〜たまにはマニュアルのクルマで走りたいね〜
ひと頃、みずからに課した「自粛」の鎖から解き放たれたSUZUKIがえらく元気じゃないか。年末に発表し、1月4日から発売をはじめたスイフト(全面改良)の特別試乗ミーティングを、幕張でやるので来ないか?と誘ってきた。
1月27日はそのため、ほかのことはすべて断って、それに備えた。提示された3つの時間帯から、真ん中の「午前10時20分」からの枠を選ぶ。
さて、幕張まで、8時から9時台に都心を抜けて、首都高速湾岸線から東関東自動車道にはいるコースは、時間が読めない。それならば、いっそ電車を利用するならどうだろうか?
ここからは、ご一緒に「試乗ミーティング」に同行している気分でおつきあいいただけるよう、レポートしてみたい。
当日の朝は、強い北風が吹き抜けていた。最寄りの駅まで首をすくめて早足で……。8時01分発の新木場方面行きに乗れば、有楽町下車、元は都庁が建っていた国際フォーラムにつながる地下道を利用すれば、東京駅からのJR京葉線にはすんなり接続できる。9時10分発の快速は、海浜幕張駅に9時44分に着く。これなら充分、余裕たっぷりだ。

7時55分には通勤、通学の人たちにまじって、駅のプラットホームに。なんと、シニア優先席が空いている。遠慮せずに利用させていただこう。
読みかけの新書版を取り出す。『松本清張の残像』(文春新書)の著者、藤井康栄さんは週刊文春の女性編集者で、同時代に同じように松本清張という巨星を担当し、今では北九州市立松本清張記念館の館長を務めておられる。清張さんの声が耳元に甦ってくるようなエピソードの数々にのめり込みそうになって、はっと気づくと、電車は「桜田門」を通過したところだった。
次の駅、有楽町から真っ直ぐ東京駅のもっとも西側にもうけられたJR京葉線の改札口を目指す。
「快速なら、急げば8時52分発にのれますよ」
海浜幕張に快速は停まりますね、と念を押すと、改札口に立っていた駅員が一本前に同じ快速のあることを教えてくれる。到着は9時30分だった。15分ばかりを得をすることになるのだが、これが予期しない幸運をもたらせてくれる。
あっという間の30分。車窓の右側に馴染みのある建物群が現れた。幕張メッセだ。その向こうにチラリと円形のスタジアムが……千葉ロッテの本拠、マリン球場じゃないか。
さて、海浜幕張着。この駅に降り立ったのは初めてのはずだ。試乗ミーティングの基地、幕張ホテルニューオータニを目で探すと、駅前ロータリーから海側にむかってすぐ左の、のっぽホテルがそれだった。隣接する駐車場スペースの奥まったあたりに、カラフルな小型車がズラリと整列して出迎えてくれる。家を出てから、まだ2時間は経っていない。
広報の神原課長が手招きしている。傍らにブラックのNEWスイフトRS。ハニカムメッシュ造形のラジエータグリルと赤いラインの面構え。
ピンときた。特別に用意してある5速マニュアルシフト装着車に違いない。
「第2グループは10時20分からです。よかったら、それまでこれでその辺を一回りしてきますか?」
遠慮なく5MTのRSに乗り込む。
エンジンをかけなくてはならない。最近のMT車はTOYOTAオーリス以来だろうか。エンジンスターターを押す前に、しっかりクラッチペダルを踏みこみ、同時にブレーキペダルも。そしてスターターボタンをプッシュする。
と、一瞬の間を置いて、RSの1.2ℓの自然吸気エンジンが歓迎のエールを送ってきた。
レーシングすると、結構、男っぽいバリトンの喉を震わせて、さあ行こうか、とこたえてくれる。
5分後、幕張メッセ脇の3車線通りを海岸方面へ左折すると、スルスルと白バイが追走してくる気配。仲よく次の交差点まで3速ホールドで併走することにした。
次の交差点で、白バイは左折する。こちらは右折して、海岸沿いの長い直線道路を3→4→5と、ゆったりシフトアップしながら、ギアの感触と、ペダルワークの連関を楽しむ。足元の踏ん張りも好ましい。おお、久しぶりに手と足と目が一体化してドライビングしている。いつ以来かな?
その瞬間、思い出した! アルトワークスの5速MTがあったじゃないか。それが、まるでVWゴルフの味つけを移植したかのように、ひと回り成長して逢いに来てくれたような、親しい感覚……。加えて、足元の空間にゆとりが感じられるのはなぜだろう? 多分、開発陣も出席するだろうから、確かめたいな。
*1,2ℓ DOHC 吸排気VVT メーカー希望小売価格(消費税込み) ¥1,594,080
基地に戻ると、ミーティングの開始時間が迫っていた。
「どうでしたか?」
と、神原課長。
「うん、ステージが長尾峠ルートだったら、もっと楽しかっただろうね」
こちらの答えにニヤリと破顔すると、プレゼンテーション会場へ誘導する神原さん。そうか、本番はこれからだった。
新型スイフトの商品説明は、スライドによるプレゼンテーションに譲ろう。率直にいって、インドからの『帰国子女』バレーノで開発したプラットフォームをやや短縮して採用、グローバルコンパクトカーとして改良・進化(大胆な軽量化など)させたのが今回の「新型スイフト」だろう。それはそれでいい。ともかく、実車で外へ飛び出し、味見させて欲しいよ。
【註:バレーノについては
《『帰国子女』を乙女峠のワインディングに誘う》をご参照ください】
まず、今回の「目玉」であるHYBRID RSを予約しておいた。1.2リッター直4+マイルドハイブリッドシステムと、すでに「バレーノ」に搭載されている1リッター直3ターボ仕様(ただしレギュラーガソリン仕様に変更済み)の2台。いずれも欧州で足腰をチューニングしたRS系だとか。
与えられた時間は70分。ともかく東関東自動車道にのって、成田方向を目指そう。四街道ICあたりで降りて、そこから引き返せばちょうどいい。時間によれば、佐倉の古い街なみに足を伸ばせるかも知れない。
*佐倉郊外にて HYBRID RS 1.2ℓ DOHC 吸排気VVT(マイルドハイブリッド)2WD CVT ¥1,691,280
基地から幕張の街へ出た。最初の交差点で停止して、「おや?」と気づく。アイドリングストップ機構が搭載されているのだ。そうか。マイルドハイブリッドにはそれが採用されているのだ。いろいろと「運転支援」装置もオプションされているみたいだが、それだけ、SUZUKIのこのフルモデルしたスイフトに託した想いが感じとれるではないか。
いよいよ、高速自動車道に入る……。ご機嫌な時間が待っていた。
(この項、つづく)
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還暦+青春の21歳 | 日記
Posted at
2017/02/01 16:08:11