第一 平成27年度税制改正の基本的考え方
安倍内閣は、これまで、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚 起する成長戦略」の「三本の矢」からなる経済政策(「アベノミクス」)を一体的に 推進してきた。税制面においても、平成 25 年度及び平成 26 年度の税制改正を通じ て、企業の賃金引上げや設備投資を促進するための措置等を、これまでになく大胆 に講じてきた。こうした取組みもあり、就業者数や名目総雇用者所得の増加など雇 用・所得環境は改善傾向が続くとともに、企業部門も高水準の経常利益を実現する など、景気は緩やかな回復基調が続いている。
他方、足下では個人消費等に弱さが見られ、平成 26 年7-9月期の実質GDP成 長率が2四半期連続でマイナス成長となった。また、景気の回復状況にはばらつき がみられ、特に地方や中小企業ではアベノミクスの成果を十分に実感できていない。
このような状況の下、経済再生と財政健全化を両立するため、平成 27 年 10 月に 予定していた消費税率 10%への引上げ時期は平成 29 年4月とする。社会保障制度 を次世代に引き渡す責任を果たすとともに、市場や国際社会からの信認を高めるた めに財政健全化を着実に進める姿勢を示す観点から、平成 29 年4月の引上げにつ いては、「景気判断条項」を付さずに確実に実施する。
(中略)
わが国は急速な人口減少局面にあることに加え、地方においては東京圏等への人口流出と地域経済の縮小が進んでいる。こうした構造的な課題を克服するため、東京一極集中の是正や若い世代の結婚・子育ての希望の実現等を通じた地方創生に向けて、税制面で所要の措置を講ずる。
自らの発想で特色を持った地域づくりができるよう、地方分権を推進し、その基盤となる地方税の充実確保を図るとともに、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系を構築することが重要である。また、インフラ整備や治安、社会保障など、行政サービスの多くは地方公共団体が直接の担い手となっていることに鑑みれば、公共サービスの対価を広く公平に分かち合うという地方税の応益課税を強化することが重要である。
(中略)
II 地方創生・国家戦略特区
「まち・ひと・しごと創生法」にも掲げられているとおり、「東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保」するとともに、 「急速な少子高齢化の進展に的確に対応し、人口の減少に歯止めをかける」こと が重要である。
1 東京圏への人口集中の是正・各地域での住みよい環境の確保
(1)地方拠点強化税制の創設人口の東京への過度な集中を是正するためには、地方の企業において雇用の場を確保し、人材を定着させることが必要である。このため、地方公共団体における計画的・戦略的な企業誘致の取組みと相まって、企業が、その本社機能等を東京圏から地方に移転したり、地方においてその本社機能等を拡充する取組みを支援するため、本社等の建物に係る投資減税を創設するとともに、雇用の増加に対する税額控除制度(雇用促進税制)の特例を設ける。
(中略)
(2)車体課税の見直し
平成 26 年度与党税制改正大綱等における消費税率 10%段階の車体課税の見直しについては、平成 28 年度以後の税制改正において具体的な結論を得る。 自動車取得税及び自動車重量税に係るエコカー減税については、燃費基準の移行を円滑に進めるとともに、足下の自動車の消費を喚起することにも配慮し、 経過的な措置として、平成 32 年度燃費基準への単純な置き換えを行うととも に、現行の平成 27 年度燃費基準によるエコカー減税対象車の一部を、引き続 き減税対象とする等の措置を講ずる。
自動車重量税については、消費税率 10%への引上げ時の環境性能割の導入 にあわせ、エコカー減税の対象範囲を、平成 32 年度燃費基準の下で、政策イ ンセンティブ機能を回復する観点から見直すとともに、基本構造を恒久化する。 また、平成 25 年度及び平成 26 年度与党税制改正大綱に則り、原因者負担・受益者負担の性格等を踏まえる。
軽自動車税については、一定の環境性能を有する四輪車等について、その燃費性能に応じたグリーン化特例(軽課)を導入する。この特例については、自動車税・軽自動車税における環境性能割の導入の際に自動車税のグリーン化特 例(軽課)とあわせて見直す。また、二輪車等の税率引上げについて、適用開 始を1年間延期し、平成 28 年度分からとする。
