2019年03月06日
新型BMW 3シリーズ、BTCC(ブリティッシュ・ツーリングカー選手権)投入
新型BMW 3シリーズ、BTCCに
新型BMW 3シリーズがBTCC(ブリティッシュ・ツーリングカー・チャンピオンシップ)に参戦することが決まった。何度もタイトルを手にしているサリー・レーシングとタッグを組む。
チャンピオン経験のあるコリン・ターキングトンと、ルーキーとして注目をあつめるトム・オリファント、そして2012年のチャンピオンであるアンドリュー・ジョーダンがハンドルを握る。
BMW 3シリーズが英国ツーリングカーに復活。名門チームが計3台を投入へ
BTCCイギリス・ツーリングカー選手権の名門チームで、2018年もダブルタイトルを獲得しているウエスト・サリー・レーシング(WSR)は、2019年にG20型にモデルチェンジした新型『BMW 3シリーズ』にスイッチすると発表。7代目セダンもツーリングカー・シリーズデビューを飾ることとなった。
2014年、そして2018年にエースのコリン・ターキントンをドライバーズチャンピオンに押し上げたBMW125i Mスポーツに代わって、BMWワークスのWSRは新たに330i Mスポーツの投入を決断。両タイトル防衛に向け3台の新型マシン製作を急ピッチで進めている。
いわずとしれたスポーツサルーンの代名詞的存在である3シリーズは、そのイメージどおりツーリングカーシーンでも大活躍を演じたモデルであり、WTCC世界ツーリングカー選手権での3連覇を筆頭に、BTCCでは1988年から2009年の間にフランク・シトナー、ウィル・ホイ、ティム・ハーベイ、ジョー・ウィンケルホック、そしてターキントンらがチャンピオンを獲得している。
約10年ぶりに3シリーズへのスイッチを決めたWSRは、G20型330i Mスポーツのうち2台をTeam BMWのエントリー名で走らせ、王者ターキントンと新加入のトム・オリファントにステアリングを託すことになる。
そして残る1台は自身のプロジェクトであるBMW Pirtek Racingとして、WSRと長期契約を結ぶ2013年王者のアンドリュー・ジョーダンがドライブする。
この新型ツーリングカーのデビューは、開幕戦に先立ち3月のブランズハッチで開催される恒例のシリーズ公式テスト“メディアデー”になると予想されている。
「BMW 3シリーズを再びBTCCの舞台に呼び戻すことができて本当にうれしい」と語るのは、WSRチーム代表のディック・ベネット。
「我々は2007年から2012年の間に第5世代(E90型)の3シリーズで大成功を収めた。その最新世代がどんな能力を引き継いでいるか。再びサーキットで輝きを見せてくれるだろうことにワクワクしているよ」
ディフェンディングチャンピオンとしての戦いと同時に、新型マシンの開発という重責も担って2019年シーズンに挑むことになったターキントンも「プレシーズンに限って言えば、これ以上の成功は望めない」と、3シリーズへのスイッチを歓迎する意向を示した。
「僕は2009年にこの3シリーズで初のBTCCタイトルを勝ち獲ったんだ。そしてTeam BMWのために新しい3シリーズで、新しい章を始めることができるなんて夢が叶ったような気分だよ」と語るターキントン。
「エンジニアリング部門にとっては非常に忙しいオフになっているけど、チーム全体のモチベーションには確実にプラスだ。新型3シリーズのエクステリアは最高で、レースカーはさらにその上を行くだろうね。この役割を担えて本当に光栄だよ」
一方、2018年限りでWSRを去ることが決まっていたロブ・コラードは、2019年シーズンに向け新たにパワー・マックス・レーシング(PMR)と契約。ボクスワール・ワークスに加入し、ジェイソン・プラトとともにアストラBTCCのステアリングを握ることが決まった。
「勝ちたいという欲望はこれまで以上に高まっているんだ」と語る50歳のコラードは、2018年のスネッタートン戦でマルチクラッシュに巻き込まれて脳震盪を経験し、シリーズ後半戦の参戦休止を余儀なくされ、そのまま2010年以来在籍したチームから放出される格好となっていた。
「ジェイソン(・プラト)のような強力で経験豊富なチームメイトと組めるのもうれしいね。こうした新興チームの成功を手助けするのは光栄だ」と、BTCC通算15勝を挙げているコラード。
「前輪駆動のマシンをドライブするのは2007年にGRアジアのセアト・レオンをドライブして以来だけど、インディペンデントで初タイトルを獲得したのはFFのアストラクーペだった。ひさびさにその前輪駆動の感触を味わえるのもうれしいよ」
また2017年にスバル・レヴォーグGTで初の王者に輝いたアシュリー・サットンも、引き続きチームBMRに残留してスバル陣営の一員としてタイトル奪還を目指すことを発表。
そしてシリーズに電撃参戦を表明した元F1ドライバーのマーク・ブランデルは、トレード・プライス・カーズ・レーシングのアウディS3セダンBTCCのメインスポンサーに、HP(ヒューレット・パッカード)を迎えることをアナウンスしている。
Posted at 2019/03/06 18:46:02 | |
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BMW | 日記
2019年03月06日
水平対向エンジンは進化し続ける──ネガを解消した「e-BOXER」を山形県で試す!
