〜『Hot-Version』大変革への兆しだろうか?〜
届いたばかりのパッケージの封を切る瞬間が、たまらなく好きだ。
iMacの PCに接続してある再生機に、新着のVOL.141のディスクを吸い込ませ、ルーティンのオープニングシーンを愉しむ。ヒュルルとスターターがまわり、エンジンが目を覚ます。続けてウィーン、ウィーンとレーシング音が……。そして、ナレーションが、凄みをきかせて、こちらの心の昂りに応える。「峠、最強伝説」と。
軽妙なレギュラー3人のおしゃべりと「しもべGAL」とのじゃれあいで空気を軽くしたところで、画面は本題ヘと導かれる。
磨き抜かれたマシンたちよ 峠を制せよ!
あいつより踏み切れるか! あいつよりもっと先へ!
奪うは その称号のみ 『峠の魔王』
新たな幕を開ける TOUGE最強伝説
その刺客が早くも登場!
魔王狙いマシンテスト!
限られたセッティング時間で 歴代の区間ベストに どれだけ迫れるのか!
だれが書き上げたキャッチコピーか。ビートの効いたリズムと、テンポのいい映像と一つになって、おお、いつものように気分が盛り上がる。期待が膨れ上がる。そこへ、あの伝説のチューナーが、20インチのRE71タイヤを搭載するR35 GT—R(2011 Model)を投入して、峠に初挑戦するという企画だ!
Mine’s代表、新倉通蔵! なんとも懐かしい顔とマシンである。1995年ころからBMを舞台として筑波サーキトでしのぎを削ったチューニングカーバトル。その時の正統派チューナーとして評価の高かったあの人が、登場してきたのだ。
20年も経つと、すこしばかり頭頂部が薄くなったのは、お互いさまだろう。腕組みしたまま、ゆったりと語りかける。
「峠なんかを走る場合には、あまり大パワーだとやっぱり持て余してしまう。一般路のチューニングとしては、その手本みたいな感じで、ハイレスポンスのタイヤで、うちの3.8ℓのままのコンプリートエンジンを積んだGT—Rできましたが、どのくらい走れるか? 最初なので、ちょっとどうなるか、という心境です」
と、素直に不安を隠さない。
敬意を表して試走はドリキン土屋から。いきなり踏んでいる。疾い!
「怖いところがないね、このクルマ」
それが最初の印象だった。ナレーションが呼応する。
「峠では、(それが)もっとも重要なファクターだ。怖さがあったままでは、ドライバーはタイムを削りにはいけない。GT-Rの歴代ベストは、MCRの出した25.682。これにどれだけマインズは迫れるか」
初めての走行で、土屋が26.167秒をマークして帰ってきた。
開口一番。
「これは、慣れれば攻め切れるよ、このクルマ。硬いんだけど、信用できるね」
つまり、硬いけれどタイヤが路面から離れている時間が少ないから、安心して攻められるということだ。
「まだ様子見していっているけれど、乗りやすいよね。何回でも攻めたくなるクルマだね」
そばで少し安堵の表情をみせる新倉代表。続けてマインズGT—Rでコースインする織戸学。さきごろ失態を演じた例のコーナーを抜ける。「よく曲がるね」とハンドリングのよさを認めながら、あっさりタイムを25秒台に入れてきた。
3人目、谷口信輝の評価も、似たものになる。本質のしっかりしたものは、そうなってしまう。タイムはMCRに迫る25.732をあっさりマークする。
「速ェぞ、これ。いいね、これ。物凄くいい、これ」
初めての群サイでこの走りだ。マインズ、恐るべし! ナレーションも絶叫する。GT—Rから降りてくると、興奮を隠さない。身振り手振りで、インプレッションを伝えようとする。
「どの領域でも、ともかく、走りながらでも、いまタイヤが、こういう風に荷重がかかって、いまこういう風に頑張っているというのが目に浮かぶ。とにかく35GT-Rなのに、すごく楽しく、群サイを走れる」
群サイに新鮮な戦慄が駆け抜けていた。
カメラが新倉代表に移って、締めくくる。
「(これまで群サイに)来たくなかったわけじゃないんだけど、ちょっと遠のいていて、はじめてになったんですね。今日は気温も高かったし、路面温度も高かった中でしたけど、それがよかったのかな、みんなに褒めてもらえたし、ま、峠というもののデビューというかたちで、ちょっと衝撃的でした。ありがとうございました」
Mine’sと新倉通蔵さん、いい味をしているね。このところ、「峠の魔王」シリーズも過激な軽量化とパワーアップがヒートしてきて、この先の展開が憂慮されていた。そこへ登場したオーソドックスな正統派チューニングで、かつて頂点を極めたレジェンドのマシンが、このステージでどんなものだったか。
答えは3人のドライバーが、声をそろえて「怖くない。安心して踏める。タイヤがいま、どんな状態なのか、目に浮かぶ」と絶賛しているこの情景。
記憶力のいい「ベスモ・ファミリー」なら、すでにあの頃を想い出しているに違いない。1995 年6月号、そう「R33 GTR チューンドBATTLE」と銘打ち、頭から尻尾まで、黒澤元治を筆頭に、中谷明彦、土屋圭市、服部尚貴、黒澤琢弥、桂伸一、大井貴之の7人のキャスターが総出で、各チューニングショップから持ち込まれたR33 GTRを、徹底的に検証したあの号である。
バトルでは結局、Mine’sの32GTRがガンさんのドライブで制し、桂コボちゃんのMine’s 33GTRが2位となったように記憶している。
チェッカーフラッグ振りが私の役目だったあの時代……なぜ急にそこへ回帰しようとするのか。そうだ、それをもう一度鑑賞してから、次回にその意図するものを、お伝えしたい。
ブログ一覧 |
ホットバージョン | 日記
Posted at
2016/08/20 23:49:18