~ガンさんから貰った「ドラ・メカ」のヒント~
わが「みんカラ」フレンド第1号である「霧島」君が、このところ、そのレポートに、カメラワークに、すっかり腕をあげているので、毎回、拝見するのが愉しみだ。
その中で出色だったのは、福岡と大分の県境でラーメン屋を営む「龍剛」というニックネームをもつ走り屋さんと遭遇した一件である。詳しくは彼のレポートをご一読いただきたいが、ともあれ、鈴鹿サーキットで、ガンさんの駆るNSXの助手席体験までしている霧島君が、「龍剛」氏のドライブするMR2-SWの助手席で異次元の体験したあたりのできごとを、そこまで書くのなら、かなり以上の凄腕ドライバーであろう、と推察した。
https://minkara.carview.co.jp/userid/509662/blog/29120539/
そこで早速、噂の龍剛氏(正式には「街道レーサー風(龍剛)」と名乗っていた)の「みんカラ」BLOGにお邪魔した。するとどうだ、先の夏、筑前の小京都・秋月の往復を、その愛車で往復していただいた「TAKUV35」さん、佐伯の海の男「YUSAKU」とも親交のある御仁だと判明、加えて、そこのチャンポンを味わいに、次の機会にはぜひ遠征しよう、とまで約束していたのだから、驚いた。その上、『ベストカー』『ベストモータリング』によって、おのれのドライビング・スキルを磨き続けている、と明言しているではないか。で、お互いが「みんカラ」フレンズに登録し合った。つまり、今では、わたしのもっとも新しい「お友達」という位置づけにある。
*おお、懐かしの中山サーキット、1周2007㎝の手造りサーキットの全景
*こちらはスタンドから見下ろした最終コーナー。アップダウンとコーナーが、絶妙に組み合わされていて、ドラテク磨きに最適な道場。あの谷口信輝選手もここからスタート。
その龍剛氏が3月7日に、『MT再考』と題した一文をアップした。「再考」とあるからには、すでに「MT考」というのがあるのだろうが、わたしはこの「再考レポート」にひどく惹かれてしまった。そこでご本人の了承を得た上で、その文章を改行したりして、すこしばかり読みやすくして、紹介したい。そこには、市井に達意の人あり、と、つい自らの膝をたたいてしまう「ドライビング」についての見識に触れたのである。以下、その龍剛氏の全文を紹介したい。
《――免許を取る前から、ずっとMT(マニュアルトランスミッション)車を運転してきた。昔はMT車の方が多かったから、ノークラ(AT)は高級車(笑)ばかりだった。
それに昔のAT派シフト速度が遅かったから、速さは断然MTだった。
しかし今では2ペダルの方が速い車も多くなった。MTより2ペダルが速い時代が来るとは考えてもみなかった……俺はATもずっと運転してきて練習もしてきた。だから下手は下手なりに、ああだこうだ、ブログを書くわけだ!
さてMTだが……ごく少数派になってしまった。もはや速さでMTを選択する時代では無くなっている。じゃあ何故MTを買うのか? 燃費だって2ペダルと同等以下なのに……俺は運転する楽しさだろうと思う。ヒール&トウなんか出来なくてもMTの醍醐味は味わえる。クラッチをミートする瞬間、シフトアップ&ダウンを自分の意思でやる瞬間、坂道発進をする瞬間……何気なくやっているけど、その全てはアナログだ!
坂道発進。これもまた、本当に上手に出来るドライバーは数少ないと思う。単純だが難しいのが坂道発進だ。ヨーイドンで回転を上げてクラッチとアクセルを微妙に操りながら、スタートシフトダウンする時に回転を合わせてクラッチを繋ぐ。ヒール&トウが決まってなんとなく嬉しくなる……どれもこれもMTならではだ。シフトダウンで次のギヤと同調させるためにアクセル煽って回転を上げて繋ぐ!
バイクだと当たり前にやっているけど、車だとコツがいる。スポーティーに走る時はMTには有効なテクニックだし、車を傷めないことにもつながる。これはMTオーナーにはよくわかることだ!