冬のスイスを訪れるとやたら目につく自動車ブランドがふたつある。ひとつはアウディ、もうひとつはスバルだ。
オンロード用フルタイム4WD「クワトロ」を、初めて世に送り出したアウディが、降雪地帯で人気なのは広く知られているところ。だから、冬になれば当然のように雪が降り、坂道も多いスイスでアウディが歓迎されるのはよくわかる。
そんなスイスでは、アウディとおなじくらいスバルの人気が高い。日本人としてはなんだか誇らしい気持ちになる。
いやいや、それどころかグローバルで4WDの売れ行きを調べると、スバルはアウディを凌ぎ、販売されるクルマのほとんどが4WDだ。
グローバルで見たアウディのクワトロ率、つまり前輪駆動などに対する4WD比率は50%をわずかに切る程度だ。とはいえ、SUV専業メーカーではない、フルラインナップの乗用車メーカーとしては立派な数字だろう。
ところがスバルはそのはるかに上をいく98%であある(2016年度の統計)。ちなみに、日本国内の4WD構成比率でいうと、「インプレッサ」が53.5%となるものの、インプレッサ以外の「XV」、「レヴォーグ」、「フォレスター」、「レガシィ」、「WRX」、「エクシーガ」はいずれも100%(2017年度の統計)。ほかに、全車後輪駆動であるBRZ(トヨタ86の兄弟モデル)のデータがくわわるものの、グローバルでは100%近い数字になるというからすごい。それだけスバルの4WDには定評があるのだ。
スバルで定評ある技術といえば水平対向エンジンも忘れるわけにはいかない。V型エンジンのバンク角をぐーっと広げていき、これを180度としたのが水平対向エンジンだ。実は水平対向エンジンにはもうひとつ定義があって、左右に分かれて往復運動するピストンが、必ず対になって動かなければいけない。このため、対をなすピストンの動きがお互いの振動を打ち消し合って静粛性が高いとされる。低重心と並ぶ水平対向エンジンのもうひとつのメリットだ。
つまり、クルマを上から見たとき、左右対称の形をしているのが水平対向エンジンであり、同じく左右対称に作られた4輪駆動システムと組み合わせれば完全に左右対称なドライブトレインができあがる。これこそ、スバルが長年作り続けてきた“シンメトリカルAWD”(スバルは自社の4WDのことをAWD=All Wheel Driveと呼ぶ)である。
このレイアウトは「4輪にかかる荷重のバランスがいいため、タイヤの接地性をしっかり確保出来る」というのがスバルの主張だ。ちなみに、この形式を採用しているのは世界中探してもスバルとポルシェの2メーカーだけというのは自動車愛好家の間で有名な話である。
せっかくここまでスバルのことを褒めちぎってきたけれど、シンメトリカル4WDの弱点をひとつだけご披露しよう。スバルの場合、水平対向エンジンをフロントタイヤのあいだに収めている。もっと正確にいえば、左右のフロントサスペンションに挟まれた狭いスペースに、本質的に幅をとる水平対向エンジンを押し込んでいるのだ。
このためエンジンの全幅が広がる恐れのあるロングストロークを採用しにくいという制約がある。いっぽう、自動車用エンジンの燃焼を改善しようとすると、ある程度のロングストローク化は致し方ないというのが現在の自動車業界では常識となりつつある。
世の趨勢に応える形で、スバルは2010年に新世代エンジン「FB型」を投入した。一部では、ストロークがボアを上まわるロングストローク型を実現したものの、スバルの歴史を振り返るとショートストローク型エンジンの時代があまりに長く、このため「スバルのエンジンは、高速性能はいいけれど燃費が悪い」とのイメージをなかなか払拭できずにいた。
しかし、近年登場した「e-BOXER」によってイメージは変わりつつある。端的にいえばハイブリッドの水平対向エンジンだ。ただしスバルは、e-BOXERがハイブリッドであると声高には主張していない。ハイブリッドカー=エコカーという既成概念があるため、おそらく「燃費はいいけれど走りはダメでしょ」といったネガなイメージに引きずられたくないのだろう。
