【日本の議論】危機に直面する「出産」「子育て」 民主党政権で何が変わる? 本当に必要なのは…
2009.9.13 18:00
「子供2人だと毎月5万円以上か」「うちは1人だから2万6千円だね」-。民主党の圧勝に終わった総選挙から2週間。子供を持つ同僚から、しばしばこんな会話が聞こえてくるようになってきた。どうやら今回の選挙で民主党が看板政策の1つとしてきた「子ども手当」の皮算用らしい。子育て世代にとっては、民主党がマニフェスト(政権公約)で掲げてきた子育て政策は確かに魅力的に見えるようだ。だが、民主党の政策は、喫緊の課題である少子化問題や子育て問題を本当に解消してくれるのだろうか。日本の実態を調べていくと、実際には一筋縄ではいかないさまざまな事情がかいま見える。(豊吉広英)
1人の女性から1・37人しか子供が産まれない… 日本人がいなくなる恐怖
「社会保障の議論といえば、年金、医療、介護…ときて、最後に“付け足し”のように取り上げられてきたのが少子化や子育てだった」
国立社会保障・人口問題研究所前所長で早稲田大学人間科学学術院の阿藤誠特任教授(人口学)は、これまでの社会保障の議論の中で、少子化や子育て問題が“軽視”されがちだったことを憂いてきた1人だ。
「それが、今回は選挙の争点の目玉。内容の善し悪しはともかく、クローズアップされたことは大変喜ばしい」
実際、現代日本の少子化や子育て環境の整備問題は、極めて厳しい状況にあると言わざるを得ない。
1人の女性が生涯に産む子供の数の推計値である合計特殊出生率は平成17年に1・26にまで低下。20年は1・37まで上昇したが、依然として人口減をもたらす危機的状況にあることは間違いない。
経済協力開発機構(OECD)は加盟国の2006年国内総生産(GDP)に占める教育費の公財政支出割合について、比較が可能な28カ国中、日本は下から2番目の3・3%だったとする調査結果を発表。日本の政府は子供の教育に金をかけてこなかったことが明らかになった。
そうした状況の中、今回の総選挙で民主党がマニフェストで大きく訴えたのが「子育て・教育」の分野だった。これまで大上段に論じる機会は少なかったものの、実はみんなが抱えている極めて身近なテーマ性に、国民の目が集まったのは、ある意味当然の結果なのかもしれない。
子供1人で年間30万円オーバー 専業主婦は増税も…
民主党の少子化・子育てに関連する政策をあらためて確認してみよう。
まずは最も注目を浴びている「子ども手当」。
現行の児童手当は、月額で3歳未満が1万円、3歳以上は第1子、第2子が5千円、第3子以降は1万円で、小学校を卒業するまで支給される。支給を受けるに当たっては、所得制限もついている。
一方、民主党の打ち出す「子ども手当」は、所得に関係なく、中学校卒業まで子供1人当たり月額2万6千円、年間31万2千円を支給するというものだ。
現行38万円(10月以降は42万円)の出産一時金については、55万円に増額。さらに、公立高校生の授業料を実質無料化し、私立高校生には年12~24万円を助成する-などとしている。
【日本の議論】これまでの連載
開始時期については、出産一時金と公立高の無料化については来年度から実施し、子ども手当は来年度に予定の半額を、23年度からは全額を支給するという。
一方で、妻がパートタイムで働く家族にとって打撃となるのが所得税の「配偶者控除」と「扶養控除」の廃止だ。民主党は2つの控除を廃止することで、「子ども手当」の財源に回すとしている。
その結果、「子ども手当」により、中学校卒業までの子供のいる約1100万世帯のすべてで手取り収入が増え、子供のいない65歳未満の専業主婦世帯では、平均的収入(年収437万円)世帯で年間1万9千円の増税になるという。一方、単身世帯や子供のいない共働き世帯には影響はないと民主党は主張している。
生活援助?少子化対策?成長戦略? 民主党の狙いはどこに
こうした政策はどのような観点から作られたのだろうか。
「『子ども手当』については、構想の段階で3つの点を念頭に作られた」
マニフェスト制作に携わってきた民主党の大塚耕平参院議員は、こう説明する。
「1つは、欧米に比べ、直接給付型の子育て支援が少ないため、それを拡充しようという国際比較の観点。2つ目は少子化が社会的な問題となる中、『子供を社会全体で育てていこう』という理念を実現しようという点。そして、3つ目は、今の若者はお年寄りに比べ、年金制度など社会保障の面で手厚い対応は期待できない。ゆえに世代間不公平を是正する必要があるという点。『子ども手当』は、これらを考え合わせ、社会政策として掲げたものだ」
