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2012年02月24日

多重炎上事故・それからのドス黒いドラマ

多重炎上事故・それからのドス黒いドラマ  封印されていた「秘められた映像」を、確かに解凍できたのではなかろうか。あれだけ「中継録画」にこだわっていた中部博さんにも、直接に見てもらうこともできた。それでも、もう一つすっきりしない。要するに消化不良なのだ。そこで次に動き始めたのが、国立国会図書館に赴いて、マスコミの反応を検証する作業であった。

 実は、6月3日の各紙の報道ぶりに触れる前にとりかかったのは、あの映像はその内容からいって、間違いなく12チャンネルから放映されたものであるのは疑いようもない。それなら2週間後の「テレビ・ラジオ欄」を洗ってみればいいではないか……。そしてそれは確かな痕跡として残されていたのだ。



 1974(昭和49)年6月17日の「朝日新聞」朝刊。テレビ番組表の午後8時の欄。東京12チャンネル。54分間の枠で《富士グラン300キロスピードレース「グランチャンピオンシリーズ第2戦」解説・田中健二郎 辻本征一郎》とあった。加えて、すぐそばの別枠で、内容紹介まで、丁寧に用意されている。

――去る1、2日の両日、静岡県の富士スピードウェイで開催されたレースの模様を、1日の予選と2日の決勝の前半を中心にフィルム構成で送る。
このレースの決勝日2日の後半レースで、若手人気レーサー風戸裕とベテラン鈴木誠一の両選手がスタート直後のアクシデントで事故死した。

 これではモータースポーツファンのみならず、事件の匂いを振り撒く出来事として、あの炎に包まれた惨劇が茶の間の話題をさらってしまったのも、当然の成り行きといえた。



 このテレビ放映の前々日、東京・青山葬儀所で風戸裕選手の葬儀がしめやかにいとなまれ、人気レーサーの死を悼んで3000人を超す会葬者のあったことが報じられた。その上、7月7日に開催できるかどうかが危ぶまれていた富士グラチャン「第3戦」の中止決定のニュースも加わって、改めて「多重事故」が注目されてしまう流れが読み取れた。

 空気は悪い方向へと流れていた。この葬儀に出席しようとした黒沢元治選手に対して、一部の選手グループが、お前なんかくる資格はない、と門前払いをしようとした話も伝わっている。それほどまでに同じレーシング・ドライバー同士が憎悪の牙をむくとは!



 その憂うべき状況を、すでに事故の翌日という早い段階で、それも「報知新聞」第1面のど真ん中のスペースに、中島祥和記者が署名入り原稿を書きあげているので、ぜひご一読いただきたい。それは、このあとの「黒沢元治・魔女裁判」の背景を読み取る上での、一つの参考材料としていただきたいからである。

●〈異様な高ぶり〉レーサーは知っていた   中島祥和(前パリ特派員)

 1年ぶりに富士スピードウェイへやってきて、私はレーサーたちの異様な高ぶりを奇妙に感じた。F1、スポーツカーなど、ヨーロッパのレースとは明らかに異なったムードだった。第1ヒートの激戦と、チェッカーフラッグを受けた後まで尾を引くレーサーたちの興奮。F1レースでは決して感じられない異様なものである。
「おっかないよ。もっと走る方で考えなきゃ」(生沢)「ヘタすると殺しっこみたいになっちゃう」(黒沢)「フェアプレーの精神がないと、レースほどおっかないものはない」(高橋)これは事故が起こる前の談話である。レーサーたち自身が、ある種の危険性をすでに予期してコースへ入っていたと考えられるのだ。

 案の定、第2ヒートのスタートは、いわせてもらえばあまりにも“ムチャ”な競り合いで始まった。ペースカーが遅いとか・車の隊列が乱れているとかが、もしあったとしても、スタートの危険性をドライバー自らが意識できなかったとすれば、それはもう自滅といわなければならない。

 つい最近、私はF1のスペインGPを見た。雨のスタートだったが、走り出したとき彼らはちょっと拍子抜けするほど間隔をとって走った。スポーツカーのル・マン24時間で、同じF1のフランス、ベルギー、オランダGPでも、世界のトップレーサーたちは抜きにかかってくる車には道をあけて先に行かせ、もし相手の進路を防ぐにしても、スピードの落ちたコーナーに限る。これはトップレーサーとしての当然のマナーであり、常識であり無言の約束である。

 それでも事故は起こる。ことにスタート直後は危険なので、スタート方法も最も安全といわれるローリング方式に次々と切り替えられている。
 しかし、スタート直後、各車がいっせいに加速している最中、トップグループが先を争って“ぶつかり合い”まがいの行為をしたのでは、いかなるスタート方法も無力だろう。日本のドライバー個々の腕が悪いというのではない。

 しかし、レーシングマシンのもろさ、そのスピードによる危険性。なによりもレースは一人で走っているのではなく、ことにスタート直後には“直接の争い”とは無関係の多くのレーサーが続いているということを再認識しない限り、日本のレースは永久に進歩しないだろう。

