トヨタ自動車のF1撤退会見は、東京都文京区の東京本社で、定刻通り17時から始まった。会見の冒頭、壇上で豊田章男社長が撤退の理由を説明し始めた。
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豊田社長「豊田でございます。お忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。本日伝えるのはF1についてです。弊社は2002年以降、8年間に渡り、F1に参戦してきたが、取締役会で議論した結果、本年で参戦を終了することになった。この8年間支援頂いたファン、スポンサー、メディアのみなさま、F1を通じて世界にモータースポーツの魅力をアピールしたレーサーや関係者に御礼を申したい。先日も鈴鹿の日本GPを観戦した。ファンの熱狂ぶり、弊社F1チームの素晴らしいチームプレー、その走りに心から感銘した」
「ファンの皆様のことを考えると身につまされる思いだが、現在の経営環境や中長期的な観点から苦渋の決断をしたことを、ご理解たまわりたい。ファンからは来年こそはガンバレと激励もらったが、期待に応えることができず、心からおわび申し上げる。トヨタのF1チームはこの8年間で合計140戦に参戦し、1戦1戦戦う中で、確実に実力を向上させてきた。世界の強豪との戦いの中でのチームの努力に敬意を表するとともに、夢をわかちあえたことに心より感謝する」
「本年6月に社長に就任して以来、商品を軸とした経営に軸を置きたいと申し上げてきた。すなわち味わいのあるクルマをつくり、1台1台を大事に届け、喜んでもらいたい。わたしどもとしては、今はこれらのことに会社のリソースを集中すべきと考え、まことに残念ながらF1続けることできなくなった。トヨタの経営は厳しいが、こういう時こそ、次の世代に何を残すかを原点に考えるべきと考えた」
「自動車を通じた、豊かな社会づくりに貢献が創業時からの考え方。自動車文化の一層の理解拡大に向け活動を進める。モータースポーツも活動計画を見直し、クルマを身近に感じてもらえる大切な活動として、クルマと人を鍛える活動として取り組むとともに、これからよりよいクルマ作りにいかしていく。よろしくご支援お願いします」
《質疑応答が始まった》
--2問うかがいたい。撤退の判断について、現在の経営環境、中長期的観点と言ったが、どうして撤退するのか理由を説明して欲しい。合わせて、これまでは2012年まで続けるとしていたが、この時期に撤退する判断に至った経緯は。また、すでにホンダがF1から撤退しているので、日本の自動車メーカーからの参戦がなくなる。このことについての考えについて
豊田社長「わたし自身、個人的にモータースポーツを推進している1人。モータースポーツを自動車文化の一つにしたいと頑張ってきた。ただ、6月以降、社長になってからは立場が変わったことを理解頂きたい。昨年来の経済危機以降、F1を続けるかどうかを社内でも大変議論した。モータースポーツを文化として育てたいという意思のもと、F1チームには、頑張ってコスト削減をやってもらった。ありとあらゆる手を尽くしてやってきた。ファンからも、唯一、残された日本チームとして応援頂いたことに感謝する」
豊田社長「富士スピードウェイの(F1開催)撤退を決めたときに、最終戦までと頑張ってきた。最終戦が終わり、今日、社内で臨時の取締役会を開き、撤退を決めざるをえないことになった。ここまで育てていただいた関係者、ファンの皆様の期待を裏切ったことは、いちモータースポーツファンとしても苦渋の選択だった」
《2人目の質問者が立つ》
--今回の撤退が業績に与える影響について。運営費は年間数百億円ということだが。それから、以前、F1のあり方に悩んでいると話していたが、社長自身の判断はどう決めたのか
豊田社長「収益に与える影響は明日、決算発表があるので、その場に譲らせていただく。判断でございますが、これは、わたし自身、6月以降社長という立場になった。取締役会の場でみなの意見を聞いたが、最終判断はわたしが行った。レースはクルマを鍛えるとともに人を鍛える。そういう意味で、F1からは撤退するが、F1で得たアウトプットを今後の商品にいかしていきたいと思う。また、ファンの方々に対しては、申し訳ないが、今後も、モータースポーツを底辺から、かつ幅広く、支えていきたいと思うし、ぜひともご理解頂きたい」
--2点あります。今シーズンはウィリアムズにエンジン供給している。これの見直しを含めた完全撤退か。モータースポーツに関してWRC、ルマンに参戦してきたが、収益改善まで国際レースには出ないのか
豊田社長「F1に関しては完全撤退と考えてもらっていい。ほかの国際レースについては、現在、参戦しているものは継続するが、それ以外は白紙」
--今年のF1では、かなり優勝のチャンスありながら優勝できなかった。「たられば」で言えば、優勝すれば来季継続の可能性もあったのか。また、社長自身、モータースポーツは文化といっていたが、世界1の自動車会社が撤退することに対する考えは