もっとも、最近は「子ども手当」の効果について、民主党は生活支援や経済対策的側面を強調しているような気もするが…。
「確かに、消費拡大のカンフル剤として有効であることは間違いない」と大塚議員。しかし「成長戦略を意識して作ったわけではないのも事実。たまたま、社会政策面と成長戦略のパズルのピースがぴったりとはまった」とも話す。
一方、大塚議員は配偶者控除について「『奥さんは専業主婦で家庭を守ってほしい』という考え方のもとにできた政策。女性の社会進出を阻むハードルにもなっていた」と強調する。
子供がいる世帯に直接手当を支給することで生活を援助し、消費を拡大する一方、税制面で専業主婦のメリットを取り払う=ハードルをはずすことで、女性が労働力として社会に出ていくきっかけを作る-。
これが民主党の「子育て政策」のポイントのようだ。
【日本の議論】これまでの連載
子供は「産んでる」既婚女性 それでも際だつ「少子化」の原因は…
では、この政策が日本の少子化や子育ての問題を解消してくれるのだろうか。
「子育てに対する手厚い経済支援は、あっていい」。
阿藤教授は、民主党がマニフェストで掲げた政策を評価する一方で、こう指摘する。
「結婚し、出産した女性が社会に出ていくためには、子育てと仕事を両立できる環境づくりをすることが大切だ。民主党の政策は、この点があいまいでぼやけている」
さらには、子供を「産む」という側面では、民主党の政策は大きな効果を与えないとする声もある。
明治大学の安蔵(あんぞう)伸治教授(人口学)は、「子育ての経済的負担を軽減」することで「安心して出産し、子供が育てられる社会を作る」(マニフェストより)とする民主党の主張に懐疑的な見方を示している。
それは「なぜ日本で少子化が進んでいるか」という問題につながるという。
「そもそも、結婚した女性は、以前と変わらず子供を産んでいる」と安蔵教授。日本の特殊合計出生率は1・37にとどまっているが、これは、未婚・既婚を問わない出産可能な年齢の女性が、生涯で何人の子供を産むか、という数値だ。安蔵教授は「1950年代末ごろに『子供の数は1家庭に2人』という『2子規範』ができて以降現在にいたるまで、結婚している女性に限れば、出生率はそれほど大きな変化は見せていない」と指摘する。
【日本の議論】これまでの連載
少子化・子育て議論の本質は「国家」や「社会」の在り方議論
実は「結婚さえしてしまえば、高度経済成長期とほぼ変わらない出生率が保たれている」という現状。このことは、いくら「子育て」の援助をしたところで、少子化を食い止めることはできないことを意味する一方、少子化・子育て問題の“本丸”は、「未婚者に、どうやって結婚してもらうか」にあることも示している。
では、なぜ現代社会では、未婚化・晩婚化が進んでいるのか。
「背景にあるのは、現代の女性の考え方や生き方」と安蔵教授はいう。
女性の高学歴化に伴う社会進出や経済的自立、結婚後の就業継続希望…。こうした価値観や行動を受け入れ、それに適応した社会システムや家族の在り方を容認するのか、伝統的な価値観に重きを置き、これまでの女性の生き方にこそ幸福があると考えるのか。
安蔵教授は「少子化や子育てを考えるということは、国家や社会の在り方を考えていくことに他ならない」と強調する。
現状はどうか。
「結婚や出産でキャリアを断たなければならないのならば、結婚や出産を延期したり、あきらめることを選択肢とする女性が増えるのも自然の流れなのではないか」と安蔵教授はいう。
【日本の議論】これまでの連載
子供を育てるのは社会?家庭? 振り切れない日本社会の難しさ
では結婚・出産後も自分のキャリアを捨てず、フルタイムで働きたいという女性はどうしたらいいのか。
夫婦で仕事をしている間は保育園を利用することが多くなるが、待機児童が多い状況下、特に都市部では子供を預けるのも一苦労だ。職場に復帰しても、男性と同じ立場に戻れるとはかぎらない。男性同様一生懸命仕事をしようと思えば、保育園が終わる時間には帰れなくなってしまう。
頼る先として浮かんでくるのは、夫もしくは妻の両親となってくるが、核家族化が進んだ社会で、親の世代が孫の面倒をみることが可能な世帯はどれぐらいいるだろうか。そもそも、夫婦ともどもフルタイムで働こうとする夫婦が、かつてのような3世代がともに暮らす「大家族」で暮らすことを望むのだろうか。
そう考えていくと、民主党が掲げるように「社会で子供を育てる」ためには、まず国家や社会の在り方を考えていくことが必要であることが分かってくる。
北欧諸国では、女性が1人でも子供を育てることができるだけの手厚い社会保障制度がある。まさに“国が子供を育てる”社会だ。
一方で、日本は「子供は家族で育てる」という伝統的な価値観も根強い。
