2018年11月23日
先手と後手の話 第1回 ~プロ将棋界では~
特定のスポーツ種目の特性を探求する当ブログ。将棋の話が出たついでに、先手と後手の話に言及します。
例えば、ジャンケンというゲームは相手の出方を見てから自分の出す手を決定すれば絶対に勝てるので「後手必勝」の特性があると言え、だからこそ、両者が同時に手を出す(相手の手を見て自分の手を決定することのないようにする)というルールが必要です。当たり前の話ですが・・。
先手・後手とは少し異なりますが、「よーい、ドン」で競争する種目は、基本的に前からスタートして先行する方が有利です。それで思い出すのは、セナの鈴鹿でのポールポジション位置問題。鈴鹿のポールポジションは長年イン側で、1990年日本GPでPPを獲得したセナが、PPの位置をアウト側にするよう求めましたが受け入れられず、イン側からスタートして、アウト側からスタートしたプロストに先行され、1コーナーでプロストに突っ込んで撃墜し、年間王者を獲得。次年度から鈴鹿のPPがアウト側に変更されたと思ったら、次年度、私が観戦に訪れた1991年日本GPでセナはPPをベルガーに奪われてしまいました。
というのは余談で、将棋ではアマチュアレベルでは先手後手の有利不利はほとんどないのですが、レベルが上がるにつれて先手有利になっていく傾向があり、プロ棋戦での先手勝率は、年度によって多少異なるものの大体53~55%程度でしたか。これがトッププロ同士の対戦となるタイトル戦ではさらに先手有利となり、確か今年度のタイトル戦は先手勝率7割くらいになっているんではなかったでしたっけ。後手番のときにいかに勝つかが、タイトル戦の行方を大きく左右します。
先手番と後手番が交互に回ってくるタイトル戦はまだしも、一発勝負の対局で先手と後手にあまり有利不利の差が生じると、先手と後手を決める振り駒の結果で勝負の行方が左右されてしまうので、これは由々しき問題で、羽生先生も、例えば先手と後手の持ち時間に差をつけるなどの対策を検討する必要があるとの見解を示されています。
そんな中で、平成20年度ごろでしたか、1度だけプロ棋戦の先手勝率が5割を切った年度がありまして、将棋界の珍事でした。と言っても、この年度だけ先手不利になったというわけではなく、数字の誤差の範囲内というか、強いて要因を考えるとすれば、「後手一手損角換わり戦法」など先手の有利性を薄くする戦法の研究が進んだことがあったのかもしれません。
将棋において本当に後手が有利になることは基本的に考えられません。もし本当に後手が有利ならば、先手番の人が無意味な手を指せば簡単に後手番になりかわることができるわけですから。むしろ、将棋は、研究が進めば進むほど先手有利となっていく可能性が高く、現在のタイトル戦の状況は、その入り口にさしかかっていることを示しているのかもしれません。
ついでに言うと、かつて隆盛を誇り、「将棋の純文学」とまで言われた矢倉戦法が現在なかなか見られないのは、私の今までの理解では、先手がどうしても有利で、後手が矢倉を避けるため、ということだったのですが、最近発表された遠山先生のコラムによれば、現在矢倉が指されないのは、後手に有力な急戦策が発見され、先手が矢倉を避けるようになったからだそうです。いつの間にか定説の中身が変わっていました。
こうして、有力な新手が発見されると、その戦法は指されなくなり、先手にも後手にも決定的な手が発見されていない(言い換えれば「結論が出ていない」)戦法がプロ間で流行し、そこでまた有力な新手が発見されると、劣勢となる側を持って指す人がいなくなってまたその戦法が指されなくなり・・ということが日進月歩で繰り広げられているのがプロの将棋界なわけです。
次回は、スポーツ界における先手と後手について。
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Posted at
2018/11/23 16:41:34
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