〜ああ、『音羽の不夜城』時代が懐かしくなってしまう〜
「140字の日記」として愛用している3月1日付けの《何シテル?》で「さてブログにとりかかるか」と前置きしたのはいいが、テーマをHot-Versionの《群サイの乱》にしようか、それとも《軽自動車》にとりかかろうか、と決めかねていた。その時、ひょいと目に止まったのが、まだ封を切らないまま放置していた(株)講談社ビーシーからの「飛脚メール便」である。
表書きに、何やら、メッセージ・シールが貼られている。「ベストカー編集部」からだった。
「いつも大変おせわになります。ベストカー3/26号(2/26日発売号)見本誌・掲載誌お届けの件。先週14日の雪による配達の乱れ・影響が続いております。ベストカー3/26日号は一部の地域でお届けの遅れが予想されます。大変申し訳ございません」
ああ、そうだった。そんな大変な時期を乗り越えて、手元にやって来てくれたのに、何という迂闊な取り扱い。「ご免ね」と詫びながら、ハサミをいれる。
取り出した「ベストカー」は相も変わらず、タイトルばかりが賑やかに並ぶ表紙レイアウト。誌名のド真ん中に『トップ誌独走中!!』と嗾(けしか)けているその下品さは、「創刊以来の悪しき伝統か?」と苦笑いしつつ、目次替わりにずらりと並ぶタイトル群に目を通す。
「新車維新」と銘打った特集で、まずTOYOTAのコンパクトスポーツや、一時凍結されていたスープラの後継車の進行状況を教えてくれるらしい。
お! そのすぐ下に『eKスペース&デイズルークスの挑戦状』のタイトル。ありがとう、それは必読ものだ。さらに目線を下へ送ると、ありましたね、お楽しみ企画『水野和敏激辛試乗』。今回は「日米欧のクルマ作りの違いを語る」とある。どうやら2月4日の大磯ロングビーチでJAIA(日本自動車輸入組合)が主催した輸入車試乗会に殴り込みをかけた模様。これも楽しみだ。
そして右下の1行、『社長交代で三菱は変わるか?』はどこまで斬り込んでいるか、お手並み拝見……そんな気分で、浮き浮きと表紙をめくると、広告料を相当に張り込まないと確保できないはずの「4色カラー前ページ」の見開きで、星野一義主宰の『IMPUL』が、独自に開発したホイール、エアロパーツを、マーチからエルグランドまでを新車の時点で装備したコンプリーバージョンでお届けします、と胸を張っている。
ツンと目頭に熱く来るものがあった。星野一義という熱い男との長い交遊の記憶が去来する。そうだ、この4月6日の「スーパーGT」第1戦で岡山国際へ行く。その時、ピットに逢いに行こう。そう心に決めて、さらにページをめくる、と……。
『スーパースクープ 新情報次々入手!! トヨタの秘密!!』
開発呼称は950A。ソアラが復活するらしいが、詳しくは、ベストカーをお読みいただくとして、10速AT&20インチブレーキ採用、といった見出しは躍っているものの、目を剥くような「スクープ写真」はなかった。しかし、各ページは、間違いなく躍動感に満ちている。
カラーページの第2特集は『春の新車まつり』として、お目当ての三菱eKスペース/日産デイズルークスを割りと丁寧に紹介したあとで『三菱と日産による発表会の“温度差”』を見逃していないのが気に入った。この特集、さらに日産ティアナ、三代目BMWミニの試乗記とつづくのだが、心は活版ページの展開がどうなっているのか、そちらに移っていた。
いわゆる活版トップ記事。『今年6月エース登板!!』と前置きして、三菱自動車が完全復活を目指して、生え抜きのプリンスであり、初代のトッポやeKワゴンの開発を手がけて来た相川哲郎常務を抜擢する社長人事を持って来ている。書き手は経済ジャーナリストの福田俊之。面識はないが、丁寧な取材ぶりのうかがえる書きっぷりに好感がもてた。
