先の記事でソニーが何故ダメに成ったのかについての一つの原因としてハードウェアの凋落のことを取り上げましたが、今回はハードとソフトの融合について語りたいと思います。
ソニーのハードウェアだと世代によっては
ウォークマン
トリニトロン
ベータマックス
WEGA
Hi-8
CD
MD
メモリースティック
Vaio
プレイステーション
サイバーショット
Bravia
バッテリー
といろいろなハードや媒体が思い浮かばれると思います。
成功したものとしてはウォークマン、トリニトロン、Hi-8、CD、MD、プレイステーション辺りでしょうか。ところがソニーでソフトやコンテンツと言うと何か思い浮かばれるものってあるでしょうか。
先に取り上げたSony Entertainment Network、どれほどの人間が知っているか不明ですし、Playstation Networkといえば大規模個人情報流出事件の代名詞と言われるくらいイメージが悪いですからね。あとはソニー・ミュージック、ソニー銀行、So-Net、コロンビア(映画)位でしょうか。
まずいくら、良いハードを作ってもコンテンツがなければただの箱ですし、逆にいくら良い音楽や映画、コンテンツを用意したとしてもそれを再生できる物がなければ意味がない以上、本来であればハードとソフトは車の両輪という立場がベストなのですが、いつからかハードとソフトの融合、ネットとの融合が謳われ始めました。
ブロードバンド環境が整いつつある以上、ネットと連携する必要性は重要ですし、ハードもソフトもそれに対応することが望まれています。
ちなみに古い商品ですが、
CLIEというのがあったの覚えてらっしゃる方はいるでしょうか。
個人的にはあの商品はかなり画期的で、元々新しもの好きの自分としてはかなり早い時期に購入したのを覚えております。使いかってはそれなりでしたし、さよなら僕らのソニーの筆者の立石泰則氏も本の中でも書いておりますが、CLIEと携帯電話が融合したら面白いものができるのではないかと思いました。
実際Sony EricssonからP800というPalm OS内蔵の携帯電話を出しましたが時期尚早というのもあり、あまり売れませんでしたがあの衝撃は鮮明に覚えています。つまりAppleがiPhoneを出す何年も前からSmartphoneというのは存在しております。実際、黎明期のSmartphoneとしてP800の他にTrium (三菱電機の海外携帯電話ブランド)Mondoがありましたがやはり回線の問題、バッテリーの持続時間、価格の問題もあり売れませんでした。つまりは日本メーカーは率先的にハードとソフト、ネットの融合を行おうとしたのですが、どれもが時期尚早で失敗しました。端折って言えば、iPhoneは出すタイミングを見誤らなかったからこそ売れたというのがひとつの勝因だと思います。
また、ソニーの場合Net MDと連携して
MORAというサイトを立ち上げておりますが、正直な話うれているとおもえません。むしろiTunes Storeの圧勝だと思います。ここで待ったをかけたいと思います。NetMDが発売されたのが2001年、iPodが発売されたのも2001年、どちらも似たような機能を持っており、むしろ市場的にはMDの方がそれなりに優位な部分もあったと思います。
ここからがハード、ソフト、ネットの融合の成否がわかれます。
SonyのSonic Stage+NetMDはWindows対応でUSBベース、AppleのiTunes+iPodは当初、Macのみが対応でしかもFirewireのみ。しかし第二世代iPodからはWindowsも対応となり、iTunesもVersion 4からWindowsに対応しました。iPodがUSBに対応したのは2004年からです。
どう見ても優位なのはSonyのNetMDなのですが、iPodは斬新なデザイン(ホイールクリック)、多言語対応、MP3対応、大型液晶画面搭載であったのに対し、NetMDはAtrac3のみ対応。しかもMP3に対応するには有料という制限があった上にインターフェースはオーソドックスな再生、停止ボタン、小さい液晶画面、言語も多言語ではなく、地域ごとにローカライズされているというのもありコストの増加につながっていたと思います。