なお、消費税率 10%段階の車体課税の見直しにおいては、税制抜本改革法 第7条に沿いつつ、自動車をめぐるグローバルな環境や課税のバランス、自動車に係る行政サービス等を踏まえた議論を行う。
(以下略)
自民党 平成27年度 税制改正大綱より引用
久々に時事系のネタですが、今回引用した部分だけでも矛盾点が多々あります。
方や
> 他方、足下では個人消費等に弱さが見られ、平成 26 年7-9月期の実質GDP成 長率が2四半期連続でマイナス成長となった。また、景気の回復状況にはばらつき がみられ、特に地方や中小企業ではアベノミクスの成果を十分に実感できていない。
と個人消費等が弱い=内需が弱いと言うことを認めながら
> このような状況の下、経済再生と財政健全化を両立するため、平成 27 年 10 月に 予定していた消費税率 10%への引上げ時期は平成 29 年4月とする。社会保障制度 を次世代に引き渡す責任を果たすとともに、市場や国際社会からの信認を高めるた めに財政健全化を着実に進める姿勢を示す観点から、平成 29 年4月の引上げにつ いては、「景気判断条項」を付さずに確実に実施する。
なぜここで国際社会が出てくるのか意味不明です。
しかも、景気回復がばらついていると言っておきながら景気判断条項を付さないというのはどう考えても、異常だとしか言いようがないかと。
実質収入が先の消費税増税によって減っているということは、出費はできるだけ抑えたいというのが世論であるにも関わらず国際社会が云々と言われても誰が納得できるでしょうか。しかも、さらなる増税が待ち構えている以上、財布の紐は固くなるのが実情です。その状態でどうやって消費を呼び込むのか、正直、今の政権からは全く見えてきません。特にそれが顕著なのが地方創生と車体課税の項目ですが、まず車体課税の方を見てみると
> なお、消費税率 10%段階の車体課税の見直しにおいては、税制抜本改革法 第7条に沿いつつ、自動車をめぐるグローバルな環境や課税のバランス、自動車に係る行政サービス等を踏まえた議論を行う。
グローバルというのであれば取得税、重量税を廃止し、自動車税も大幅に見直すべきです。
しかし実際問題として、地方在住者ならよく解るかと思いますが、そもそも、公共交通機関がろくに整備されておらず、車がなければ生活できないのが実情であるにも関わらず、軽にもいわゆるグリーン税制の負の部分である重加算税をかけるというのはさらに東京への一極集中を進めるだけにしか思えません。しかも地方の人間の大半が
・軽自動車
・13年以上も経っている旧車
に乗っている方が多いです。
それでいて
> 地方拠点強化税制の創設人口の東京への過度な集中を是正するためには、地方の企業において雇用の場を確保し、人材を定着させることが必要である。
方や地方いじめとしか思えない政策をとりながら、もう片方で東京への過度な集中を是正って
どうやって行うんですか?
としか言いようがないです。そもそも地方の場合、通勤、通学、買い物等をするにあたっては車がなければ生活できず、しかも街づくりも車を前提にした街づくりにしているところも多々あります。例えば東京以外であれば大阪、名古屋、仙台、新潟などは比較的公共交通機関も充実しており、車なしでもなんとか生活できますが、長野や仙台郊外(黒川郡大和町、黒川郡富谷町等)に至っては車ありきの街づくりにシフトしています。ましてや、女川町や登米町、石巻市等は過疎化しつつあり、同じことが長野市にも言えます。
しかも公共交通機関が不便である以上、車なしの生活は考えられない、しかし否応無くあらゆる形で増税されていく、それでいて地方創生と言われても
絵空事
としか思えません。
地方創生というのであれば
・公共交通機関の充実
・旧車への重加算税の廃止
・自動車に対する税制の抜本的な見直し
これらをセットで行うべきだと思います。何しろ車を買い替えたくても買い換えられないというのが地方の現状なのですから、未だに自動車は贅沢品だと思ってる議員連中には一度地方で車なしで生活してみていただければと思います。
それからもう一つ付け加えさせていただくと、重量税の重加算税は今までは暫定税率と言われておりましたが、最近では当分の間税率と名前が変わったみたいですが、正直な話
当分の間っていつまでですか?
まさか特別在留許可のように40年以上経っても当分の間とは言わないでしょうね?
もうね、この当分の間っていうのが一番怖いんですよね。期限が全く記されていないのですから…