 昨年10月、アメリカGPで死んだフランスの名手、F・セペールはこういっていた。「スピンしたら、あとは神様に祈るだけ。始まったら安全と勝つことを考えるだけ」その用心深い男ですら、無言の約束を守りながら死んでいたのである。
* *    *                        
スポーツ新聞としての使命を果たすべく『報知新聞』は、どこよりも、この多重事故報道に、紙面を割いていた。6月3日の第1面は、この中島レポートと事故の詳細で埋め、第2面で事故死した両選手の紹介と関係者の談話で、記事の内容をさらに濃いものに仕立てていた。
たとえば、安友競技長から、こんなコメントをひきだしている。
「第1ヒート(午前)以来、ドライバーの諸君がエキサイトしているようなので、第2ヒートはペースカーに隊列が乱れるようなら、スタートまでローリングを2度してもいいと伝えておいた。1周したとき隊列は第1ヒートの時よりはるかに整っていたが、さらに慎重を期してもう1周させた。その数秒後に事故が起きてしまった。私としては発生当時、直線なので火は消せる、ドライバーも安全だろうと信じていたのだが」



 さらに7番ポストの橋本主任のコメントまで用意していた。
「2台の車がもつれ合うように左サイドいっぱいを走ってきた。ナンバーを確認しようとして下を向いて再びコースを見たとき、事故が起こっていた。1台が火を吹き、つづいてもう1台とび込んで、あとはわからない。ベテランなのでコースからとび出すとは思えなかった」

 月が替わって、「朝日」が動き出した。静岡県警が黒沢選手を業務上過失致死傷の疑いで、静岡地検に書類送検すると「スクープ記事」を書いたのである。
 
 自動車レースの事故で刑事責任を追及するのは、わが国ではじめてのことだった。
                      (以下は次のアップで)
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Posted at 2012/02/24 03:01:34

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この記事へのコメント

2012年2月24日 8:36
こんにちは

報知新聞の記事は、凄いと思います。
紳士たるF1とがむしゃらな日本レース、それだけの違いがあったのですね。

でもいまの日本に足りないのは、後者の「がむしゃらさ」というのも皮肉な感じがします。
コメントへの返答
2012年2月24日 10:25
こんにちは。いつも、コメント、うれしく受け止めています。

この中島さんの記事と併せて、9月13日掲載の「嬉しい伝言・吉田匠記者の現場報告」を関連情報URLに入れておきましたので、よんでいただきたいですね。

お説、同感です。
2012年2月24日 12:29
テレビ欄を見て驚きました。
なんとゴールデンタイムの放送だったんですね。
てっきり日曜昼下がりくらいの放送だと思ってました。

当時の大衆娯楽としてのカーレースの位置づけ度合いをうかがい知ることが出来ます。
そこへ前年に続けてのこのアクシデント、大きな衝撃だったことが容易に想像できます。
コメントへの返答
2012年2月24日 12:49
つい先日、あるドライバー(第2ヒートには出走していません)から、中野雅晴選手が30度バンクで事故死したときの模様を、リアルに聞くことができました。その時の教訓がほとんどいきてなかったこと。問題の核心が見えてきて来ますね。
2012年2月28日 11:40
当時高校一年生でバイクやカートにしか興味なかったので、事故事件には殆ど興味有りませんでした。
以降、親父(健在)兄(死去)その仲間及び当時そのレースに御参加されて居られた方々からわたくしが後日レースをやる年齢18歳に成ってから聞いて居た内容と正岡さまの検証は大きく異なっています。
わたくしが親しくさせて頂いて居た方々のカラーも大きく異なって居たとも思いますし、対側の大御神の神様はそう言う次元には多分永久にノーコメントでしょうし。
流石に今更老齢期に入った彼らに聞くことは出来ない芸当です。
また少々当たっても今更どうでも良いと言う感じでした。
真理は真実を超えるのか否か?? 
コメントへの返答
2012年2月28日 12:02
ブログ1回1回の内容はおろそかにできませんが、ぼくが大事にしているのは大きな流れがどの海に注ぎ込まれていくのか、という視点です。

もう少し、時間をかけてお付き合いください。

スペシャルブログ 自動車評論家&著名人の本音

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「突貫小僧の3番森下のまずい面が露呈して延長11回、2死満塁をものにできず巨人にしてやられた。勝負は8回裏の同点無死満塁で打席に立った森下が力みすぎて、自打球を左膝上にあて。なんとかで席に立ったのはいいが³三塁ゴロ併殺で好機の芽をつで9回で退場、その結果11回の逆転機に不在。残念!」
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1959年、講談社入社。週刊現代創刊メンバーのひとり。1974年、総合誌「月刊現代」編集長就任。1977年、当時の講談社の方針によりジョイント・ベンチャー開...
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