これにブレーキが加わればヒール&トウになる。面倒くさいと思う時もあるけど俺はMT好きだなMTにはMTにしかない楽しみが沢山あるし、ミッションをいたわるためのテクニックもある。ソニックさん(正岡註:お仲間らしい)みたいにWクラッチ踏んでいたわる昭和なドライバーは少ないなぁ。寒いときに入りづらいMTもいっぱいあった。高速道路で4速⇒5速なんかは少しアクセル煽ってやるとミッションの負荷が少ない。などなどまだまだMTは不滅だぞ!そして今もヴィッツでMTを駆使して、弁当運んでいる。》
そこで、わたしがついつい「コメント」してしまう……。
「なぜヒール&トウをするのか? 黒沢元治さんが近く刊行する『新ドライビング・メカニズム』のなかで、すばらしい答えを出しています。そういえば、彼は〈ヒール&トウ〉ではなく〈トウ&ヒール〉が正しく意味を伝える、と教えてくれたっけ。 参考までに」
すると1時間10分後に、コメントへの返答が書きこまれていた。
「それは是非買わないといけませんね。トウ&ヒール……。さすがはガンさんですねぇ。ヒール&トウの目的はあくまでもブレーキですもんね!ブレーキがおろそかになるなら僕はヒール&トウ出来なくても確実なブレーキングをするべきだと思います(素人的経験ですが)僕は狭くてガードレールがなく、横は谷底みたいな下りのヘアピンにブレーキぎりぎりまで我慢して突っ込んでヒール&トウします。しくじればかなりやばい状況ですが……そういう条件で練習したら、気合いで身に付きますね(笑)」
龍剛氏、さすがである。即座にガンさんが伝えようとしている、「ドライビング」のメカニズムのツボを、確実に受け止めていた。
*4月5日に発売の決まった黒沢元治著「新ドライビング・メカニズム」1500円+税=1575円
*執筆中のガンさん
今回、ガンさんは『新ドライビング・メカニズム』(主婦と生活社・1500円+税)のなかで、「ヒール&トウ」を自説である「トウ&ヒール」とはいっていないが、なぜ「ヒール&トウ」を身につける必要があるかを、こう説いている。
――タイヤは発熱させなければ能力を発揮できない。コーナリング中は、一定の荷重を掛け続けることにより持続的な発熱を促し、その結果得られる摩擦円の大きさを最大に保つことが重要になる。
ヒール&トウの必要性は過去のモノだと言われる。確かにF1しかりGT500クラスのレーシングカーにシフトノブは既にない。シームレスなシフトダウンをコンピュータと高性能なアクチュエータが行ってくれる時代である。しかし、避けるべき荷重変動を学ぶにはヒール&トウが良い教材となる。
*ガンさんの「トウ&ヒール」。トウでブレーキングし、それからヒールでエンジン回転を上げてやる。
ヒール&トウは、右足のつま先(トウ)でブレーキングをしながら、かかと(ヒール)でアクセル操作をする。制動を持続しながらシフトダウンする際、唐突なクラッチの繋がり=荷重変動を避けるため、適切な回転数を得ることが必要だ。5速と4速の同一速度でのエンジン回転差が700rpmなら、クラッチを切り5速から4速に落とす間に700rpm上げることができればショックのないシフトダウンが実現する。
このシフトダウンができない状況を考えれば理解は容易だ。右足がブレーキ操作のみにしか使われなければ、シフトダウンをしている間にエンジン回転数は低下しており、クラッチをミートさせた際、大きなショック=急激なエンジンブレーキを伴う。この時、荷重は前に移り前輪の摩擦円は一瞬大きくなる。しかし後輪の摩擦円は小さくなり=荷重が抜けスピンの危険が発生する。
ここは鈴鹿の第1コーナーである。ステアリングは右に切られており、しかも下り坂である。この状態ではクルマの荷重は既に前荷重になっている。その状態から、さらに前に荷重を移し後輪の荷重を減少させる=摩擦円を小さくする。その不合理さは容易に理解して頂けると思う。
ショックを避けるためにエンジンの回転差をなくそうと、右足を一旦ブレーキから離しアクセル操作をすれば、クラッチの繋がりはスムースになるかも知れない。しかし、その間制動力はゼロとなりクルマは空走するし前輪の荷重は抜ける。そうなると、前輪の発熱は低下し摩擦円は小さくなるから、さらに車速を落とさない限りコーナリング・ラインの維持は困難になる。
鈴鹿の第1コーナーは摩擦円を理解するのに最適の場である。摩擦円内にとどまりながら制動とコーナリングの両立を求められるからだ。
これが今回の新著の「さわり」の一部である。そこで、どうだろう。改めて、こうした「ドライビング」のもつ「メカニズム」について、ガンさんと一緒に語り合い、あるいは、一緒にクルマを走らせ、楽しめる時間を共有する機会を設ける、という試みは!
近く、うれしいことに、その具体案を明らかにできそうだ。
*べスモ1990年4月号「ドラテク特訓合宿IN中山サーキット編」より。ガンさんも、後ろからチラリと顔を見せている小生も若かった。因みにこの号は「筑波・雪上バトル」と同載だった。
*ガンさんの「追っかけ」シーン。うまくすれば、4月8日の中山サーキットで同乗体験ができるかもしれない!
手始めに、4月6~7日の岡山国際サーキットでのスーパーGT戦の終わった翌日の4月8日(月曜日)に、山陽スポーツランド中山サーキットに集まる、という企画がまとまりそうだ。 そう、ベスモの遺伝子をもつ仲間なら、かつてガンさんが「特訓道場」を開催した、あのサーキットだとわかるはず。
その中山サーキットに、GTレースの終わった翌日、4月8日の午前10時半から1時間、ガンさんと小生、それに萩の波田教官の3人が確実に立ち寄る。
そこで自然発生的な「ガンさんミーティング」が開く、というのはどうだろう。
よし、参加しよう,という向きは、中山サーキットへの入場料は負担していただくとして、その他は、特別の費用負担はなし、である。お問い合わせは当ブログの小生宛メッセージ欄でどうぞ。お待ちしていますぞ。