~「岡山国際・開幕戦」&「ベスモ同窓会」への道②
4月28日。ひとひらの雲が、はかなげに、西の空に漂っていた。それが10分ほど経つと、どこかへ消えてしまって、光に満ちた、雲一つない日曜日の朝がはじまっていた。
午前9時。西に向かって開かれている仕事部屋の窓辺に立つと、心は富士山麓の、あのサーキットへ飛んでしまう。今頃、ピットで待機している各車のエンジンに火が入って、ウォーン、ウォーンと吠えはじめたに違いない。そして最終コーナーの向こうに、むき出しの富士の霊峰が顔を見せていることだろう。
岡山国際での開幕第1戦の予選は、激しく吹き付ける雨の中の走行となり、コースアウトする車両が続出し、赤旗中断が3度も出され、そのままQ1セッションが終了してしまう大混乱ではじまった。それに比べて、この第2戦を、なんの屈託もなく、晴れやかに迎えることのできる至福。9時からはじまった公式練習走行にも、さぞかし熱が入っていることだろうし、サーキットに足を運ぶファンにとって、この好天がなによりのご馳走なのだ。
公式予選の開始は午後2時からだという。その模様は、ケーブルTVのJ-Sportsで中継されるのを確認しておいた。さて、それまでをどうやって、おとなしく時間を過ごせばいいのだろうか。
残念ながら、今回の第2戦は、当初から足を運べない予定でいた。3月のはじめに心臓冠動脈の不調が発見され、すぐに入院して施術治療をするよう医師に薦められたのを、4月初めの「スーパーGT 2013開幕戦」と「ベストモータリング同窓会」だけは外せないからと先延ばしにしたこともあって、4月29日からの入院はもう動かしがたいスケジュールとなっていた。
それが26日の深夜、入院予定の病院から緊急の電話が入った。頼りにしている担当の医師からである。大きな手術が入って、30日の施術時間が深夜になるかもしれないので、できれば、こちらの予定を1週間、延ばせないか、と。否も応もない。それで結構です、と応えざるを得ない。ぽっかり、わたしのGW中の予定が空いてしまったのである。心構えをしていただけに、スウーッと力が抜けていく……。
ちょうどいいじゃないか。「開幕戦」も「ベスモ同窓会」も、詳細をまとめて報告するといいながら、まだその約束を果たしていない。ひとまず初日の、雨の中の公式予選が始まる前の模様から、取り掛かることにしよう。
4月6日。挨拶に立ち寄った「LEON」レーシングチームのビニール張り天幕のなかで、ガンさん監督から、予選の方式が変わったことを教えられた。
LEON SLS AMGがエントリーしている300クラスは 全台が出走するQ1(15分間)と、Q1の上位13台のみが出走できるQ2(12分間)でスターティンググリッドを決定する2段階のノックアウト方式となったという。(出走台数の少ない500クラスは上位8台がQ2へ)
「だから、Q1はなんとか13位以内にはいって、仕上がり不足のマシンを少しでも走りこませたい」
これがQ1アタックを担当するガンさんジュニア、治樹選手の正直な出走前コメントだった。
公式予選 Q1 14:10~14:40 天候::雨 路面:ウエット。 入場者数 8,000 人。
LEONのチームリリースはこう記録している。
――ノックアウト予選Q1のアタックは黒澤選手が挑んだ。コースインしてタイヤが温まってくると、コースアウト車両により赤旗中断が起こるという繰り返しで、なかなか思うようなタイムが出ない状況が続いたが、1ʼ 49.162 のタイムで11 位のポジションを獲得。無事Q2進出を決めた。最終ラップは、それまでのベストラップで走行していたが、その周も赤旗中断となり記録には残らなかった。さらに良いタイムを出せる可能性は十分にあり、次の予選Q2 および決勝に期待がかかる。
公式予選 Q2 15:45~15:57 天候:雨 路面:ウェット
再び雨が強くなり、予定よりも遅れての走行開始となった。
Q2 は加藤正将選手が担当。コースイン直後にスピンをしたが、マシンにダメージは無くすぐコースに戻りアタックを再開し、1ʼ 47.512 のタイムを出す。上位を狙い、アタックを繰り返すも前を走る車両に引っかかってしまい、それ以上タイムを縮めることはできなかった。
Q2 のセッションが終了し、11 番手のスターティンググリッドを獲得した。
Q2 でのトップとの差は6 秒以上と大きいが、決勝ではポイントを1 ポイントでも多く獲得すべく、チーム一丸となって戦う。
ポールポジションは、Q1最後尾から出たゼッケン61、SUBURU BRZが、トップに躍り出て、喝采をあびた。
*雨の中、その疾走ぶりが注目を浴びたBRZ
4月28日の午後1時半。J-Sportの中継がやっと始まった。そのオープニングシーンは予想通り、富士の霊峰が大写しにされる。定刻の午後2時、公式予選が始まり、PRIUS、CRZ、ポルシェの速さが目立つ。ベンツ勢は、ほとんど画面に登場しない、終了間際になって「LEON」の大振りなマシンを、ヘアピンを過ぎたあたりからTVカメラが捉えてくれる。トップグループから1秒2は離されている。結局16位で、Q2に進出できないままで終わってしまう。PPは第1戦同様、SUBARU BRZ。しかし、決勝で待ち受けているのは500kmという長丁場。なにが起こるか、わかりやしない。
28日夜の黒澤治樹のプライベートBLOGは短く、こう記していた。
「今日は予選。理由は色々ありますが、上手く行きませんでした。言い訳したくない!
だから、明日。頑張ります!」と。
午後3時半、TVのチャンネルをあわててJ-SportからBSの160に切り替える。ご贔屓、阪神タイガースが、横浜でDeNAと対戦していた。藤波晋太郎投手が、せっかく3点を貰いながら、3回裏に松本外野手に一発くらって、1点差に迫られた瞬間だった。が、結局、終盤の詰めの差で阪神、勝利。手持ちのメガホンを持ち出し、手拍子をとりながら、ひとりで「六甲おろし」を歌った。
決勝は500km の長丁場。燃費のいいベンツ連合軍に勝機はある。29日は、その辺をジックリ見せてもらおうか。
追記①:29日朝のフリー走行。LEON SLSは18位とまだ低迷している。
さらに追記② レースはLEONが8位で、期待に応えられなかった。5月のコリア・エキシビジョンは中止、、6月は炎熱のセパン・サーキット(マレーシア)。したがって国内戦は、7月28日の菅生決戦までお預けとなる。
TVを見てびっくり。ヘアピンコーナーの出口にある横断幕のスポンサーが「LEON」となっているではないか。その下を「LEON」が走り抜けるシーンも何回か映し出された。それにこたえてこそ、黒沢ファミリーなのだ。7月の菅生は、間違いなく熱くなる! みんなで応援に行こうぜ!
で、さらに追記③スパーGTの観戦の合間毎に、「阪神×広島戦」をチェック。4対1とリードしていたのに、土壇場で逆転負け。したがって「六甲おろし」の斉唱はなし。