豊田社長「ええとですね、今年は本当によくがんばってくれたと思う。シンガポール、日本GPで準優勝した。日本GPはわたしも応援にいったが、チームワークそのものの勝利だと思う。優勝逃したというより、チーム全体がすばらしい準優勝を勝ちとったと思う。準優勝でも胸を張れとチームには伝えた。残る2戦においては、わたしどものTDP(トヨタ・ヤングドライバーズプログラム)出身の小林(可夢偉)くんが、F1の第3ドライバーになり、最後の2戦に出たのはいいことだと思う。2戦だけだが、日本人で参戦し、立派な戦いをみせた。(レーサーに)継続的にチャンス与えられないことは申し訳ないが、彼らは、中嶋(一貴)くんを含めてまだ若いので、今年までの走りを評価されて、彼らにチャンスがくること祈りたいし、いろんな形で応援する。それと、もし、優勝してればという質問だが、優勝したかどうかで結果はかわらない。準優勝で胸を張りたい」
--今回のF1撤退と、ハイブリッドなどエコカーの開発との関連はあるか
豊田社長「東京モーターショーがあったときに、わたしどもがどういう形でアピールしたかといえば、エコカーとわくわく感でアピールした。地球環境や100年に1度の自動車変換期ということを考えると、環境車が非常に大事。そこの強化が最重点課題だ。しかしながら、モビリティとしてのクルマには、ドライバーの自由と意思がある。クルマのわくわく感を否定しては駄目だ。今後のクルマの作り方も環境と、わくわくを両立させるべきだ。それが、フルラインメーカーにおける立場、役割だと思う」
--さきほど社長が言ったTDPについてうかがいたい。レーサーになりたい夢を持つ小学生は多いが、TDPの卒業生の中嶋選手などに支援継続の意思はあるのか。今後、TDPはF1、レーサーをどう育成するのか今後のプログラムについて
山科忠専務「TDPは少し縮小するが継続する。下のクラスをサポートする形に。それから、中嶋君と、小林君については、今、TMGがドライバー契約もっているので、当面は継続する。お金の面は少し考えながらやっていきたい。ここまで育てた2人なので…」《うつむき、涙をこらえる》
山科専務「できればどこかのチームに乗せたいと思います(声をつまらせる)」
--今回、いろいろ経営環境の悪化で撤退するが、昨年のホンダに続き、トヨタも撤退することで、日本企業に実力がない印象を世界に与えたと思う。自動車のリーディングカンパニーとしてモータースポーツに対する責任をどう考えるか。北米のナスカーへの参戦は続けるのか
豊田社長「モータースポーツというのは、底辺のところから裾野が広い。その最高位に位置するのがF1、フォーミュラワンだ。すべてのモータースポーツにかかわる人が最後に、そこでというのがF1のサーキットだと思う。その中において、そこへの登竜門として、それぞれの地域で、地域のモータースポーツの文化があると思う。それが、米ではナスカー。南米ではラリー。日本ではGT選手権とか。それぞれの地域に根付くモータースポーツがあると理解する。今回、わたしどもが最高峰のF1の撤退を宣言したが、各地域の活動は継続する。なぜ、F1やめて他をやるのかということだが、より地域に根ざした形でやりたい。すべてにゆとりあれば、すべてやるが、今は、すべてやることが不可能と、この1年間で判断した。相当、頑張りました。1年前に継続すると申したのも、本当に継続するつもりで申し上げた。1年間努力したが、この先を考えると今回はこういう決断に至った」
--トヨタは、モータースポーツ以外に野球とかバスケとかやっているが、そちらの方への影響、方針について現時点でお願いします
豊田社長「現時点で、会社はこういう状況だが、運動部は非常に頑張っている。野球も都市対抗で準優勝、現在野球選手権で動いている。フィギュアでは小塚選手と安藤選手が活躍している。彼ら彼女らが活躍する場は今後も応援していきたい」
《質問が終わり、章男社長は一礼し退席した》
産経新聞より
この会見を読んでどう思ったかは各自に判断をゆだねますが、個人的な見解としては、なぜもっと早くやらなかったのかという気持ちがあります。
ただ、豊田章男氏としては経営者として当然の判断をしたと思います。
それでいて…
秋の叙勲、張富士夫トヨタ会長に旭日大綬章
政府は3日付で2009年秋の叙勲を発表した。受章者は4024人で、このうち最高位の旭日大綬章には自動車産業の業界発展に尽力した張富士夫・トヨタ自動車会長ら11人が選ばれた。
今回の受章に対し、張会長は「日本をはじめ、世界各国の多くの人々のご指導、ご支援を頂きながら、共に仕事に取り組むことができた結果で、今後とも産業・経済・社会の発展に、いささかなりともお役に立てるよう、引き続き微力を尽くしていきたい」とコメントを寄せている。
また、2日付で政府が発表した秋の褒章受章者のうち、経済・産業関係で、公共の利益に貢献した人をたたえる藍綬褒章に渡辺捷昭・トヨタ自動車副会長が選ばれており、トヨタ自動車は、今年の秋の叙勲、褒章では社長経験の張会長、渡辺副会長のダブル受章となった。さらに、トヨタグループでは渡辺氏と同じ藍綬褒章に安田善次・関東自動車工業会長が選ばれている。
レスポンスより
拡大路線推進、大量の派遣、期間従業員切り、魅力ない車づくりを推進した人間が自動車産業の発展に貢献で藍綬褒章と旭日褒章ですか…
よほどホンダの福井威夫氏の方がこれらの賞もらってもおかしくないんですが?
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トヨタ | 日記
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2009/11/04 22:49:06