実際のところ、e-BOXERの走りはいい。今回は山形県の酒田市から山形市まで、途中月山周辺を経由し、2台のフォレスターで走りまわったが、e-BOXER搭載の「フォレスター アドバンス」も、2.5リッター水平対向4気筒エンジン搭載の「フォレスターX-BREAK」と、まったく遜色のない走りを見せた。
これはe-BOXERの排気量が2.0リッターであるのを考慮すれば驚くべき結果だ。それどころか、中低速域ではe-BOXERのほうが力強く、そしてまたレスポンスが良好で、意のままに走れる印象が強い。中速以上の巡航ドライブに入る直前に、駆動系からコツンというショックが伝わるX-BREAKとは異なり、スムーズなドライブが楽しめた点もe-BOXERの魅力といえる。
しかも月山付近から山形駅までの下り坂中心のルートだったとはいえ、フォレスター・アドバンスはオンボード・コンピューターで15.1km/Lの好燃費を記録した。水平対向に対するこれまでのイメージを完全に覆してみせたのである。
今年は雪が全般的に少なかったものの、豪雪地帯で知られる月山周辺の圧雪路において、スタッドレスタイヤを履いたフォレスターが安定した走りを見せてくれたのはいうまでもない。e-BOXERを得て、スバルの4WDモデルがさらに魅力的に生まれ変わったことは間違いなさそうだ。
スバル・フォレスターで日本で二番目に雪深い集落を訪ねてみた〈SUBARU FORESTER 雪上試乗記〉
スバルと言えばAWD、AWDと言えばスバル───すでにそんなイメージが広く浸透しているとはいえ、東京に住んでいると、なかなかその恩恵を肌で感じる機会は少ない。今回、日本で2番目の積雪量を記録したという山形県の肘折地区とその周辺にて、極限の環境下におけるスバルの底力を体感したのである。TEXT●小泉建治(KOIZUMI Kenji)PHOTO●平野 陽(HIRANO Akio)
積雪量445cmの豪雪地帯へ
2018年、スバルのグローバルにおけるAWDの販売比率は98.0%だったという。残りの2%はほぼBRZと考えて間違いないから、スバルは完全にAWDのメーカーであると世界中のカスタマーから認識されていることになる。
YouTubeなどを覗けば、世界中のスバルオーナーたちが愛車のすごさを自慢する動画に溢れている。あれはちょっと古いフォレスターだったかと思うが、雪でスタックしたシボレー・カプリスだかフォード・クラウンビクトリアのパトカーを引っ張り上げるアメリカの動画があって、コメント欄には称賛の声が溢れていたのを覚えている。
そんなスバルの雪道性能を量るには、相応の極寒地に行く必要がある。というわけで、今回スバルが雪上試乗会の舞台として設定したのは、2000年代に入ってから二番目の積雪量を記録したという山形県の肘折とその周辺地域である。
二番目ってのが微妙だって? 一位は青森県の酸ヶ湯で、実は昨年、同じスバルの雪上試乗会で訪れているのだ。だから次は二番目というわけだ。ちなみに酸ヶ湯は2013年に積雪量566cmを、肘折は18年に445cmを記録している。
山形駅からほど近いホテルの駐車場で、クリスタルホワイトのフォレスターX-BREAKに乗り込む。水平対向4気筒2.5Lを搭載するモデルの最上位グレードにあたる。
山形の市街地を通り抜け、まだ建設中で途切れ途切れの東北中央自動車道を10kmほど走り、続いて国道13号線を北上して最初の目的地である銀山温泉を目指す。
スバルのラインナップのなかでは最もSUVらしさの強いフォレスターだが、それでも運転感覚にとくに背の高さやボディの大きさを気にさせる部分はなく、Dセグメントあたりのサルーンと変わらぬ感覚で運転できる。雪国に住む人だって、大部分は市街地に住んでいるのだから、こうして「フツーに運転できる」ことの重要性は高い。
銀山温泉では撮影するのみで、滞在時間はおよそ10分ほど。すぐさま国道13号まで戻り、舟形町、大蔵村を経て、大きく北側にぐるっと回る形で肘折温泉に向かう。
大蔵村から国道458号線を南下し始めると、さすが日本屈指の豪雪地帯らしく、一面真っ白の景色になっていく。路面はもちろん完全なスノーコンディションだが、ほどよく踏み固められていて、むしろグリップを感じるほどだ。ときおり柔らかな雪の感触の奥に硬いアイスバーンの存在を感じる瞬間があって、当然ながら最新の注意を払う必要があるが、とはいえ実際にヒヤリとさせられる場面はなかった。
