで15000ドルで買えていたものを全く同じものが18750ドルだと普通に考えても販売面では厳しいでしょうとメーカーでは思われております。
そこでメーカーが行っているのが
どうやったら120万円の原価で150万円と同じものを作れるのか
という事に腐心しております。そこで生まれたのがコスト削減であります。
このコスト削減の本題に入る前に輸入の方も見ておきたいと思います
輸入の場合ですと基本的に外貨ベースで考えます。本当は比較するためにユーロを使ってもいいのですがドルの例があるので、ドルのままにします
原油1バレル(約160リットル)=100$で取引されており、変動しないと想定します(まぁありえないのですが)
通常が1バレル=100$=1万円で取引されている時に円安になると1バレル=100$=12000円で取引されます。当然ながらガソリンなども高騰します。では逆に円高の場合ですと1バレル=100$=8000円になるわけですから、本来であればガソリンの値段も下がります。
これバレルを例に出しましたが、別のものでも通用しますがこれも後ほど出します。
ではコスト削減に戻りますが、今まで150万円掛かるものを120万円にするなんて並大抵の事ではありません。
例えばトヨタ生産方式(TPS)。これ本来ならば無駄を省いてコストを削減すると言う事なのですが、まぁその無駄と言うのも色々ありまして
作り過ぎのムダ
手待ちのムダ
運搬のムダ
加工のムダ
在庫のムダ
動作のムダ
不良をつくるムダ
これだけ、あります。日本で長けているのは不良が少ない事です。その根本的な原因としては不良が起きた際
なぜこの不良が起きたのか
と言うところを追求するからに他なりません。
故にMade in Japanの代名詞、そしてかつてのトヨタの代名詞は
安くて丈夫で長持ち
でした。それだけ、日本製と言うのは高い評価を受けている訳です。
ただ、このTPSにも限界がありまして、今回の震災で露呈したのですが
在庫の無駄と作り過ぎの無駄が仇になった
様はトヨタや大概の製造業の場合、在庫を抱える=金を眠らせていると言う考えなので、極力在庫は持たないようにするために色々と手段をとっているのですが、今回のような大規模災害になると在庫が無いので生産がかなり早い段階で止まります。ちなみに在庫=金を眠らせていると言う考えを簡単に説明すると
原材料が100円だとした場合、加工等の付加価値を加える事によって200円になるとします。
これが、普通の預金口座などであれば少々でも利息がつきますが、ものづくりの現場だと利息すら付きませんのでただ寝かしている事になります。故に在庫を抱えると言うのが無駄という考えとなります。
そのコスト削減政策である程度は押さえられるでしょう。
仮に色々な無駄を省いてコスト削減で30万円の内、20万円削減できたとします。残りの10万円をどうするか?
そうなると人件費に手を出すしか無い訳でして、今まで工員一人当たり15万円掛かるとします。これを仮に5万円のカットをするとなると相当反発くらいますよね。まぁ色々御託を並べてなんとか5万円カットできたとしますがそれでも5万円しかなりません。(本来なら色々要素が絡んでいるのですが、単純にしたいためかなり端折っています事をご了承願います)
とは言っても残りの5万円をどうするかとなると、日本では限界があります。
では人件費が5万円くらいの所で作れば10万円のコスト削減が出来るじゃないかとなります。それで海外で作ると言う風になります。
また、海外で安い材料を現地調達し、安い人件費で作ればという安易な想定をする事で海外進出、特に支那や東南アジアに進出する理由はそこにあると言う訳です。
段階的に見ると
1)日本生産
2)従業員の給料等を下げて日本生産
3)間に合わない部分を海岸生産の部品で補う
4)海外進出
こういう感じですが、まず第一に海外進出してそこから更にコスト削減を行おうとすると無理が生じます。第二にここが見落としがちなポイントなのですが
海外生産で日本製と同じ品質ができるのか
極論を言えば無理です。
海外進出して生産のための機械を持って行って、材料、安い人材、これだけではものづくり等できません。
言うなれば材料は揃っても設計図なしでものが作れるのかというと、まず無理です。
では設計図をそのまま持っていて出来るかと言うと
ものは出来るが品質は不明
と言う事になります。何しろノウハウが無いのですから。
そのノウハウと言うのはやはり日本人にしか出来ませんので、日本人を出向させないと出来ません。では日本人が出向したとしてもすぐに同じものを作れるかと言うとそうではなく一から教育しないといけません。これがものになるのに何年、下手したら10年近く掛かる事もあります。そうなると、教育費、不良による損失、あらゆるものに時間と金がかかる訳です。
しかし、これはあくまでも相手国の人間が機密遵守意識が高いと言う前提です。
