
~それぞれの鎮魂の想いが谺(こだま)する~
合掌してから『ベストカー』の12月26日号を開く・・・・・・。広告ページを2見開き通過すると、徳大寺有恒さんの笑顔が待ってくれていた。愛車メルセデスのスリーポイントがちらりとのぞき、ズボンのポケットに両手をいれて、こちら向かって、屈託なく破顔している。80年代後半のショットだろう。この徳さんの笑顔に、つい、いつまでも見入ってしまう。
「講談社ビーシー社員一同」が心のこもった追悼の言葉を贈っている。
「徳さん、長い間本当にありがとうございました」
わたしも、同じ言葉を口にして、次のページを開く。
黒沢元治さんと、HONDAの元社長、川本信彦氏が沈痛な想いを披露する。ガンさんは、自らが開発に取り組んだ「ポルシェ承認タイヤ」も「初代NSX」も徳さんの励ましがどんなに効果があったかを、想いをこめて明かす。
川本社長は、歯に衣着せぬ評論から、真にいいクルマ作りのために大切な示唆をいただいた、と鎮魂の言葉を送ってくださる。
次に登場するのがテリー伊藤さんだ。雨の中にたたずむクルマの美しさ、光の中で輝くクルマに心を撃ち抜かれる・・・・・・そのすばらしさを教えてくれたのが徳大寺さんだった、と。短い文章だったが、テリーさんに、共感した。
さらにページを開く。生沢徹さんが「杉江(徳さんの本名)がいなければ、今のアタシはいない・・・・・・」と、往時の秘話を述懐している。それに加えて、1967年の日本グランプリで、生沢さんのドライブするポルシェ906をサポートする徳さんの姿が、なんとも初々しい貴重なシーンとして添えられている。必見である。
カラーグラビアの最終ページは、谷田部でのテスト前夜、徳さんと夜通しでクルマ談義をした思い出を、竹平元信さんが語っている。
さて活版ページである。目次の1ページをめくると、徳さんの『俺と疾れ!! 2014』の最終回がトップ記事扱いで待っていた。恐らく、これが徳さんの最後の原稿だったろう。
その4ページが終わると、「追悼特集」が再開する。舘内端さんが『徳大寺有恒が日本の自動車ジャーナリズムに残した功績』に言及する。火を吐くような追悼の想いが、こちらの胸を打つ。ぜひ、ご一読をお願いしたほどの、真実の徳大寺有恒の姿勢を指摘している。
「徳大寺さんは、あらゆるバッシングにも負けず、真実を語ることを貫いた。だから間違いのないクルマ選びができる人たちがたくさん生まれた。そして自動車メーカーは、クルマに対する目を鍛えることができた。
クルマは地球温暖化と今後の石油需給の逼迫という大きな問題を抱えている。大きく変わらなければ生き残れない。今こそ、バッシングを恐れず、真実を語る自動車評論が求められている。
だが、それは簡単ではない。強い心と体力がなければできない。自動車評論家の末席を汚す私とて例外ではない。徳大寺さんに恥ずかしくない自動車評論を心がけなければならない」
そして最後に、徳さんを励まし続けた読者にお礼をいう舘内さん。
「徳大寺さんは、皆さんの励ましがあったからこそ、自動車評論をやり続けられたのだと思う」
次に、元ベストカー編集部員であった国沢光宏さんが、彼の声が聞こえてくるような、軽妙な筆致ながらどこか人の心をシーンとさせるいい味で「一から十まで徳さんの背中が教えてくれた」さまざまなエピソードを書き綴っている。
*追加PHOTO
さて56ページ目に、わたしの『運命の人「杉江博愛」と黎明期のベストカー』が登場する。「みんカラ」BLOGの11月12日付け『何シテル?』の拡大版といっていい。徳さんのやらかした「創刊号、空白の19行」事件が、彼に自動車評論専業を踏み切らせたのかも、というエピソードを織り込んだのが、耳新しいかもしれない。
最後の見開きページは、3代目編集長の勝股優、4代目の宇井弘明の両君が
徳さんとの別れがどんなに辛いことなのか、その切々たる想いを述べてくれている。
特に注目なのは、宇井くんさりげなく明かす徳さんの亡くなった「11月7日」のこと。
誰にも迷惑をかけず、さっさと逝かれたのはいかにも徳さんらしい、と心のなかの涙を拭きながら、憎まれ口を叩いているのも好ましかった。
都合、カラーグラビア4ページ、活版12ページを投入してくれたベストカー誌の「追悼特集」は、徳大寺夫人の読者への謝辞で締めくくる。
「読者の皆様
ベストカー創刊から現在にいたるまで
長い間、徳大寺を支えて頂き
本当に、本当にありがとうございました。
徳大寺が少しでも皆様のお役に立ち
ご記憶にとどめて頂けたなら、
本人にとって望外の喜びです。
本来なら直接皆様に
お礼申し上げるべきところ、
誌面を借りてのご挨拶お許し下さい。
ありがとうございました。
平成26年11月14日 徳大寺有恒
内
【局長追記】徳大寺さんとの最後の仕事になりました『指差して言うTOYOTAへ』を、わたしの始めた『ぽらりす』から、電子書籍ストア「CONTEN堂」を舞台に、電子版をご覧いただけるようになりました。徳さんの熱い想いを受け止めてやってください。お願いします。アクセス先をリンクしておきました。
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ちょっと一服 | 日記
Posted at
2014/11/27 01:08:04