もちろんそれは試乗車が履いていたブリザックVRX2の恩恵も大きいが、そうした雪道ならではの独特のグリップ感や、アイスバーンならではの感触をしっかりドライバーに伝えてくるフォレスターのシャシー性能がもらたす安心感のおかげとも言える。
同じ雪道性能を有していたとしても、「なんだかよくわからないけれど、とりあえず大丈夫そうだ」と「なにがどうなっているかわかるから、ここまでは大丈夫だ」では、ドライバーが抱く安心感がまるで違う。フォレスターは後者である。
ユーザーフレンドリーなヘビーデューティーさ
そしていよいよ肘折温泉に到着する。温泉街にアプローチする道路は除雪されているものの、路面にはしっかり雪が積もり、そしてこの瞬間も降り続けていた。道路の左右の雪壁は高いところで4mはありそうで、聞きしに勝る豪雪っぷりである。
「上の湯」という公衆浴場でササッと湯に浸かり、山形名物の板蕎麦をいただいた後、今度はセピアブロンズのAdvanceに乗り換える。水平対向4気筒2.0Lに電気モーターを組み合わせたハイブリッド(スバルではe-BOXERと呼ぶ)である。
肘折温泉を後にして、今度は出羽三山神社を目指す。いったん北上し、国道47号線を最上川沿いに西へ向かい、県道45号線を再び南下する。
出羽三山神社の一帯は新雪に覆われ、まさにフォレスターのクロカン性能を示すうってつけコンディションである。駐車場から徒歩で拝殿に向かい、参拝した後に再びフォレスターに乗り込み、隣接するスキー場の周辺に足を踏み入れる。
新雪の中、中途半端な速度で前進後退旋回を繰り返す筆者の姿は、性能を試す自動車専門メディアと言うより、生まれて初めて雪を見た子犬が、最初は不安だったのにだんだん興奮が勝ってはしゃぎ回るサマに似ていたかもしれない。
午前中に乗ったX-BREAKと比べて、雪道性能に大きな差は見られないものの、ひとつ挙げるとすれば電気モーターがもたらす絶妙なレスポンスだろう。
悪路からの脱出を主たる目的とした低速域専用の「X-mode」は全グレードに標準装備されているが、e-BOXERのそれは、電気モーターならではの応答性の良さと制御で、よりアクセルワークに忠実なトルク供給を可能としている。
滑りやすい路面で段差を乗り越えたり、深い雪の中から脱出するときなどにアドバンテージがあるのは確かだ。また、e-BOXERは回生ブレーキ時に制動力の前後配分を最適化させることで、アンダーステアを軽減させる制御も行っているという。
出羽三山神社を後にし、ゴールである庄内空港に向かう。せっかく山形県に来たのだからと、推奨ルートを外れて日本海まで行ってみることにした。太平洋側で生まれ育った人間にとって、日本海の情緒には抗しがたい魅力がある。
海岸に抜けられる場所を見つけたので、躊躇なく砂浜に出た。砂浜には雪は積もりにくいといわれるが、さすが真冬の日本海、砂の上にうっすらと雪が乗っている。砂と雪のハイブリッドという、「悪路」としては最高のスペックを誇る路面を、フォレスターはこともなげに突き進む。
しかしここで筆者の助けとなったのは、必ずしもその卓越した悪路走破性だけではない。普段、こうした未舗装路や雪道を走る機会の少ないドライバーにとっては、絶対的なパフォーマンスの高さそのものではなく、そのパフォーマンスを「どれだけ簡単に引き出せるか」が重要になってくる。
冒頭に記したように、フォレスターをはじめとしたスバルのAWDは、サルーンやハッチバックのような感覚で運転することができる。おかげで雪道や砂浜といったタフな状況でも、ドライバーに無用な緊張感を与えないのだ。
本格クロカンAWDやSUVは世に数多あるが、当然ながら「らしさ」を過剰に押し出したモデルが少なくない。そのほうが商品力を訴えやすいからだ。そんな本格クロカンのアイコンとしての魅力にも大いに惹かれるものがあるが、スバルは違う道を実直に歩んできた。
今、スバルの魅力はと問われれば、「ユーザーフレンドリーなヘビーデューティーさ」とでも答えればいいだろうか。逞しく、頼もしく、卓越したパフォーマンスを備えてはいるが、あくまでそれはドライバーに寄り添ったものなのである。