今度の「社長」は「もともと三菱自動車は三菱重工業の自動車部門から分離独立した会社だが、相川氏の父親はその三菱重工の社長、会長を歴任した相川賢太郎氏。原動機畑一筋でクリーンな代替エネルギーとして脚光を浴びる地熱発電プラント開発の第一人者。その父親の背中を見て育ったせいか、東京大学で船舶機械工学を専攻。三菱自動車には、当時のギャランシグマ/ラムダの新車をみて、カッコいいクルマを出す会社という理由で入社を決めた」と、紹介したところで、「リコール隠し事件発覚後、仲間のエンジニアが大量に会社をさる中、ダイムラー傘下で開発中のi(アイ)に停止命令が下った時も、〈開発コード〉を変更して極秘裏継続。誠実で物静かな性格だが、あの時、中止していたら電気自動車のi-Mievも作れなかった、など、技術者魂を燃やすエピソードも数多い」と書き上げ、カーガイの喜ぶツボもよくご存知である。
中綴じ雑誌のセンター部分は、パッと開き易いので、編集者の腕の(いや、頭かな?)見せ所である。で、パッと開いてみる。えッ!『マニアック・カークイズ』か。まだつづいているのか。
その対抗ページで、見慣れた顔が、こちらに向かって親指を立てている。
最新版・新テスターによるリニューアル第2弾 音羽ニュル周回コース/乗り心地テスト GT-R新旧比較 レーサーの大井貴之がテスト!
ほう。これはじっくりと読まなくっちゃ。大井君の紹介もしっかりやっている編集部の気配りも嬉しい。
————読者のなかには新テスターをご存じの方もいるかもしれないが、この大井氏,実は元ベストカー編集部員。当時は、クルマで走る仕事や面白いと思った物事はとことん追求するが、会社では寝てばかりという問題児で《タコ》の愛称で親しまれていた。が、その後は趣味のレース活動が高じて、現在はレーサー、そして超人気のドライビングインストラクターとして大活躍。まさに乗り心地の評価にも確かな技術を持つプロドライバーというわけなのだ。【正岡註:大井君の北米・デスバレーや冬の士別を舞台にしたスクープ武勇伝をいまの編集部はもうご存知ないのだろうか】
乗り心地をテストするコースに『音羽ニュル』を登場させるのも気に入った。東京・文京区の編集部の裏手にある小日向台地を上がって、お茶の水女子大の前の道から下って、音羽通りを横切り、大塚警察署の脇の上り坂を抜けて目白通りに出たら、編集部方向へ椿山荘を右手に見ながらS字の坂をくだる1周約1.5kmのルート。
かつて、わたしの「物差しテストコース」として「ベストモータリング」の映像でも紹介したことのあるルートを、大井君が、まず日産GT-Rの新しい2014年モデルと旧型を乗り比べることからはじまっていた。一読。まるで大井君のナビシートの乗っているような臨場感と、わかり易さ。
————GT-Rは6年の歳月をへて、「辛さが人気のカレー」から「辛くて、しかも旨いカレー」に進化。コクが出たって感じだね。GT-Rを進化させるために見つけた黄金のレシピは、近い将来、日産車全体の性能をアップさせるに違いない。
ふ、ふ、ふ。大井君、褒め方も巧くなったものだ。そのあと、人気国産HVからVWゴルフのTSIトレンドラインで「音羽ニュル」を攻めているが、なかなか辛口が利いていて、読み易かった。

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*1個、160円。甘いのが苦手の向きには豆板餅がお薦め。塩味の小豆が餅となじんでいて、小生、大好き。
さて、この項の締めくくり。水野さんの「激辛試乗」はいずれの機会に譲る。その代わり、「音羽ニュル」の途中にある和菓子屋『群林堂』の豆大福を、ベストカー編集部にご褒美として、差し入れることにした。この音羽・群林堂の豆大福は東京御三家の一つに数えられる逸品で、午後2時の売り出しに並んでもあっという間になくなってしまう人気菓子。
久しぶり、音羽通りに行って、「群林堂」を食べながら、その不夜城の兵士たちと、おしゃべりがしたくなった。
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ちょっと一服 | 日記
Posted at
2014/03/04 15:46:41