特にMP3が標準仕様というのはかなり優位であり、当時、覚えてらっしゃる方もいると思いますが、所謂P2Pが横行しており、有名所ではNapster、WinMX、日本だとWinnyが流行っており、簡単にMP3が入手できる状況でした。
またiTunes Storeが立ち上がったのは2004年、Mora(当時はBitMusic)が立ち上がったのは1999年と5年前から存在していたのにもかかわらず、何故これほどまでに大きく差がついてしまったのでしょうか。
iTunes Music Store(以降iTMS)は立ち上げの段階から
− レーベルの豊富さ
− 低価格でありながら高品質の音楽の配信
− 柔軟な制限
となっており、ユーザーに対してメリットはかなりあります。それに対してMoraの場合
− 少ないレーベル
− 高価格
− 厳しすぎる制限
等もあり、あくまでもユーザーではなくレーベルが第一という状況が成否を分けたといっても過言ではないと思います。
それに加えてiTunesの使いかっての良さ、転送速度の速さ、iPodの使いかっての良さが更に拍車をかけAppleの勝利を磐石なものにしたといっても過言ではないと思います。
逆にSonyのSonic StageやX-アプリは
− 重い(立ち上がりに時間がかかる)
− 遅い(毎回Atrac 3にエンコードするので時間がかかる)
− 使いにくい上にゴチャゴチャしている(特にX-アプリはMoraとSonyの宣伝入り)
という状況なのでとても使いかってがいいとは言えず、おまけに対応OSもWindows(それも日本語版)のみという状況である以上増えつつあるMacユーザーは当然ながら敬遠します。
実際に音質はと言うと、Hi-MDウォークマン、並びに以前かなりこき下ろしましたがAndroid研究のためにWalkman Zシリーズを日本で購入しましたが、正直な話イコライザー等の調整もでき、Zシリーズに関してはS-Master MX、DSEE、クリアベース、VPT等も効いているせいかかなり綺麗に聞こえます。しかもZやSの場合はノイズキャンセリング機能が付いているので別途ノイズキャンセリング対応のヘッドホンを買わなくて済みます。それに対してiPodやiPhoneの音楽再生能力は至ってベーシックでイコライザーもプリセットのものしか選べません。
同じノイズキャンセリングなしのヘッドホンで聞いてみても音質に関しては個人的にはウォークマンの方が好きです。ただ難点は先程も書いたように
1)Macに非対応
2)X-アプリでiTunesのプレイリストを同期させるには事前にフリーウェアなどで書き出さないとダメ
3)転送がiTunes + iPhoneと比べると断然に遅い
のでMacで使うにはかなりの覚悟で臨まないと苦戦します。実際Macからウォークマン(Zシリーズ限定)に転送するには
1)Double TwistアプリをZシリーズ側にインストールし、Mac側にもDouble Twistをインストールして同期を行う(日本語転送問題なし、iTunesとの連携も問題なし)
難点:DSEE、クリアベース、VPTが使えない(ノイズキャンセリングは問題なし)
2)Songbirdを利用して転送し、内臓の純正プレーヤーで再生
難点:転送速度が遅い、一部の日本語ファイルが再生できない
とサードパーティのソフトを頼らなければいけない上に、再生できないファイルがでるか、機能を犠牲にするしか無いわけです。おまけにZシリーズの謳い文句は
For music lovers, by music lovers
となっており、じゃあMacユーザーは音楽好きじゃないのかってことにもなります。
また脱線してしまいましたが、Sonyがハードとソフトの融合に失敗した原因として
1)ユーザーのためではなく、レーベルを余りにも重視しすぎたこと
2)コンテンツが限られている
3)自ら閉鎖的になりすぎている
というのが主な原因だと思います。最近のBraviaはYoutube対応になってはいますが、時既に遅しという感じは否めません。
海外向けのBraviaだとYoutube、Daily MotionやTV局のVODサービスにも対応していますが、日本向けの場合だとYoutubeとSENのみならずニコニコ動画、Ustreamなどにも対応しないとハードとソフト、ネットの融合は難しいかと思います。
次のパート3では創業者精神の希薄化に対してコメントしてみたいと思います。