スバル・フォレスター X-BREAK
全長×全幅×全高:4625×1815×1730mm ホイールベース:2670mm 車両重量:1530kg エンジン形式:水平対向4気筒DOHC 総排気量:2498cc ボア×ストローク:94.0×90.0mm 圧縮比:12.0 最高出力:136kW(184ps)/5800rpm 最大トルク:239Nm/4400rpm トランスミッション:CVT フロントサスペンション:ストラット リヤサスペンション:ダブルウィッシュボーン タイヤサイズ:255/60R17 WLTCモード燃費:13.2km/L 車両価格:291万6000円
スバル・フォレスター ADVANCE
全長×全幅×全高:4625×1815×1715mm ホイールベース:2670mm 車両重量:1640kg エンジン形式:水平対向4気筒DOHC 総排気量:1995cc ボア×ストローク:84.0×90.0mm 圧縮比:12.5 最高出力:107kW(145ps)/6000rpm 最大トルク:188Nm/4000rpm モーター最高出力:10kW(13.6ps) モーター最大トルク:65Nm トランスミッション:CVT フロントサスペンション:ストラット リヤサスペンション:ダブルウィッシュボーン タイヤサイズ:255/55R18 WLTCモード燃費:14.0km/L 車両価格:309万9600円
雪壁連なる出羽三山を走ってわかった スバルAWDの極限性能
スバルがメディア向けの雪上試乗会を行った。その舞台となったのは豪雪地帯として有名な山形県出羽三山、2mの雪壁が迫る一般道を約200km走るルート。
試乗車は、スバルXVとフォレスターe-BOXERの2台。はたして極寒の地で、スバルの4WD性能はいかんなく発揮できたのか? 恐怖(?!)の実体験レポートをお届けしよう。
文/ベストカーWEB編集部・小野正樹
写真/スバル
■テストコースではなくリアルワールドでの実走テスト
スバルの雪上試乗会は、2018年からクローズドコースではなく、刻々と変わる環境下での実路、つまりリアルワールドの一般道での雪上テストを行っている。
2018年は、八甲田山の雪中行軍で有名な十和田湖や酸ヶ湯など、積雪5mを超える日本一の豪雪地帯を走るルートだったが、今回も前回同様、過酷なリアルワールドのテストだった。
スバルがこのようなテストを選んだのはクローズドコースにはない、刻々と変わる環境下で、スバルのAWD性能だけでなく、視界や空調、車高といった総合的なスバルAWDの「安心感」をベースとした「愉しさ」を味わって欲しかったからだそうだ。
試乗コースは、山形駅にほど近いホテルを出発し、修験道の霊場として知られる月山(標高1984m)、湯殿山(標高1504m)、羽黒山(標高414m)という出羽三山を目指し、最深積雪ランキングで2位の445cmを記録した肘折温泉を経て、鶴岡、酒田へ向かう約200kmのルート。
このコースは、スバルが47年前、国産初の乗用4WDとして登場させたスバル1300バン4WD(後のレオーネ4WDエステートバン)を月山周辺でテストしていた地でもあったのだ。
実は嫁さんの実家が山形県鶴岡なのでこの年末年始に帰省し、月山や湯殿山周辺を走ったのだが、まさかその1カ月後に同じ場所に、しかもスバルの雪上試乗会で再び来ようとは予想だにしなかった。
嫁さんの実家にはフリード4WDがあるので、それを借りて湯殿山スキー場をはじめ、出羽三山周辺に乗っていったが、新雪や圧雪路の怖さを身をもって体験した。
もちろんスタッドレスタイヤを履いているのだが、さすがにオンデマンド4WDはきつかった。除雪済みの鶴岡市内の一般道では、なんてことはないのだが、湯殿山付近の一般道あたりから、曲がらない、走らない……。
積雪20cmくらいの下りで、ちょっと油断して速度を上げると、停まらない。雪壁の30cm手前でようやく停まり、事なきを得たが……。横浜育ちの担当にとってトラウマになるところだった。
■スバルXVの基本性能の素晴らしさを知る!