東南アジアに進出した場合、必ずしも遵守するかと言うと疑問符が湧きますし、支那に関してはまず遵守等あり得ません。あれほどパクリを是としている国なのですから。そうなると、教育してものになった頃なったら、支那人の場合は給料の高い所にさっさと行ってパクリを開始するでしょう。それも設計図やら何やらを盗んでもやる確率は高いです。
そうなると更に損失が増えるのでおいそれと日本の最先端技術等持って行ったら、待ってましたとばかりにたかると思います。
ここに踏み込むと、ただでさえ長い文章が更に長くなるので今回はこの部分は省略しますが少なくとも認識していただきたいのが
海外生産がコスト削減には必ずしもならない
と言う事だけは認識してほしい所であります。
つまり今の日本の大企業並びに経団連は
悪しきスパイラルに入り込み、あり地獄から抜け出せなくなっている
と言う状態です。
では先ほどのドル安、ユーロ安の件に戻りますが先ほどはドルとバリルと言う例を使いましたが、これだけでは漠然としていますよね。それにこれだけではなぜブランド力と言うのも見えてきませんので具体例を使います。
まずユーロの設定を通常1ユーロ=120円、円高時は1ユーロ=100円、円安時は1ユーロ=140円とします。
例えばBMW3シリーズやメルセデスCクラス、大体標準クラスの値段が4万ユーロ位です(3シリーズならHi-Line、CクラスならAvant Garde程度)
そうすると通常なら4万ユーロ=480万円となります。
円安時の場合は4万ユーロ=560万円ですが、現在は円高なので本来ならば4万ユーロ=400万円位が妥当であるべきなのですがBMWジャパンのサイトやメルセデスジャパンのサイトを見に行ってみてください
ユーロ安でありながらどちらも480万円〜490万円と言う強気の値段を出しています。
にも関わらず
1月〜7月累計輸入車新車販売台数(
JAIAの統計より引用)
VW : 27344台
Mercedes : 17527台
BMW : 17350台
AUDI : 11786台
MINI : 7681台
VW+AUDIで39130台
BMW+MINIで25031台
ですから、それなりに売れている事になります。
一部の方からは多分、そんなブランドと比較にならないだろうと言うような声が出てくるかもしれませんが、あえて言うとなぜ比較にならないと言えるのでしょうか?
むしろなぜそういうブランドを出してきたかと言うと、日本のメーカーにかけているのはこの
ブランド力
なんですよ。
ガソリンハイブリッドは最先端、使い勝手は折り紙付き、維持費は若干高めですが、基本的に日本車に対するイメージは丈夫で長持ちというイメージは完全には損なっておりません。決して、海外メーカーに引けを取らない車だってあります。
日本国内であればトヨタクラウンや日産フーガ、スカイライン
海外展開しているのであればマツダのロードスター、日産GT-R、Z、三菱ランサーエボリューション、スバル インプレッサWRX等
色々ある訳なのですが、ブランド力を強化し、質を重視すれば日本車でも高くても買ってもらえる訳です。
まぁ、中にはBMW等と比べて質感低くても高く売る某ブランドもある訳ですが。
安ければ買うと言う人も居ますが、今のご時世欧州ですと安いのを定期的に乗り換えるか、高くても長く乗るかのどちらかなんです。
なので、ブランド力、質、サービスを強化すれば円高でも勝負できると思うのですが、どうも、先に取り上げたトヨタの記事のように目線を韓国車にあわせるから日本メーカーのブランド力がのびないんですよ。
ましてや、某メーカーのように、海外向けにはスタビライザー等をつけたり、安全装備がフル装備になっているのに、国内ではそれらを省いたりしておきながら、海外向けの車と似たような値段で売っていたりするのですから、これでは日本車なんか海外メーカーとなんか比べ物にならないと思われるんですよ。
こういうときだからこそ、あえて海外部品で安く作って高く売ろうという変なスケベ心を出さないで、国産部品で作って国内で消費できるようにすれば良いんですから。それからどうも、メーカーが忘れがちなのが
従業員=顧客にもなる=宣伝効果にもつながる
と言う事なんですよ。ちょっと考えると自社の車を社員に買ってもらう、そうすれば、一般の目に当たる回数が上がるのですし、社員の人がこの車は買って損は無いと言うような口コミがでれば、さらに売れると思うんですよ。
それに国内の企業が活性化すれば、景気も良くなる、だから円高時には内需拡大、雇用創出、ブランド力アップのチャンスだと書いた訳です。それに日本国内であれば100円=100円なのですし、いきなりハイパーインフレになる訳ではないのですから。
まぁ人から見たら暴論とも思われるでしょう。一般人が拙い文章で書いているのですから。まぁ自分の場合はメディアの言う知的訓練受けていないからかも知れませんが。
でも、こういう話、なぜか国際ジャーナリストとか、所謂評論家やカーライフエッセイストと言われる方からの口からは聞いた事無いんですけどね。
これが暴論か暴論でないのか、賛同、反論、皆様の忌憚なきご意見、お待ちしております。