「自分が教えている男子学生の多くも『家に帰ったら電気がついていて、みそ汁の香りがする家庭がいい』という」と話す阿藤教授はこう続けた。
「現在の日本では、どちらの社会に振り切ることも難しいだろう。多様化する社会ゆえ、政権政党も、いろいろな層に受け入れられようと思えば思うほど、方向性はあいまいにならざるを得ない」
さて、あなたは、どのような「社会」の在り方を望みますか-。
産経新聞より
全体的には多くのコメントはありませんが
> 一方、民主党の打ち出す「子ども手当」は、所得に関係なく、中学校卒業まで子供1人当たり月額2万6千円、年間31万2千円を支給するというものだ。
一つ抜けていることがあります。所得だけでなく
国籍も関係なく
出すということです。
> 現行38万円(10月以降は42万円)の出産一時金については、55万円に増額。さらに、公立高校生の授業料を実質無料化し、私立高校生には年12~24万円を助成する-などとしている。
まず、財源はどこにあるのか、それから私立高校には朝鮮学校も入る可能性があるわけですから。
> 一方で、妻がパートタイムで働く家族にとって打撃となるのが所得税の「配偶者控除」と「扶養控除」の廃止だ。
専業主婦だけではありません、年老いた親を引き取った家庭も対象ですから。
> 平均的収入(年収437万円)世帯で年間1万9千円の増税になるという。
信憑性がありません。どう考えてもそれ以上の増税になります。1万9千円の増税でどうやって2万6千円の子ども手当が出せるのか。
単純に考えても2万円する物を1万円で正規のショップで買えるでしょうか。
> 『奥さんは専業主婦で家庭を守ってほしい』という考え方のもとにできた政策。女性の社会進出を阻むハードルにもなっていた
本当にそうでしょうか?先の記事にも書いたように産休を取ってもやめざる負えない(産休、育休の形骸化)から専業になったケースも多々あるのでは。
> では、なぜ現代社会では、未婚化・晩婚化が進んでいるのか
> 「背景にあるのは、現代の女性の考え方や生き方」
所謂、スイーツと言われてる人間が増えてるのではないでしょうか。
一定の所得、安定した職業、見た目、その他もろもろが要因し、条件ばかり高くしている女性が増えているのも一つの原因ではないでしょうか。
それ以外としては派遣や期間労働が増え、安定した収入を得られない構造になったことも起因しているのではないのでしょうか。
それから、民主党は何かと欧米を引き合いに出しておりますが
「1つは、欧米に比べ、直接給付型の子育て支援が少ないため、それを拡充しようという国際比較の観点。2つ目は少子化が社会的な問題となる中、『子供を社会全体で育てていこう』という理念を実現しようという点。そして、3つ目は、今の若者はお年寄りに比べ、年金制度など社会保障の面で手厚い対応は期待できない。ゆえに世代間不公平を是正する必要があるという点。『子ども手当』は、これらを考え合わせ、社会政策として掲げたものだ」
他国はわかりませんがフランスを例にして取り上げます。
フランスの場合は
1)児童手当
2)乳幼児迎え入れ手当
3)家族手当
4)新学期手当
5)その他もろもろの手当(学校が無料等のその他の支援)
これだけ見たら、なんて手厚い国なんだろうって思いますよね?
もちろん財源はありますよ
所得の収入の45%が税金に消えますが何か
それ以上に雇用者側も
労働者の倍以上(最低2倍、最大4倍近く)に徴収されるのですから
だからフランスに工場や企業を建てようとするのを嫌がるんですよ。
それでいて、低所得者には配分しなければいけない、最低賃金も守らなければならない、社会保障費は高い、いろいろ制約があるんです。それだからフランスで作るよりもフランス以外で作ったほうがいいと逃げるわけなんですよ。
単刀直入に言うと、民主党が行おうとしている、子ども手当の等を行った場合、あらゆる面での増税は免れられないわけなんです。
それが国民一人一人にかかってくるか、企業にかかってくるかの違いがあれど、絶対に
増税は避けられないのです
しかも今のフランスの場合最低賃金では
食っていけません。
それだけ高いんですから
欧米の直接支給を行おうとしたら日本経済の停滞は免れられません。結局どこかで払わざる負えないんです。
増税もなく、赤字国債の発行も抑えて、子ども手当や助成金なんてありえないんです。
福祉を向上したければ増税、収入を優先したければ福祉を下げるしか、鳩政権の言っていることは
夢物語なんです
夢を実現させようという心意気は良いのですが、現実的には
不可能なんです
そろそろ、現実を見ないと、後々もっと大変なことになりますから。