そうした実体験を踏まえながら、同じ道をスバルの4WDで走ったらどうなるかと、ワクワクしながら山形駅にほど近いホテルをスタート。
最初に試乗したのはXV 2.0i-Sアイサイト。e-BOXERではなく2Lのガソリン車。その前に、スバルの4WDシステムはどうなっているのか説明しておこう。キャラクターに合わせて車種ごとに複数のAWDシステムを用意している。
1/アクティブトルクスプリットAWD/インプレッサ、XV、レガシィ、フォレスター、レヴォーグ1.6L
特徴:燃費と安定性を重視した電子制御AWD
駆動力配分:軸重配分(60:40)を基本にロックまで可変
2/VTD方式AWD/レヴォーグ2L、WRX S4
特徴:髙出力に対応した走りの電子制御AWD
駆動力配分/前45:後55、可変
3/ビスカスLSD付きセンターデフ方式AWD/MT、海外仕様のXVなど
特徴:自然なフィーリングが特徴の機械式AWD
駆動力配分/前50:後50
4/DCCD方式AWD(MT、WRX STI)
特徴:操る愉しさを実現させる電子制御AWD
駆動力配分/前41:後59、可変
■X-MODEの威力に助けられた!
今回の雪上テストで試乗するXVとフォレスターe-BOXERは1のアクティブトルクスプリットAWDを採用し、悪路走破性を高めるX-MODEが付いている。
このX-MODEは、今回のような雪道での発進や悪路の登坂などでタイヤが空転するようなシーンでの走行性能を極限まで確保する機構で、停車時または約20km/h以下で走行中スイッチを入れると制御が瞬時に介入し、40km/hまで作動する。
山形駅にほど近いホテルを朝8時にスタートし、山形道を走る。しばらく雪がなかったが、「五月雨を集めて早し最上川」(松尾芭蕉)で有名な最上川を右手に見る県道13号線あたりから圧雪路になっていく。
山道をおそるおそる登っていくと道の左右には2m以上の雪壁が迫ってくる。乗り替え地点となった肘折温泉付近まで、コンクリートがむき出しの路面あり、圧雪路あり、雪が溶けて凍った凍結路あり、途中雪が降り出したため20cmほど新雪が積もった路面あり……と、まさにリアルワールド、さまざまな表情をみせてくれた。
新雪が20cmほど積もってきた道路に差しかかったところで、雪壁の真下でX-MODEのDEEP SNOW/MUDモードを試してみた。
X-MODEのノーマルモードでは抜け出せない状況だったが、DEEP SNOW/MUDモードに入れ、さらにVDCオフスイッチを押すと、一瞬タイムラグがあったものの、トラクションが回復して抜け出すことができた。
続いて下りの圧雪路。これは1月に月山をフリード4WDで走らせた時に恐怖を感じた路面と似たような状況だった。
何気なく下りを少しずつブレーキをかけながら走っていると、コーナーを曲がろうとした瞬間、「曲がらない、ブレーキングをするも止まらない」となり、最後は雪壁の30cm手前で停まった、あの時と同じような状況だ。
その時と同じことをXVのX-MODE、SNOW/DIRTモードに切り替えて試してみた。すると自動でブレーキ制御が行われて、ズリズリと滑ることなく、こちらのステアリング操作通りにトレースしながらコーナーを曲がるのだった。
SNOW/DIRTモードに切り替えると、20km/h以下でヒルディセントコントロール機能が働いてブレーキ制御を行われるので、冷や汗をかかずにかかずにステアリング操作に集中できて、曲がってくれるという訳だ。
もちろん、4WD性能だけでなく、XVのすばらしさはほかにもあった。雪が降っていて視界がよくない状態でも、前方および後方視界がいいので、安心感があり、乗り心地も上質。長時間乗っていても疲れなかったことも褒めておきたい。
■e-BOXERは豪雪地帯でも大丈夫なのか?
肘折温泉近くのふるさと未来館で、昼食をとった後、XVからe-BOXERを搭載するフォレスターadvanceに乗り代えて、次の中継地点、出羽三山神社を目指した。
こちらの道路もかなりの剛の者。まだ13時を回ったところだというのに、-7度まで気温が下がり、ぼた雪が降ってきた。
試乗車は、e-BOXERというモーターアシスト型ハイブリッドシステムと2L水平対向4気筒エンジンを組み合わせたパワートレインを搭載しているフォレスターAdvanceグレード。
駆動システムはX-MODE付きの前後駆動力配分60:40を基本としたアクティブトルクスプリットAWDである。
XVに比べるとフォレスターは大きいせいもあるが走りに絶対的な安心感がある。SUVということもあるが、視界がよく、乗りやすいし、乗り心地も上質だった。
もちろん、深い雪でもスタックすることなく安心して走ることができたし、圧雪路や凍結路でも曲がらない、止まらない、ということはなかった。
■ハイブリッドにつきものの回生ブレーキは邪魔?
ここで、フォレスターe-BOXERの回生ブレーキはどうなのか、遠くが見渡せる緩やかなコーナーで、X-MODEのSNOW/DIRTモードを試してみた。
モーターがガソリンエンジンをアシストするハイブリッドの場合、減速エネルギーを利用する回生ブレーキが備わっているが、滑りやすい路面のコーナリング時には、前輪に制動力が加わり、スリップが大きくなり、アンダーステアが強くなる傾向がある。
しかし、X-MODEのSNOW/DIRTモードに切り替えると、アンダーステアにならずにコーナーをクリアしていく。これは、後輪への回生量を増やすことで前後の回生量を最適化しているからだそうだ。
オーバースピードでコーナーに進入すると、そのかぎりではないが、回生ブレーキ時のアンダーステアをこれだけ防いでくれるのは秀逸だ。
また、アイスバーンや圧雪路、段差を乗り換える時、スリップしやすいのでアクセルワークに気を使う必要があるが、フォレスターe-BOXERの場合、アクセルペダルがダイレクトに反応してくれるので、踏みすぎになることもない。
スバル電動パワーユニット研究実験部の稲葉之人氏によれば、「2.5Lのガソリン車に比べて、e-BOXERは、モーターのトルクを優先的に配分するため、アクセルワークの応答が1秒早くなります。また他メーカーのハイブリッドは、滑りやすい路面でのこうした制御は行っていないので、こうした点はスバルの冬期性能のこだわりだと思っていただければと思います」。
ちなみにe-BOXERの販売割合だがフォレスターは全体の47%(2018年5月の新型フォレスター受注開始時点より)、XVは全体の36%(2018年のXVマイナーチェンジ以降)とのこと。
■4WD以外のこだわりの冬期性能
無事、何事もなく庄内空港へ到着、東京へ帰ることができたが、山形駅から出羽三山、そして鶴岡・酒田市内に至る、まさにリアルワールドでの試乗コースを走ってみて、スバル車の真髄を垣間見たような気がした。
雪とはほぼ縁遠い東京で、スバルのクルマに乗っていると気づかない4WD性能は言うにおよばず、空調をはじめとするシート&ステアリングヒーター、ポップアップ式ヘッドランプウオッシャー、ヒーテッドドアミラーなどの厳冬に強い装備類、さらには視界のよさ、運転のしやすさなど、冬に対するスバルの愚直なまでのこだわりには頭が下がる。加えて、残念ながら体験できなかったが、タイヤチェーン装着時の安定性まで考慮する徹底ぶり。こうしたこだわりが、何も起きないという、絶対の安心感につながっているのだろう。
刻々と変わる路面状況、天候のなか、スバルの思想、「安全、安心と愉しさ」を身をもって体験できた試乗会だったように思う。「雪国にはスバル」と、山形の親戚に薦めてみよう思う。
Posted at 2019/03/06 18:40:09 | |
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富士重工 | 日記